殺人事件

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 内容に理不尽な暴力を含みます。ご注意ください。


 キ●●●小説ばかり書きやがって、この作者、マジで頭おかしいんじゃねえのか? 小説書かせてる場合じゃないだろ。病院行かせろ。
 家から出たことがなく、社会経験のないニート君乙。駆け出しじゃない長く書いてる作家で、ただの異常者のわけねえだろ。常識を十分弁えてるからこそ、常軌を逸した設定や描写ができるんだよ。嘘だと思うのなら、ただ常識がないだけのお前が小説を書いてみろよ、クズ。
 いきなりネット上でそんな風に人を罵倒する人間に、クズ呼ばわりされたくねえよ、クズ。クズが擁護しているんだから、その作家もクズに決まってるな。はい論破、この話終わりな。
 お前たち馬鹿の口論に、高梨先生を巻き込むんじゃねえよ、馬鹿ども。クズはお前たちだけだろ。先生はサイン会でお会いしたけど、すごい気さくでいい人だったよ。一緒にいた奥さんも可愛かった。
 奥さんは関係ねえだろチ●カスホ●野郎。
 ここのスレ民、沸点低すぎ。言葉遣い悪い人多すぎ。普通にこええよ。

 〇

 私には、敬愛する妻と娘がおり、私には勿体ないといつも感じさせてくれる。
 妻は、小説家である私の仕事の苦労を労わってくれ、その癒しは私が最も必要とすることであるし、しかも自分の苦労は決して私に見せまいとする器量の持ち主だ。
 天真爛漫でマイペースな娘の笑顔を、私は大好きで、学校で友達にいじめられたり、リレーで失敗したりすると、びっくりするぐらい泣くのだが、その翌日には強い態度で友達と接したり、走る練習をしたりと、切り替えが早く、心の強い面もあった。
 二人の存在に、どれほど励まされて来たことか? 私が一日も休まず仕事を続けられるのは、間違いなく彼女たちのおかげなのだ。
「じゃあね、パパ。行ってくるね」
「うん。ちゃんと、ママの言うことを聞くんだぞ」
「わかってるもん。パパこそ、ちゃんとご飯食べないとダメだよ」
「まなちゃんが二日間、にんじん残さないなら約束するよ」
 真奈美は真剣な表情で言葉に詰まった後、ゆっくりと頷いた。この表情を見せる娘の強さを、私は知っている。
「それじゃあ、あなた」
「うん」
 私は妻と娘にキスして、マンションの自宅から送り出した。
 家で一人だけになるのは久しぶりだった。それでも思っていたほどの戸惑いを感じないのは、普段から妻が私に、一人で集中できるよう、ひそかに気を回してくれていたからなのだろう。こんな風に、遅れて気付くのだ。妻の優しさに、いつも。
 今日の調子ならば、原稿は進みそうだ。柔術部時代からの日課である筋力トレーニングを終えたなら、早速取り掛かろうと思っていた。
 しかし、不意に鳴ったインターフォンが、私を玄関口へと呼び出した。ドアの向こうに立っていたのは、忘れ物を取りに戻った家内ではなく、予定にない来客で、少し太ったおばさんだった。誰だろうか? 会ったことのある人ではなかった。
 話を伺うと、その人は教育委員会の者であり、用事がある、話をしたいと言う。兎も角、寒いので、家の中へ入ってもらった。座ってもらって、私も座った後で、何か飲み物をお出しした方がいいのだろうか? と思い、膝をこすり合わせた。
 一家に唯一の男子でありながら、私は、現実の時間の流れに置き去りにされることがしばしばあるために、家の外交などをほとんど妻へと任せきりにしていた。そういうところを、何とも思っていないわけではない。私なりに、近所づきあいをきちんとして、娘の小学校などから、亭主もしっかりしている良い家庭だと思われたい。そんな願いを、密かに抱えてはいた。
「あの、それで、どういった用件なのでしょうか?」
「私は、教育委員会の者ですけどっ」
 その人が最初から興奮した様子なのには、面食らう他なかった。息巻いた彼女に対し「はあ」と私は続きを促す。「それはさっき聞きましたが」なんて言ってはいけないのは、流石にわかっていた。
「妻ではなく、僕へのご用事なのですよね? しかし……」
 私の言葉を遮り、おばさんはまくしたて始めた。
「そうですよ。当然じゃないですか。あなた、ご自分のことに対し、とんと無自覚でいらっしゃるんですね。自分の世界に籠って、小説を書き、そうやって誰のことに対しても責任を負わずに、気楽に生きていらっしゃる方は、流石言うことが違いますね」
「はあ」
「これを御覧なさいよ。それとも、見覚えがないですか?」
 おばさんがバッグから取り出したのは、去年に出た、私の二番目に新しい小説の単行本だった。背表紙に私の筆名も刷られており、もちろん、見覚えが無いわけがなかった。図書館の印の存在が気にはなったが。
「見覚えがあるの? ないの?」
「はい、あります。自分の小説ですから」
「あのね、そんなことは、いちいち言わなくたっていいから」
 あきれ果てたように彼女は言い、立て板に水で再び話し始めた。
「この小説のね、この部分よ。いい? 読み上げますよ。『俺はたかしの顔に膝蹴りを食らわせて言った。調子こいてんじゃねえこのちんぽこ糞野郎』。問題がありますわよね? ないですか? 問題ないですか? え? どこが問題か、ご自分ではおわかりなれない? 言ってごらんなさいよ、わかるなら、どこが問題か」
「登場人物の行動や台詞が、子供の教育上よろしくないですね」
「そうでしょうが。あなたね、小さい娘さんもいるのにねえ……とにかく、そういうことだからね。そういうことですからね! さっきからボーっとして、聞いてるの? 聞いてないの?」
「いえ、はい」
「はい、わかりました。あなたが、事の重大さを理解していないことが、はい、わかりました。いいですか、早急にあなたの責任で、出版を差し止めて下さい。いえ、差し止めなさい。これは、人の心を持つ者の義務よ。わかったのよね!?」
 その人は最初から、目の前に私がいるのにも関わらず、まるでこの世界に一人だけで喋っているかのようだった。私は立ち上がり、玄関の方へ行き、念のため鍵が閉まっていることを確認した。部屋に戻ると、おばさんは興奮してかいた汗をハンカチで拭っており、ほぼ編集者に座って貰うためだけに存在している椅子に、腰かけていた。
「本当に、すみませんでした」
 私はおばさんの毛髪の頭頂部付近のところを掴み、その顔面に膝蹴りを叩き込んだ。「この金玉糞野郎」
 私はそのままおばさんを引きずって歩き、顔を仕事机の角に三回打ち付けた。
「調子こいてんじゃねえー」
 おばさんは鼻が潰れた上前歯を飲み込んだことにより一時的に呼吸が塞がり、パニックに陥っていた。
「殺すぞ」
 私はおばさんに背後から抱き付き、そのままジャーマン・スープレックスをきめた。
 私は立ち上がり、仰向けで何故か手をばたばたさせているおばさんを尻目に、携帯で電話をかけた。
 すぐに、担当編集の末永さんが家を訪れた。『僕は名前の通り、作家さんに末永く一緒にやりたいと思われるような編集を目指しているんです』とかつて語った、少し暑苦しいタイプの男だった。しかし、デビューから今年で十二年目の付き合いになる中で、私が編集に対し不満を覚えたことは一度もなかった。
「高梨先生、どなたなんですか、そちらの方は? 血か出ているじゃないですか。すぐに病院に……」
「この人は、教育委員会の人で、僕の小説の内容が教育に良くないとおっしゃ」
 次の瞬間、末永さんが飛びあがり、お尻でおばさんの顔を押し潰した。「この便器カス野郎」
 末永さんはおばさんの左腕を取り、腕ひしぎ十字固めをきめた。「シチューの具になるか」
 おばさんのタップを見て末永さんは立ち上がり、垂直落下式パワーボムをきめるためにおばさんを抱えあげ、垂直落下式パワーボムをきめた。「殺すぞ」
 どうやら、尋常でない物音を聞いてか、近隣住民が通報したらしく、二人の警官が部屋を訪れ、私と末永さんはやむなく両手に手錠をかけられた。
「どうして、こんなことをしたんだ?」
 警官が聞くので、私は「この人が僕の小説の内容が教育によくないと言ったんです」と言った。「このケツ穴野郎」警官は拳銃を抜いておばさんの尻の穴を6つ増やした。
「殺すぞ」
 もう一人の警官がおばさんにチョークスリーパーをかけ、首をへし折った。
 おばさんは力なくうな垂れ、それきり少しも動かなくなった。あんなに元気だったおばさんが……。
「やりすぎちゃうんけ」
 玄関から娘が入って来て言った。
「やりすぎちゃうんけ」
 玄関から妻が入って来て言った。
「いや、でも」
 私は言った。
「今すごくいいことをした感じがしない?」
 その場に居た6人が誰からともなく盆踊りを始めた。おばさんの死体を中心に、舞った。僕は『盆踊りのワルツ』というタイトルを思いつき、踊れば踊るほど、その構想が広がっていくのを感じた。
点滅信号

2018年12月30日 23時09分39秒 公開
■この作品の著作権は 点滅信号 さんにあります。無断転載は禁止です。

■作者からのメッセージ
◆テーマ:冬の殺人事件。
◆キャッチコピー:うちではこの時期もう、春もの仕入れているんですよ。
◆作者コメント:お手柔らかに、よろしくお願いします。

2019年01月14日 22時16分55秒
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