僕の患者さんの鼻血が止まらない!

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 それはそれは、盛大な鼻血だった。
 吹き出す量も多ければ、勢いも申し分なく、洗濯したての白いシーツは見事に鮮血に染め上げられた。
 ベッドでうつ伏せになっていた女子高生は、ハンカチで鼻を押さえながら起き上がろうとし――
「エロエロエロ」
 今度は、胃の内容物を盛大に――

 *******

「あんたも災難だったわねー」
 勤務時間終了後、ベッドのシーツ類を全部洗濯機に放り込み、除菌シートで周辺を拭きまくっていると、由奈先輩がニヤニヤとうれしそうにやってきた。
 ピンクの白衣に、白いサンダル。でかい胸に短めの茶髪。ピクンなのに白衣って、字面としてどうよと思うものの、似合いすぎるほどに白衣の似合う先輩サド女王こと高村由奈は、今日もご機嫌らしい。
「大事にならなくて、ま、まぁ、よくはないけどよかったです」
 あの後、院長が対応して病院に連れて行き、女子高生に特に異常はないという。
「治療代は、僕持ちになりましたけど……」
「まー、あたしら、しがない治療請負人だからねー」
 鍼灸マッサージ院である、高村治療院のスタッフは外部発注費として、患者さんが払う治療代の七割を受け取れる仕組みになっている。指名が入れば指名料として別に五百円。治療に使う道具類もオーナー持ち。保険診療をしない実費診療の治療院としては、破格待遇な方だ。
 もっとも、固定給はないので患者がなければ月給はゼロだったりするが。
「僕なんか、それに加えて由奈先輩のおこぼれで生きているコバンザメですけどね」
 由奈先輩は、一日の施術時間のほとんどが指名で満杯になっており、予約時に”じゃあ、誰でもいいです”という患者さんを僕が拾わせてもらっているのだった。
「まぁまぁ。腐らない腐らない」
 なにがうれしいのか、由奈先輩は僕が落ち込んでいる時ほど上機嫌になるようで、ニコニコしている。
「ってか、吹き出すほどの鼻血に嘔吐って、あんた一体なにをやったのよ?」
 由奈先輩はベッドサイドにある等身大の骨格模型を脇に移動させ、僕が掃除しやすいようにしてくれると思いきやポーズをとらせたり、自分の白衣を着させたりして遊び始めた。
「なにもしてませんよ。前のカルテの記載を見て、似たように施術してただけで……」
 白衣の下に着ていた黒のタンクトップから白い素肌を露出させ、骨格模型と小躍りする由奈先輩にイラッとしながら答えた。
 患者さん一人一人にカルテがあり、その日担当した施術者の名前と、施術内容を記入することになっている。
 今回の女子高生は、僕が担当するのは初めてで以前の記述を読み込んでから施術にあたった。
「あの子、わたしも何回かやったことあるけど、特になにもなかったけどなー」
 と言いながら、骨格模型の後ろに周りこみ、両手に大量の本を持たせて僕の前にやってきた。
「明日マデニ、鼻血ニ関ワルトコ、読ンデオイテネ。ゼンブ」
「なんで、カタコトなんすか」
 生理学、解剖学、臨床医学総論・各論、中医学、救急救命マニュアル、鍼灸臨床、按摩マッサージ指圧原論。
 由奈先輩は、僕の指導担当でいつも何かあると猛烈な追い込みをかけてくる。鬼か。
「もうあの子、来ないと思うけど傾向と対策練っておいてね」
 由奈先輩のおじいさんが高村治療院のオーナーで、由奈先輩の言葉は常に業務命令なのだった。骨格模型の裏で、笑ってない笑みで笑いかけられ、僕は密かに震え上がった。
 つまるところ、今日僕は徹夜しなければならないらしい。

******

「そうきたか」
 次の日の施術中のことだ。僕は思わず、つぶやきをもらしてしまった。
 運命というものは、いつも酷薄で想像を越える攻撃をしかけてくる。
 治療院に来る患者さんの中には、実にさまざまな人がいて、たとえば今由奈先輩が施術している田中さんという男性は、いつも由奈先輩を指名する。
 手くせが悪く、うつ伏せでマッサージをしてもらっている間中、その両手は由奈先輩の体を触ろうとイソギンチャクのようにうごめき続ける。
 しかし、由奈先輩も慣れたもので、左手で田中さんの右手関節をひねり上げ、右足で左手を踏んづけ、残った右手のみで施術してしまう。端から見ると、実にシュールな光景が無言のうちに繰り広げられることになるのだった。
 ”どうする? ”
 受付に座っている院長から、再度ジェスチャーが発せられた。
 どうする? とは、入った指名を受けるか否かということだった。受けたくなければ”やだ”というサインを返せば、”今日は、もう指名で一杯なんです”と、穏便に拒否できることになっている。
 受付で院長と話しているのは、昨日の鼻血女子高生だった。学校帰りのようで、このあたりでは有名な私立の制服を着ている。
 昨日の今日で、しかも今度は指名までしてきた。
 なぜだと思うものの、今月の予想給料からして僕に反論の余地はそもそも――

******

 その結果。見事に、またも鼻血が出た。それもドバーっと。まじか。

******

「ちょ、ちょ、ちょっとあんた」
 ちょうど、田中さんの施術が終わっていた由奈先輩がさすがに飛んできて、裏口から僕は外に連れ出された。
 女子高生は、ティッシュを鼻に詰めてもらってから院長がスタッフ控え室に有無を言わさずご案内中だ。
「どぉ言うこと!?」
「僕が聞きたいですよ!?」
 うつ伏せで背中の両側を、親指で指圧した瞬間だった。トータル施術時間3秒。意味が分からない。
 僕は詰め寄ってきた由奈先輩を、真剣に見つめ返した。
 どう考えても過失がない。
 由奈先輩は、いつもいい匂いがするとか、腕を振り回して怒ると胸が巧みに揺れ動くとか、そんなことはどうでもいい。心底どうでもいい。
「動脈出血でもなかったし、頭蓋骨折でもない、あれはどう考えてもキーゼルバッハの静脈出血です!」
 腫瘍による動脈出血であれば、拍動性に出血するはずだし、頭蓋骨折による脳からの出血であれば、一目見て分かるような中枢神経症状が出るはずだ。
 鼻血のほとんどは、鼻腔にある粘膜が薄くなったキーゼルバッハの出血点からの静脈出血であると、昨日読んだ本に書いてあった。
「じゃあ、なんで、今日も鼻血が出たのよ!」
「分かりませんよぉぉぉおおお!!!」
 小声でやり合いながら、僕は腹をくくって額がぶつかるくらい顔を由奈先輩に近づけた。
「でも! 理由が分からなくても! 僕は患者さんを見捨てたりしませんからね! 誠意をもって対応しますからね!」

******

「その時、私は悟ったんです。あぁ、鼻血って素晴らしいって」
 控え室に入っていくと、ティッシュを鼻に詰めた女子高生は立ち上がって熱弁をふるっていた。
 長い、まっすぐな黒髪は彼女の情熱に応えるようにひらひらと揺れ、握りしめられた指先はピンクに充血している。
「薄い粘膜が破ける瞬間の、えも言われぬ快感。どろり濃厚な血液が流れだし、口腔に広がる錆びた鉄の味。胃の中に落ちて、ずっとなくならない血液の不快感。どれをとっても、今までの人生では感じたことのない感覚の連続だったんです」
 女子高生の、うたうような歓喜に満ちた声は鼻声であっても艶と透明感を失っていない。
 院長は沈痛な面もちで、絶句してしまっている。
 うん、あれだ。関わったらあかんやつや、これ。
 僕の二十一年間の人生経験で、最大級の警戒音が脳内に白々しく鳴り響いたのだった。

******

「で、どーすんのよ、あれ」
 女子高生が帰ったあと、勤務時間終了後に由奈先輩と院長と僕の三人がスタッフ控え室で向かい合うことになった。
「本人がいいって、言ってんだからいいんじゃねぇの?」
 院長が砕けた口調で、ゲンナリして言った。
「そーいうわけにも、いかんでしょ」
 さすがの由奈先輩も、口調が心なしかお疲れだ。
 経営は全権を院長が委任されていて、最終的な決定権は院長にあるものの、何かあると由奈先輩も経営に加わっている。
 会議はスタッフ控え室で行われ、だいたいほぼ毎日居残り勉強させられている僕も、必然的に参加することになるのだった。
「だからっつって、今さらどーすんだよ。断りの電話でもいれるか?」
 予約帳を指先でコツコツと突っつきながら、院長が言った。
 院長は由奈先輩の二つ上の二十五歳ながら、ベッド五台総スタッフ数六人の高村治療院をまとめ上げ、指名数においても由奈先輩に次ぐ実力者だった。長身痩躯のイケメンでまじイケメンなのだ。いつもは。
「いくら、鼻血が快感だったからって一週間分指名で予約入れるか? 新手の嫌がらせか?」
 そうなのだ。くだんの鼻血彼女は僕を指名し、明日から一週間分の予約を入れて帰った。なぜだ。
「そう言うなら、なんで予約取っちゃったのよ。断るなら、その時でしょうが」
 ごもっともな由奈先輩の意見に、さすがの院長もくぐもった唸り声しか出せなかった。
「あのキチった雰囲気に押し切られたんだよ」
「どーすんのよ」
 半分すわったような、由奈先輩の目つきを受け止めきれず院長が僕の方に顔を向けた。
「つまり、あれだ。鼻血さえ出さなきゃ、ただのいい客ってこったろ?」
 さも名案を思いついたかのように、院長はどや顔を向けてきた。
 慰安マッサージ目的に来院する人は客、真剣に治療を求める人は患者と院長は呼びわけているらしい。
「頑張れ」
 さわやかに僕に言い放つと、そそくさと帰りじたくを始めた。
「ふぁ!? いや、だから、どうしたらいいんです?」
 そもそも、なぜ鼻血が出るのか分からないのだ。対応のしようがない。頑張りようがない。
「いいか、新入り」
 院長は入社二ヶ月の僕のことを、いまだに新入りと呼ぶ。
「俺たちは、人間相手の仕事をしてんだ」
 両肩に手を置き、真面目な面もちで語りだした。
「原因不明の病気や症状、不定愁訴とこれから先もずっと向き合い続けていくことになる」
 瞳は深い泉がたたえる静けさににも似た真剣さを帯び、薄い唇は情熱をもってなめらかに回る。
「お前が、今向かい合っている鼻血は、もはや鼻血であって鼻血でない」
 つかんだ両肩には、マッサージで鍛えたリンゴをも握りつぶす握力が込められて、僕は黙って聞いているしかできない。
「治せない病気に向かい合ったとき、どうするか? という、治療家にとっての命題。あるいは、人生をいかに生きるべきかと問うとき、羅針盤となるべき個々人の尊厳、いや、もはや死生観ともなるような誇りの在り方を、お前は今鼻血に問われている。鼻血によってお前という人生が試されているんだ。これは、お前の戦いだ。お前にとっての聖戦だ。どうするかは、お前が決めろ」
 なんだか、深そうな小難しいことを早口でまくし立てられた僕は、ただただ目を白黒させるだけだった。
「とりあえず、これ、明日までに全部観とけ」
 大量の施術DVDを置いて、院長は帰っていった。僕は、一体いつになったら眠れるのだろう。

******

 翌日。今日も、鼻血女子は鼻血を出した。ただ、30分の施術時間は無事過ぎて、鼻血を出したのは会計中だった。進歩したと言えなくもないが、原因が不明なのは変わりない。
「もしかして、今日は鼻血が出ないんじゃないかとハラハラしましたけど、やっぱり先生の施術はすごいですね」
 心なしか、あるいは貧血のせいか青白い頬を紅潮させて鼻血女子はご満悦だった。なぜだ。
 理知的で落ち着きがあり、スタイルも態度も申し分ない。鼻血好きという変態でさえなけば、と思わない日はない。
 なんとしても、この子を救わねば。
 うれしそうに、鼻血について語る女子高生をよどんだ目で見つめ返しながら、僕はそう決意した。

******

「あの客、もう切れ」
 と、藤木さんがばっさり切ってきたのは、勤務時間終了後に僕と由奈先輩が鼻血を出さない施術方法について不毛な言い争い、もとい勉強をしているときだった。
 藤木さんは、高村治療院の最古参で年齢は五十過ぎになる。髪型をオールバックにしたダンディ親父で、予約が半年先まで詰まっているという、由奈先輩を抜いてぶっちぎりのナンバーワンだ。
「切れって、どういうことです」
 藤木さんの言葉に、由奈先輩が険のある顔で立ち上がった。
「分からないのか? ありゃ適応外だ。鑑別診断もできないのか?」
 刃向かってくる由奈先輩に、藤木さんも一歩も引かず怒気を込めた声で静かに答えた。
 鑑別診断というのは、患者さんの病気を見極めて”自分に治せるか、治せないか”を判断することだ。治せないと、判断することも治療家にとって重要なことだった。
「分かりません。どう適応外なんですか?」
 由奈先輩も藤木さんの怒気に引かず、敵意を込めて言い返した。
「本気で言ってんのか? 三日も出続ける鼻血、しかも必ずそこの新入りの施術中にだ。どう考えても、何かおかしいだろうが。病院に通わせるなり、保護者に連絡するなり、ともかくなんでもいい、これ以上来させるな。うちに来るたびに血みどろになる、なんざ売り上げに響くんだよ」
 藤木さんは、どうやら本気で怒っているようだった。
 由奈先輩のおじいさんが、ここをやっていたときからの一番弟子で、代替わりして他のお弟子さんたちが辞めていく中、たった一人残ってくれたのが藤木さんだったらしい。
 院長という役職こそ引き受けなかったものの、名実ともに高村治療院のトップであり、治療院にかける思いは人一倍のようだ。
「治らない客は、切れっていつも言ってんだろ」
 冷徹な物言いに、由奈先輩はうつむいて唇を噛んだ。
 藤木さんは、徹底したポリシーがあって、治せると判断した患者さんは癌であっても治すし、治らないと判断した患者さんは一瞬で切り捨てる。つまり、治療拒否するのだ。冷たく言い放されて、泣きながら帰っていく患者さんを何度も見たことがある。
 どれほど、技術と経験があっても僕は、ああは成りたくない。
「治るかもしれないじゃないですか!」
 目に涙をためながらも、由奈先輩は言い返した。
「かもだと。かもで治療すんじゃねぇ!」
 藤木さんが、珍しく声を荒げた。
「おめー、そんな性根で今までやってたのか? 治療は絶対だ。絶対に刺ささなきゃ治らねぇ。そこまで確信してから鍼師は刺すんだよ。ピンポイントで、癌細胞の一個を狙う撃つぐらいにな。マッサージだって同じだ。治るかもしれない、なんて気持ちでやって治るわけねぇだろ」
「じゃあ、見捨てろって言うんですか!?」
「そうだ」
「でも!」
「未熟なお前が悪いんだよ」
 切り捨てるように言われた最後の言葉に、もう由奈先輩に反論する気力は残っていなかった。

******

 由奈先輩に、ドライブに誘われた。
 ジーンズとスニーカーにTシャツというラフな格好に着替えた由奈先輩は、僕を白いフィットに乗せた。
 殺風景な車内で、唯一のインテリアとしてデフォルメされた小さな骸骨がバックミラーからぶら下がっている。
「くそー、偉そうに言いやがって。あのやろー」
 由奈先輩と藤木さんは、特に仲が悪く仕事に問題が発生することはないが、治療方針が真逆過ぎる。
 何かあると、いつもぶつかって由奈先輩が言い負かされるのだった。
「ちょっとばかし、何でも治せるからって調子に乗りやがって」
 このあと、由奈先輩のグチは日が昇るまで続いたが、五十時間ほど眠ってなかった僕は、早々に寝落ちしてしまっていた。

******

 翌日。
 もはや、鼻血も四度目ともなると余裕が出てきた。ティッシュを脇に用意し、兆候が現れると鼻にティッシュを詰めながら起こし、控え室に案内してお茶を出す。完璧だ。
 藤木さんの視線が背中に突き刺さるが、彼は今八十分コースに入っている。

******

 仕事が終わると、今日は早々に院長に誘われた。
 鼻血女子に関わるようになってからというもの、どろり濃厚な日々が続いている。
「藤木さんがさ、あの女子高生を断れって言ってきた」
 院長の車であるスカイラインの助手席に乗ると、何気ない口調で言われた。
 スタッフ用に、いつも冷蔵庫に何本か入れてある缶コーヒーを僕に渡してからエンジンを回した。
 暖気させるためか、院長はシートに深く座って両手を頭の後ろで組んだ。
「俺はさ、やっぱ経営継続を一番に考えなきゃならないから、藤木さんの言うことはもっともだと思うんだ」
 それだけ言って、缶コーヒーを開け一口だけ飲むと車を出した。
「お前は、どう思う?」
「僕は」
 どうしたらいいか、ずっと考えているものの答えは一向に出てこない。
「まぁ、どうするかってことは、難しいもんだよな。藤木さんの言うように治療拒否ってのも、立派な答えだと思う。お前が拒否することで、他に誰か治してくれる人を探し始めるかもしれない。病院に通うようになるかもしれない。そこで、白血病の発症が分かって、早期治療ができて完治するかもしれない。逆に、無責任に引っ張って手遅れになっちまうかもしれない」
 白血病になると、出血が止まりにくくなるし、鼻血が出る病気や難病はいくつもある。
「あるいは、そういう病気はぜんぜんなくても鼻血が出ることは多々あるし、気虚や血虚から来ているとしたら、病院じゃお手上げだ」
 気虚や血虚は、東洋医学的な体の診方で、強引に言ってしまえばエネルギー不足な状態をさす。その治療には、”補法”という手技が必要だ。
「ただ、例の鼻血女子が気虚や血虚が原因かというと、そうでもなさげだ」
 院長も、原因を究明しようとして彼女の脈を診たり、首回りのツボの反応を確認させてもらっていたことがある。
「つまり、ほんとに原因不明なんだよな。まぁ、じゃっかんもう少し病院で調べてみる余地はあるものの、答えのない問題にぶち当たっちまったってことだ」
 それから、しばらく無言で走ってから再び院長は口を開いた。
「お前、どうしたい?」
 ずっと、問われ続けられている問題に僕は即答することができなかった。
「答えられなきゃ、それでもいいんだ。いつか答えを出せる日がくるかもしれないしな。ただ、答えを出せないってんなら、院長としては治療院を守るために、あの患者は切る。俺が切る。お前は黙って見てればいいさ。お前がそれでいいならな」
 僕は、またも返答に窮してしまった。
 治療を拒否することが、患者さんのためになる場合もあると言われてしまうと、単純な善意だけで引き受け続けるわけにもいかない。
 しばらく無言でスカイラインを走らせてから、院長はようやく口を開いた。
「ところでさ、あの田中さんて、お前どう思う?」
「あの田中さんですか?」
「あの田中さんさ」
 僕と院長の共通の田中さんと言うと、由奈先輩の体を触ろうとして毎月通ってくる患者さんしかいない。
「どう思うって、どいうことですか?」
「そのまんまの意味さ。変態野郎とか、うちは風俗店じゃねぇんだぞとか」
「そうとしか思ってません」
 この質問には即答できた。
 加えて、言葉にしたことはないが、由奈先輩に対しても指名されて受けるのもどうかと思うし、そもそも院長が断るべきものではないかと思っていた。
「だよな」
 苦笑いして、車は隣の市にあるショップイングモールに入っていった。
「だとしたら、お前、ものの本質が見えてないよ。病気の症状ってのは、病の本質が落とす影だ。鼻血という影の向こう側にあるものを見なくちゃ、本当の治療はできない」
 昨日、借りたDVDでも名人と呼ばれる治療家がそう言っていた。
 名人の言葉は、いつもまるで禅問答のようで分かるような分からないことばかりだ。
「それと、田中さんがどう関係するんですか?」
 知った風の院長の態度に、かすかに苛立ちを覚えつつも声に出さないように注意しながら言った。
「田中さんを、俺は入店拒否しようとしたことがあるんだよ」
 シュッピングモールの駐車場は、イベントでも終わったところなのか、出ていこうとする車で一杯だった。
「それで、俺と由奈っちは喧嘩になった」
 ということは、由奈先輩は自ら望んで田中さんの施術をしているのだろうか?
「あいつ、まじ面倒臭ぇ女なんだよ。顔はかわいいし、乳もでかくて、面倒見もよくて、よく気がつくくせに、性格が超メンド臭ぇんだ」
 ほめているのか、けなしているのか微妙な評価に僕も苦笑いした。ただ、今のところ由奈先輩の面倒臭いという部分を僕は知らない。
「つまりさ、高村のじぃさんみたいな治療家を目指してるんだわ」
 由奈先輩の、おじいさんは名の通った人で今でこそ年齢を理由に引退しているが、全国から難病の患者さんが頼ってきていたらしい。
「病気を治すだけじゃなく、心まで治すってな」
 そう言ってから、院長は長いため息をついた。
「病気を治すだけでも、大変なのに心までなんか治せるわけねーじゃねぇか。じぃさんは特別だったんだよ」
 スカイラインも、駐車場から出ようとする車の渋滞の最後尾についた。どうやら、ここで引き返すらしい。
「だから、あいつは止めとけ」
「え、は?」
 なにを言われたのか、本気で一瞬意味が分からなかった。
「なれないものになろうとして、苦しんでいる女の側にいても苦しいだけだって言ってんのさ」
「いや、あの、由奈先輩はただの職場の同僚ってだけで……」
 そういう風な目で見たことも考えたことも一度もない。
「ほんとにそうか? じゃあ、そしたらそういうことにしといてやるよ。ところで、あれ見えるか?」
 まったく信じてもらえない感がマンチキなものの、院長が駐車場の出口付近を指さした。
「あそこに、四つ角があるんだが信号がなくて、警備員が手旗で交通整理してるんだ」
 よくは見えないが、ビームサーベルのようなものを振り回している人がいるようだった。
「あそこは、表と裏の駐車場が合流する上、このあたりのメインストリートにつながるせいで、ものすごい渋滞になることで有名でな」
「はぁ」
 確かに、大量の車が行列になってテールランプが点滅を繰り返している。しかし、よく見れば列はわずかながら動き続けていて、見る見る交差点が近づいてくる。
「電気の信号機よりも、手旗信号の名人がいる交差点の方が渋滞にならないって知ってたか?」
 近づいてくるにつれ、猛烈な勢いでビームサーベルが闇を切り裂いて振り回されているのが分かった。車は少しも迷いなく、指揮されてスムーズに流れていく。これだけの渋滞が嘘のようだった。
「先の先まで読んでるんだな。個々のドライバーの心理まで一瞬で見抜いて、しかも三百六十度全包囲をカバーしている。プロってな、すごいもんだよな」
 交差点にスカイラインが入っていくとき、交通整理員は後ろを向いていた。
 院長が窓を開けて、未開封の缶コーヒーを軽く投げかけると、整理員は後ろ向きのまま片手で受け取って、一瞬振り向いて頷いた。
 田中さんだった。

******

「交通整理の業界じゃ、田中さんは神と呼ばれてるほどの人でな。ファンクラブまであるんだ」
 院長の種明かしは、納得のいくものではなかった。
「奥さんと二人の娘がいたが、奥さんがヤクザと浮気して娘を連れて蒸発して、借金だけ残されたらしい」
「は? いや、えと、意味がわかんないんですが」
「俺もさ。これだと、一方的に田中さんが被害者みたいだが、もしかすると家庭内暴力とかがあったのかもしれない。真相は当事者でなきゃ分からないしな」
 世の中には、いろんな家庭があることは想像に難くない。
「田中さんが、変態らしい変態行動を取るのは、うちに月一回来て由奈っちのマッサージを受けている間だけらしい。職場での評判もいいし、ご近所のおばちゃんの評判も立派なもんだった」
 なぜ知っているのかと聞くと、院長は一言”調べた”とだけ言った。
「まぁ、つまり、由奈っちを触ろうとすることでストレス解消だったり、精神の均衡を保ったりしてるんだろうな。同情の余地はないし、完璧に病んでいるな」
「それを、由奈先輩は治療しようとしているってんですか?」
「どこまでかは分からんけどな。ただ、俺は治療院内でのセクハラは絶対に認めない。田中さんが、由奈っちの胸を揉んだ瞬間、俺はあの人を追い出す。そう、由奈っちにも言ってある」
 一ミリも冗談の気配がない口調だった。
「だから、由奈っちは田中さんのために、胸を触らせないように努力してるってわけさ。由奈っちが触られない間は、田中さんがうちに来ることができるってな」
「なんすか、その屁理屈は」
「だよな。狂ってるよな。病んでいる人に向き合おうとして、由奈っちもどこかおかしい。ただ、今のところそれが由奈っちなりの本質との向き合い方ってわけだ」
「最後の砦って、ことですか?」
「なに?」
「由奈先輩が、田中さんを拒否すれば、田中さんはさらに病んで、たとえば実際に通りすがりの女子高生に手を出すようになるかもしれない。それを阻止するためにって」
「かもしれん。な? 面倒臭ぇだろう?」
 考えはグルグル回って、まったくまとまっていきそうになかった。
 治療院に帰ってきても、結局自分がどうすればいいか、むしろ余計に分からなくなってきた。
「ということで、お前、明日休め」
「は!?」
「このところ、まともに眠ってないだろ。あぁ、そうだ、明日も鼻血っ子の指名が入ってたっけ。面倒臭ぇから、お前が断りの連絡入れといてくれよ。あ、もう治療院の鍵は閉めたから電話番号も分からねーな。予約時間前に店の前で待ってたら、会えるんじゃね? んでから、鼻血の本質を解き明かしてこい」

******

「由奈せんぱ~い」
 次の日。
 勤務時間が終わって、藤木さんが帰るのを見てから、治療院に入って由奈先輩にすがりついた。
「うぇ!?」
 飛びすさって逃げられ、かろうじて足首に抱きつくことができた。そこから、膝、太ももと這いあがってお腹に顔を埋めると、かすかな石鹸の香りがした。
「な、なに!? なにごと!?」
 うろたえる由奈先輩も、なかなか乙だなと思っていると――

******

「もう二度としません。許してください」
 と、僕は由奈先輩にはずされかかった肘と肩関節をさすりながら土下座した。
「由奈先輩、柔整の資格も持ってたんですね。指と手首を極めて、肘関節を脱臼させようとしましたよね。マジ戦慄です」
 肘関節は、動く方向と反対方向に強引に力を加えれば、関節は破壊され、骨も高確率で折れる。そうならないように脱臼だけさせるには、相当の技術が必要だろう。
 柔整というのは、柔道整復師のことで外れた関節を入れるエキスパートのことだ。免許の受験には柔道初段が必要で、つまり由奈先輩を怒らせると関節を外される。うん、覚えた。
「で、どうかしたの?」
 何事もなかったかのように、電気ポットからお湯を入れお茶を飲みながら言った。
 由奈先輩には、セクハラって通用しないんじゃないだろうか。ってゆうか、僕や田中さんはそもそも相手にされてないのかもしれない……
「僕、今日休んだじゃないですか?」
「そうよ、なんであんた急に休むのよ。忙しかったんだから、今日」
「あ、いや、すみません。例の鼻血女子と話してこいって院長が」
「へぇ?」
「で、ですね。事情を説明して、お話させてもらったんですよね。そしたら――」

******

「私、養女なんですよね」
 高村治療院に歩いてやってきた鼻血女子を捕まえ、近くの公園に案内してベンチに腰掛けた。
 自販機でお茶を買ってきて、手渡し、鼻血について何か心当たりがないか聞くと、彼女はしばらく黒髪をもてあそんでから静かにそう答えた。
「父は、ラケン企画っていう会社をやってるんですが、半年くらい前に母が昔、浮気した時の息子さんという人が現れまして」
 さらっと、明日の天気についてでも語ってるような調子で話始めた内容は、わりと……重いものだった。
「父は、その息子さんを気に入ってしまって、跡を継がすと言うようになって」
 両足をどうでもよさげにブラブラと揺らし、遠くの空を見やって続けた。
「私、別に跡を継ぎたいわけでもないし、大学まで行かせてくれれば十分なんで、高校を卒業するまで家にいさせてくれれば、それだけでいいんですけどー」
 
******

「ってな感じで、いきなしちょいと重めの回想が始まっちゃったんですよぉぉ!」
 スタッフ控え室の机を、思わずバンバン叩きながら無意味に食ってかかった。
「虐待なんかはなかったらしいですが、冷えた家庭で会話らしい会話のないままずっと来て、息子が現れて以来両親は仲むつまじいらしいっす。もう意味分かんないです」
 田中さんの家庭がそうだったように、説明を部外者がいくら聞いたところで、真相はいつまでたっても闇の中なのだろう。
 由奈先輩が、どんな思いでおじいさんのような治療家を目指すのかも、聞いたところで分からないものなのかもしれない。
「あ、でも鼻血の原因はそういった家庭環境によるストレスで間違いなさそうですよ」
 病院でCTを撮り、セカンドオピニオンとして別の内科で血液検査も受けたらしい。
「東洋医学でいうところの、肝実於血という状態なんじゃないでしょうか?」
 滞って、凝集された血の道が鼻血という出血によって流されたに違いない。
「鼻血が出ることで、体調がいいってのはそれだとして、なんであんた施術した時に限って出血してたの?」
「それは、分かりませんけど、気の触れ合いとか? 運命? みたいな?」
 鍼やマッサージで体調を整えてあげることができれば、彼女の一助になることができるのではないか。
 この時、僕はまだ物事を簡単に、表面的にしか見ていなかった。気づいた時はもう遅く、今更ながらに後悔することしかできなかった。

******

 鼻血女子の訃報が届いたのは、それから二週間ほどたってからだった。
 公園で話した翌日から彼女は、高村治療院に来なくなった。連絡のない無断キャンセルで、こちらからも自宅に電話したりしなかったのだ。
 たまたま院長指名の患者さんが、鼻血女子のご近所で施術中に噂話として会話にあがった。

******

 その日、勤務時間が終わるまで何をどう仕事をしていたか、覚えていない。
 気がつけば、控え室でぼんやりとイスに座っていた。
「暗いオーラ出しすぎ」
 由奈先輩が自分がいつも飲んでいる熱いお茶を淹れてくれた。番茶に梅干しと醤油をミックスさせた、油断して飲むと醤油のせいで思わず吐きそうになるほど癖のある薬用茶だ。
「死んだって、どういうことです? あの子が死んだ?」
 実感がまったくわかなかった。今までで、家族で死んだのも田舎の祖父だけで、”そういうもんだろう”と思っただけだった。
「院長が詳細を聞きに行ってるから、もう少しすれば連絡がくるわ」
 
******

「特発性血小板減少性紫斑病だった」
 院長が帰ってきたのは、それからすぐだった。僕は、スマホアプリを開いて検索をかけた。
「難治性の免疫疾患だ」
 痛恨の表情で院長は立ち尽くしている。
「でも、すぐ死ぬような病気じゃ」
 出血を止める血小板が少なくなる病気で、体のあちこに青あざができると検索すると出てきた。難病指定されている病気ではあるが、即死するようなものではない。
「インフルエンザだ。インフルエンザによる急性発熱。それが引き金になって、脳出血が起きた。夜間救急に駆け込んだ時には、もう遅かった」
 意味が分からなかった。いや、聞こえていて意味も分かりすぎるほど分かるが、脳が理解を拒否しているような感じになった。
「それって、つまり」
 ”無責任に引っ張って、手遅れに――”
 いつか、院長が言っていたセリフが脳内でまざまざと再生された。
 鼻血が続いた時点で、血小板を調べてさえいれば――
「で、でも、そうだ。最初の日、院長が病院に連れて行って、調べてもらったんですよね?」
「ああ。でも、あの時は血液検査まではしていないし、それに普通は少々鼻血が出たくらいで、血小板の数までみない」
「あ、あれ? でも、最後に会った時、別の内科でも調べてもらったって」
「落ち着けって。お前や、うちに過失はない」
「いや、そういう事じゃないくて」
 頭の隅に引っかかる可能性を考えようとして、さらに混乱し、混乱は混乱を招いてーー

******

 あっと言う間に三ヶ月が過ぎさった。
 ある定休日の午前中、久しぶりに由奈先輩に連れ出された。そこは郊外にある高台で、見渡せば広がる町並みの向こうに太平洋が見えた。
 駐車場から少し登ると、大きな榎木があって日差しから心地よい木陰を作っている。
「いいでしょ、ここ。私だけの秘密の場所ってやつよ。特別に、あんたにも教えてあげるわ」
 海の方から吹いてくるそよ風を浴びて、気持ちよさそうに伸びをしながら由奈先輩が言った。
「そうですね。墓地の真上でなければ、いいデートスポットだと思います」
 眼下には、びっしりと墓が並んでいて日差しを受けて熱そうに照り返している。
「あんたは、いつも一言多いわね」
 
******

「私さ、藤木さんのような治療家になりたかったの」
 町並みを見下ろしていると、唐突に由奈先輩が語り始めた。
「小さい頃、悪性リンパ腫っていう血液の病気になって、おじいちゃんの所に行ったら、藤木さんが担当になって治療してくれることになったの」
 由奈先輩も前を向いたまま、海の向こうにある遠い過去でも見ているかのような雰囲気だった。
「あの頃の藤木さんは今とは全然違ってて、優しくて丁寧で親身になって私を治療してくれた」
 風は僕たちの間を軽やかに吹き抜け、榎木の枝を揺らし続けている。
「藤木さんの治療が効いたのか、病院の薬が効いたのかは分からないけれど、だんだん良くなっていて私は治ったの」
 ちくりと胸が痛んだ。悪性リンパ腫も特発性血小板減少性紫斑病も同じ血液の病気と言える。
「でも、私は藤木さんの治療が効いてるって、はっきり感じていたの。大きな、温かい手に触れられると安心してしまって、治療院でよく眠ってた」
 そう言うと、しばらく黙ってから双眼鏡を手渡してくれた。
「はい、これ」
「なんです?」
「いーからいーから。左の方の電柱の近くに、お参りしている人がいるの、見える?」
 しばらく探していくと、黒っぽい服を着た男性っぽい人が墓参りをしているのを見つけた。
「あれ、藤木さんよ。あのお墓は、藤木さんが担当して初めて殺した人」
 由奈先輩の不穏な言葉に、ぎょっとして顔を見つめ返した。
「藤木さんが、自分で言ったのよ。俺が殺したって」
 由奈先輩が堅い表情のまま見つめる先には、一体何があるんだろう。
「もちろん、あれよ。本当に殺人とかしたわけじゃないのよ。助けられなかったことを、そう言ってるだけで」
 あの鼻血を出した女子高生を、すぐに血小板数を検査していれば病気が発覚したはずだ。
 すぐに投薬治療がなされれば、インフルエンザになっても脳出血を回避できたと思う。
 彼女が、いつも落ち着いた所作をしていたのは、出来やすい青アザを回避するための癖だったのではないか。
 あるいは、僕に特発性血小板減少性紫斑病の知識がもっとあれば、彼女の容態と結びつけることもできたのではないか。
 そうすれば、鼻血以外の出血傾向、たとえば生理の状態について詳しく問診でき、その結果から病院での血小板数の検査をすることを強く提案できたはずだ。

 彼女を殺したのは僕だ。

******

 僕は由奈先輩を好きだった。
 自分の心の奥の感情に気がついたのは、空港の乗り込みゲートに立って、見送りに来てくれた由奈先輩を見た時だった。
 いつも気づくのが遅い。
 何もかもを無くしてしまってから、初めて気づくのが僕の特徴らしい。
 年度末だった。
 あれから、すぐに辞表を出して、後任が決まるまでということで年度末まで高村治療院に在籍した。
「いつ帰ってくるの?」
 とりあえず、大分と神戸、北海道にいる名人を由奈先輩のおじいさんに紹介してもらった。
 彼女の墓に、花を添えられるようになったら。
 それは、言わなかった。言えなかった。
「鼻血の止め方が分かったら」
 
 こうして、治療家としての僕の第一歩は鼻血によって始まりと終わりを迎え、もう一度始まることになった――
東湖

2016年08月28日 23時59分37秒 公開
■この作品の著作権は 東湖 さんにあります。無断転載は禁止です。

■作者からのメッセージ
◆キャッチコピー:「お前が、今向かい合っている鼻血は、もはや鼻血であって鼻血でない」

◆作者コメント:企画の主催・運営お疲れ様です。
シスエム開発者さまにおかれましては、使いやすい投稿板の作成ありがとうございます。
鼻血という、難しいテーマを聞いたときは愕然としましたw
これはもう、真正面からいくしかないと思ったものの、超難しかったです。

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