【跡地化】

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●○●○●○●　この作品は跡地化されました。　○●○●○●○
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楽間快人

2018年04月27日 03時10分53秒 公開
■この作品の著作権は 楽間快人 さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
【跡地化】を加えるとタイトルが長すぎるという警句が表示されるタイトル……。

2018年05月12日 16時54分24秒
 0点
  • 　拝読しました。朱鷺（とき）と申します。
    　なんか、してやられた！　と、思いました。
    　犯人は、探偵かな？
    　探偵が、”容疑者”について、犯人である可能性をほのめかす言葉は、ミスリードだろう。
    　そんな風に思いながら読み進めました。
    　真相は、想像の先にありました。
    　探偵は、共犯者だった。
    　犯人は、探偵の助手だった。
    　二人は、犯罪を罪と感じていない。殺人もインシンシア（不真面目な）・プレイ（遊び）でしかない。
    　どこからインシンシアが登場したのか、読み返してみました。
    　「ちょうどいいタイミングで、後ろからアルトの声が飛ぶ」
    　ここですね。
    　”容疑者”達は、後ろにはいないから、実はもう一人いたことが、ここで示されたことになる。
    　インシンシアが犯人だという手がかりは、「まったく毎度のことながら稚拙なことだ」、であり、
    　探偵が共犯者だという手がかりは、探偵役の主人公が、「解決編を演じるだけ」、なのですね。
    　冒頭の、「不躾」、無遠慮で失礼な、とか、「胡乱げ」、うさん臭い様子の、とか、「忌避の視線」、いやがって避ける視線といった、何となくすっきり読めない表現は、結末を隠蔽するためのものでしたか。
    　読み終えて、何かやられた感があります。
    　完成度を上げるには、もっと短くする。そうすれば、フレドリック・ブラウンの掌編集のような作品になりそうだな、と感じました。
    　連作にできる設定ですね。
    　マンガのルパン三世のように、変幻自在なストーリーがいくつも作れそうで楽しみです。
    　執筆お疲れ様でした。後夜祭も盛り上がってまいりましょう。

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Re: 2018年05月13日 21時12分40秒
  • 朱鷺（とき） さん、こんばんは。ご感想ありがとうございます。
    ぷち夏企画でもお会いしましたね。またご一緒出来て幸いです。

    ＞なんか、してやられた！　と、思いました。
    ＞犯人は、探偵かな？
    ＞探偵が、”容疑者”について、犯人である可能性をほのめかす言葉は、ミスリードだろう。
    ＞そんな風に思いながら読み進めました。
    ＞真相は、想像の先にありました。
    ＞探偵は、共犯者だった。
    ＞犯人は、探偵の助手だった。
    ＞二人は、犯罪を罪と感じていない。殺人もインシンシア（不真面目な）・プレイ（遊び）でしかない。
    なんでしょう、良質なレビューを読んでいるような、とでも言いましょうか、
    この話の骨子をわかりやすく説明してくださってありがとうございます。
    インシンシア（不真面目な）・プレイ（遊び）への言及、嬉しいです笑

    ＞どこからインシンシアが登場したのか、読み返してみました。
    　一応「……たぶんこの人、なにを言っても聞かないわよ」のところからはもうインシンシアの台詞です。
    　猶本さんはなにも言葉を発していないことになっているので、女の声のところはすべてインシンシアのものとなります。

    ＞インシンシアが犯人だという手がかりは、「まったく毎度のことながら稚拙なことだ」、であり、
    ＞探偵が共犯者だという手がかりは、探偵役の主人公が、「解決編を演じるだけ」、なのですね。
    ＞冒頭の、「不躾」、無遠慮で失礼な、とか、「胡乱げ」、うさん臭い様子の、とか、「忌避の視線」、いやがって避ける視線といった、何となくすっきり読めない表現は、結末を隠蔽するためのものでしたか。
    　伏線まで丁寧に拾っていただいて、ホント頭が下がります。
    　挙げてくださっているのはすべてその通りで、個人的には冒頭の仮面の伏線に気づいていただけたのが嬉しいです。

    ＞完成度を上げるには、もっと短くする。そうすれば、フレドリック・ブラウンの掌編集のような作品になりそうだな、と感じました。
    　そうですね、エコーのひとり語りを削れば、もっと短くできるかもです。
    　もともと「短く、でも贅沢に（三転まであり）」を目標に書いたものなので、方向性としては
    　悪くはなかったかなと思います。ただ、キャラクターや真相の嫌悪感など、他に致命的な
    　欠点があるのが事実で、なかなか再利用は難しいかな、とも思えますね。

    そこそこは楽しんでお読みいただけた……のでしょうか？笑
    拾って欲しかったところを拾ってくださってありがとうございます。
    それでは、お読みいただきありがとうございました。

    E-Mail pass
2018年05月10日 23時59分22秒
 +10点
  • 作者の方へ

    作品、読みました。

    （以下ネタバレを含みます）








    飄々とした対応が特徴の探偵ものでした。犯人が身内というのが新しく、興味を持って読むことができました。
    短い枚数ではありますが、うまくまとめているなという印象です。

    あと、
    ＞その頭の周りには黒い血だまりが広がり、男の死を声高に喧伝していた
    こういう、随所に光る表現が見られたなと思っています。

    ただ、若干肌に合わない文章もありました。
    あと、どこが逆転なのかな、という疑問は残りました。
    真犯人が身内であった、という部分が逆転でしょうか？

    あとはラストですね。
    フィクションなので「どうにかして逃げたんだ」と言われればそれまでなのですが、やはりどうやってクルーズ船から姿を消したのかが気になりました。

    あまり推理物を読みなれていない読者で失礼しました。
    インシンシアのキャラクターに薄さを感じた反面、ボクのキャラクターが好みでした。こういう軽妙でどことなくおしゃれな言い回しのキャラクター、とてもよかったです。

    それでは執筆お疲れ様でした。

    E-Mail pass
Re: 2018年05月13日 21時10分39秒
  • 茉莉花さん、こんばんは。ご感想ありがとうございます。
    茉莉花さんご無沙汰してます。一応、生存報告となったでしょうか。
    最近は寝るのが早くなっていてなかなかチャットには顔を出せそうに
    ありませんが、またどこかでお会い出来たらとは思っています。

    ＞飄々とした対応が特徴の探偵ものでした。犯人が身内というのが新しく、興味を持って読むことができました。
    ＞短い枚数ではありますが、うまくまとめているなという印象です。
    　短い枚数でまとめる、が第一目標（ていうかそれしか考えなかった）だったので、
    　そこを受け取ってくださったのは良かったです。

    ＞その頭の周りには黒い血だまりが広がり、男の死を声高に喧伝していた
    ＞ただ、若干肌に合わない文章もありました。
    　上のはちょうど運よく思いついたものですね。
    　本当はもっとこういうのガンガン入れたい人なんですが、今回は息抜きのため文章には極力こだわらず、完成させることを優先したので普段よりは軽いとは思います。
    　もしかしたらそれくらいのほうがいいのかもな、と思わないでもないですがｗ
    　肌に合わなかったのはキャラ描写かな、と思っています。どうもヘイトの溜まるキャラクター
    　だったようで……あまりそこを意識してなかったのがいよいよヤバいとは思います。

    ＞あと、どこが逆転なのかな、という疑問は残りました。
    　この話はもともと企画用の話ではないので……ごめんなさい。
    　今回は「書き上げる」という最低限のハードルしかもうけていませんでした。

    ＞あとはラストですね。
    ＞フィクションなので「どうにかして逃げたんだ」と言われればそれまでなのですが、やはりどうやってクルーズ船から姿を消したのかが気になりました。
    　西之島といい、思い付きで意味のない描写するのが根本的にダメなんだと思います。
    　書くからにはしっかり意味を。メモしましたので、次からは何度も見返して書きます。

    ＞あまり推理物を読みなれていない読者で失礼しました。
    ＞インシンシアのキャラクターに薄さを感じた反面、ボクのキャラクターが好みでした。こういう軽妙でどことなくおしゃれな言い回しのキャラクター、とてもよかったです。
    　いえいえ、ミステリ苦手なのに読んでくださり感謝です。
    　ミステリの面倒な部分は削ぎ落としたつもりではありますが、なんとか読めたでしょうか。
    　エコーのキャラも、意外と好みだと言ってくださる方もいますね。今回はなにも考えずに書いたので、
    　筆のノリは伝わっているのかもしれません。今度はなるべく反感を買わないキャラクターを
    　書いてみたいと思っています。

    此度も感想制覇、本当に頭が下がります。
    参加してないと、ぜんぶ読むと感想数一位が取れるのですよね笑
    今回僕のほうは充分に参加できなかったのですが、茉莉花さんのような方がいるおかげで、
    運営の皆さんも助かっていると思います。
    それでは、お読みいただきありがとうございました。

    E-Mail pass
2018年05月09日 13時13分48秒
 +20点
  • 　おもしろかった、ような？
    　船の上で殺人事件だ～、容疑者は3人だ～、おもってたら助手いるだと…。おおなるほど跳弾で自爆か、おもったら助手が犯人だった。そして船からこっそりいなくなる…。
    　文章の雰囲気ありましたし、実は助手が喋ってた、とか、実は助手が犯人だった、とか、いいかんじにエンタメ感あってよかったです。
    　ただちょっと、うーん、なんだろ、テンポよすぎたのかな。インシンシアさんが登場するところ、なんか唐突にかんじられましたし、さらさら読んでいったら最後までいってしまった気がします。
    　たぶんもったいないのかな。ミスリード、っていうんでしょうか。ああたぶんこいつが犯人かな、こういう手段だったんだな、ってある程度想像させてから、インシンシアさんでてきて、実は跳弾でした、って書いたほうが、きっとおどろきも強かった気がします。
    　あとは、もうひとりいる感みたいなのが、ぼくにはあんましかんじられなかったので、うお、なるほど、とはならず、ん、なんかでてきた…くらいになってしまいました。助手がいる、というネタバラシの前に、もうすこし違和感、ひっかかりを作ってもらいたかったような気がします。
    　おもしろいんですけど、あとほんのすこし、じらしを入れるだけで、もっとおもしろくなったような気がしました。むぐぐ…
    　でわでわ～

    E-Mail pass
Re: 2018年05月13日 21時08分07秒
  • etunamaさん、こんばんは。ご感想ありがとうございます。
    ＞文章の雰囲気ありましたし、実は助手が喋ってた、とか、実は助手が犯人だった、とか、いいかんじにエンタメ感あってよかったです。
    ＞ただちょっと、うーん、なんだろ、テンポよすぎたのかな。インシンシアさんが登場するところ、なんか唐突にかんじられましたし、さらさら読んでいったら最後までいってしまった気がします。
    　「短く、されど贅沢に」を目指した本作ですが、その功罪が見事にここに出てますね（苦笑
    　畳み掛ける展開を、短い中に詰め込めたのは良かったとは思うんですが、そうですね、個々の仕掛けには
    　大して自信がなかったため、焦らすことはできなかったとうことになります。
    　あと、そうですね唐突感。思い返せばだいたい過去作も「唐突」と「丸わかり」の両極端な感想を
    　いただいてきたように思います。まあたぶんそれって普通にこういうの向いてないよ、ってことだと思うので、
    　いい加減足を洗って地に足ついたやり方をそろそろしようと考えてます。

    ＞ミスリード、っていうんでしょうか。
    　ミスリードといえばこの話、エコーの一人称を「ボク」にすることで実はボクっ娘ミスリードを
    　したつもりだったのですが、なにも言及がありませんでしたね（苦笑
    　性別叙述はみんな慣れてるので、逆に引っ掛かってくれないかなーと思っていた想定の甘さ（入江九夜鳥さん語録使いやすい）。

    ちきんとした推理を書けないのはわかっているので、焦らしを入れる勇気が出なかった。
    こういうネタを真正面から扱うのは、実力が足りてないってことだと思います。
    etunamaさんのように作風の方向性というか、そろそろそういうのを確立できれば……いいかなあ、なんて。
    それでは、お読みいただきありがとうございました。

    E-Mail pass
2018年05月07日 22時01分26秒
 +20点
  • 『インシンシア・プレイ～探偵《エコー・チェンバー》の流儀～』、拝読しました。感想を書かせていただきます。


    　一風変わった探偵小説という感じでした。

    　クルーズ船の上で起こった殺人事件を、主人公の探偵、エコー・チェンバーが解決に乗り出す、という形で物語が始まるわけですが、証拠集めから解決編までの流れが速いため、「推理小説」という印象ではありませんでした。
    　まあ、それもそのはずで、最後まで読めば、本作が「探偵が事件を解決する物語」ではないことがわかるわけですが。

    　全体としては、文章も上手く、事件発生からラストまでの構成もしっかりしていました。
    　実は六人目の登場人物＝インシンシアが存在していたという、ちょっとした叙述トリックもいいスパイスになっていました。
    　そして、実は主人公側のインシンシアが犯人であり、エコー・チェンバーがやっていたことは尻ぬぐいだったというシーンによって、ストーリーのオチもしっかりついていました。
    　この枚数の作品としてはまとまっていますし、作者さんの筆力の高さが感じられる作品だったことは間違いないと思います。

    　とはいえ、物足りなさも感じてしまいました。
    　その理由としては、

    　1.冒頭の段階で、先の展開がなんとなく読める。
    　
    　冒頭のエコー・チェンバーの挑発的な独白を読んだところで、「主人公側が犯人の物語かな？」となんとなく察してしまいました。
    　今企画のテーマが「逆転」なので、そういう予想をしてしまった部分もあると思いますが。

    　2.中盤が「推理小説」という感じではない。

    　1と関連しますが、中盤の推理パートがあっさりしており、「推理の過程を楽しませる作品ではないのだな」と感じたため、なおさら「オチ重視だな」と身構えてしまいました。

    　上記1と2の影響で、オチに対して衝撃を感じることができませんでした。
    　また、

    　3.ラストシーンが謎

    　「仮面をつけている」「顔を自在に変えられる」と二人の特殊能力のようなものが示唆されていますが、それがなんなのか明かされないまま話が終わってしまったため、モヤモヤしました。
    　二人の能力、ひいては二人の正体がとても気になったので、そのあたりはしっかり書いてほしかったと思うところです。

    　全体としてはこの枚数でまとまっている作品だと思うのですが、そのまとまりゆえに話の流れが素直すぎて、オチで驚けなかったのはやはり物足りなく感じました。（私の作品もよくそう言われるのでブーメランなんですが）
    　もっと長い枚数を使い、推理パートの描写に力を入れて「王道推理小説」というミスリードをしたほうが、オチの驚きが大きくなり、もっとよくなるじゃないかと思いました。

    　感想は以上です。執筆お疲れさまでした。

    E-Mail pass
Re: 2018年05月13日 21時06分04秒
  • いりえミトさん、こんばんは。ご感想ありがとうございます。
    いりえさんお久しぶりです！　今回も参加されていたのですね。
    またしても不甲斐ない結果にはなりましたが、まあ地に足ついてない証拠です。

    ＞クルーズ船の上で起こった殺人事件を、主人公の探偵、エコー・チェンバーが解決に乗り出す、という形で物語が始まるわけですが、証拠集めから解決編までの流れが速いため、「推理小説」という印象ではありませんでした。
    ＞まあ、それもそのはずで、最後まで読めば、本作が「探偵が事件を解決する物語」ではないことがわかるわけですが。
    　推理部分に自信がなかったのと、なるべく短い枚数で、と考えた結果、さらっと流す感じになりました。
    　所詮はミステリ”風”のお話なので、作者コメントにでも「似非ミステリです」と書けばよかったかもしれませんね（汗

    ＞全体としては、文章も上手く、事件発生からラストまでの構成もしっかりしていました。
    ＞この枚数の作品としてはまとまっていますし、作者さんの筆力の高さが感じられる作品だったことは間違いないと思います。
    　ありがとうございます。プロット部分としては（真相の道義的側面は置いといて）まずまず機能していたようで
    　良かったです。しかし、いつもそこから、肉付けだったり演出だったりでコケるのですよね（苦笑

    ＞1.冒頭の段階で、先の展開がなんとなく読める。
    　やはり勘の良い方は、そこだけで気づいてしまいますよね。
    　個人的には「仮面」の叙述が大ネタだったのと、やはり忌避感を抱かれかねない真相（助手が犯人）
    　ということで、心構えをしておいてもらおうと思い、軽い気持ちで書いたものでした。
    　それがわかる人の興をかなり削いでしまったのは、単純に大きな失敗だったなと感じています。

    ＞1と関連しますが、中盤の推理パートがあっさりしており、「推理の過程を楽しませる作品ではないのだな」と感じたため、なおさら「オチ重視だな」と身構えてしまいました。
    　さすが読み方が深いというか論理的というか……。その通り過ぎて平伏するしかない……。

    ＞二人の能力、ひいては二人の正体がとても気になったので、そのあたりはしっかり書いてほしかったと思うところです。
    　ここに、僕の悪いところが出ていると思います……。書いたことにはしっかり責任持たないとなあ。
    　
    ＞全体としてはこの枚数でまとまっている作品だと思うのですが、そのまとまりゆえに話の流れが素直すぎて、オチで驚けなかったのはやはり物足りなく感じました。
    ＞もっと長い枚数を使い、推理パートの描写に力を入れて「王道推理小説」というミスリードをしたほうが、オチの驚きが大きくなり、もっとよくなるじゃないかと思いました。
    　「驚かせよう」と思ってオチ丸わかりなのが僕の癖です（苦笑
    　ミステリは好きなのですが、自分で推理まできちんと書くとなると自信がないので、長いのはちとキツいかもです……。
    　枚数のわりにまとまってる、という方向性自体は悪くないとは思うのですがやはり料理法が……拙い。
    　今回のことでちょっとさすがにミスリードとかそういうの向いてないんじゃないの？と思い始めたので（素直に話を作りすぎるし）、次はもうちょっと「驚き」を期待させないような話でも書いてみようかと考えてます。とりあえずキャラクターを、真面目に書けるように、なれたら、いいな……。
    　『ファイン・セーブ！』は……すみません。タイトルの段階で、読む対象から外してしまいました。
    　中身を見ていないのでなんとも言えませんが、もう少しだけ、注目を引くタイトルが良かったかな、と思いました。
    　最後、話が逸れました。それでは、 お読みいただきありがとうございました。

    E-Mail pass
2018年05月07日 14時57分27秒
 +20点
  • 　執筆おつかれさまです、燕小太郎と申します。
    　拝読しましたので、感想を残したいと思います。

    ＜自分が思った今作のポイントになるところ＞
    　ズバリ、結末のどんでん返しでしょう。
    　キャラクターは個性的ではあるものの、基本的にはセオリーに忠実なミステリだった今作が、最後で意外な真実と大きな謎を残して終わる。シンプルなミステリに強いオリジナリティを与えるアイディアだったと思います。
    　この点を良ととるか否ととるかで、評価が変わってくる作品なのではないでしょうか。

    ＜良かったところ＞
    　短編でのミステリの難しさを理解した上で、きちんと対応している点がまず良かったです。
    　ミステリになると容疑者候補ばかりでキャラクターが極端に多くなったり、トリックのヒントを出すためにいくつもの情報が出たりと、読むのに疲れる文章ばかりがかさんでいくことがしばしばあります。しかし今作では、猶本＝インシンシアといった工夫もあり、最低限のキャラクターに絞り、調査編も短くまとめられている。高難度・高密度のミステリとはならないものの、とても読みやすく短編向きのミステリになっていたと思います。

    　また、ポイントで前述したようにハッキリと差別化できる要素を組み込んだ点も良かったと思います。アレがあることで、シンプルなまとまったミステリから、深い考察の余地と驚きを作ることができたのではないでしょうか。
    　
    ＜気になった点＞
    　自分が先ほどポイントとして挙げた点で、どう受け取るかによって評価が分かれる、と書きました。そして、自分は今回について言えば、残念ながら『否』に近い感想を抱きました。その理由は、作品としてのブレを感じたからです。
    　今作は中盤までは、探偵が殺人事件を解き明かすシンプルなミステリ。しかし結末では、信条も能力も普通ではないことが明らかになり、深い説明もないまま謎を残して消えていく。毛色が違い過ぎたのかな、と感じました。
    　オリジナリティの作り方や狙いに関しては良いと思うのですが、物語全体を考えると、マイナス部分もあって大きなプラスにならなかったというのが率直な感想でした。

    　また、エコー・チェンバーがインシンシアを傍に置く理由も腑に落ちない印象でした。完全なトラブルメーカーで、助手としての有用性も今作のみに限って言えば示しきれていない。他に個人的動機もあるようには思えず、ポイントで挙げた違和感の原因の一つになっているように思います。

    ＜自分なりの改稿案＞
    　ブレを解消するには、一貫性を持たせるのが一番早く、一貫性を持たせる一番早い方法は主人公に目的を作り、変えないことだと考えます。なので、主人公エコー・チェンバーがインシンシアを傍に置く理由を明確にすることで、解消できるのではないでしょうか。
    　自分が考えたのは、パターンA『好意または義務によるインシンシアの保護』か、パターンB『半ば意図的に殺人事件を起こし解決させることで、探偵としての名誉や金銭を得る』の二案です。
    　パターンAは彼女に好意を抱いていて、どんな苦労や事情があっても彼女の傍にいたいと思っている。そのため頻繁に起こる事件やその解決自体は快く思っていないが、嫌でも解決せざるを得ず、望まぬ形で探偵としての名を広めてしまっている、といった感じです。捜査時の彼と二人きりの彼とでだいぶキャラクターにギャップが出来そうですし、案の一つくらいにはなると思います。
    　パターンBはおそらく今作と近いものだと思いますが、インシンシアが事件を起こし、エコー・チェンバーが彼女に罪がかからない形で解決して探偵としての名を高める、まさにWIN－WINの関係です。ただ、このままだと主人公のモラルが問われそうなので、ついでに被害者も身内で準備して、最後には死体ごといなくなる、みたいな三人組にしても面白いかもしれません。
    　
    ＜総評＞
    　ミステリの難しい部分をきちんと把握して対応し、キャラクターも個性的に描けている。技術の基礎がきちんとある作者様で、何を書いても一定以上のクオリティに仕上げることができる方なのではないかと思います。
    　ややクセの強いキャラクターの一人称でしたが概ね文章も読みやすく、安心して最後まで読むことができました。

    　拙い感想ですが、少しでも参考になる部分があれば幸いです。
    　


    E-Mail pass
Re: 2018年05月13日 21時03分14秒
  • 燕小太郎さん、こんばんは。ご感想ありがとうございます。
    まず伝えたいのは、燕さんの感想が非常にわかりやすく、僕が前を向くきっかけに
    なったということです。いいところも悪いところも併記してくださり、そのうえ分量も
    かなり書いてくださっており、理想的な感想だなと感じています。特にキャラクターに関する
    改稿案は、心から納得できました。

    さて、それでは中身に移りたいと思います。＜自分が思った今作のポイントになるところ＞は後述する
    ことにしまして、まずは＜良かったところ＞から。
    このように＜良かったところ＞が何気なく挙げられている時点で、かなりの救いになりました。
    ＞最低限のキャラクターに絞り、調査編も短くまとめられている。
    　ここ辺りは今回（唯一ですが）気をつけた箇所でもあったので、
    ＞ミステリになると容疑者候補ばかりでキャラクターが極端に多くなったり、トリックのヒントを出すためにいくつもの情報が出たりと、読むのに疲れる文章ばかりがかさんでいくことがしばしばあります。
    　このように意図を汲み取っていただいたうえで、＜良かったところ＞としていただいたのは嬉しかったです。

    ＞自分が先ほどポイントとして挙げた点で、どう受け取るかによって評価が分かれる、と書きました。そして、自分は今回について言えば、残念ながら『否』に近い感想を抱きました。その理由は、作品としてのブレを感じたからです。
    ＞毛色が違い過ぎたのかな、と感じました。
    　この部分は本当に、心の底から納得した部分でありまして、なぜならこれは僕の過去作にも、
    　共通して言えることだったからです。「驚いてもらおう」と思って、あまりに急に舵を切りすぎる
    　んですよね僕は。そうして、前振り部分でせっかく貯めていただいた読者の期待を裏切ってしまう。
    　僕自身は推理ものの雰囲気をそこまで出せていたとは考えていなかったのですが、きっと読者の皆さんは
    　前半のオーソドックスなミステリを、最後まで期待していたんだと思います。
    　いつも「驚かそう」と思って、読者の「期待」を裏切ってしまっていたんですね。
    　自分で言うのもなんですがアイデアを出すまでは、僕も人並みにはできているとは思うのです。
    　問題はそこからの料理の仕方、つまり演出だったり、読者の「期待」を汲み取った展開、ですね。
    　＞ハッキリと差別化できる要素を組み込んだ点も良かったと思います
    　とおっしゃっていただけたおかげで、「ネタ出しまでは間違っていないぞ」と、なんとか踏みとどまることができました。

    ＞また、エコー・チェンバーがインシンシアを傍に置く理由も腑に落ちない印象でした。
    　＜自分なりの改稿案＞のところとも関連するのですが、ここがネタの料理の仕方、という点で、あまりに無策だったなと思います。
    　キャラクターというのは言わずもがな（僕はわかってませんでしたが）、ネタを料理していくにあたって、最も重要なスパイスなんですよね……。それを本作ではまるで考えていなかったので、水炊きしてそのまま材料を出したようなもんです（最悪だ）。
    ＞ブレを解消するには、一貫性を持たせるのが一番早く、一貫性を持たせる一番早い方法は主人公に目的を作り、変えないことだと考えます。なので、主人公エコー・チェンバーがインシンシアを傍に置く理由を明確にすることで、解消できるのではないでしょうか。　
    　そして、キャラクターを描くということは「目的」を持たせ、人格としてぶれない軸を据えるということです。
    　本作に足りなかったキャラクターの描き方を、具体例を挙げて（具体例というのがポイントです！非常にわかりやすくためになりました）ご教示いただいたことで、よりやるべきことがはっきり見えたような気がします。

    ＞＜総評＞
    ＞ミステリの難しい部分をきちんと把握して対応し、キャラクターも個性的に描けている。技術の基礎がきちんとある作者様で、何を書いても一定以上のクオリティに仕上げることができる方なのではないかと思います。
    ＞ややクセの強いキャラクターの一人称でしたが概ね文章も読みやすく、安心して最後まで読むことができました。
    　なんというか、総評がお優しすぎて泣きました（え
    　これまで書いたことないジャンルにチャレンジしようと　SF→恋愛→コメディ→ホラーときて　今回ミステリを書いてみましたが、いっつも読者の期待を裏切ってばかりなので、そろそろ軸を据えたいと考えてます。
    　燕さんの評ほどは技術があるとは思えませんが、これからも細々とでも、やっていこうと思います。

    作品としてのブレ、毛色の違い。
    （そこで、もしかしたら読者の期待を裏切ってしまっていたのではないか）
    また、キャラクターの動機が薄く、一貫性が感じられない。
    （キャラクターの掘り下げが足りないのではないか）
    本作の問題点を、ここまで鮮やかに、かつわかりやすく示していただき感謝します。
    作品としてのブレ、の部分はまさに目から鱗が落ちるように感じましたし、
    キャラクターに関しても、他の方々の感想を見て感じていたことをよりはっきりと意識することができました。
    企画、参加して良かったと思っています。
    それでは、お読みいただきありがとうございました。

    E-Mail pass
2018年05月05日 21時43分00秒
 +10点
  • お疲れ様です。
    「インシンシア・プレイ～探偵《エコー・チェンバー》の流儀～」を読ませていただきました。

    全体的にみると、あまりミステリーを読まない自分でも分かりやすくまとめられていました。
    登場人物を探偵役含め、四人に絞ったのは読みやすかったです。

    主人公に関しては、冒頭の語りで中々個性的な人物かと感じましたが、その個性がいまいち作品内で発揮されていないと感じました。
    雰囲気はとても良いんですが、キャラクターが上手く機能していないと言いますか生き生きとしていなかった気がします。
    もっと主人公が読者の印象に残る表現もあったかもしれません。

    割とトリックもラストも平凡でしたし、もう一つ読者がびっくりするような展開があっても良かったかもしれません。

    以上となります。
    読ませていただきありがとうございました。

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Re: 2018年05月13日 20時56分35秒
  • たかセカンドさん、こんばんは。ご感想ありがとうございます。

    ＞全体的にみると、あまりミステリーを読まない自分でも分かりやすくまとめられていました。
    ＞登場人物を探偵役含め、四人に絞ったのは読みやすかったです。
    　短くわかりやすくテンポよく、を目指して書いたのでそう言っていただけると嬉しいです。

    ＞雰囲気はとても良いんですが、キャラクターが上手く機能していないと言いますか生き生きとしていなかった気がします。もっと主人公が読者の印象に残る表現もあったかもしれません。
    　そうですね。あまりに短さ、まとまりを意識するあまり、今回はキャラクターについて、
    　まるで手付かずといってもいい状態でした。ほとんどプロットを進めるためだけの、
    　～役でしかなかったと思います。キャラクター小説としての体を成していないのですね。
    　そのうえなにも考えずに書いたエコーやインシンシアがプロットに引っ張られ読者のヘイトを
    　買うキャラになってしまっているのですから、もう目が当てられません。
    　もうちょっと、というかだいぶ、キャラクターに対する態度を、改めねばならないと感じています。

    ＞割とトリックもラストも平凡でしたし、もう一つ読者がびっくりするような展開があっても良かったかもしれません。
    　実はこれまで何度も叙述やミスリード的な要素を話に取り入れてきた経験があるのですが、
    　ほとんど有効に機能した記憶がありません（苦笑　おそらくそういう才能が、自分にはないのだろうと思われます。
    　これからは身の丈にあった、地に足のついた創作をしていこうと思えたのが、今回の収穫だったのかもしれません。

    本作の、そして僕という作者の問題点を、短いながらも的確に示していただいている感想でした。
    それでは、お読みいただきありがとうございました。

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2018年05月04日 08時45分59秒
 0点
  • おはようございます。たぬきです。
    探偵エコーチェンバー！　かっこいい名前だぬ。

    ・全体的な印象、読後感
    　そうきたか！！　とはならず、誰か居るだろうなーと思いながら見てたら、やっぱりいたか。でも想像してた展開じゃない。って感じで、終始踊らされていました。

    ・キャラ
    　探偵エコー・チェンバー。いい名前ですよね。声に出して読みたくなる名前、エコーチェンバー。でも探偵が括弧で区切られてたり、なんかそれらしさにこだわりすぎてて、もっと別の意図があるんだろうなとすぐに感じました。語り口がいかにもなので、その辺ちょっと好きです。

    　容疑者４名。モブっぽかった。特に印象には残りませんでした。

    　インシンシア。性格悪いですね。悪いというか奔放ですか、こういったキャラは私自身あまり書かないので、ちょっと好まないです。いたずらで証拠を増やして主人公を困らせるお茶目さは好きです
    。
    ・その他雑感
    　読後感としてはあまりいいものではありませんでした。人殺しをして姿をくらます性質の悪い存在と言うのがどうにも受け付けません。これ、探偵エコーチェンバーを追う警察目線でも面白そうですよね。怪盗エコーチェンバーとか、やっぱり語感がいいですねエコーチェンバー。

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Re: 2018年05月13日 20時54分39秒
  • たぬきさん、こんばんは。ご感想ありがとうございます。
    たぬさん！たぬさん！　僕はいま作者レスそっちのけで、たぬさんが『Ｓｎａｉｌ　―利己的な恋の矢―』の作者さまであったことに感動しています！　
    結末はページ数の都合だったようですが、僕は個人的にたぬさんは少し暗い色調のお話のほうが個性が出ると思っていたので、『Ｓｎａｉｌ　―利己的な恋の矢―』で上位を獲れたことは、個性が認められたようで嬉しいのです。
    あと、同時に２作品も投稿され、『逆転生！』のほうは明るくギャグテイストな作品で、（点数はあまり伸びなかったものの）こちらのような作品も書けるたぬきさんの幅の広さも、さすがだなと思いました。
    なかなか暗い色調のほうの作品に評価がついてこなかったイメージがあったので（僕も長く離れているので的外れかもしれませんが）、『Ｓｎａｉｌ』が総合２位いったのがとにかくハッピーです。

    ……最初から横道に逸れまくってしまいました。それでは、中身に参りましょうか。
    ＞そうきたか！！　とはならず、誰か居るだろうなーと思いながら見てたら、やっぱりいたか。でも想像してた展開じゃない。って感じで、終始踊らされていました。
    　他の感想とか読んでて思ってたんですけど、たぬきさんってかなり勘が鋭いですよね。
    　なんかデスゲームとかだとその勘で最後まで生き残りそうなｗ　読書量の賜物だと思います。
    　
    ＞探偵エコー・チェンバー。いい名前ですよね。声に出して読みたくなる名前、エコーチェンバー。でも探偵が括弧で区切られてたり、なんかそれらしさにこだわりすぎてて、もっと別の意図があるんだろうなとすぐに感じました。語り口がいかにもなので、その辺ちょっと好きです。
    　ありがとうございますｗ　名前、個人的には気に入っていたので、言及してくださり嬉しいです。
    　探偵と助手の名前は、Enter Shikariというイギリスのバンドの歌詞から拾ってきました。
    　基本読者のヘイトを買うエコー・チェンバー（とインシンシア）なのでちょっととはいえ好意的な意見は意外でした←
    　容疑者は一切キャラを考えてなかったので純然たるモブです、はい（ダメだろ）。

    ＞読後感としてはあまりいいものではありませんでした。人殺しをして姿をくらます性質の悪い存在と言うのがどうにも受け付けません。
    　やはり心理的に抵抗感、あるいは嫌悪感が先に立ってしまう設定だったようですね。
    　もともとどんでん返し（というか転）の部分用に、プロットの都合から生まれた設定なので、
    　読者感情への配慮が著しく欠けていたな、と反省しています。
    　
    ＞怪盗エコーチェンバーとか、やっぱり語感がいいですねエコーチェンバー。
    　最後まで語感を褒めてくださってありがとうございます！（お優しいｗ）
    　わりと名前は考えるほうなので（物語との関連性は考えないけど）、そこへの言及は嬉しかったりします。

    とりあえず読者の感情に、あまりにも無頓着であったのが愚かでした。
    かなり感性がおかしいので、普通の感情の起伏を想定するのは難しいですが、
    それでも最低限意識しないと終わりだな、と実感しました。
    ヘイトをためず、できればライクを積んでいけるような構成とキャラクターを意識し、
    実際に文字化できるように頑張ります。
    そんなことより『Ｓｎａｉｌ』が総合２位めでたし！
    それでは、お読みいただきありがとうございました。

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2018年05月03日 22時15分27秒
 +10点
  • インシンシア・プレイ、拝見させていただきました。

    反転は、銃弾でしょうか？
    あるいは、探偵が犯人という構図かな？
    まあ、私的にはそこは気にしません。
    単純に面白いか詰まらないかが重要です。

    さて、今作。
    雰囲気は悪くなかったのですが、あまり来るもののない事件でした。
    いまいち説得力のない推理で、ん〜？　と、思っているとさらに真実。
    でもその中身も、ん〜？　となる理由で。
    ラストもなんだか投げっぱなしになってますし。
    まあ、西之島を持ってきたところは良かったし、期待感が持てたのですが、読み終えると、西之島は一切話に関わってなくて、一体なんだったんだ？　という残念感が。
    実際、推理物は書くの大変なのでその苦労は買いたいところですが、あまり高い評価が出来ない点はご了承を。

    それでは、執筆お疲れ様でした！

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Re: 2018年05月13日 20時50分09秒
  • ハイさん、こんばんは。ご感想ありがとうございます。
    まさか『回転寿司』の作者だとは……。ゾエアのときのイメージが
    あったので、いろいろ書けるのだなあすごいなあと（そりゃそうだ）。
    平均点も高く感想数ぶっち。さすがです。

    ＞反転は、銃弾でしょうか？
    ＞あるいは、探偵が犯人という構図かな？
    　探偵と助手の関係性（主と従）の反転……と、ひねりのないことを考えてました。
    　もともと企画が始まってから書いたものではなかったというのが真相です（汗

    ＞いまいち説得力のない推理で、ん?？　と、思っているとさらに真実。
    ＞でもその中身も、ん?？　となる理由で。
    ＞ラストもなんだか投げっぱなしになってますし。　
    　推理に堪えうる話は書けないので、あれは雰囲気だけでした（なので駆け足）。
    　たしかにラストも投げっぱです。これまで驚かせよう！と思ってなんやかや
    　書いてきましたが、根本的に、そういう才能はないのだと思います。
    　好きなのでは自分ができないからなのですね。これからはもうちょっと、
    　地に足ついた書き方をしてみようかと思ってます（それでなにができるのかはさておき）。

    雰囲気を盛り上げたつもりがなかったので、そこが地味に手痛いポイントかもしれません。
    ミステリを書いたことがなかったので一度書いてみたかったのですが、ふむｗ
    （苦労を買ってくださろうとしてくださってありがとうございます）
    完全に向いてないし、二度と書けないと思います。というか今はミステリ云々よりも、
    普通にキャラクター小説書けるかどうかの岐路なので、なんとか……頑張れたらいいな。
    それでは、お読みいただきありがとうございました。

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2018年05月01日 02時32分33秒
 -10点
  • どうも初めまして。
    入江九夜鳥と申します若輩者です。
    御作「インシンシア・プレイ～探偵《エコー・チェンバー》の流儀～」を読ませていただいたので感想を送らせていただきます。

    なお、僕の感想は基本的に辛口です。
    その点をご了承のうえ、必要な部分を取捨されてください。

    またこの作品を未読の読者様へ。
    この感想には以下ネタバレが含まれますので、ご注意下さい。



    ・以上の部分が僕の感想を書く際のテンプレだったりするわけですが、
    この作品の冒頭部分、

    「ボクに言わせれば『探偵は行く先々で、事件を起こしてこそ一流』なのだ。」

    の一文でこそこの作品のネタバレをしているようなものですね。
    僕は勿論、多くの読者がこの時点で、「あ、これ探偵役が犯人のパターンのやつだ」と直感したと思うのです。特に企画というこの場において、「感想書くぜ！　作品を読むぜ！」と待ち構えている文章書きに対して不用意過ぎる一言であったかな、と。

    んで、その不用意さというか想定の甘さというか、そう言ったものが全体的ににじみ出ている作品だったと思います。


    ・想定の甘さ、そのいち
    例えば「初日の出クルーズ」がこの物語の舞台ですが、これ、登場人物以外のスタッフは想定されていないのでしょうかね？
    つまり船の船長とか、機関士とか、一泊二日以上が想定される船旅で搭乗客の世話をする客室乗務員とかコックとか、そういう諸々の操船スタッフです。

    推理もの、いわゆるミステリにはひとつのルールが存在します。
    それはつまり、「描写されていない物・者はトリックに使用しない」。
    逆に言えば「描写されている物・者の関係からトリックを導くことができる」ということです。

    漁船程度のサイズならまだしも、五人から十人程度の人々が乗り込み、かつ外洋で二日以上の生活が可能という時点でそれなりのサイズの船と想定されるのですが、これら操船スタッフは存在しないのでしょうか？
    搭乗客であるインシンシアをナンパするような性格の主催者兼被害者森脇が、自分ひとりで客の世話をして回っていたとも思えず、当然彼が死んだ以上船を操ることができる人物が別にいるはずで、その操船スタッフが描写されていない時点でミステリではないというか、作者様に真面目に推理させようとしているという姿勢が見当たらないと推理できます。

    そんなことを考えながら物語を読み進めていくと、一番最後にインシンシア嬢の登場。
    エコー・チェンバーが彼女を紹介するセリフ「わがまま娘」という言葉から、

    「あ、このインなんとかさんがやらかして、エコーがそれを誤魔化すパターンだ」

    そのそもタイトルからして、「インシンシア・プレイ」＝「インシンシア嬢のお遊び」ですから。

    もう全部わかってしまう訳で。オチが読めるならば未だしも、見え透いているのは興が削がれる以外の何物でもありませんね。


    ・想定の甘さ、そのいちとか言いながら既に三つくらい上げてしまってここの部分をそのににするかそのよんにするか悩むことになるという想定の甘さ

    は、どうでもいいとして。
    どうして主人公及びヒロインの名前をエコー・チェンバーだったりインシンシアだったりにしたのでしょうか？
    調べてみたら「インシンシア＝不誠実、偽善的、言行不一致」でした。
    それを「エコー・チェンバー＝共鳴室」でインシンシアの行動を共鳴させる人物……とかそんな関係を表したかったのでしょうか？

    他の登場人物が全員日本人名なのに？

    主要登場人物の名前に物語上の意味を持たせたり、何らかの法則や作者のお遊びを反映させることはよくあります。例えば「名探偵コナン」とか舞台が米花町ですからね。
    ですが、それはあくまで、気づいた読者がくすっと笑えばいいな、くらいのものです。

    作者様はド真ん中をぶち込んで、台無しになるとは思わなかったんですかね？

    これが、登場人物全員が横文字の名前だったらそこまで悪目立ちはしなかったでしょう。
    探偵エコーと、その助手シンシア。被害者フォルストン、容疑者マーキア。ほらそれっぽい。

    この物語であれば別に無理に西之島沖や船の中で登場人物日本人でやらなくともいいのでは、と思うのです。

    その程度のことを想定しなかったのであればそもそも想定が甘い、
    読者がそこまで読んでくると思わなかったのならばやはり想定が甘い。

    見透かされる仕込みは仕込みとも伏線とも言いません。
    全てが終わってネタ晴らしの時に初めて、「あ、あの時の！」といわせて伏線です。


    ・ところで、テーマの逆転はどこに？
    作者コメントにあるように、逆転ではないかもしれませんね、この作品。
    その時点で「逆転企画」参加作品としてどうなんだ、と思わなくもないですが、
    じゃあどこが反転してるんですかね？

    実は探偵が解くべき謎を更に難解にしているところ？
    被害者を装ったインシンシアが実は加害者だったところ？

    どちらも読者の想定内なので、何ら反転も逆転もしていません。
    あえて言うなら、「ただの詐欺だよなこれ」というくらいですかね。
    最初から最後まで見透してしまっているので、騙されたという気にもならないですね。
    逆転、反転というからには、立場とか状態とかが転がったはずなのですが。

    エセ探偵が事件をいいように引っ掻き回すと読者は見透かしていて、その通りのことが起きて、

    ……えっと……それで？

    というのがこの作品の感想です。


    別に探偵とそのヒロイン役が事件の主犯であるのは構わないのですが、
    どうせだったらちゃんと犯人に仕立て上げられるヤツが必要になることくらい想定しておいてほしいものです。

    以上を踏まえて、この得点とさせていただきます。
    必要な部分を取捨して今後にご活用下さい。

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Re: 2018年05月13日 20時47分38秒
  • 入江九夜鳥さん、こんばんは。ご感想ありがとうございます。

    ＞特に企画というこの場において、「感想書くぜ！　作品を読むぜ！」と待ち構えている文章書きに対して不用意過ぎる一言であったかな、と。
    　そうですね、おっしゃる通り、不用意過ぎた一文でした。
    　一応、こういう真相なので「抵抗感があるだろうしちょっとほのめかしておこう」程度の気持ちで書いたけどモロだよ！という。入江九夜鳥さんは相当ミステリを読み慣れている方だとお見受けしましたので、これは致命的としか言えません。

    ＞これ、登場人物以外のスタッフは想定されていないのでしょうかね？
    　そうですよね、そこ、考えてはいましたがスルーしました。
    　今回僕が唯一気にしたのはページ数で、なるべく短くしたいと考えていました。　
    ＞その操船スタッフが描写されていない時点でミステリではないというか、作者様に真面目に推理させようとしているという姿勢が見当たらないと推理できます。
    　ここでおっしゃられているように、もともと推理してもらうつもりは一切なかったので（真正面から推理してもらえるような強度のネタではないので）、スタッフや船の説明してると尺がな……と思いカットしました。
    　僕はミステリは好きですが推理はそれほどでもないので、推理好きな方には顰蹙だろうなと思います。この話は所詮ミステリ風です。

    ＞・想定の甘さ、そのいちとか言いながら既に三つくらい上げてしまってここの部分をそのににするかそのよんにするか悩むことになるという想定の甘さ
    　悔しいですが、ちょっとここで笑ってしまいました。
    　「推理させようとしているという姿勢が見当たらないと推理」もそうですが、今見ると随所に遊び心があっていいですね。

    ＞どうして主人公及びヒロインの名前をエコー・チェンバーだったりインシンシアだったりにしたのでしょうか？
    　明らかに場から浮いている、世間の常識からも浮いているという意味でカタカナにしました。
    　それとタイトルもキャッチ―にできるかな、と。
    　正直、感想をいただいた当初はヘコみましたが、名前の意味まで調べて言及してくださる方って
    　めったにいないので、そこは最初から嬉しかったです。

    ＞・ところで、テーマの逆転はどこに？
    　この話はもともと企画用に書いたものでなないので……あとはお察しです。
    　個人的に「どうも企画は意外とテーマへの言及がないな」と思っていたこともあり
    　（それはあくまで加点要素として取り扱っていない、という認識ではありますが）、
    　反転は探偵と助手の関係、くらいしか考えてませんでした（想定の甘さ）。


    書き上げるだけで満足してはいけませんね。
    色々考えないといけないな、と遠い道のりを測っています。
    それでは、お読みいただきありがとうございました。

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2018年04月30日 19時59分52秒
 +10点
  • タカテンと申します。
    拝読いたしましたので感想を送らせていただきます。

    推理モノの雰囲気が抜群な作品でした。
    太平洋を行くクルーザー船での密室殺人、主人公によって見定められるどこか怪しげな船客たち、そして探偵らしいケレン味たっぷりな言動の主人公……。
    そもそも文章からして、ああ、これは面白いぞという雰囲気が冒頭で早くも伝わってきます。作者様はかなり書きなれている方でしょう。

    （以下ネタバレです。未読の方はご注意ください）







    ただ、それだけに冒頭の『探偵は行く先々で、事件を起こしてこそ一流』という「え？　お前まさか……」って嫌な予感を持たせる一文が、たとえ助手による犯行とは言えそっくりそのままな結末だったのは拍子抜けしました。
    もちろん、猶本のセリフだと思っていたのが、実はそれまで登場していなかった助手のインシンシア嬢だったとか、披露した推理は皆を欺く為のもので真実には気付いていたとかの工夫はなされていたと思います。
    しかし、それらを加算してもやはりあの真相は、それまでの雰囲気が良かっただけに勿体無いといわざるをえません。

    真相解明に向かってどんどん読者の期待値があがり、それに応える結末を用意しないとなかなか評価がもらえない辺り、改めて推理モノって難しいなぁと痛感します。

    それでは自分からは以上です。
    執筆お疲れ様でした。

    E-Mail pass
Re: 2018年05月13日 20時45分19秒
  • タカテンさん、こんばんは。ご感想ありがとうございます。

    ＞推理モノの雰囲気が抜群な作品でした。
    　自分ではそんなに力入れたつもりがなかったので意外でした、ありがとう、ございます？
    　しかしそのことで無駄に期待値をあげてしまったようなので、なんか書き慣れるのもというか、文章だけに凝るのも善し悪し（むしろ悪し一辺倒？）だなあと思いました（苦笑

    ＞ただ、それだけに冒頭の『探偵は行く先々で、事件を起こしてこそ一流』という「え？　お前まさか……」って嫌な予感を持たせる一文が、たとえ助手による犯行とは言えそっくりそのままな結末だったのは拍子抜けしました。
    　いやあ、はは……ここはあからさまに不用意でしたね。
    　一応、こういう真相なので「抵抗感があるだろうしちょっとほのめかしておこう」程度の
    　気持ちで書いたのですが、予想以上にバッド・センテンスだったようです。
    　僕的には最後の「仮面（２つめの叙述）」がオチのつもりだったのでそんなに意識せず……不用意に。ううむ……読者との目線の乖離、感性のすれ違い、深刻。

    どうやら無意識のうちに期待値をあげていたようで反省しました。
    期待感に応えるネタなど当方にはないので（苦笑、どうにか期待値低空飛行でいきたいものです。
    雰囲気を褒めてくださりありがとうございます。
    それでは、お読みいただきありがとうございました。

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2018年04月30日 14時50分13秒
 0点
  • 拝読させていただきました。

    まずひとつ言えるのは、逆転というテーマを満たしていないのではないかということです。
    作者メッセージで「逆転ではなく反転かも」と触れられていますが、それもよく分からない。反転ってどの辺でしょうか？
    それと、探偵側が殺人を犯すというのは、推理ものとしてアリなんでしょうか。個人的には、単なる自作自演に映ってしまいました。あれだけ探偵の自分語りをしてハードルを上げておいてこのオチでは、ちょっと読者としては納得がいかないと思います。
    また、探偵の精神年齢幼そうな心理描写、それに西川の台詞がかりすぎている台詞も気になりました。意図しているならば言うことはないですが、もし違うのであれば改善の余地があるかと。

    かなり厳しいことを書いてしまいましたが、このコメントが作者様にとって少しでもアドバイスになることを願っています。
    創作活動お疲れさまでした。
    今後もぜひ頑張ってください。

    E-Mail pass
Re: 2018年05月13日 20時43分23秒
  • クロウさん、こんばんは。ご感想ありがとうございます。
    ＞まずひとつ言えるのは、逆転というテーマを満たしていないのではないかということです。
    　そうですね……。この話はもともと企画用に考えたものではなかったので、やはり無理が　あったようです。
    　反転は探偵と助手の関係……というつもりでしたが、説得力は乏しいでしょう。
    　僕個人としての観測範囲では、企画ではあまりテーマに言及しないという（それはうまく使っていても加点材料にならない、という意味ですが）印象があったので深く考えずに投稿しました。
    　
    ＞探偵側が殺人を犯すというのは、推理ものとしてアリなんでしょうか。
    　うーん、一応「暇に飽いた銘探偵が殺人を起こしたがってる人に封書を送る」という短編は
    　存在しますが、直接手を下すものはないかもです。

    ＞あれだけ探偵の自分語りをしてハードルを上げておいてこのオチでは
    　そう、これです。この探偵の語りは良くなかったですね。
    　尺だけ意識してキャラクター性をまったく考えていなかったにもかかわらず、
    　間を取るためとはいえこういうとこだけいっぱい書いてしまったのは明らかな失策です。

    ＞また、探偵の精神年齢幼そうな心理描写、それに西川の台詞がかりすぎている台詞
    　愚かなことにこの話、まったくキャラクターというものを構想に入れていませんでした。
    　ページ数を圧迫すると考えたからですが、仮にもライトノベル発表の場で、あまりにも愚策だったと思います。
    　エコーは事件の真相（助手が犯人）というところから出発し、気づけばこんなのになっていました。
    　こんな馬鹿なことをするのは、きっとろくでもない奴に違いない、と考えたっきり読者好感度は度外視です。
    　キャラクター、キャラクター、キャラクター。もともと描くのは苦手なのですが、今回、ついにキャラクターを
    　意識することすらできなくなっている、という病状の進行度を改めて実感できました。
    　もうライトノベルは書けないだろうな、とは思いますが、まあ、身の丈に合ったなんやかやを見つけて、細々とやっていこうと考えてます。まずは自分がなにを得意かを把握しないとなあ……。

    キャラクターの重要性を（今更）改めて実感できたのが一番の収穫でした。　
    目的、過去、信念。そういった肉付けをしないといけません。
    それでは、お読みいただきありがとうございました。


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2018年04月30日 13時05分50秒
 +20点
  • 読んだので感想を置いて行こうと思います。
    推理物、殺人事件、短い枚数でちゃんとどんでん返しもあり、よくまとまっていたと思います。
    いや、僕はこういうジャンルの作品をそれほど読み慣れているわけではないので細かいことはわかりませんけどね。
    小落ちと大落ちとに分かれてるところがやっぱり良いと思いました。
    これで終わったらあっさりしすぎてるよな、と思ったところにあのラストですからね。
    短い枚数でテンポ良く進んでいながら、内容的に贅沢なつくりになっていたと思います。
    最後の最後、どうやって船からいなくなったのかはちょっとわからなかったのですが。

    感想は以上です。これからもがんばってください。

    E-Mail pass
Re: 2018年05月13日 20時38分43秒
  • ゆーぢさん、こんばんは。ご感想ありがとうございます。
    かなり好意的に読んでくださったようで、すべての感想を読み終えた今となっても、
    ゆーぢさんが本作の理想の読者様であったのではないかと思うほどです。
    今回僕が意識したのは「短くまとめる」”のみ”であったことから、そこに触れていただけたのは嬉しいです。
    その他はてんでダメですが「短いなかに三転まで入れる」は、なんとか達成したのかな。

    ＞最後の最後、どうやって船からいなくなったのかはちょっとわからなかったのですが。
    　ごめんなさい、そこはファンタジーということで、当方なにも考えておりませんでした。
    　やっぱり、投げっぱなしは良くありませんね。直さないといけないのはこういうとこです。

    ある程度は楽しんでいただけたようでほっとしております。
    『マイナスかける、マイナスかける、』は１６枚のなかに起伏あり、結びはポジティブと、
    取り入れたい部分が光る作品でした。次は、もうちょっと好感度意識して頑張ります。
    それでは、お読みいただきありがとうございました。

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合計 12人 110点

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