煽り運転

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 ああ、恐ろしい。どうしてこんなことになってしまったんだ。
 僕はただ、ウサギと旅をするのが好きなだけだった。
 旅といっても、簡単なドライブだ。ペットのウサギと車で走るのが僕の趣味である。
 ウサギは好きだ。小さくて、可愛くて、いつも一緒にいる。
 特にはしゃぎつかれて眠っている姿を見ると、気分がほっこりするんだ。
 春のこの時期、ドライブにピッタリの季節で、本当なら楽しい旅になるはずだった。
 それなのに、こんな恐ろしい事に巻き込まれてしまった。
 その車は、猛スピードで僕の車を追い抜いた。かと思えば、今度は進路を塞ぐようにスピードを落として、僕の車の前に張り付いている。
 こちらが進路変更をすれば、相手も同じように移動する。
 そう、これは間違いなく『煽り運転』だ。
 テレビなどで見た事はあったが、実際に自分がされると、本当に怖い。
 なぜ、彼らは煽り運転なんてするのだろう。いったいどうすれば、煽り運転なんてしようと思うのだろう。
 確かに自分の運転は、お世辞にも上手とは言えない。ウサギと旅を楽しみたい僕は、車をゆっくり走らせていたのかもしれない。
 でも、それだけでこんなに怒るとか、いったい彼らの沸点はどうなっているんだ?
 テレビとか、見ないのだろうか。逮捕されている人もいるのに、それを知らないのか? それとも、自分は逮捕されないとでも思っているのか?
 煽り運転をする人間の心理が、本当に理解できない。
 怒りで我を忘れているのか? ひょっとしたら、自分が煽り運転をしている事に気付いていないのではないか?
 ああ、間違いない。こいつらは自分が周りからどう見られているのか、まるで分っていないんだ。
 きっと自分が正義とでも思っているのだろう。だから、煽り運転なんてできる。
 こういう奴は自分が『異常者』だと気付いていない。自分がおかしい事が分からないんだ。客観的に自分を見る能力が欠落している。
 そう思ったら、腹が立ってきた。なんでこんな奴らが社会に出ているんだ?
 憎い。煽り運転をする奴が、自身を異常者だと気付けない馬鹿が、本当に憎くなってきた。
 異常者は社会に出るな! 一刻も早く逮捕されろ!
 周りも許すな! 徹底的に断罪しろ! 異常者に更生なんてあり得ない。
 異常者を甘やかすな! いや、もう生かすな! まとめて殺処分しろ!
 自分の感情をコントロールできない人間なんて、生きちゃいけないんだ!
 なあ、煽り運転とかするそこのあんたさ、頼むから、気付いてくれ。
 お前は異常者なんだ。頭がおかしいんだよ。ほんの僅かでもいい。自分のやっている事を客観的に見てくれ! お願いだから、気付けっっ!
 ほんとさあ、こういう奴って何を考えて生きているんだ? 自分の事を恥ずかしいとか、思わないのか?
 恐怖と怒りで頭がおかしくなりそうだ。誰か、何とかしてくれ!
 ついに完全に進路を塞がれて、車を止められてしまった。
 当然、前の車も同じように止まる。
 車の中から屈強な男が出てきた。腕には入れ墨をしていて、明らかに異常者であることが分かる。
 目は怒りで充血しており、怒鳴りながら僕の車の方へと近付いてきた。
 ああ、これから僕はどうなるんだ? まさか、殺されてしまう!?
 しかし、その時、サイレンの音が鳴り響いた。
 警察だ! よかった。誰かが通報してくれたんだ。間一髪で助かった!
 僕は神に感謝した。これで奴は逮捕される。やはり神様は見ていたんだ。
 これが異常者の末路だ。煽り運転をするような馬鹿は、このまま世に晒されて、一生ろくでもない人生を歩む。
 晒された異常者は、様々な正義の代弁者から執着されるのだ。
 他人に煽り運転をした分、今度は自分が執着される恐怖を味わうがいい。
 世の中の異常者よ。分かったか? これがお前らの末路だ。
 理解したなら、気付け。一秒でも早く、自分が異常者だと気付いて、そして悔い改めろ。
 それができないなら、お願いだ。死んでくれ。…………死ねっっ!
「ふう」
 まったく、本当にとんでもない一日になってしまった。まあ、色々あったが助かってよかった。
 これでようやくウサギとの楽しい旅が続けられる。
 そうして、警察が僕の車のドアを開けた。

「降りろ。お前を逮捕する」

 え? 僕が逮捕されるの? ……なんで?

 ×××

 その日、一人の『異常者』が逮捕された。
 男はウサギを車にくくりつけて、死ぬまで走らせるという趣味を持っていた。そうやって、何匹ものウサギを虐待死させていた。
 この日も同じように、ウサギを車にくくりつけて走らせていたが、それに気付いた一人のドライバーが自らの車を盾にして停車させ、身を挺してウサギの命を救った。
 その勇気あるドライバーには、絶賛の声が集まっている。
 逮捕された異常者は「自分はただ、ウサギと楽しい旅をしていただけ」と供述していた。
でんでんむし

2023年04月30日 10時03分09秒 公開
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■作者からのメッセージ
◆キャッチコピー:異常者よ、気付いてくれ
◆作者コメント:むしゃくしゃした怒りの感情が文字となり、そのまま出来上がってしまいました。せっかくなので提出します。少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

2023年05月17日 20時37分37秒
作者レス
2023年05月13日 18時58分19秒
+30点
Re: 2023年05月16日 18時55分34秒
2023年05月13日 02時44分41秒
+10点
Re: 2023年05月16日 18時43分04秒
2023年05月12日 19時09分58秒
Re: 2023年05月16日 18時23分11秒
2023年05月08日 22時13分30秒
+30点
Re: 2023年05月16日 18時07分25秒
2023年05月07日 18時52分01秒
+10点
Re: 2023年05月16日 17時53分33秒
2023年05月06日 11時59分32秒
+10点
Re: 2023年05月16日 17時43分33秒
2023年05月06日 08時37分18秒
0点
Re: 2023年05月16日 17時01分41秒
2023年05月06日 01時42分06秒
+10点
Re: 2023年05月16日 16時45分55秒
2023年05月04日 21時49分20秒
+10点
Re: 2023年05月16日 16時26分28秒
2023年05月03日 16時26分05秒
0点
Re: 2023年05月16日 16時12分00秒
2023年05月03日 08時48分16秒
+20点
Re: 2023年05月16日 15時57分44秒
2023年05月01日 22時55分32秒
+20点
Re: 2023年05月16日 15時37分52秒
2023年05月01日 21時09分16秒
0点
Re: 2023年05月16日 15時29分53秒
合計 13人 150点

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