天気は良いけど落雷にはご注意を

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「ねぇねぇ、黛くん、黛くん」

 めずらしい事もあるものだ。
 昼休みに教室で一人、玉子サンドをくわえながらスマホのアプリ『フライトシミュレイタ24時』を眺めていた俺に和泉いずみが声を掛けてきた。このアプリは世界中のフライト中の飛行機の位置情報がリアルタイムで見れるもので、便名や行き先まで表示される優れものである。まぁ、GPSを搭載していない飛行機や政治的、軍事的なものまではさすがに表示されないけ――って話がずれた。
 そうそう和泉いずみ。名は体を表すとはよく言ったもので、初めて聞いた時は親のセンスを疑ったが、本人自身もやっぱりちょっとおかしい……というか、掴みどころがないというか。
「ねぇねぇ、黛くん、黛くん」
 全然親しくもないクラスメイトから急に声を掛けられて不審がる俺の顔なぞ物ともせずに、和泉いずみはクリっとした大きな瞳をキラキラッと輝かせながら距離を縮めてくる。セミロングの黒髪を右耳の上でピンクのヘアゴムで縛っている。でもなぜか左側は縛ってなくて、代わりに寝ぐせがついている。謎だ……だったら両方縛れよってツッコむべきなのか。
「ねぇねぇ、黛くん、黛くん」
 和泉いずみが首を左右に傾けながら更にレンジを詰めてくる。この世の全てに疑問を感じていますと言わんばかりに、こいつの首は常にどっちかに傾いている。首が真っすぐな状態は……うん、記憶にない。もしかすると学生証の写真も首が傾いているかも。
「な、なんだよ……」
 いぶかしげに返事をすると、ニコッとした唇の奥に八重歯がチラリと見えた。
 俺が知っているかぎりで和泉いずみはいつも教室で一人ぼっちでいる。が、別にいじめられているわけではない。独特でマイペースだが我が強いわけではないし、他人に干渉もしない。周りも害がないことを分かっているから、ちょっかいを出したりしないのだ。そんな和泉いずみがなぜか俺に声を掛けてきた。
「あのね、ちょっと質問があるんだけど。この前の現社の授業で為替の話が出たでしょ。覚えている?」
「ああ……円高とか円安とかって話?」
「うんうん。貿易摩擦とか為替の話から株とか相場の話になって、黛くんが趣味で為替トレードやっているからって、先生に代わって円高とか円安とかドル円とか説明してくれたでしょ」
 そう、俺は小学生の頃から貯めたお年玉を資金に、FXでデイトレードをしている。中三の冬から始めたのでもう一年半になる。
 戦績は……微増はしているが、時給で計算すると余裕で最低賃金を下回っているので偉そうなことは言えない。親との約束でトレードできる時間帯が決まっているせいで、どうしても勝負しきれないのが実情だ。
 平日の夕食後から深夜零時までが、トレードを許されている時間。この条件は、親の名義で証券会社と契約して取引させてもらっている限りは絶対順守なのだ。
 土日は、土曜の明け方から為替が休みに入ってしまって月曜の早朝まで動かない。なので土日は、大抵本屋でFXや投資の参考書を立ち読みしまくって勉強をしている。
 ネットにもこの手の情報は溢れているが、盛っている奴とかエアプとか、平気で改ざんしている奴とかいるのであんまり参考にしていない。真面目にそれっぽいことが書いてあっても、大抵はどっかの本の受け売りだし。有名なトレーダーのセミナーなんかはかなり興味があるけど、有料だったり、未成年は駄目だったりしていまだに参加したことはない。
 そんな俺がこの前の授業でうっかり知識を披露してしまったのだ。
「今まではニュースで1ドルいくらってやっていても何も感じなかったのに、黛くんの話を聞いてから世界が変わっちゃった。世界中の投資家のやり取りで相場が目まぐるしく動いていて、それを基準に世の中が動いていて、世界を動かしているのは実は投資家なんだって話、あたし感動しちゃって!」
「お、おう」
 和泉いずみの鼻息は荒かった。
 こんなにもいきいきと話す和泉いずみを見たのは初めてだし、ちょっと近いし、かなり食い気味だし、正直若干びびったけど悪い気は……しないな。
「それでね、あたしも興味が湧いてきて調べ始めたんだけど、ちょっと疑問が出てきちゃって。もし良かったら黛くんの分かる範囲で教えてもらえないかな?」
 もしかしたら、誰かが何か聞いてくるかもって思ってはいたけど、まさか和泉いずみが来ると思わなかった。
「もちろん構わないよ。あ、ちょっと待って……さぁ、どうぞ」
 俺は残りの玉子サンドを一気に口に詰め込んだ。
「えっと、チャートっていうんだっけ? 線が上に行ったり下に行ったりしているけど、どうして反転するの?」
「んっ?」一瞬、質問の意味が理解できなかったけど、多分――
「それは買い注文と売り注文の量がひっくり返るからだよ」
 俺の回答に和泉いずみは思いきり首を傾げた。
「うーん……それは原因、過程、結果で言えば過程にあたるでしょ。あたしが聞きたいのは原因のほう。だって、イケイケの雰囲気の中で突然V字のように反転するの変でしょ?」和泉いずみは人差し指で空にVの字を書いて口を尖らせた。
「例えば上昇していたらみんな買うだろうし、現に買っているから上昇しているんでしょ? 流れに逆らって売ろうって人もいるんだろうけど、その人達の数が買っている人達の数を上回らなければ反転しないわけだよね。それに仮に総数で上回ったとしても、緩やかなカーブを描いて反転しそうなものなのに、どうしてあんなにポッキリと折れちゃうの? ……なんで?」
 喋りながら和泉いずみの頭はまだ首の座ってない赤ん坊みたいに左右に揺れまくり、それが気になって仕方がない。ヘッドロックを極めたい衝動をグッとこらえつつ、俺は机の中から筆記用具を取り出して机の上に広げた。
「これはいくつかの要素が絡まっているからさ、上昇トレンドを例にしてひとつずつ説明するよ。まず一つ目な。買い注文が積もり積もって、下がるのを止めているようなイメージを持っているみたいだけどそれは違うよ。それまでに買い注文がいくらあったとしても、それは値段(プライス)の下落を止めるストッパーにはならない」
 口では一つ目の説明を続けつつ、ノートには二つ目の説明で使う表を書き始めた。
「買いでも売りでも注文が成立する過程でプライスの変動が起こるわけ。決して買い注文が100個貯まっているから、売り注文が101個になるまで下がらないとかそんな仕組みではないよ。てか、そもそも買い注文の数と売り注文の数ってのは必ず同数だからね」
「あれっ? さっき買い注文の数と売り注文の数がひっくり返るからだよって言ってなかったっけ」
「まぁ、これ見てよ」
 あえて質問をスルーして表を和泉いずみに見せる。6×3の表の最初の行には買い、プライス、売りの三つが順に並び、買いと売りの列の下枠にはそれぞれ適当に一桁の数字を記入した。真ん中のプライスの列には102円から98円まで1円刻みで書いていった。
「これが二つ目。プライスが変動する仕組みなんだけど、そうだな……和泉さんはゲームとかこれ面白そうって直感的に買うタイプ? それとも事前にどんなゲームなのか確認して、確実に手に入る為に予約までして買うタイプ?」
「直感的に面白そうだと思ったらレビューを見て中古品を探すタイプ!」
 斜め上の回答に思わず鼻から空気が漏れた。
「そ、そっか。俺の例えが悪かったかな。えっと、要するに注文にはその場の流れで売買する成り行き注文と、事前にプライスを設定して予約注文をしておく指値(さしね)注文のふたつがあるんだ」
「ほうほう」和泉いずみが大きく相槌を打った。
「よし、今だってポチるのが成り行き注文。これはリアルタイムで表示されているプライスで売買をする方法」
 ノートに漢字で指値の文字を書く。成り行きは言葉通りの意味だからいいとして、指値は書かないと分からないだろうと思ったからだ。
「これとは逆に指値注文ってのはプライスを指定して事前に注文しておく方法。どちらが優れているとかってのはないんだけど、同じプライスだった場合、注文として優先的に処理されるのが成り行き注文。指値注文は後回しにされるけど、プライスの変動を伴うのは指値注文のほうなんだよ。いいかい? トレーダーが注文をするとまず買いと売りの成り行き注文同士がマッチングして成立していく。とにかくもう成立させまくって注文を消化していく。そうするといずれ成り行きの買いと売りで、注文数が多い方が溢れちゃうでしょ。ここでようやく指値注文が登場してくる」
 俺はノートの表を指でトントンと叩き、和泉いずみの注意を表に向けさせた。
「例えば成り行きの買い注文のほうが多かった場合で、プライスが100円だったとするよね。この時、売り側の100円の枠にある7という数字。これ指値の注文数ね。この7件の指値注文が溢れた成り行きの買い注文とマッチングして消化される。それでもまだ買い注文が余っていたら次は売りの101円の枠にある4件とマッチングする。ここでプライスの変動が起こるってわけ」
「おお、なるほど!」
「だから買いと売りの注文数が逆転したってのは、成り行きの注文数のことを指していて、注文数が同じってのは、注文は必ず買いと売りのマッチングよって成立するから同数じゃなくちゃおかしいって意味。こんな感じでプライスって思ったよりも簡単に変動しちゃうから、上昇トレンド中であっても、何かの拍子に成り行きの売り注文数が溢れればすぐにチャートがひっくり返ってしまうんだよ。んで、それを見たトレーダーが反転したと思ってバンバン成り行きの売り注文を入れてくる。更にここで三つ目」
 大きな瞳がパチクリしながら俺を見つめている。
「もし買っている人が下がり始めたと思ったらどうする。利食いしたいから決済するでしょ。決済ってのは清算みたいなもので、最初の注文に対する逆注文なんだよ。買った人の決済はイコール売り注文になる。ほとんどのトレーダーは信用取引っていう方法で取引しているから、絶対に買ったら売る。売ったら買い戻す。という手順を踏まないとトレードを終わらせることができないんだ。だからちょっとでもチャートが反転したら、儲けを減らしたくない人達が慌てて決済を始めて、更に売り注文に拍車がかかるってこともある」
「おおおぉ。なんか分かってきた……ような、そうでもないような! いわゆる競馬だとJRAみたいな胴元と売買しているわけじゃなくて、誰かの買いと誰かの売りで成立しているってことだよね。ん、違う……ああ、そっか。正確には誰かの買いは、誰かの売りもしくは誰かの買いの決済と成立しているんだ」
 和泉いずみの理解力の高さには驚かされた。この説明は何度か他人にしたことがあるが、大抵「ふーん」の一言で片づけられてしまう。一回の説明でここまで理解した人間はいなかった。
「ねね、例えば今現在100円だったとするよね。そのプライスより上に指値の売り注文を予約してあるのは分かるんだけど、今のプライスよりも高いところに買いの指値が入っているのっておかしくないの? だって今より高くなったら買うって不自然でしょ」
 正直この趣味に関して同級生とどっぷり話す機会なんてまずないと思っていた。そして和泉いずみと二人で話すなんて想像もしていなかった。そんなありえない状況が今、同時に起こっている。リアル未知との遭遇状態だ。世の中って何が起こるかホント分からないものなんだな。
「可能性として一番高いのが損切り決済の予約注文だと思う。例えば100円で売った人が101円になったら損切りしようと事前に注文を入れておく。突発的にプライスが跳ねたときに、手動より早く決済できるからリスク回避になるんだ。もちろん追いかけて買う人もいるけどね」
「ふむふむ……落とし穴を掘るように、地道に土を掘り返さないとひっくり返らないイメージだったけどそうじゃなかったんだね。どっちかと言えばすでに掘ってある落とし穴の上を歩いている感じ? 知れば知るほど相場って面白いね。やっぱり黛くんすごいなぁ」
 和泉いずみの例えにはいまいちピンとこなかったが、丁度よいタイミングで昼休みの終わりを告げるチャイムが、黒板の上に備え付けられた灰色のスピーカーから聞こえてきた。チャイムが鳴った瞬間思い出したかのような顔をして、和泉いずみが猛スピードで俺の席と自分の席を往復してきた。手にスマホを持っている。
「黛くん、もし良かったらライン交換してもらってもいいかな?」
「……おう」
 短い返事で平静を装っているが、内心はガッツポーズを決めていた。やばい、うれしい。だって遂にこの趣味に興味を持ってくれる同級生が現れたんだぜ。ちょっと不思議ちゃんではあるが、贅沢なんてもってのほかだ。なんせ、あの説明を一回で理解するすごい奴だしな。俺の顔、ニヤニヤしてないよな?
 ラインの交換を済ませると和泉いずみはありがとうと言って自分の席に戻っていった。
 そんな快挙の後の授業なんて上の空になっても仕方がないことだと思う。俺は頬杖をつきながら、まだ経験したことのないクラスメイトとのFX談義に思いを馳せていた。
 窓の外では目がチカチカするほどの強い日差しが容赦なく地面を焼いている。夏へ向かって三段飛ばしで進んでいるだろうと思わせるほどの急激な気温の変化に日本中の人が置いてけぼりを食っている中、俺たち学生はもう少しで魅惑の夏休みを迎える。甲子園? インターハイ? 海? 花火大会? いいや、ロウソク足だろ。移動平均線だろ。ゴールデンクロスだろ。俺の暑くて熱い夏がもう目の前まで迫っていた。


☆☆☆

 夏休みに突入してから一週間が過ぎた。この一週間の間に俺が口にした言葉のトップスリーを恥ずかしながら並べてみると
「くそっ!」
「何で逆行するんだよ!」
「意味わかんね!」である。
 ちなみに四位は大きく水をあけて「ごちそうさま」だ。いや、自分でも非常に悪い流れだということは重々承知している。常に冷静で淡々とトレードをしなければならないと頭では理解しているが、負けが続くとどうしてもムキになってしまい、更にドツボにはまってしまう。
 このままではダメだ。下手すると夏休み途中で資金が底をついてしまうかもしれない。そう思った俺は、気分転換の為に近くの公園まで散歩することにした。真夏の紫外線が俺のじめっとした心を滅菌消毒してくれることを期待して。
 最寄りのコンビニで飲み物を買ってから、近くの公園まで足を運んだ。強い日差しが無防備の肌をチリチリと焼き付ける。公園に着くとそのまま一直線に木陰のベンチへ向かった。猛暑のせいか公園で走り回っている子供達の姿はなく、うるさいセミの声だけが耳に突き刺さる。ベンチに腰かけて飲み物で喉を潤すと、ズボンのポケットからスマホを取り出しロックを解除した。チャートアプリを起動するためだ。しかしアイコンに指を重ねたところで、これじゃ気分転換ならないなとそっと指を離した。同じ行に並んだラインのアイコンに目が留まる。
 和泉いずみとラインを交換してから三週間以上経つが、いまだに一度も連絡がない。更に言うと、あの日以降学校でも全く会話をせずに夏休みを迎えていた。もっと色々聞いてくるのかと思ったら、翌日には普段の和泉いずみ戻っていて、いつも通りに一人でぼーっとしていた。
 あの時のあいつの行動は一体何だったんだろう。ただの気まぐれだったのだろうか。何度かこちらからメッセージを送ってみようかなと思ったりもしたが、既読スルーされたときの精神的ダメージを考えると毎回躊躇してしまった。
 普通、あの状況ならば、嘘でもありがとうくらい送ってくると思うんだけどな。俺の感覚がズレてんの? あぁ、モヤモヤす――
 って、ちっとも気分転換になってないじゃん! って思わず声を出して自分にツッコんでしまった。誰もいない炎天下の公園で。輪をかけてアツくなって……うん、いや、ホント今年の暑さは異常だわ。気分転換のつもりで出てきたけど、気持ちは晴れないし、ただ暑いだけだし、明らかに逆効果な気がしてきたぞ。これはさっさと家に戻った方が良さそうだ。うん、そうに違いない。
 もう一度公園に誰もいないことを確かめると、俺はそそくさとベンチを後にした。
 帰りの道すがら、ここ一週間不調の原因を考えていた。普段と同じようにやっているのに全然うまくいかない。いつもと何が違うんだろう。エアコンの効いた部屋に戻り、文明の利器のありがたみを全身で感じながら時計を見た。出かけてから丁度一時間が経とうとしている。
「まだ一時間……か」
 時間、じかん、ジ カ ン、じ……か……そうか時間か!
 俺は慌ててパソコンを起動し、FXのチャートを開いた。普段と夏休み中のトレードで決定的に違うのはトレードしている時間だ。それ以外はトレードのやり方に全く変化はない。この場合の時間は長い短いの時間ではなく、時間帯って意味である。いつもトレードしている時間帯は午後八時から深夜零時。これが夏休みに入って午前十時から深夜までに広がっている。ここに何か違いを見つけ出せれば良いのだが……。
 マウスのホイールボタンを転がして一週間のチャートの流れを入念に追った。いつも使っているインジケーターが煩わしく思えてきて、一旦すべて消した。
 インジケーターとは、チャートからデータを抽出・加工をしてチャート上に結果を視覚的に表示するナビゲーションシステムみたいなものだ。インジケーターはデータの加工の仕方によって無数に存在し、有名なものは最初からチャートソフトに組み込まれている。その中から個人の好みでチョイスして利用するわけだ。おそらく世界中の全てのトレーダーが、何かしらのインジケーターを利用していると思って間違いないと思う。それほど重要なものである。人気があるものだと移動平均線や、マックD、ボリンジャーバンド等がある。特に、設定の違う移動平均線を二本表示させ、その二本がクロスしたところを狙い目にする手法なんて、世界で一番利用されているのではないだろうか。他にもセオリーで言えば、前の大きな山を越えたら買うとか、谷を割ったら売るとかもある。
「あれ? もしかして……」
 ホイールボタンをコリコリ鳴らしてチャートを前後させる。更に二週間、三週間と過去に遡ってみると、やはり思った通りだ。多分、プライスの動きやすい時間がある。不思議なもので、同じチャートでも見方を変えると全く別の顔が隠れているのだ。朝と夕方と夜。どの日のチャートを見てもその特定の時間帯では動きが活発になっていた。逆にその時間帯の隙間は緩やかな動きをしている。もちろん全てではないが、疑うに値するだけの偏りは見て取れた。そして夜の時間帯は普段俺がトレードしている時間内にあった。
 五分足メインでトレードしている俺にとって、短時間でプライスが大きく変動してくれる相場の方が断然やりやすい。やりやすいと言っても簡単って意味ではなく、動いてくれた方が損益がはっきりと分かりやすくなるので利食い、損切りの決断がしやすくなるって意味だ。
 チャートを棒グラフみたいな形で表示することをロウソク足と言う。五分足とは五分に一回このロウソク足が更新される設定のことを指す。一分ごとにロウソク足が増えていくのは一分足。ほかにも一時間足、日足、週足もある。どの時間足が優れているとかはないが、資金、性格、ライフスタイルに合わせて選べばいい。
 俺はサッと入ってサッと抜けたいタイプなので五分足でやっている。だからプライスが停滞気味の相場だとやりづらい。同じレンジをウロウロしているだけで、買いで入っても、売りで入っても身動きが取れなくなるのが腹立たしい。ここ一週間の負けのほとんどは停滞気味の場所での売り買いが原因であった。
 トレードにはスプレットという証券会社への手数料が存在する。これのせいでトレードは毎回必ず含み損状態からのスタートになるわけだが、停滞している相場だと買いでも売りでも含み損がなかなか消えてくれない。仮に含み益が出たとしてもなかなか伸びずにすぐまた戻されてしまう。そのくせ含み損が出始めるとそっち側にはあっという間に伸びてしまうのだ。証券会社の嫌がらせなんじゃないかと感じてしまうのは俺だけじゃないはず。
 もしかすると動きやすい時間帯も証券会社の仕業なんじゃないか? なんて思いながらチラリと窓の外に視線を移した……うん、さすがにこの猛暑の中、本屋まで行く気にはなれない。外出は諦めてネットで情報を探すことにした。チャートソフトを最小化してブラウザを起動する。適当にキーワードを入れて検索をかけてみたら、目当ての情報に一発でたどり着いた。簡単に見つかった割に、記事の内容は俺を十分納得させてくれるものであった。
 要約すると東京、ロンドン、ニューヨークは世界の三大市場と言われるほど影響力があり、朝は東京市場が、夕方はロンドン市場、夜はニューヨーク市場が開く時間に該当しているということらしい。なるほど、これならその時間帯だけ注視していれば、一日中画面に張り付いていなくてもよさそうだ。それにより、あやふやなところで無駄に売買してしまうリスクが抑えられるし、原因や理由を理解した上で勝負することはとても重要なことだと思う。なぜなら自分の行動を論理的に説明できなくては、勝っても負けても次に繋げることができないからだ――って感じのことが前に読んだ本のどれかに書いてあった気がする。
 というわけで今夜から勝負する時間を絞ってみたいと思う。空いた時間は……とりあえず寝るかな。

☆☆☆

 八月に突入しても相変わらずの猛暑続きだ。って当たり前か。あれから俺の戦績は劇的に変化を遂げて……いるわけもなく、勝率的には夏休み前に戻った感じである。まぁ、勝率を戻せただけでも御の字だろう。
 今日は台風の影響で午後から天候が荒れるらしい。全然関係ない話だが、台風には予め名前が用意されているそうだ。百数十個の名前を順番に繰り返して使っているらしいが、天気予報ではいつも台風〇号としか言ってないよな。
「関東地方に上陸すると予測される台風『トカゲ』ですが、いぜんとして強い勢力を……」うん、番号呼びで良い気がする。
 スマホがブルっと震えた。画面をのぞき込むと、それは嵐の到来を予感させる着信だった。
『ねぇねぇマヤ済みくん、マヤ済みくん。急だけど今からお邪魔していい?』
 和泉いずみだ。激しく名前を間違えているが和泉いずみだ。今からお邪――ピンポーンとインターホンの音が聞こえてきた。
 えっ、マジか!? 一瞬で、片手では収まらないほどツッコみが脳裏をよぎる。
 いや待て、ものすごいタイミングで宅配業者が来ただけかもしれない。俺は飛び上がるように椅子から立つと窓から外を見た。玄関前のポーチを見下ろすと、そこには首を傾けた同級生の姿が。しかも目が合ってしまった。ブンブン手を振られてしまってはもう観念するしかない。何を観念したのか俺もよく分からないが。
 昨日部屋を掃除したのがせめてもの救いだった。玄関前でニコニコしていた和泉いずみを部屋に招き入れてから、お茶菓子はないかとキッチンの戸棚を物色した。麦茶とクッキーを持って部屋に戻ると、和泉いずみが俺のパソコンの前に座ってチャートを眺めていた。
「急にどうした?」外出してたらどうするつもりだったんだよと、心の中でツッコみを入れながら聞いてみる。
「ごめん、ごめん。散歩しながら考えていたらストンと腑に落ちちゃって。居ても立っても居られなくて飛んできちゃった」
 腑に? 何の話だ。それに今日は午後から台風が来るんだぞ。散歩するのは自由だけどせめて真っすぐ帰れよ。心の中でひとつずつツッコみを消化していく。
「ごめんね、黛くん。あ、さっきのごめんは急に押しかけちゃったごめんで、今のごめんはライン交換してもらったのに全然連絡しなかったことね。あの日の夜に思いついたことがあって、それをずっと考えててようやくまとまったの」
「それってFXの話?」
 和泉いずみが大きくウンウンと頷く。
「色々聞いちゃうと、常識とかセオリーとかのせいで思考の幅が狭くなっちゃうと思ったから、ずっと一人で考えていたの」
 和泉いずみは椅子から立ち上がって、俺が持ってきたお菓子に手を伸ばした。
「ねね、あたしが例えでJRAって言ったの覚えている?」
「あー……胴元がって話だっけ」
「そうそう。あの後ずっと考えてたの。何で胴元がいないんだろうって。だって成り行きや指値の注文数や場所が分かっている人達ってどこかにいるわけでしょ? コンピュータ使っているんだからプログラムとかシステムとか管理している人達。相場が自然発生しているわけじゃないんだし」
 そりゃ確かにFXは銀行間取引市場の取引レートを基準にしていているわけだから、その市場を維持、管理している人達はいるだろうけど。
「だから想定してみたの。黒幕がいるって。市場は参加者の行動によって動くんじゃなくて、黒幕によってデザインされているのかもって」
「はぁ……」なんか陰謀論的発想が出てきたぞ。
「そういう前提でチャートを見始めたらすごいのなんのって! はっきり言ってこの仕組みを考えた人は天才だと思う。なんなら人類の歴史上、三本の指に入るんじゃないかってくらいの発明よ」
 和泉いずみはちょっと見てと、俺をパソコンのチャート画面の前に引っ張って説明を始めた。
「この二日前の谷をA、昨日の谷をBとするよね。Bの谷はAの谷より浅いところで戻されているでしょ? これをあたしの考えで説明すると『Aの谷よりプライスが下がると黒幕が損をしてしまうから、Aの谷を割らないように黒幕が支えた結果、Bの谷ができた』ってなるの」
 支えるってサポートラインのことを言っているのか? サポートラインやレジスタンスラインは明確に線が引かれているわけではなく、線引きされているかのように何度も戻される場所のことを指す。落ちないように支えられているのがサポートライン。上に抜けないように抑えられているのがレジスタンスラインである。
「みんなサポート線とかレジスタンス線とかの効果は説明できても、その発生理由は説明できないでしょ。でもあたしの考えだと結果的に説明できちゃうんだな」
「たしかにどっちのラインも、気が付くと既にそこにあるものという感覚でしかないから、ラインの理由とか原因とかって考えたことなかったな」
「まず大前提から話をするけど『相場は相場を動かせるほどのお金持ちが更に大衆からお金を巻き上げる為のシステム』だと定義します。お金持ちが黒幕で、大衆がトレーダー。だから黒幕は絶対に損をしない。損をしないようにできているの。最初に黛くんに教えてもらったプライスの変動の仕方があるでしょ。あのシステムが基本にあって、その上で黒幕は相場を操っていると思う」
 和泉いずみの指がパソコンの画面に映るロウソク足を指でさした。半月がくっきりと分かる綺麗な爪だった。
「なぜAの谷を割ると黒幕が損をしちゃうのか。それはAの谷の底に黒幕の買い注文が大量に存在しているから。それが谷を形成した原因でもあるんだけど、大量の買い注文が底にあるってことは、Aの谷よりもプライスが下がると黒幕は含み損を抱えることになっちゃうでしょ。そうならない為にAの谷よりも上の位置で支えた結果、Bの谷ができあがったというわけ。そうなると次の疑問が湧いてくるよね」
「多分……どうしたらA谷を割ることができるようになるか?」
 当てずっぽうではあるが、和泉いずみの問いに答えてみた。そして和泉いずみの首が全く揺れていないことに気が付く。あのメトロノームはいつから止まってた?
「そう。さすが黛くん。谷底の買い注文が全てなくならないとAの谷を割ることができない。じゃあどうすれば買い注文がなくなるか。言い換えると、どうやって利食いの決済を行うか。だって大量の売り注文になるわけだから、自分の決済でプライス下がっちゃうもんね。それに決済するにはそれに見合った量の買い注文も必要だし」
「ん? 待てよ。その前にどうやって谷の底に大量に買い注文を入れられたんだ? だって売ると下がっちゃうなら、買えば上がっちゃうよな。谷の底に大量に買い注文を入れることはできないだろ」
「うん、だから黒幕はシステムを利用して、一般の人ができないやり方をしているんじゃないかしら。例えばこれ以上下げたくないプライスの位置で、成り行きの売り注文がなくなるまでずっと買いを入れ続けられるとか。管理している側なら注文数も分かるしね。そしてこれが重要。成り行きの売り注文に充てているのが新規の買い注文なのか、それとも山を抑えたときの売り注文の決済なのか」
 待て待て、ややこしくなってきたぞ……売り注文の決済は買い注文になるわけだから、たしかに成り行きの売り注文と相殺できる。ただその場合、それで注文が完結するわけだから、新規の買いと違って谷の底に買い注文は残らないな。どちらもチャート上では同じような谷を形成するわけだから見分けが付けられない。でもまるで意味が変ってくる。なぜなら新規の買いによってできた谷は利食いしないと割れないが、決済で作られた谷は支えてないのだから簡単に割ることができる。
「もし新規の買いで支えていた場合には、決済をしなきゃいけないでしょ。だから決済に見合うだけの大衆の買い注文を誘発しないとダメ。じゃあどうやって誘発するかと言うと……」
「あっ! 前の山を越えればいいのか」
「その通りっ! 相場のセオリーに山を越えたら買うってのがあるから、前の山をちょっと越えたところで発生する大量の買い注文を使って利食いしちゃえばいいんだよね。そこから黒幕が相場をどう動かすか。谷底の買いが消化しきれていれば、そのまま新規の売りを入れて下げちゃえばいい。そうすれば山の頂点で買った大衆が慌てて損切りを始めるよね。もう黒幕の思うつぼ。もちろんひとつ前の大きい山の抑えが消化できていれば、そのまま上げちゃってもいいし、そのまま上がると見せかけて下で売っている人たちに損切りさせてから、やっぱり落としますよみたいな罠も全然ありだよね」
「A谷の買いが消化しきれていないからB谷が作られて、それによって反転したチャートが、AB間の山を抜いたところで再び大衆の買いが発生する。それを使ってA谷の買いを消化するって寸法か……。ああ、なるほど。その過程でサポ線やレジ線が生まれるわけか。サポ線やレジ線にちゃんと反発するものと、あっさり抜けちゃうものがあるのは、新規注文で止めているのか、決済注文で止めているかの差なのか。今までそんなのお構いなしにサポ線レジ線見つけたら喜んで飛び付いていたし、山越え谷割りは重要な売買ポイントだと思っていた……」
 そもそもA谷の底にある黒幕の買い注文は……あぁ、これか。チャートをA谷より少し前に戻すと、A谷が割ったであろう谷を確認できた。この谷を割ったことによって発生した売り注文を全て吸収してA谷が作られたわけだ。
「うんうん。セオリーとかインジケーターとか、みんな勝つ為に利用していると思っているけど、実はそれを信じることによって行動をコントロールされているんだよね。大衆教育って言えばいいのかな」
 和泉いずみ……こいつは一体何者なんだ。俺は愕然とした。一人で考えてこの結論を導き出したのか。しかもたったの一ヶ月で。
「ごめん、ちょっと替わって」とパソコンの前を譲ってもらいチャートをじっくりと見直した。和泉いずみの説が正しいか確かめようがないけど、聞いた後では見慣れていたはずのチャートが全く違うものに見えてくる。たしかにその通りなんだ。
 こっちの山がこの山を越える為には抑えを消化しなくてはいけない。だからこの谷を割って発生した大量の売り注文で決済したのか。実際、その後の上昇で山を越えているしな……ヤバい、こいつ天才だ。てか、これすごい発見なんじゃないの? 目から鱗ってまさにこんな状態なんだろう。これまで使っていたセオリーやインジケーターを使うのが恐ろしくなってきた。
「ね、黛くん。すごいと思わない? シンプルで無駄がなく、とても美しい芸術作品を見ているような感覚にならない?」
 パソコンの画面をのぞき込む和泉いずみの顔が俺の真横に並ぶ。近い、近いって。思わず息を止めてしまった。和泉いずみの指が画面のロウソク足をそっとなぞる。
「道中は大衆の売買の力を利用して変動させて、黒幕は枠の外でじっと待つだけ。必要なところで支えて抑えて利食う。まるで大衆は馬車ウマのようね。黒幕は高みから手綱を引いているだけ」
 和泉いずみの顔に一瞬恍惚の表情が浮かんだ……ような気がした。
「あ、そうそう。ちなみにこれFXだけの話じゃなくて、先物取引でも株でもチャートを使っているものは全部当てはまるよ。四季報とか企業の営業成績とか見なくても全然問題なし。結局は黒幕によって支えられたり抑えられたりしているだけなので、むしろ出来高が表示されている分FXより簡単かもね。だって山や谷の反転しているロウソク足が極端に短いにも関わらず、出来高がすごいあるってまさに介入している証拠だもん」
 もう言葉がない。もし俺が犬なら三回まわってワンと吠えてから、ひっくり返って腹を見せていることだろう。こいつの頭の構造がとても気になるんで、ぜひともIQテストを受けさせてみたい。
「それにしても黒幕がいるとすると一体誰なんだろうな」
「条件的に当てはまる一族ならいるよ。各国の大きな銀行の株主で銀行間取引にも口が出せて、支えたり抑えたりできるほどの資金を所有しているお金持ち。あの有名な――あっ、台風が来る前に帰らなくちゃ!」
 誰かが来たのかと思うようなタイミングで言うのを止めたと思ったら、再び和泉いずみの首が動き始めた。誰でもいいからこの謎仕様を説明してくれたら、金一封を与えるのもやぶさかではない。まぁ、やりすぎファンの俺には言わなくてもわかるけど。
 和泉いずみは折角だからと残りのクッキーを頬張り麦茶で流し込んだ。そして窓の向こうの空模様を見上げて、急がなくっちゃとアワアワしている。
「本当はもうちょっと説明したかったけど今度ね。あ、そうだ。ブログにもう少し詳しく書いておくから。ラインにアドレス張り付けておくから後で見てね。それじゃ、お菓子ごちそう様でした」
 俺の常識、価値観を根こそぎぶっ壊した嵐はお礼を言うと、風の出てきた道を小走りに帰っていった。最後の最後でまたネタを放り込んで。
「あいつ、ブログやっていたのかよ……」

☆☆☆

 あの日に会ったのが最後だった。
 二学期が始まってもまだまだ夏は終わる様子もなく、暑中なのか残暑なのか区別がつかない暑さが毎日のように日本中を苦しめている。
 最近気が付くと、教室の真ん中の空いた机をよく見ていた。和泉いずみが使っていた机だ。
 俺の家にふらっと現れた数日後、ラインでブログのアドレスが送られてきた。そこには俺の部屋で説明してくれた和泉いずみの理論が分かりやすくまとめられていた。ここまで書いちゃって大丈夫なんだろうかと一瞬不安になったりもしたが、たかだか女子高生の読者数ゼロのブログを気に留める人間なんていないだろうし、下手すると俺以外誰も見ていないかもしれない。心配するだけ損だろうという結論に達した。一応、ラインには素直に称賛の言葉を返しておいたけど。
 それからは日に何回か、主にFXに関するやり取りをラインで交わすようになったのだが、ある日海外旅行に出かけるという連絡が入った。
 なんでも父親の仕事がらみの付き合いで急遽決まったらしい。どこに行くかは帰ってきてからのお楽しみだと教えてくれなかったが、俺が飛行機好きだと知っていたようで、当日フライトギリギリまでラインで画像を送ってきてくれていた。そして最後のラインの書き込みは『もうあと五分くらいでりりく~。まったね~』だったと思う。
 だったと思うと表現したのは記憶をたどっているからである。なぜか和泉いずみとの当日のトークはすべて削除されてしまっていたのだ。本人が消去したのか、別の誰かが消したのか、なぜ消去したのか、確かめる手段は俺にはない。更にあいつのブログも気が付くときれいさっぱり消えていた。学校には夏休み中に退学届が送られてきたようだし、父親も仕事を辞めているそうだ。
 でも俺が一番不可解だと思っているのは、和泉いずみが最後に送ってきたラインの『あと五分でりりく』という言葉である。行き先に興味のあった俺はあのとき、フライトシミュレイタ24時を使って旅客機を検索したのだ。しかし何度調べてもあの時間に離陸した旅客機を見つけることができなかった。
 重要なトークが消されている以上、いち高校生が騒いだところで警察も相手にしてくれないだろう。学校だって手続き上の不備がなければ退学届を受理してそれっきりだ。急に和泉いずみがいなくなっても詮索するクラスメイトは一人もいない。世の中なんてそんなものらしい。
 他人には知られたくない理由があってこっそり引っ越したのかもしれない。例えば借金があって夜逃げをしたとか。ラインのトークだって居場所がしられないように父親に消されたのかもしれない。事件性なんて全くなくて俺の詮索自体、和泉家にとって迷惑以外の何物でもないかもしれない。それならそれでいい。逆にそうであってほしいくらいだ。そう何度も自分に言い聞かせているが、どうしても頭の片隅にこびり付いて払拭できない疑念があった。
 和泉いずみは深淵を覗いてしまったのではないか。
 あいつが推測した相場の仕組み。それをブログに載せてしまったせいで、あいつの言う黒幕に目を付けられてしまったのではないか。荒唐無稽に思われるかもしれないが、どうしても俺の中でその予感が拭えない。そりゃ、やりすぎ都市伝説が好きなことは否定しないが、もし和泉いずみの考え方が正しくて、その情報が広まると困る存在がいたとして、放っておくよりもさらった方がリスクが低いと判断した場合、行方不明になってしまう可能性は果たしてゼロであろうか。
 もしかすると、俺もそんなに悠長に構えている場合ではないのかもしれない。ラインのトークを見れば、俺が和泉いずみの理論やブログ記事を知っていることは一目瞭然だからだ。何より昨日、親父が母に急だけど海外旅行に行けるかもしれないぞと嬉しそうに話しているのを聞いてしまった。行けるかもしれないという言い回しに、単なる偶然を期待しても良いのだろうか。
 でももし違っていたら、俺も家族ごといなくなってしまうかも……。

 そして、俺の次はあなたの――
がー

2018年08月10日 14時07分59秒 公開
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■作者からのメッセージ
◆キャッチコピー:信じるも信じないもあなた次第です
◆作者コメント:久しぶりの投稿になります。ラノベかと言われればすこぶる怪しいです。しかも興味のない人は全く頭に入ってこない内容に……ご迷惑おかけします。

2018年08月29日 01時23分55秒
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2018年08月25日 23時49分38秒
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Re: 2018年08月26日 17時18分30秒
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