【跡地化】恋する女帝

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kz

2022年08月14日 23時55分31秒 公開
■この作品の著作権は kz さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
◆テーマ：『喜』
◆キャッチコピー：死にたかった　死ななくてよかった
◆作者コメント：楽しんでもらえたら嬉しいです。

2022年08月28日 00時22分43秒
 +20点
  • 作品拝読しました。

    今までの動物や家族に対する虐待の記録を収めたノートをめぐるストーリーでした。

    前半部分はデスノートの真相を含め、ドキドキして楽しく読むことができました。
    主人公の及川のキャラクターに厨二っぽいものを感じて印象的だったなぁと思っています。

    後半の西條が主導して殺人事件の解決に導いていくストーリーは、展開としては王道で安心感がありました。

    ただ、西條の視力が悪いこと、ラストでの告白は若干唐突に感じられてしまいました。
    こう……非常に口が悪い言い方になってしまうのですが、同じ年頃の男女を出したから恋愛要素も入れようという感じがして、ちょっと要素を詰め込みすぎじゃないのかな、ともったいなく思ってしまいました。
    早い段階で何度か恋愛要素につながるものをちりばめておけばよかったのかな……。
    ただそうすると作者のやりたいこととは若干ずれが生じてしまいそうで、結果的にいびつな作品になっちゃう可能性がありますね。

    キャラクター性に優れ、エンタメとしても面白く読ませようという気概を感じた作品でした。
    読めてよかったなと思っています。

    それでは執筆お疲れ様でした。

    E-Mail pass
Re: 2022年08月28日 02時34分36秒
  • いつもお世話になります。ご感想ありがとうございます。

    ＞前半部分はデスノートの真相を含め、ドキドキして楽しく読むことができました。
    ありがとうございます。正直このネタには自信がありました。

    ＞ただ、西條の視力が悪いこと、ラストでの告白は若干唐突に感じられてしまいました。
    視力はともかく、ラストは書きたいことが優先になってしまって、もちろん枚数上限も理由の一つにありますが、もう少し丁寧に書きたかったのが正直なところです。

    ご感想ありがとうございました。

    E-Mail pass
2022年08月27日 10時04分12秒
 +30点
  • ※この感想には【本企画に参加している他の作品】のネタバレを含みます。閲覧は自己責任でお願いします。







    こんにちは。kanegonと申します。『恋する女帝』読みましたので、感想です。
    ギミック盛りまくりのミステリ。楽しませていただきました。全体としてはとても面白い作品でした。
    まず章構成の（〇）の使い方が上手かったです。蟻を潰して殺して遊ぶとか、子どもだったら誰でもやることで、そこからの分岐点が殺人鬼になるか一般人になるかなので、なかなかに説得力がありました。
    そんな中で序盤で提示される主人公のグレアムヤング設定も興味を引きました。そして前半はデスノートがバレずに済むかどうかが前半のキモだったわけですが、そこはあっさり解決。それも指紋という当たり前すぎる証拠によるもので、それは西條が名探偵でなくても誰でも解決できるじゃん、とは思ったけど、指紋を調べるパイプは必要なので、なんだかんだで警察と付き合いのできる名探偵ならではであるとも言える。
    そして後半の事件。ここは本作品の本体といえるところですが。前半のデスノートが犯人のミスリードとして利用してあるのは上手かったです。
    いや確かに、デスノートで描かれている事件は不自然だなーとは思っていました。砂場に刃物を仕込んだだけでは、猫に切り傷はできるかもしれないけどバラバラにはならないだろう、とかいう感じで。でもそこを深く追及せずに流して、後半で一気に解決したのは上手かった。

    ただ、後半の事件に関しては、企画に出て来るミステリ作品並みというべきか、トリックに無理矢理な部分が多かったと感じました。いや、企画に限らず、プロが書いたミステリ小説でもこれくらいの強引さは普通かもしれませんが。
    たとえば、野球のボールを鈍器であるという展開。さすがに女子高校生が野球のボールで野球部員を撲殺するのは、偶然とはいえ無理があるような。もちろんそこには「絶対にありえないわけではない」ということは読者にも分かりますし、そこから、実は別の鈍器で先に殴り殺してから後から偽装のためだった、という展開に行くのも分かります。
    そこで一番問題なのは、名探偵西條がボール鈍器説を中心にして長々と推理をすること。他の鈍器の可能性を考えて考えてでも可能性が潰れて、最終的にボール鈍器で偶然的に殺人が成立したとしか考えられない、という結論に至るのなら良かったのですが。ここは、先に述べた猫のバラバラとは逆ということになります。
    猫がバラバラになるのは読者的に違和感があったけど許容できたのは、そのことについて議論を深めておらず、登場キャラが違和感を抱く暇が無いままタイミングが来たらすぐに解決したから。
    ボール撲殺は、他の鈍器という可能性が出てきた時点でやっぱりなとは思いましたが、そっちの可能性を先に考えろよと思ってしまうものです。
    白杖トリックについては、ズルい、と最初に思ったのですが、その一方で上手いとも解釈できるとも思います。
    西條の初登場のシーンで白杖を持っているので、その時点で視覚障碍者かなとは思いました。ただ、その後の展開を見ていると、普通に目が見えているかのごとき言動をしています。点字で書いたわけでもないデスノートの文字を崩し字だと見破ったり。なので山場でも視覚障碍者告白はある程度納得でした。
    ですが、ズルいと思ったのは、白杖を持っている西條は視覚障碍者だから犯人の可能性は無い、としておきながら全盲ではないから見ることはできます、という流れ。全盲じゃないなら犯行可能じゃん、と思ってしまいました。
    ただここは、最初に全盲だとミスリードさせておいて西條犯人説を排除しておいてから、後出しジャンケンで全盲じゃないという情報を出すのは、トリックとしては上手いとも言えると思いました。
    キャラに関していうと、主人公のデスノートがあくまでも妄想の産物でしかない、ということがバレてからは、西條と神木の対決だけになってしまい、主人公が空気になってしまったのは惜しいというよりは残念。
    ただ、最後には名探偵の宿命の西條に救いの手を差し伸べるという部分でちゃんと存在意義があったのは良かったです。西條を好きになるという部分は強引だとは思いましたが、これに関してはこれくらいの強引さで良いと思いました。
    西條はいけ好かないヤツだった。伊藤が死んでいるのを発見した時、救急車を呼ぼうとする前に既に死んでいると言った。
    それ判断するのは医師であって西條じゃないじゃん。その後すぐ警察に電話してはいますが。
    もちろん、ここで常識的に救急車を呼んだのではミステリ小説として成り立たないですから、この展開は仕方ないのですが、まあ、推理をするために救急車を呼ばないという、もしまだ生きていたら取り返しのつかないことをしているので、ミステリ作品に出て来る名探偵ってこういう傲慢さが鼻についていけ好かないよなあ。それこそ今回の企画でもどこかで見たようなキャラだぞなあ。
    と、思っていたら、ここにも盛大なギミックが。
    なるほど。確かに、あんたのせいよ、では悠子という下の名前でしか表記されていなかったし、こちらの作品では西條という姓しか出てこなかった。これがコミックとか実写ドラマとかだったらビジュアル情報があるので同一人物だとすぐに分かっちゃうかもだけど、これは文字情報のみの小説ならではのギミックでした。それを１００枚上限という限界がある企画ならではの、二作品にまたがって仕掛けるという。これはおみごと。
    あんたのせいよ事件のやらかしについては、唯一の肉親だった叔父が自殺してしまう、という重すぎる代償を支払ったのだから、まあ、それはそれでチャラってことでいいのかなあ、とも思う。
    ただ、本作品においても、救急車を呼ばず、つまり被害者の人命よりも推理を優先したわけで、結局西條は名探偵の宿命でいずれまたあんたのせいよ事件と同じ過ちを繰り返すだろうなあという感じはします。ただまあ、そこに主人公がくっつくことによって過ちを犯した西條の支えになるのか、あるいは過ちを犯す前に抑止力として作用するのかは分かりませんが、主人公がくっつき、それを頼りに西條が自分を信じてみようとするラストは良かったと思います。

    総評としては面白かったです。
    推理の部分に関してはどうなのよと思うところもありましたが、デスノートのミスリードとかのあれこれギミックで十分に楽しませてもらいました。点数は単体作品としてつけていますが、二作品にまたがってギミックを仕掛ける、という発想も良かったです。
    簡単ですが感想は以上です。企画参加おつかれさまでした。

    E-Mail pass
Re: 2022年08月28日 02時34分15秒
  • いつもお世話になります。ご感想ありがとうございます。

    ＞まず章構成の（〇）の使い方が上手かったです。
    ありがとうございます。ミステリの鉄則と言うかお約束と言いますか、「首なし死体が出たら交換を疑え」と同じく「手記とか日記が出たら叙述トリックを疑え」というものがありまして、そのパターンだったりします。

    ＞それも指紋という当たり前すぎる証拠によるもので、それは西條が名探偵でなくても誰でも解決できるじゃん、とは思ったけど、
    本当はもっと丁寧に――それこそ前半だけで四万字は使いたかったのですが、後半のためにあっさりと切り上げて種明かししました。

    ＞でもそこを深く追及せずに流して、後半で一気に解決したのは上手かった。
    ありがとうございます。ちなみに私はこの手の伏線は上手いです（自画自賛

    ＞トリックに無理矢理な部分が多かったと感じました。
    この辺は練り込み不足と言いますか、書きながら細部を詰めて考えたので、結構アラアラなんですよね。すみません。

    ＞ですが、ズルいと思ったのは、白杖を持っている西條は視覚障碍者だから犯人の可能性は無い、としておきながら全盲ではないから見ることはできます、という流れ。全盲じゃないなら犯行可能じゃん、と思ってしまいました。
    この辺も練り込み不足なんですよね。初期設定だと全盲だったみたいですが、書いているうちに「今のままだと全盲は無理だ。とはいえ描写を直す時間もない」となって、視野が狭いだけになりました。

    ＞それ判断するのは医師であって西條じゃないじゃん。その後すぐ警察に電話してはいますが。
    まあ実際いけ好かないやつではありますが（ぁ、すでに死後硬直が始まっていたので、蘇生は諦めてしまったみたいです。その内にまた同じ失敗を繰り返しそうですね←

    ＞と、思っていたら、ここにも盛大なギミックが。
    本当はガチで続編を書くつもりなんてなかったのですが、色々と条件がそろってしまったので、思わず書いてしまいました。おかげでお盆休みが潰れました。

    ご感想ありがとうございました。

    E-Mail pass
2022年08月27日 01時50分40秒
 +30点
  • こんばんはー_(┐「ε:)_
    黒川いさおの黒川の方です〜

    恋する女帝読ませていただきましたー。

    ミステリー作品を読んだのは初めて＋キャラ名覚えられない黒川＋黒川が馬鹿。な故読むのが難しかったです。
    しかし残虐な描写、デスノート、などの黒川好みの雰囲気があったので時間がかかりましたが無事に読み終えられました！
    ٩( ᐛ )و楽しかったです！

    なるほどこう言うのがミステリー作品なんだなー！まじ書くの難しいだろうに凄いなーと感心しながら読みました。
    ちょいちょい誤字っぽいのが気になりましたが普通に読めました。
    こう言うのって最初にトリック考えてから書くんですかねー？
    人によりけりなんでしょうがきっととっても頭のいい人じゃなきゃ書けないだろうなーと。まじ凄〜って思いました。（小学生の感想みたいで本当申し訳無いです！！！）

    とりあえず個人的には難しかったですがとても好みな雰囲気の作品でちゃんと最後まで読みたいなって思える作品でよかったです。
    ではお疲れ様でした〜(´ω｀)

    E-Mail pass
Re: 2022年08月28日 02時23分07秒
  • いつもお世話になります。ご感想ありがとうございます。

    ＞ミステリー作品を読んだのは初めて
    もっとまともなミステリ読みなさい！（ぁ

    ＞ちょいちょい誤字っぽいのが気になりましたが普通に読めました。
    すみません、締め切り二日前に急いで書いたので、見直す時間とかありませんでした。

    ＞ではお疲れ様でした〜(´ω｀)
    お疲れ様でした。もしまたお店に行く機会があったら、その時は相手してやってください（ぁ

    ご感想ありがとうございました。

    E-Mail pass
2022年08月24日 22時21分41秒
 +20点
  • 　作者さま、こんばんは。
    　御作を拝読しましたので感想を述べさせて頂きます。



    ※以下、ネタバレです。読了前の方はご注意下さい。










    　今回の企画は豊作ですね。あれほど需要がないと言われていた本格ミステリやミステリーが沢山投稿されている。運営さん、いっそのこと次回はミステリー縛りで企画やりませんか？　きっと楽しいはず！　私が！
    　――とまあ冗談はさておき、「あんたのせいよ」に続いて本格ミステリを読みに参上しました。
    　本作は大きく分けて二部構成でしたね。他の方の感想で使われていた呼び名をお借りすると「デスノート編」と「事件編」といったところ。デスノートの記載内容が及川君のキャラ描写だけでなく、犯人のミスリードにも使われているところに巧みさを感じました。もしデスノートが事件編にまったく関わっていなかったら、もう少し評価を下げていたと思います。
    　デスノート編が西條さんの推理によって解決し、続いては事件編。校内で殺人事件発生という王道展開に、本格ミステリ好きの血が騒ぎました。不謹慎ではありますけど、本格ミステリはやっぱりこうでなくちゃ。殺人事件発生！　犯人は誰で、どうやって殺したのか⁉　このある意味お約束展開には期待しかありませんでした。
    　……が、期待しすぎてちょっと残念だったことがあります。
    　まず、不可能状況の提示がない。
    　本格ミステリでは必須ではないかもしれませんが、密室を初めとした不可能犯罪があると謎が深まって、それが解明された時に快感が得られます。
    　しかし本作は言ってしまえば「誰にでも可能な犯罪」。その時点で期待度がワンランク下がりました。
    　とはいえ、フーダニットをメインにした作品も数多くあるので、そちらに期待し直すことにしました。
    　犯人当てはメタ推理だと簡単に正解できてしまいますね。西條さんは探偵役、及川くんはワトソン役、となるとあと残っているメインキャラは一人しかいません。しかも犯人は、デスノート編ではほとんど出番がありませんでした。だからあの人が犯人、そう考えたら簡単でした。
    　ではメタ推理以外でのアプローチではどうか。残念ながら、犯人を特定するロジックに甘さが見られます。一人の人間を犯人として名指しする以上、その人以外が犯人ではあり得ないと論理的に導かなければならないのに、本作では不十分であるように思えました。
    　前提として、外部の人間による犯行が否定されていなければならない。
    　次に、他の生徒による犯行も否定されていなければならない。
    　ここまで推理して、ようやく一部の生徒による犯行の可能性を考えるわけでして。
    　けれど本作では一足飛びに、特定の人物を犯人と仮定して推理してるわけです。
    　このあたり、読者によるメタ推理と、作中の人物による客観的事実と証拠に基づく推理が混同されてしまっている印象です。
    　あと、犯人が仕掛けたミスリードですが、私には不発でした。西條さんが白い杖を持っていることや、声で及川くんを判別していることなどから、彼女が視覚障害者であることは分かっていたので、犯人が唱えた説はあり得ないなと。これはまあ、フェアに伏線が張られていたからでもあるのですが。


    　事件解決後に明かされた西條さんの苦悩。市川哲也の「名探偵の証明」を読んでいるようでした。名探偵である以上、事件のほうから寄ってきてしまう。自然と周りの人々は巻き込まれ、名探偵は疫病神だと罵られながらも、事件を解決する義務を負う。それが名探偵の宿命……なんとも厳しい話で。
    　苦悩する西條さんを救おうと及川くんが告白するわけですが、ちょっといきなり過ぎやしませんか？
    　おっぱい大きい美少女なら性別問わず好きになっちゃうんでしょうけど、及川くんが西條さんにそれほど入れ込む描写ってありましたっけ？　申し訳ないですが、無理矢理感があるように思いました。


    　色々言いましたが、本格ミステリ好きな読者が自分なりのミステリ論を振りかざさしているようなものですね。すみません。
    　本格ミステリは執筆技術の宝庫、そして小説の最高峰だと私は考えています。それだけ完成させるのが難しいのですよね。
    　だからそんな難しいジャンルに挑んでくれてありがとう、好きなジャンルの小説を書いてくれてありがとう、そんな感謝の気持ちでいっぱいです。
    　これからもどうぞ本格ミステリを書き続けて下さい。ミチル企画に投稿される限り、必ず読みに行きます。手加減なしの頭脳戦を楽しみにしています。
    　それでは、このあたりで。

    E-Mail pass
Re: 2022年08月28日 02時22分39秒
  • いつもお世話になります。ご感想ありがとうございます。

    ＞犯人のミスリードにも使われているところに巧みさを感じました。
    ＞デスノートが事件編にまったく関わっていなかったら、もう少し評価を下げていたと思います。
    ありがとうございます。いや、感想期間中にレスを書く派なので、まだ最終的な評価（点数）はまだ見ておりませんが。
    そもそも「デスノート編」と「事件編」は別々の話として考えていました。当初の構想だと神木が探偵役と真犯人役を兼ねていて、現実の出来事を元ネタに薄暗い妄想を書いていた及川と対決（すれ違いコント）をする話を考えておりました。ただ読者に叙述トリックの種明かしをした後の上手いオチが思いつかず、放置しておりました。そして今回、「あんたのせいよ」を書き終えて、作者自身の心残りがあったようで、「神木のようなサイコパスなら名探偵への対抗心だけで人を殺してもおかしくないよなあ。――せや、後期クイーン問題に利用したろ！」と思い至って「恋する女帝」を書いたわけです。事件編のネタは大昔に書いた短編の流用です。

    ＞まず、不可能状況の提示がない。
    いわゆる不可能興味が無いタイプのミステリだったわけですが、やはりこのジャンルって難しいですよね←
    ＞外部の人間による犯行も否定されていなければならない
    ＞特定の人物を犯人として海底して推理している
    ＞読者によるメタ推理と、作中の人物による客観的事実と証拠に基づく推理が混同
    とまあこんな具合に、付け焼刃でやるジャンルじゃないよなあと今更ながら思ったりしています。

    ＞犯人が仕掛けたミスリードですが、私には不発でした。
    読者を馬鹿にするつもりはありませんでしたが、絵や映像じゃなくて文字だからワンチャン騙されてくれるんじゃね？　と一方で思っていたのも事実です←　まあそういう思惑とは別に、頭の弱い語り部はともかくエリートの神木が気づかないのはさすがにご都合主義過ぎない？　とは作者自身思ったりしておりました。

    ＞ちょっといきなりや過ぎませんか？
    ＞無理矢理感があるように思いました。
    この辺は丁寧に描きたかったです。と言いますか、「あんたのせいよ」が心残りで勢いで書いた話でもあるので、むしろ力を入れるべきはこっちじゃないの？　と反省しております。

    ＞これからもどうぞ本格ミステリを書き続けてください。
    他のジャンルを軽んじてるつもりはありませんが、正直本格ミステリはしんどいです←　「恋する女帝」の後編は過去作のロジックの流用ですが、前半のデスノート編は完全新作のネタとして考えていたネタで、細部まで詰め切れず書き出すことができませんでした。それくらい本格ミステリは重たいです。今回みたいに何かきっかけがない限り、中々腰が上がりません。まあ好きなので、その内またチャレンジするでしょうけど。
    まあ私の話はともかく、庵さんもぜひともまたミステリを書いてください。もっとも、私は選り好みが激しいので、理不尽にブーブー言うかもしれませんが←

    ご感想ありがとうございました。

    E-Mail pass
2022年08月24日 18時41分28秒
 +20点
  • 拝読しましたので、感想を記します。

    本作は前半と後半に分かれる構成になっていると思います。
    あえて名前をつけるとしたら、デスノート編と事件編でしょうか。
    デスノート編はすごく面白かったです。
    デスノートの秘密がバレてしまうんじゃないかというハラハラと、西條さんの思わせぶりな行動にドキドキして、もう夢中で読んでしまいました。
    そして明らかになるデスノートの真相。これには驚きです。
    （〇）で始まるモノローグ（手記？）には完全に騙されました。
    西條さんの思わせぶりな行動の理由も明らかになって、お見事だったと思います。

    しかし事件編は、申し訳ありませんが、あまりのめり込んで読むことができませんでした。
    一番の原因は、前半で明らかになるデスノートの真相が関係しています。
    ネタバレになりますが、この真相によって主人公は殺傷を行なっていなかったことが明らかになる。
    つまり、動物や人に対する殺傷はすべて頭の中だけのことで、実際にはほとんど見たこともない。
    そんな人間が友人の死に直面して、こんなにも冷静でいられるとはとても思えなかったのです。
    西條さんや神木さんはわかります。経験者であることが後で説明されていますし。
    主人公も、デスノートに書かれていることを実行しているのであれば冷静でいられることに納得できたと思います。
    しかし、それがすべて妄想だったというのが真相で、それに非常に納得して素晴らしいと思ってしまった反動が大きかったため、事件編の主人公の冷静さには違和感しかありませんでした。

    西條さんが視覚障碍者というのも、ちょっと？でした。
    そんな人が主人公の崩し字をスラスラと読み解いて、さらにペンの持ち手を指摘することができるのかが不思議でした。

    あと野球のユニフォームについてですが、背中側はベルトを隠す構造になっているのであまり持てるところはなく、犯人は前側を持って引きずったと考えられます。
    それなのに、背中側を刺したというのはちょっと不自然な感じもしました。
    最近のユニフォームはストレッチ性が高いので、ベルトの穴を二つくらいずらしてきつく絞めないと、ベルトを持って引きずった時に確実にズボンは脱げると思います。
    ベルトの穴の観察の時に「ガバガバになっている穴が二つある」とかいう内容だったら、より良かったんじゃないかと思いました。

    それにしても、本作は伏線が丁寧に貼られていました。
    冒頭で神木さんが右手でスリッパを持つところなど、後で読み返して気付いて、素晴らしいと思いました。
    伏線の貼り方については、ぜひ参考にしたいと思います。

    伏線といえば、神木さんがやっていたスポーツはバドミントンよりもバレーボールの方がいいかもと思いました。
    「中学の頃はライトのエースだった」と書けば左利きアピールになるし、背が高くて男子を撲殺できそうな伏線にもなると思います。
    あと、バレーボールは壁打ちなどの時に右と左の両手を使って練習するので、利き手が使えなくても打力はありそうな伏線になるかもしれません。
    利き手と逆の手で撲殺するのって、すごく難しいと思います。少なくとも自分には無理です。

    いろいいろと書いてしまいましたが、デスノートの真相と丁寧な伏線が素晴らしい作品でした。
    執筆お疲れ様でした。

    追記
    使用したテーマは『喜』とのことですが、特に『喜』が扱われている印象は受けませんでした。
    今回、テーマに真摯に向き合った作品もありますので、申し訳ありませんがこんな点数にさせていただきました。

    E-Mail pass
Re: 2022年08月28日 02時22分05秒
  • ご感想ありがとうございます。

    ＞デスノート編はすごく面白かったです。
    ありがとうございます。元々このネタ一本で以前の企画に出そうと思っていたものなので、自信は結構ありました（自画自賛

    ＞主人公の冷静さ
    人身事故の写真を撮ったり火事見物したりしたいとか言ってる頭のおかしい奴なので、死体を見たぐらいで気を失ったりしないでしょう、たぶん←

    ＞視覚障碍者
    視野が狭いだけで全く見えないわけではないですからね。まあ私が想定している彼女のスペックなら全盲でも大抵のことは出来そうですが。

    ＞背中を刺したというのはちょっと不自然
    一応作者の頭の中では、後頭部を殴ってそのままうつ伏せで倒れた後、念のため包丁で背中から心臓を刺して、脇腹もめった刺しにして、身体をあお向けにして床と傷口を接触させて、床に血をつきやすくしたということになっています。

    ＞ベルト
    十数年前に少年野球をやったくらいしか経験がないので、ぶっちゃけその辺はぼかしました。それにこのシーンを書いたのが確か日曜日の17時くらいで、ちゃんと調べる時間もありませんでした（酷い

    ＞利き手と逆の手で撲殺するのって、すごく難しいと思います。少なくとも自分には無理です。
    私も無理です（ぉい　まあ神木の場合は利き手として右手を使っている期間が長いので、実質両利きのイメージです。

    ＞テーマに真摯に向き合った作品もありますので、
    茶化すつもりなんて毛頭もなく、私なりに真剣に「喜」の物語として書いていただけにこのご指摘には相当凹みました。特に前半パートは彼らなりの喜びを前面に押し出して書いていたつもりなので、それが全く伝わっていないと思うとショックです。ああ、何が悪かったのだろうか。たとえフィクションでもおめでたいことを書かないと喜びとして捉えてもらえないのか、「それは喜びでも何でもなく、サイコパスの気持ち悪い勘違い。間違った喜びは喜びとは言わない」から喜びとして受け取ってもらえないのか、単に私の演出、表現力の問題なのか。私がリアルで「他人の不幸で飯がうまい」とか「人の死に無上の喜びを感じる」とか言ったら怒られるどころの騒ぎではないですけど、あくまで小説――フィクションの出来事としてこういうことに喜びを感じる人間を表現していたつもりなので、「これが喜びの物語とかふざけてるでしょ？　他の参加者に申し訳ないとか思わないの？」って言われていると思うとちょっと立ち直れないです。「まだまだサイコパスの表現が足りない」とか「シリアルキラーの表面をなぞっているだけで彼らが抱いている薄暗い感情が伝わって来ない」とか「それっぽくハッピーエンド風にまとめたくらいで喜びの物語とか読者のことバカにしてるの？　もっとちゃんと書いたら？」だったら理解できますけど、あなたの競作企画に対する姿勢は真摯じゃないというのはいくら何でも……。はあ、何でお礼のレスでこんなこと書いてるんだろ。まだまだ至らぬところばかりですね。次回の課題として一から考え直したいと思います。

    ご感想ありがとうございました。

    E-Mail pass
Re:Re: 2022年08月28日 07時22分17秒
  • 自分の感想で不快な思いをさせてしまって申し訳ありません。
    ＳＮＳで呟いておられたので、おそらく自分の感想だとは思っておりました。

    テーマに真摯に向き合っていなかった、という風に決めつけて書いてしまったことは大変申し訳なく、反省しております。
    今までの企画でも、同様の感想を書いているので、不快に思われた方が沢山いらっしゃったのだと思います。
    皆様にもこの場を借りて謝罪したいと思います。

    要は、作品の内容を超えて、作者さんの行動に言及してしまったのがいけなかったのだと思います。
    自分も、作品については何を言われても仕方がないと思っていますが、「作者が」と言われるととても嫌な気持ちがします。
    今後の感想の書き方には十分気を付けていきたいと思います。ご指摘ありがとうございます。
    まだまだ未熟な人間ですので、また間違いをするかもしれませんが、こういう交流を通して成長できたらと思います。

    自分が書いた感想の「作者が」のところを「作品が」に書き直すと、例に挙げていらっしゃった「まだまだサイコパスの表現が足りない」という感じになると思います。
    今回の件は、本当に申し訳ありませんでした。これからもよろしくお願いいたします。

    E-Mail pass
Re:Re:Re: 2022年08月28日 09時48分34秒
  • ご丁寧に返信ありがとうございます。

    基本的に読者さんが何を思おうが読者さんの自由ですが、それを全て受けとめられるほど素直でも人間が出来ているわけでもないので、今回反論（逆ギレ）しましたｗはじめましての方だったら反論せずに消そうとも思いましたが、普段仲良くしていただいているつとむューさんだったので、そのままレスを投稿しちゃいました。これからもぜひ仲良くしてやってください。何卒何卒。

    E-Mail pass
2022年08月24日 01時35分25秒
 +20点
  • 　読了しました。

    　主人公のデスノートの設定がすごくよかったです。後からこれはただの嘘日記って判明するんですが、こういう裏でこそこそやってる陰キャって読んでてすごくわくわくします。
    　表向きどうしようもない自分だけれど、裏では色々画策していたいんですよね。世の中に対する不満みたいな感情もどうしても持ってしまうから、色んな人に不幸をまき散らす存在でもありたくて……みたいなまさに陰キャ的考えでこうした人間に憧れたこともあれば、自分で小説にしたこともあります。
    　そんな自分から見てこの主人公の造形は非常に魅力的で、デスノートのくだりも楽しんで読んでいました。順位を争う身な訳ですが、何度「（こんな作品がライバルにあって）これはまずいぞ」と思ったか分かりません。

    　途中、このデスノートが完全にただの嘘日記だと発覚する訳ですが、これは確かな驚きがありました。
    　いやその方法でバラバラにはならんやろとは思ったんですが、じゃあこの日記が嘘日記だと気づけたかというとそうではなく、言っちゃなんですがアマチュアの作品だしこのくらいの矛盾はあり得るよなくらいに読み進めてました。大変失礼しました。
    　この主人公を気に入っていただけに、嘘日記と死ってちょっとがっかりするところもありましたが、他に犯人がいるということでそちらを楽しみに読み進めました。神木さんがそれだったのはまあ他にいないよなっていうのがあったので意外性はなかったですが、ただキャラクター的になかなか魅力的というか、こういう子が裏で殺人鬼なのは非常においしいので割と嬉しかった印象があります。

    　最後の謎解きはちょっと込み入っていて、ロジックや状況が理解できなかったことは正直に告白しておきます。
    　自分の読解力不足の可能性もありますので、他の人の感想と見比べて取捨選択を。
    　あとヒロインなんですが、あんまり女の子っぽくないしゃべり方などからちょっと可愛いと言う印象はあまりなかったかもしれません。格好良くはありましたが。好みのヒロインという印象はあまりなく、まあそれこそ好みでしかありませんがこれも正直に書いておきます。

    　叙述トリックがばっちり嵌っていたりなど、高度な小説には違いないと思います。百枚でこれをまとめるのは苦労しただろうと察するとともに、その苦労が報われた良い小説になっていることを保証いたします。

    　創作お疲れ様です。これからもがんばってください。

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Re: 2022年08月28日 02時20分29秒
  • ご感想ありがとうございます。

    ＞主人公のデスノートの設定がすごくよかったです。
    ＞嘘日記だと発覚する訳ですが、これは確かな驚きがありました。
    ありがとうございます。正直この仕掛けには結構な自信があって、ミステリを読みなれていない皆さん方ならまず騙されるだろうと踏んでいました←
    元々は前半部分だけで一つの短編――神木が真犯人役と探偵役を兼ねて、嘘日記の作者である及川と対峙する話として以前の企画に出そうと思っていたのですが、叙述トリックをばらした後の話の終わらせ方に困って、封印していたネタだったりします。

    ＞アマチュアの作品だしこのくらいの矛盾はあり得るよなくらいに読み進めてました。
    そういう点もあるので、ミチル企画の集まりの皆さんはまず騙されるだろうと思っておりました（ぉい

    ＞こういう子が裏で殺人鬼なのは非常においしいので
    先述しましたが、元々は真犯人である神木がデスノートを発見して、嘘日記を書いている及川と攻防戦をする予定だったので、不思議ちゃん成分があるお嬢様キャラとして設定しました。

    ＞ロジックや状況が理解できなかった
    この辺に関しては申し訳ないと言いますか、ぶっちゃけネタを練る時間が無くて大昔に書いたトリックを流用したので、枚数のわりに詰め込み過ぎてしまいました。

    ＞可愛いという印象はあまりなかったかもしれません。
    巨乳だから許して（ぁ

    ご感想ありがとうございました。

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2022年08月22日 10時17分12秒
 +30点
  • 恋する女帝、読ませていただきました。

    ＞最初は、蟻だった。

    なんじゃそりゃ。と思いながら読んでいると……その驚愕の真実に開いた口が塞がりませんでした。

    驚愕。そう、この作品を一言で表すと驚愕のオンパレードでした。今回の企画で最も驚かされた作品です。特に中盤で明かされた秘密はとてつもないレベルの衝撃が発生しました。

    殺人鬼の主人公がそのデスノートを名探偵に発見されてしまい、そこから腹の探り合いが始まる。この時点でワクワクできる構成だと言えるでしょう。

    しかし、問題なのがこの主人公です。最初は最低だと思いました。しかもほぼ最大枚数の作品。百枚もの枚数をこんな主人公と付き合わなければならないのか？　無理だ。これはもう、読むのをやめよう。自分も直前までそう考えていました。同じように思う人も多いのかもしれません。


    ですが、そこを耐えて頑張って最後まで読んで欲しい。思わずそう宣伝したくなる作品です。


    正直、主人公が最低なのは最後まで変わりません。ですが許せる最低と、許せない最低の境界線というものがあって、最終的には自分は前者に落ち着きました。むしろ、一周回って可愛く見えてきたまであります。

    かなりリスキーな手法を使った作品ですが、自分も似た手法に挑戦した部分もあるので、推したくなる作品であったりします。

    序盤から中盤まで最強レベルの面白さを誇る本作でありますが、後半は惜しいと思った部分が多いのも事実です。というより、恐らく自分がこの作品の適正読者で無かったのだと思われます。

    ラストはこれまでのネタ晴らし合戦が始まるのですが、これがその、とても長文が多くて疲れてしまったのです。結果、ワクワク感よりも疲労感が上回ってしまいました。

    自分も同じ失敗をしているので大きな声では言えませんが、この部分はもう少し短く、もしくは分かりやすく整理する事はできなかったのか？　と思う部分はあるかもです。

    ですが、よく考えたらこの作品はミステリーと呼ばれるジャンル。だったらこの部分は詳しく説明しなければならない。つまり、これはもう回避不可能な構成だったとも言えます。

    ミステリーというジャンルの難しさをよく理解させられた作品でした。結果として恐らく涙が溢れるはずだったクライマックスは疲労困憊の状態だった為、そうはなりませんでした。
    ですが、もちろん悪いラストではありません。多少は急ぎ足で唐突な印象はありましたが、よくまとまっていて良い印象のラストと言えるでしょう。

    そして、一つ思ったのは今回の企画はミステリーが多い印象でした。つまり、ミステリーが好きな人が多い。という事は、今回、この企画に限ってのみミステリー好きの人によるミステリーボーナスフィーバー（自分が勝手にそう名付けた）が発生して、大量の加点を得られる可能性も秘めている作品だと思いました。その部分を考慮すれば、個人的に優勝候補と言われるタイプだと思います。

    あの長文もミステリー好きから見れば恐らく生唾ものなのでしょう。ミステリーに拘る人があのネタ晴らし合戦をどう判断するのか？　それが今作の決め手であると思います。

    また、非常に面白いギミックが使われており、どこかで聞いた事のある話が出てきます。どうやらバッドエンドだったようですが、知りたかった結末が分かって満足です。

    それでは失礼します。驚きが溢れた一作をありがとうございました。

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Re: 2022年08月28日 02時19分53秒
  • ご感想ありがとうございます。

    ＞特に中盤で明かされた秘密はとてつもないレベルの衝撃が発生しました。
    ＞序盤から中盤まで最強レベルの面白さを誇る本作でありますが
    ありがとうございます。いや、本当は元々前半部分だけで一つの短編（西條は登場せず、神木が探偵役と真犯人役を兼ねて、神木と及川の攻防戦）として考えていて、以前の企画で出そうと思っていたのですが、中々上手い落としどころが思いつかず、お蔵入りしていたネタでした。

    ＞むしろ、一周回って可愛く見えてきたまであります。
    中二病こじらせていると思うと、ホントいじらしいやつですよ、ええ←

    ＞自分も同じ失敗をしているので大きな声では言えませんが、この部分はもう少し短く、もしくは分かりやすく整理する事はできなかったのか？　と思う部分はあるかもです。
    正直ネタを詰め込み過ぎた感は作者としてもあります。そのせいで細部が大分荒いですし。

    ＞結果として恐らく涙が溢れるはずだったクライマックスは疲労困憊の状態だった為、そうはなりませんでした。
    神木が最後襲い掛かってきたり、代わりに及川が殺されかけたりするエピソードなんかを考えておりましたが、枚数上限で無理でした（ぁ

    ご感想ありがとうございました。

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2022年08月21日 18時58分53秒
 +20点
  • 恋する女帝、読ませて頂きました。
    以下、がっつりネタバレ感想です。





    【一通り読んでみての印象】

    　様々なギミックが詰め込まれたミステリで楽しめました。よかったです。
    　とはいえ、ちょっともったいないな、と感じる部分がいくつかありました。それについてはストーリーという項目で話します。

    【タイトル】

    　興味のそそられるタイトルでした。

    【書き出し】

    ＞最初は、蟻だった。

    　この一文は秀逸ですね。いったい何のことだ？　と興味をそそられました。

    【ストーリー】

    　前半と後半で、良くも悪くも別の物語を見せられている感覚がありました。

    　前半では、デスノートを巡る攻防。ここはめちゃくちゃワクワクしました。というのも、僕は「刑事コロンボ」「福家警部補シリーズ」「碓氷優佳シリーズ」「城塚翡翠シリーズ」といった倒叙ミステリが大好きだからです。縦書きノートゆえの推理とか面白く、にこにこ顔で読んでました。

    　ところが、です。指紋という反則技であっさり解決。正直、萎えました。しかし、そこからの意外な展開には目を見張るものがありました。なるほど、ノートは現実をトレースした創作、妄想だったと。ノートの記述を疑って読むと、確かにおかしいところは多かったです。しかし待てよ、と。（〇）の章で語られている話は、だとすると何なのか。その疑問に答えてくれるのが後半からの展開でした。

    　後半からは割とストレートな本格ミステリになっていました。

    　事件が起きた段階で、犯人候補が一人しか残されていないので、読者視点からは、犯人がまるわかりとなってしまうのですが、今作で問題になるのはフーダニットではなく、謎が紐解かれていく「ロジック」。ロジックの美学で勝負しようという、作者さまの覚悟を感じました。

    　今作では、多重解決の要素があり、その点も楽しめたポイントです。

    　神木の推理では、犯行現場が裏口である（実際は違うわけですが）というポイントに目をつけ、「いったいなぜ犯人は、これほど手間のかかる偽装工作をしてまで、裏口から目を逸らせようとしたのか。また、なぜ犯人は裏口をトンボでならしたのか」という謎に明瞭な理屈をつけています。地面の痕から犯人が特定される可能性のある人物は、この学校において、杖をつき足を引きずっている西條しかありえない。そんな結論を導き出しました。確かに筋が通っています。

    　とはいえ、その推理は、西條の障害の開示によって、あっさりと一蹴されます。本格ミステリでは、読者に伏せられた障害を明かすことで、推理の否定をする文脈があるのですが、今作は、きっちり伏線が貼られているのでフェアになっていたと思います。

    　神木の、間違った推理を促す殺人計画には、やや苦しいところが多かったように思われます。

    　まず杖を突き足を引きずって歩くような女子高生が、体格がいいであろう野球部男子の死体を何度も動かす偽装をした、というのは、少し考えづらいところ。また、神木の計画を成立させるには、西條にアリバイがないことが絶対条件。下駄箱の手紙によって、校舎裏に導いたようですが、西條が、その手紙通りに動く保証はなかったはず。というか、来なかったら五分くらいで離れるのでは、と思いました（知らない人からの呼び出しですし）。そのあと主人公に会われれでもしたら計画は一発でご破算でした。また、普段の人通りが少ないとはいえ、裏口に人がタイミング悪く来てしまったら一発アウト。そもそも、封鎖されているわけではない学校内での殺人（＋手間のかかる偽装）をするという時点で、リスクが高すぎます。神木はリスクを背負って名探偵をはめる計画を実行したわけですが、あまりにも運に頼りすぎではないかと思いました。奇跡的な幸運が重なって初めて成立する計画なので、あまり上等なものとは思えませんでした。運の要素が強い計画は、本格ミステリ的な観点でいうと、やや苦しく感じられます。

    　また、神木が推理を披露する前に、神木の推理が間違っていることが読者にはわかってしまっているので、名探偵である西條の否定のロジック――その鮮やかさや効果が薄まってしまっていると思いました。

    　神木は屋上で待ち構えていたわけですが、凶器を持ったままというのは、ちょっと舐めプしすぎではないかとも思いました。自分の天才的な犯行を暴いてほしい、という欲求があったのかもしれないですが、それならそれで、もっと真剣に名探偵に立ち向かってほしかったです。現場の状況を知らないはずなのに、現場の状況をぺらぺらと喋り、推理を展開している時点で、「わたしが犯人です！　捕まえてください！」と言っているようなものではあったわけですが……。ベルトの指摘がなくとも、犯人が自供に等しい発言をしてしまっているのは、やや問題かと。

    　それから、ボールによる撲殺の前に別のもので殴った、というのも、鑑識が調べればわかってしまいそうなことなので、神木の名探偵をはめる計画は、やや杜撰に感じられました。

    　あと割とどうでもいい指摘になりますが、


    ＞ゲソ痕

    　たぶん知らない人にも意味は伝わっているとは思いますが、「足跡」でいいんじゃないかと思いました。僕は一瞬、なんのことだっけ、ってなりました。

    　いろいろと細かい指摘をしましたが、犯人の計画に偶然の要素が入り込んでいるタイプの作品がないわけではないです（それで上手く成立している作品もある）。しかし御作の場合は、その要素がちょっと多いように感じたので、気になりました。


    【キャラクター】

    　よかったです。皆、ちゃんと印象に残りました。

    　実は僕、小学生のときに「デスノート」と書いたノートを持ち歩いていたことがありまして。先生に怒られ、没収されました……はい、黒歴史です。だから主人公の気持ちは結構わかります笑

    　西條の造形はよかったですね。深みを感じました。あくまで僕は、単体作品として御作を評価しているつもりですが、彼女の過去の失敗を知っているという事実は消せないので、二作並べて、より深みを感じているのかもしれません。

    【ラスト】

    　後味がいいですね。やや性急な印象を受けましたけど、嫌いではないです。

    【本作の強み（セールスポイント）】

    　これは僕の見方ですが、「ワトソン誕生の物語」として楽しめました。やはり名探偵にはワトソンが必要なのでしょうね。そこを推したいです。

    【総評】

    　よかったです。ただ、100枚という上限枚数が足を引っ張っている感じがありました。登場人物の心情の変化、読者に考える余地をあたえる時間、トリックとロジックの詰め、構成、まだいじれるところはありそうです。しかし上限100枚では無理でしょう。逆に言うと、100枚でこれだけのことができるのですから、凄まじい才能と構成力を持っているのだな、と思いました。ここで使われているアイディアを煮詰めれば、すばらしい長編本格ミステリができるのではないかと思いました。草葉の陰から応援させて頂きたいです。

    　以上です。執筆おつかれさまでした。

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Re: 2022年08月28日 02時19分11秒
  • ＞ところが、です。指紋という反則技であっさり解決。正直、萎えました。
    本当は前半だけで４万字くらい書けるネタはありましたが、枚数上限の都合で反則技を使って省略しました。本当はもっと丁寧にプロバビリティの犯罪を書いたり、探偵と犯人のすれ違いコントをもっとやりたかったです。

    ＞神木の、間違った推理を促す殺人計画には、やや苦しいところが多かったように思われます。
    ＞また、神木が推理を披露する前に、神木の推理が間違っていることが読者にはわかってしまっているので、名探偵である西條の否定のロジック――その鮮やかさや効果が薄まってしまっていると思いました。
    この辺はもっと丁寧に詰めたかったですね。枚数上限も理由の一つですが、それよりも締め切りまでの

    ＞それから、ボールによる撲殺の前に別のもので殴った、というのも、鑑識が調べればわかってしまいそうなことなので、神木の名探偵をはめる計画は、やや杜撰に感じられました。
    これって実際はどうなんですかね？　作者としては、ボールで何度も頭を叩くことで真の凶器の痕跡を上書きできると考えていたわけですが。

    ＞ゲソ痕
    これは後で直そうと思って、直し忘れました。それだけ時間が足りなかったんです！←

    ＞先生に怒られ、没収されました……はい、黒歴史です。だから主人公の気持ちは結構わかります笑
    作中の語り部が高校生なのを考えたらかわいらしいものですよ、ホント（ぁ

    ＞ただ、100枚という上限枚数が足を引っ張っている感じがありました。
    実質アウトラインだけというか、普通に書いても８万字、サブエピソード盛り込んだら１０万字以上は書ける内容ですからね。ただまあ正直なところ前半と後半を別のエピソードとして分けて書いた方が面白そうですけど。

    ご感想ありがとうございました。

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2022年08月20日 01時16分56秒
 +30点
  • こんにちは。拝読いたしました、簡単ではありますが感想を書かせてくださいませ。


    大変面白かったです。引き付けられるように読んでしまいました。
    普段ミステリーをほとんど読まないためか、それとも作者さまの腕前が卓越していらっしゃるためか、仕掛けられた罠にことごとく掛かりまして、そのたびに驚くやら感心するやら、とても楽しい読書になりました。

    名探偵を破滅させるという神木さんの殺人の動機がいいですね、それを告白する場面が印象的でした。

    西條さんは意外にも事件を引き寄せる体質（？）であることを重荷に思っていたのですね。浮世離れしたこの人物がにわかに現実的になりました。

    最後まで楽しく拝読いたしましたが、ラストの「死にたい」→告白オチは、個人的にはイマイチかなと思いました。僕が西條さんにすでになんとなく惹かれているのは分かっているので、このコンビの未来を仄めかすようなラストがよかったなと思いました。西條さんだけでなく僕もどちらかというと浮世離れしている印象ですが、なんだかここだけが急に普通の高校生になってしまったようで、少し違和感がありました。しかし、

    ＞悪いが無理だ。デスノートとかいう薄ら寒い妄想を書いている変態とは、正直一緒になれない

    この返事に納得ですｗ　西條さんは正しい。


    あと気になったのは、最後のほうは推敲不足といいますか、急いで書いた感があるといいますか、前半部に比べると少し雑な印象を持ちました。
    一番最後の投稿であるのを考えれば、本当に急いでお書きになったのかもしれませんけれど……。


    あまり実のない感想で恐縮です。
    あくまで個人の主観による感想ですので、このように読むひともいるんだな程度にお受け取りくださいませ。

    楽しい作品をありがとうございました。乱文失礼いたしました。


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Re: 2022年08月28日 02時18分37秒
  • いつもお世話になります。ご感想ありがとうございます。

    ＞大変面白かったです。
    ありがとうございます。頑張って書いて報われました(ぁ

    ＞仕掛けられた罠にことごとく掛かりまして
    実はミステリを読んでいる方にとっては「またあのパターンか」なネタだったりします(ぁ　日記とか手紙とか手記が出てきたら今後は気を付けた方がよいですよ←

    ＞名探偵を破滅させるという神木さんの殺人の動機
    いつかこういう非現実的な動機を書きたかったのですが、ようやく書くことができました

    ＞重荷に思っていた
    何か以前に痛い目にあったみたいですね

    ＞告白オチは、個人的にはイマイチかなと思いました。
    この辺はもうちょっと丁寧に書きたかったんですけどね。でも枚数も時間も足りませんでした←

    ＞この返事に納得ですｗ　西條さんは正しい。
    まあ冷静に考えたら、無理ですからね。顔もイケメンじゃありませんし（ぇ

    ＞最後のほうは推敲不足といいますか、急いで書いた感があるといいますか、前半部と比べると少し雑な印象を持ちました。
    最初の一万字くらいは丁寧に書いてましたけど、残りは〆切二日前に四万字書いて、あと三時間というところで書きあがって、三時間使って一万字削ったので、こんな感じになりました。まあでも前編丁寧に書いてらたぶん八万字くらい必要だと思うので、結果オーライかなとも思っております。色々とごめんなさい←

    ご感想ありがとうございました。

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