太陽と月に背いて

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『太陽と月に背いて』はフランスの詩人ランボーとヴェルレーヌとの交流を描いたアニエスカ・ホランド監督の映画作品です。まだ十代だった売り出し中のディカプリオが美しく演じているということで話題になった名作であり、とよきちさんの『カシオペイヤと夜の船』というタイトルを見たときになぜか連想した作品でもあります。もしまだ観たことがないということでしたらどうぞご覧ください。もちろん、ほも映画です。









※4月10日12時15分にSNS上で更新したとアナウンスがあったので、本稿はその更新分を反映した感想となっています。ご了承ください。



 こんにちは、mayaです。お世話になっています。

 まず、端的に言うならば、ユニークなだけに難しい作品を書いたなあ、というのが素直な感想です。面白いか、面白くないか、で問われたならば、一応は前者かな、と答えるでしょうか。ただし、それは序盤の文章の魅力に寄るところが大きく、その為にやや含んだ物言いになっているといえます。

 そもそも、本作に配されている主要キャラクターは二人ともユニークに過ぎます。
 一人は思春期の女の子なのに、なぜかプリクラ帳に作家のプロフィール写真を貼り付けて持っているという面白い性癖(?)を有していますし、もう一方はというと、誤解を恐れずに言えばいわゆる発達障害児です。

 何より、御作のストーリーは、そんな障害をもった男の子がシャボン玉を吹くという「不思議な」行動によって、女の子に夢を追いかけてほしいと伝えるものであって、そこに例のプリクラ帳が絡んだり、エンデの作品『モモ』のディテールが加わったり、あるいは「白川夜舟」やタイトルの「夜の船」が関わったりする為に、幻想的で映像としてのセンスは良いものの、ややばらけて曖昧なものにも映ります。

 また、実のところ、一読しただけでは腑に落ちない部分が幾つかあり、秀でた文章力やシーンの想起力に比してキャラクターとストーリーは、「夢」や「シャボン玉」のようにどこか捉えどころがなく感じました。

 以下が簡単な総評となります――

―――――

<良かった点>
・文章とディテール
・お母さんを代表とするキャラクターのやさしさ。あるいは児童文学をディテールにもって表した牧歌的世界
・作者が何を伝えたいのかはっきりとしていること

<悪かった点>
・潤さんの挫折の原因が描かれていない
・入夜くんが「不思議」止まりで、いまいちキャラクター性が掴み切れない
・序盤から中盤にかけてストーリーの行方が分かりづらい

 以下、その詳細を述べたいと思います――

―――――

<気になった点>
◆pp7-8について
 すでにSNS上でも伝えましたが、当時は徹夜でわりと意識が飛んでいたこともあり、時間を置いてもう一度確認したところ、やはりこのページ間に違和感がありました。
 もしかしたら、作品上では二行空けとかがなされているんでしょうか? 現状だと、時系列が飛んでいるのに、行空けしないで続いているように感じてしまいます。エブリスタとかいうところの仕様なのかな?

◆pp22-24
 この間に「第四章」を挟む意義を見いだせませんでした。起承転結を意識なさったのかもしれませんが、御作は序破急で構成されているので不要に感じます。

―――――

<キャラクター>

◆登場するキャラクターが何歳くらいなのか、いまいち分からない

 まず、とよきちさんの作品ですから、キャラクターは全員男で間違いないですよね?
 主人公の潤さんはスカートをはく性癖を持っている男の娘でしょうし、お母さんは「お母さん(※♂)」に決まっていますよね?
 まあ、そんな真実への追求はともかく……年齢については「二年」という以外に明確な記述がなかった為、キャラクターが小学生なのか、中学生なのか、はたまた高校生なのかはっきりしなかったのは確かです。
 それに嫌らしい言い方をすると、キャラクターの年齢が上がればあがるほど、入夜くんというキャラクターは発達障害児童として「不思議な子」と捉えづらくなるという側面もあります(小学校ぐらいなら「不思議」で通るかもしれませんが、中学なら障害と受け止められがちですし、高校で進学校ならポリティカルコネクトネスを意識した受け止め方をされる可能性もあります)。
 そういう意味では、キャラクターの年齢設定については、いっそ小学校高学年ぐらいに下げてもいいように思えます(ていうかこの子達、多分、中学二年生ですよね?)。

◆入夜くんという名の「喪失」

 とよきちさんが自覚的だったかどうかは分かりかねますが、キャラクターにもテーマがあるとしたら、入夜くんは喪失だといえるでしょうか。
 ビートルズの「イエスタデイ」は、失った彼女を想い、前日に戻ってやり直したい、というラブソングですし、「シャボン玉」といえば野口雨情の唱歌を出すまでもなく、消えるもの、もしくは亡くなった者に対するメタファーの代表格です。
 そもそも、「入夜」という名からして暗闇を連想させますし、そういったネガティブなメタファーを勘案すると、一見、ハッピーエンドに映る御作の終盤において、入夜くんは実は潤さんに最期のメッセージでも送りたかったんじゃないか、あるいは二人はこれで別離するんじゃないかと勘ぐってしまいます。
 もし、とよきちさんが潤さんの背中をぐいと前に押してあげたいとシンプルに考えていたのでしたら、これらのディテールは若干合わないものだったようにも見えます。

―――――

<ストーリー>

◆読者にとっては、アルゴ号の進路、あるいは船の航路が分かりづらい

 正直なところ、初読時は本作がどこに向かっているのか分からずに戸惑いました。
 というのも、潤さんがどんな課題を抱えているのか、あるいはどうすればそれを乗り越えられるのか――pp27に至るまで明確になっていないからです。
 言ってしまえば、作者さんにとっては明瞭なので作品に色々配置して工夫しているものの、読者にはあまり届いていないといったところでしょうか。
 もちろん、再読すれば、プロローグで出てくる「プリクラ帳」が実は作家志望のメタファーになっていてそれが投げ捨てられていること、また第一章冒頭の「夢」に出てきた城壁がラストの「大きな城のようなアスレチック」に掛かっていることなどが分かりますが、それでも初読で類推するのは困難です。そういう意味では、御作は、再読することによって読者に気づかせる作品になっているとも言えます。
 全ての小説に明確なゴールが必要だとはさすがに思っていませんが、本作は青春小説ですから、潤さんという若者の苦悩、あるいは葛藤はもっとはっきりと、かつ早いうちに提示し、その克服によってドラマを際立たせた方がベターだと考えます。

◆潤さんの挫折が見えない

 御作で最大の瑕疵はここにあります。
 御作において、潤さんの苦悩は「夢」、「紙吹雪」や「シャボン玉」といったディテールを通して語られますが、一方でそんな葛藤に至った原因は全く語られていません。故に、おそらく潤さんは何かしらの挫折があって、創作ができず、プリクラ帳に作家の写真を貼って、それで代わりに満足するようになったのだと読者は想像するしかありません。
 結果として、終盤の出来事を経て、潤さんがなぜ「真っ暗闇な夜の海」に漕ぎ出そうとするのか――その決意がいまいち分からずに終わっています。

―――――

<設定・ディテール>

◆入夜くんと夜の船

 御作は「ごまかし」とそれを克服した上での「出発」がテーマとなっています。作中に出てくる「白川夜舟」がそれを文字通りに意味しています。
 実際、潤さんにとってのそれらはきちんと描かれています。では、作中で「白川くん」と呼ばれた当の入夜くんはどうでしょうか? 残念ながら、わたしには入夜くんの「ごまかし」と「出発」がいまいちよく見えませんでした。もっとも、それを短編サイズの分量でやるのは厳しいかもしれませんが……
 また、それと併せて、潤さんがこれから「世の中」の「逆らいがたい大きな流れ」という名の荒海のただ中に、障害をもった入夜くんをパートナーとして舵を切っていくということならとても素敵なことに思います。あくまでも私見ですが、可能ならば、そこまで明確に描いてほしかったところです。
 最後に、映画『ショーシャンクの空に』のラストシーンを上げるまでもなく、再出発といえば海と船は大切なモチーフとなりえます。そういう意味では、御作の最後の舞台はなぜ海ではなかったのでしょうか。別にアスレチックではなくて、テトラポットでも良かったはずなのに。そこらへんは気になりました。



 最後に、当然ですが、わたしにとっては悪く見える部分が、別の人にとっては尖がった魅力に映ることもあります。そもそも、わたしの主食は海外の文芸作品とSFですから、こういったタイプの作品にはわりと厳しめに感想を書きがちです。だから、感想の取捨選択は他の方の意見も取り入れて、しっかりとなさってください。
 何はともあれ、良い作品をありがとうございました。けつの穴がほっこりと弛んでなかなかに心地良かったです。

一路マヤ XHGoM1WP2I

2016年12月31日 11時11分12秒 公開
■この作品の著作権は 一路マヤ XHGoM1WP2I さんにあります。無断転載は禁止です。

■作者からのメッセージ
やあ、ようこそ。すまないがとよきちさん以外は帰ってくれないか?

2017年04月13日 12時22分47秒
2017年02月02日 20時06分14秒
2017年01月24日 23時32分21秒
作者レス
2017年01月15日 23時12分41秒
+10点
2017年01月15日 21時39分54秒
+10点
2017年01月14日 19時03分29秒
+20点
2017年01月13日 21時08分43秒
+10点
2017年01月12日 21時05分18秒
+20点
2017年01月12日 19時53分45秒
-10点
2017年01月12日 01時56分37秒
+40点
2017年01月12日 00時01分58秒
+10点
2017年01月05日 20時26分19秒
+20点
2017年01月01日 21時32分28秒
+30点
2017年01月01日 14時20分56秒
-10点
合計 12人 150点

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