最高のパフォーマンス

Rev.02　枚数： 11 枚（ 4,205 文字）
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　吐く息が白を通り越して銀色になってしまっている、寒い夜。
　そんな南関東にあるまじき気候の中でも、海辺の公園は盛況だった。
　年の瀬の波止場には、船に施された装飾を一目見ようと人が集まっていて、おしくらまんじゅう大会でも開かれているみたいだ。
　その人だかりから小銭を頂こうと屋台がさりげなく軒を連ね、年末にふさわしいお祭りムードを更に盛り上げる。少し待てばきっと何処からか陽気な音楽でも掛かって来るのではないだろうか。
　そうなったら少し邪魔だなぁ、などと思いながら俺も準備を始める。
　何せ、大道芸には音楽が欠かせない。俺が用意した曲が別の曲で掻き消されでもしたら台無しだ。
　船の止めてある海辺の広場から少し離れた道の途中。屋台や人の熱が少し引き始めた場所に、俺は小道具を広げた。
　いつもの広場はご覧の有様、今日はここでしかパフォーマンスの許可が下りなかったのだ。しかし俺は却って燃えていた。
　誰もいない所に人を集めてこそ、大道芸なのだ。

　　　　　　　　○

　人を惹きつけるもの、それ即ち愛嬌なり。
　この格言は一昨年くらいに俺が勝手に作った物だが、なかなかいいことを言うなと我ながら思う。
　髭面でデブのお前に愛嬌があるのか、と笑う友人もいる。そして俺はその度に「何を言うか、これこそ愛嬌の塊、愛嬌の権化だろう」と声高らかに反論するのだ。
　こんなにまるまっちい体の親父が、ボーリングのピンをにこやかに空中に投げまくるのが面白いのではないか。マスコット的可愛さに満ち溢れているだろう。
　医者に「いい加減にしないと死ぬから」と本気で怒られるほど血圧が高いのと、小さすぎるお子様にたまに絶叫するほど泣かれることは、一旦置いておく。
「来年は少し痩せるか」
　ほろ苦い思い出を振り払うように口に出してみて、そういえば去年も同じような事を言っていたな、と思い出した。はて、あの時の俺は何処に行ってしまったのか。
「おっちゃんこれ何～？」
　金属の筒を腕に抱えた男の子が、弾んだ声で俺に聞いてくる。
　広げていた小道具の一つだ。
「それはね、おっちゃんの乗り物だよ。それに板を乗っけてバランスを取るんだよ」
「えぇ？　そんなことしたらコロコロ転がっちゃうじゃん」
「おっちゃんは凄いからね、転がらないんだよ。もう少しで見せてあげるから、それは置いといてくれないかい」
　男の子は素直に筒を地面に置き、キラキラした目を俺に向けた。
「俺もやりたい！」
「ダメダメ。おっちゃんはいっぱい練習してるから大丈夫だけど、本当はすっごく危ないんだ」
「俺も練習するもん！」
「ちょっとの練習じゃ難しいな。そうだな……」
　俺は少し走って、見えない壁にぶつかるフリをする。
「え!?　え!?　なになに、おっちゃんどうしたの？　何にぶつかったの？」
　男の子は俺がぶつかった空中を恐る恐る触っているが、そこには当然何も無い。目を白黒している男の子の隣に手を添えて、俺はまた見えない壁を作り出す。ペタペタと空中に手を添える俺を、男の子は目を丸くして見つめていた。
「……魔法？」
「おっちゃんくらいになると、透明な壁を出したり消したり出来るんだ。これくらい練習しないと、ここらへんにある道具に触っちゃいけないんだよ」
　俺はビニールテープで区切った四角を指でなぞりながら男の子に教える。地面に描かれた正方形を男の子は俺の指と共に辿り、やがてコクコクと頷いた。
「わかった。しょうがないから今日は見てる。今度俺にも教えて！」
「大きくなったらな。今日はお母さんと一緒に見にきな」

　　　　　　　〇

　準備を終えてバッテリーから変換して引っ張ってきた電源をオンにする。頭に引っ掛けた小型マイクに二、三度音を拾わせて、問題が無いことを確認した。
　その音につられてこちらを振り向いたカップルに笑顔を振りまく。カップルや家族連れは足を止めてくれることも多く、歓声を上げてくれることも多い。彼ら彼女らがはしゃぐ姿が、俺の一番の好物なのだ。一人よりも二人、二人よりも三人の方が、素敵なリアクションをしてくれる。その笑顔が俺を更に調子に乗らせる。どんどん調子に乗りたいのだ。どんどん楽しい空間を作りたいのだ。
　俺はその為にいるおっちゃんなのだから。
　曲を流す頃には沢山の人が俺の周りに集まっていた。
「どうも、初めましての方が多い……いや初めてですかね。僕の事知ってるよ～って方は手を大きく上げて――」
　誰の手も上がらないまま、笑いと共に始めるジャグリング。曲に合わせて体を回転させる度に拍手の波が俺に押し寄せる。
　俺がシステムエンジニアを辞めて大道芸人になった理由はこれである。この拍手と歓声の為だ。
　仕事に疲れた俺の帰り路に、ある日沸いていた歓声。笑顔の人々、その中でキラキラと光る芸人の男。
　ここまで人を集められるようになるのに三年掛かった。ストリートパフォーマーが笑顔で人前に立つ裏で、血を吐くほどの努力をしている事を身を以って知った。
　しかし俺は今や同業となった憧れの彼らにも負けているつもりは全くない。俺はこの三年間誰よりも努力をしてきたと自負しているし、今目の前にいる皆の笑顔を見ればそれが間違っていないと思うのだ。俺は誰よりも、上手くなったはずだ。
　ジャグリングが終わり、独楽回しが終わり、最後に俺はトランクを取り出して運び出す。しかしそのトランクは何故か空中で固まってしまい、押しても引いても動かない。
　笑いに沸く周りの空気にほだされて俺の動きはさらに激しくなる。それにつられて冬の空気はさらに温められ、俺はさらに激しく動く。
　衝立の裏のエスカレータを降りて、どこからともなく吹く風に吹き飛ばされ、俺は見えない何かに体をポンポン弾き飛ばされる。
　見えない何かから逃げ出して、ようやっと逃げ切れたと思ったら、見えない壁に閉じ込められる。パントマイムは俺の一番得意なパフォーマンスだ。先の男の子が魔法と見間違えた通り、俺の演技は他のパフォーマーよりも頭一つ、いや、三つほど抜けている。芸人仲間にも、師匠と言える男にも「あまり上手くなりすぎるなよ」と苦笑いされる程の腕なのだ。
　俺の迫真の演技に、その場は揺れるような笑いに包まれた。
　曲はクライマックス、熱気は最高潮。最後に俺が両手を高らかに上げたところで、拍手が霰の様に降って来る。
　惜しむ声に包まれながら今日の公演は終了となった。
　ビニールテープで囲んだステージの端に置かれているシルクハットの中に、お金がどんどんと放り込まれていく。それをお辞儀をしながら見守り、俺は自然と笑顔になる。お客さんの笑顔も好きだが、お金だって当然好きなのだ。
　その場で挨拶をし続けたが、やがて熱と共に客も引いて行った。
　先ほどまでの熱が嘘のように、また冬の冷気がこの場を満たしていく。大道芸人になって唯一寂しいと感じる瞬間がこのパフォーマンス直後の静けさである。夏祭りで最後の花火が打ちあがった後に似た、言いようのない喪失感がこの身を襲う。
　しかしそれが次のパフォーマンスへの意欲と繋がるのだから良しとしよう。
「よし」と呟き、次へと向けての準備を開始する。
　まずはハットの中の金を回収して――。

　ゴン。

　俺の額に衝撃が奔った。
　一瞬真っ白になった視界に足元がふらついたが、すんでのところで持ち直す。一体何が起こったのか分からず、辺りを見回すがそこには何も無い。
　気を取り直してもう一度ハットに近づくと、次は鼻先に衝撃が奔った。鼻血が出るところだ。
「何だ何だ……？」
　恐る恐る手を伸ばしてみると、そこには自分の指先よりも冷たい透明な壁があった。急に何故こんな所に。
　わけもわからずその壁を右に避ける。そしてすぐ、壁にぶつかる。
　右にも壁があり、左にも壁があった。
　後ろも、手を伸ばした上にも壁と天井がある。
　いつの間にか、見えない何かに、閉じ込められていた。
　この寒い中でツツ、と変な汗が流れて来た。一体何が起こっているのか。
　叩いてみても押してみても、壁はびくともしない。天井もダメだ。何をしても俺はそこから出られなかった。
　その内また、人が集まって来る。
　俺が出られない様を見て、歓声を上げ始める。拍手が雨の様に降って来る。
「違う、違うんだ！」
　本当に俺は閉じ込められてるんだ！
　しかし俺が訴えれば訴える程、周りは笑いに包まれる。歓声は一際大きくなり、俺の叫びはかき消される。
「……ねぇ、あのおじさん大丈夫なの？」
　中学生くらいの女の子が、俺の様子に違和感を覚えた様だった。
　よく気付いてくれた、外からこの壁を何とかしてくれ！
「大丈夫だよ！　あのおっちゃんは自分で壁を出したり消したり出来るんだ！」
　鼻高々に説明するのは、先ほど俺の設営を見ていた男の子。得意げに腕を組んで、中学生に説明している。何をしているんだあの子は！
「少年！」
　俺は思わずその子に声を掛ける。違うという事を何とか説明しなければ。
「おっちゃん！　もう帰るって母ちゃんに言われちゃったから、今度教えてね！」
　男の子は俺の言葉を聞かず、ハットに金を入れて手を振って去って行った。
　曲の無いパフォーマンスには終わりはなく、客は流動的に入れ替わって行く。満足した客から少量のお金を入れてその場を去って行き、俺が助けを求めている事に気付く者は無い。
　時間が経つに連れてハットの金は溜まっていき、それに反比例するように俺の体温は下がって行く。
「お願いだから助けてくれ」
　意識が朦朧としてくる中で、壁に寄りかかって道行く人に声を掛ける。
　俺が声を掛けたカップルの男の方は「すっげぇリアルっすね！」と興奮気味に笑い、お金を入れて行く。
　誰に声を掛けても、ほとんど同じ反応だった。
「なあ、頼むからここから出してくれ――」
　大道芸人として俺は練習を重ねて来た。誰にも負けないくらい、より精確に、よりリアルに。
　結果として返って来るのは、笑い声と拍手のみ。
「リアルだなぁ」
　感心する声。
　誰もが俺を見ているのに、俺が密室に閉じ込められいてる事に気付かない。ハットの金だけが虚しく増えて行く。
　パントマイムは上手くなり過ぎてはいけない。
　俺はここから抜け出せたら他の人にも注意してやろうと思う。
　しかし、抜け出せるのだろうか。
　何しろ、俺よりもパントマイムが上手い人間を、俺は知らないのだ。
　彼らはきっとすでに――。
かずほ 4bc3JM6Tl6

2018年01月02日 18時19分51秒 公開
■この作品の著作権は かずほ 4bc3JM6Tl6 さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
◆キャッチコピー：その密室を見て、誰もが拍手する
◆作者コメント：パントマイムは冬にやってはいけないのかもしれませんね。いや、夏は夏で熱中症になりますね。

2019年05月21日 01時26分38秒
 作者レス
  • 紫野一歩と申します。
    こちらの企画に投稿させていただき、ためになる感想を沢山頂きました！本当にありがとうございます。
    この度は自分のブログにてこちらの作品を投稿しようと思い立ち、ブログを見た方がたまたまこちらの作品を見ていた場合に、盗作だと思われるのでは！？と穿ちまくって考えた挙句、コメントした次第です。
    ここで読んで頂いたという思い出が何とも消し難く、跡地化はせずコメントのみさせていただきます。
    また参加させてください。

    E-Mail pass
2018年01月27日 23時24分54秒
 +30点
  • かずほさんへ

    作品、読みました。
    （※本文は企画期間中に書いたものです。重複する質問・意見・感想等があるかもしれませんがご了承ください）

    この短さで大道芸と密室がここまでうまく絡み合うとは思いませんでした。
    前半が少しスロースタートかなと思ったのですが、そこまで気にするものではありませんでした。
    特に、出られないと判明してからは一気に面白さと恐怖が増したように思います。
    見物の少年とのやり取りも見事に回収されていました。

    とても質の高いシュールな一作でした。

    感想、短くてごめんなさい。
    大きな粗がなく、ただただ素敵な一時を過ごすことができました。
    読めてよかった。この作品に出会えて嬉しいです。

    それでは執筆お疲れ様でした。

    E-Mail pass
2018年01月26日 08時53分16秒
 作者レス
  • みなさま

    感想ありがとうございました！
    参考になるご意見やお褒めの言葉、凄く嬉しく思います。やっぱりこういう企画はいいですね！
    感想一つ一つに返信させて頂こうと思いますが、もし間に合わなかった時の為にまずはこの場でという事で……。

    短い文章の中で取捨選択に悩む場面は多々ありましたが、結果として自分のイメージした舞台が読んでくれた人に伝わったようで、それがとても嬉しいです。

    創作意欲がモリモリ湧いて来ますね！
    また企画があったら参加したいなって思います！
    みなさまありがとうございました！そして、企画お疲れ様でした！

    E-Mail pass
2018年01月26日 01時44分48秒
 +30点
  • 　読了しました。

    　掌編と言って良い文章量なのに、高い順位をマークしていたため、気になって読みました。
    　すごく上手でした。ショートショートを募集する公募なんかに出せばふつうに拾われると思います。

    　壁の中にいるかのようなパントをしていたら、自分で作り出してしまった壁の中に本当に閉じ込められてしまう、というアイディア自体ももちろん秀逸ですが、見せ方が素晴らしいです。
    　パントマイムの名士だからこそ、壁から抜け出せないということをいくら訴えても、リアルな芸であるかのようにしか見てもらえない。ここが面白かったです。話として無茶苦茶上手だと思います。

    　文章も良い。とても読みやすかったです。

    　短くまとまった話だけに特に書くことないし手放しに褒めるしかないんですが、せっかくここまですごいなと思ったのだからそれは作者に伝えておいた方が良いのかなと思い、このように筆を取らせていただきました。
    　感想期間中に感想を書けなかったのは申し訳なかったです。もっと早く読んでおくべきでした。

    　創作お疲れ様です。

    E-Mail pass
2018年01月20日 23時45分56秒
 +20点
  • こんにちは。
    おっちゃんー！
    いい人なのに、ここでおわるとは…
    助かって欲しかったです。
    でも、驕るなという戒めで見るならこれはアリなのかも。
    執筆お疲れ様でした。

    E-Mail pass
2018年01月19日 23時17分11秒
 +30点
  • 『最高のパフォーマンス』拝読しました。感想を書かせていただきます。


    　大道芸人が意外な目にあってしまう…というお話でした。

    　序盤から、作者さんの筆力の高さが感じられる作品だったと思います。
    　文章はとても読みやすく、描写にも過不足がなかったと思います。
    　序盤から中盤にかけては、大道芸人である主人公の心境や芸の様子が描かれており、心温まる物語といった感じでした。
    　芸が始まる前の、子供とのやりとりも和みますし、芸の様子にもリアリティがあり、よく調べられているなと思いました。

    　が、終盤にその空気が一変するんですよね。
    　一気にホラー調になり、これには驚きました。
    　パントマイムが上手すぎる故に助けてもらえない、というのが上手いですし、「あまり上手くなりすぎるなよ」の伏線もスパイスが効いてますね。
    　
    　このオチの付け方は、まるで星新一の作品を読んでいるようでした。とにかく上手いですし、素晴らしい掌編だと思います。

    　ただ、気になる点もありまして…。

    　ひとつは主人公がこんな目にあってしまう理由がないこと。「上手くなりすぎるなよ」の伏線があるとはいえ、仲間や師匠が、そんなに強く忠告をしたようには書かれていません。
    　なにより、主人公は特に悪いことをしていないんですよね。なので、こんな目にあってしまうのはかわいそうでした。
    　主人公が痛い目にあうオチがつくトーリーは、主人公に自業自得感があると、よりオチが際立つと、個人的には思います。
    　なので、仲間や師匠の強い忠告を「あいつらは俺の実力を妬んでるだけだ」と考えて突っぱねたり、客に対する感謝がまったくなく、「客が金を払うのは俺の実力からすれば当然」みたいに考えたりするなど、少し主人公に悪人感があったほうが、もっとオチが活きた気がします。

    　もうひとつは、前半と後半の路線にギャップがあること。
    　前半は心温まる物語という感じだっただけに、オチのホラー感にはかなりのギャップを感じました。（そのあたりが、「主人公がかわいそう」と感じた理由のひとつでもあると思います）
    　前半の心温まる路線も、それはそれで面白いのですが、とにかくオチの切れ味がいいだけに、前半は少し省略して、全体をもうちょっと短くしたほうが、掌編としてのまとまりはよくなったのかなと思います。
    　まあ、前半とのギャップが意外性を生み出している部分もあるので、そこは難しいところなのですが…。

    　そんな感じで気になる部分もあったのですが、この枚数でとても楽しめる作品だったということで、この点数としました。


    　感想は以上です。執筆お疲れさまでした。

    E-Mail pass
2018年01月19日 23時12分13秒
 +30点
  • 冬企画の執筆、お疲れ様でした。
    御作を拝読いたしましたので、感想を記したいと思います。

    ※本感想にはネタバレがあるかもしれません。

    ＞芸人仲間にも、師匠と言える男にも「あまり上手くなりすぎるなよ」と苦笑いされる程の腕なのだ。
    腕に自信のある、大道芸人の話のようです。

    ＞後ろも、手を伸ばした上にも壁と天井がある。
    ま、まさか……、そんな……
    こんな密室があるなんて。
    斬新なアイディアに驚きました。

    ＞「大丈夫だよ！　あのおっちゃんは自分で壁を出したり消したり出来るんだ！」
    冒頭のエピソードが効いていますね。
    裸の王様みたいで、上手いです。

    ＞時間が経つに連れてハットの金は溜まっていき、それに反比例するように俺の体温は下がって行く。
    ハットの中のお金がとても気になりました。

    ＞彼らはきっとすでに――。
    最後の一文にドキリとしました。
    こうなったら最後の手段、体温が完全に奪われる前に素っ裸になって……。
    ところで警察や消防に通報された場合、外の人はこの密室の中に入れるのでしょうか？
    という風に、いろいろと考えさせてくれる楽しい作品でした。

    ちなみに、大道芸といえば、個人的には加納真実さんの仮面舞踏会が大好きです。
    拙い感想ですが、よろしくお願いいたします。

    E-Mail pass
2018年01月19日 18時32分19秒
 +20点
  • 　執筆おつかれさまです、燕小太郎と申します。
    　拝読しましたので、感想を残したいと思います。

    ＜一通り読んでの第一印象＞
    　世にも奇妙な物語でありそうなお話でした。
    　ちょっとした小話を作る際には、お手本にしたいくらい綺麗にまとまったお話だと思います。

    ＜密室について＞
    　何もないところに壁を作り出すパントマイム。
    　その壁に閉じ込められて出ることができない。まさに密室。密室がテーマの企画に投稿する作品としては、まさにズバリの作品だったと思います。

    ＜良かったところ＞
    　完成度ですね。
    　この字数のままであるなら、およそ他に言うべき言葉が見つかりません。
    　不思議な話で後味も良い物ではないものの、『見えない壁を作る』というパントマイムと、『見えない壁に閉じ込められる』という超常現象との相性が抜群に良い。こうなってしまった原因は特に示されていないのに、どこか納得してしまっている自分がいる。
    　本当に『世にも奇妙な物語』に採用されてもおかしくないような、綺麗にまとまったお話だと思います。

    ＜気になった点＞
    　マイナスになっていた、というわけではないのですが、やはりこの枚数だと面白さの手数が少なくなるなとは感じました。
    　例えばキャラクターに感情移入できるほど接する時間がなかったこと、救いのない結末なので後味が明るくないこと、どうしてこうなってしまったのかという点が謎として残ったままになっていること。これらを解決した短編以上の作品の方が、面白さの数は多くなるでしょう。
    　もちろん綺麗にまとまった短編を狙ったのでしょうし、この指摘は野暮だとは思うのですが。

    　自分なりの改稿案
    　うーん、考えてみましたが、自分には思いつきませんでした。
    　枚数を増やすことで起承転結を意識した短編以上の枚数にすることは可能ですが、今作の良さはやはり11枚に凝縮された完成度の高さだと思います。これを増やすとなるとほとんど別作品になってしまうでしょう。
    　なので、このままが最高だと思います。改稿案はありません。

    ＜総評＞
    　パントマイムは上手くなり過ぎてはいけない。どこか矛盾していて奇妙な一文ですが、まさに今作を表した一節であり、とても印象に残りました。

    　拙い感想ですが、少しでも参考になる部分があれば幸いです。
    　

    E-Mail pass
2018年01月09日 23時43分37秒
 +20点
  • こんにちは。
    「最高のパフォーマンス」を読了しましたので、感想を書きます。

    とても面白かったです。
    読み終わってから、タイトルを見ると、なんとも言えない気持ちになりますね。



    以下、ネタバレがあります。



    主人公と行きかう人達とは、お互いに姿が見えるのに、声も聞こえるのに、主人公の状況が分かってもらえない。
    もどかしいし、怖いですよね。
    最後、どうなるか分からないという終わり方も良かったと思います。

    とても読みやすい文章でスラスラと読めました。
    内容も、パフォーマンスの面白さと、そのあとにくる怖さに無理がなくて、作者様の筆力の高さを感じました。
    この作品を読めて良かったです。

    執筆お疲れさまでした。
    素敵な時間をありがとうございました。

    E-Mail pass
2018年01月08日 22時33分30秒
 +20点
  • こんばんは。
    「最高のパフォーマンス」を読ませていただきました。

    全体的にみると掌編として完成された作品かと感じました。
    冒頭からほっこり。子供を怖がらせずパントマイムでやさしく諭す主人公がステキでした。

    ラストに向け伏線も絶妙に張ってあり、確かな技術を持った作者様かと思います。

    ただ、主人公がこんな良い人なのにラストがちょっとかわいそうな感じになっていたのが少し残念でした。
    とても好感が持てる素晴らしい主人公なんですよね。
    もし、主人公が技術はあるけど、称賛だけが目的でお客さんを下に見ているようなキャラだったら相応の報いがあったと、納得はできたのです。

    ただ、これは自分の好みであり、いちゃもんだと思いますのでスルーしてください。

    読ませていただきありがとうございました。

    E-Mail pass
2018年01月08日 20時51分39秒
 +20点
  • ・こんばんは、たてばんと申します。
    　感想です。

    ・掌編のお手本のような作品だったと思います。
    　お題の『密室』の使い方も上手で、作者様の高い力量が垣間見ることができました。

    　さて、ちょっと気になったのは、意識が朦朧としている人間って、目を見れば大体分かります。
    　『目は口ほどに物を言う』という言葉があるように、目はとても正直です。
    　ハットにお金が貯まっていく状態なら、誰かしら気付いても良さそうな気がしました。
    　閉じ込められてから結構時間が経っているようですし。

    　まあ、なにか指摘しないと悪い気がしたので言っただけで、気にする必要は全くないです。

    ・マジな指摘はこれです。

    ―ジャグリングが終わり、独楽回しが終わり、最後に俺はトランクを取り出して運び出す。しかしそのトランクは何故か空中で固まってしまい、押しても引いても動かない。
    ・一人称で大道芸をやっている最中の描写ですが、ここで『何故か』というのは変だと思います。
    　自分でパントマイムで動かないようにしているのに、『何故か』なんて言われたら、『なにか意にそぐわない不思議な力でも起きているのか』と思ってしまいます。
    　ここは、『自分のパントマイムの技』だと描写するべきだったと思います。
    　僕はてっきり、不思議な超能力で大道芸を邪魔された、と勘違いしました。

    ・拙い感想ですみません。
    　では、失礼します。

    E-Mail pass
2018年01月06日 17時25分00秒
 +20点
  • 道化のお手伝いを引き受けた所、何故かPTAから苦情を喰らったことがあります。izawaです。

    そうきたか！

    って思いました。ええ、アイディアの勝利ですよ。
    最後……出られたか出られなかったかは想像に任せるのかぁー。いや、それがまた良いのかもしれませんね。
    多分、このお話は理屈っぽくない方が良いかも。

    パフォーマンスの描写がとても微笑ましくて優しい気持ちになりました。

    ちなみに、私、路上でギター弾いていたらバイクで轢かれました。
    執筆お疲れ様でした。

    E-Mail pass
2018年01月06日 16時40分59秒
 +30点
  • 　ほぅ…
    　いやぁおもしろかったです。うまくなってはいけないってそういうことか。こわっ
    　緩急がすばらしいですね。うわーすごーい、パントマイム上手ー、ってかんじで完全に観客の気持ちで眺めてたら、とつぜんです。うおってなりました。
    　ショートショートの醍醐味ですね。いやあいいもの読んだ。
    　でわでわ～

    E-Mail pass
2018年01月06日 11時25分31秒
 +20点
  • 　あけましておめでとうございます。瀬海と申します。
    　拝読いたしましたので、感想をば。

    　他の方も仰っている通り、完成度の高い掌編でした。
    　ジャンルとしてはホラーに分類されるのでしょうか。不条理ものにも分けられそうですが、何であれ面白く読ませていただきました。
    　自分の作り出した壁の中に閉じ込められる主人公……なるほど、「密室」をこう使うのですね。ミステリ的な密室と、「秘密の部屋」という意味合いでしか思いつかなかった自分には、とても勉強になる作品でした。ありがとうございます。

    　特に指摘を差し上げる点もないのですが、それだけでは申し訳ないので一つだけ。
    　御作の特徴は状況に対する意外性、つまりパントマイムから密室に繋がっていくという展開にあると思うのですが、良くも悪くも、この一点に依存してしまっているようにも感じられます。
    　たとえば「主人公が壁に閉じ込められる」という結末を、「不本意な現状に取り囲まれている」などといった寓意に沿って描いたのであれば、文学的な意味は高まりこそすれ意外性は薄れてしまったでしょう。
    　そうなれば予想がついてしまったと思いますので、今回ほどには楽しませていただけなけなかったかも知れません。しかし上記の文で「不条理ものにも分けられそう」と申し上げているように、主人公の努力が負の方向へはたらいてしまう今作の結末では、カタルシスを覚えること意外に楽しみ方が見出せなかったのも事実です。

    　いえ、誤解なきように言い添えておきますが、本当に上手いんです。それだけでいいじゃないかと思ってしまうほどに。
    　ですので、あくまで感想に困った末のいちゃもんだと受け取っていただければ幸いです。……そんな感想一々書くなという話でもあるのですが。

    　読ませていただき、ありがとうございました。
    　ではでは、引き続き企画を楽しみましょう！

    E-Mail pass
2018年01月05日 11時19分04秒
 +30点
  • こんにちは、拝読させて頂きました。

    まず、文章が目を惹きました。
    すらすらと読めて、描写もごく自然なので、するするとストーリーを目で追うことができました。

    パントマイムという仕事から、閉じ込めらていくところ、それに誰も気付かないところ。

    一見簡単なことを書いているように思えますが、それを納得させるように書くのは技術がないとできないような気がしました。

    とても勉強になる作品でした。

    掌編としても完成度の高い作品だったと思います。

    苦言を述べるとするなら、お話自体は良くできていると思うのですが、冒頭のところからの穏やかな話のから、最期のホラーな終わり方までの展開の落差が、あるといえばあるのですが、どこかちぐはくなような気がしました。つながっているようで、ブツ切れているような。

    でも、これはこういうお話なんだと思いますので、僕の気にしすぎかと思います。
    楽しんで読むことができました。読ませていただきありがとうございます。

    執筆お疲れ様でした。

    E-Mail pass
2018年01月03日 23時38分04秒
 +30点
  • 　こんばんは。ひながたはずみと申します。作品を拝読させていただきましたので感想など残させていただければと思います。

    　久し振りの企画、御作を最初に読ませていただきました。当たりだと思いました。
    　パントマイムは冬と夏にやってはいけないものですね。

    　短い枚数の中に伏線があちこちにちりばめらていて、よく考えられている構成だと思いました。
    　設定も枚数の中に含めなかった設定が少なからずあるのだろうと邪推します。書き上げたものをそのまま上げたというより、きちんと練って仕上げたという印象を持ちました。

    　ネタばれになりますので詳しくは記しませんが、密室の使い方も良かったと思います。


    　気になった点が1つ。声、です。
    　大道芸のパントマイムを私はあまり詳しくは知りませんが、この作品で主人公が披露していたパントマイムは無声のもの、昔のチャップリンの印象を持ちました。
    　初見の人が多いとはいえ、パントマイムと聞いて思い描くのはたぶん無声のものだと思うんですよね。私の読み違いでなければ、主人公の声は聴衆に届いているように読めました。だとしたら、誰も違和感を感じないというのは少々おかしい気がします。手を差し伸べる人はいるんじゃないかなぁと思いました。
    　私の限られた知識と主観に基づいているので違っていたら申し訳ないです。


    　企画参加お疲れさまでした。またどこかでお会いしましょう♪

    E-Mail pass
合計 14人 350点

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