| 破滅の召喚術師 |
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| テチス海沖に帝国の大艦隊が出現した。その知らせは、西海岸にあるイーブル王国だけでなく、ローラシア大陸全土を震撼させ、人々を恐慌状態に陥れた。 テチス海のはるか先には広大な大陸がある。 アトランと呼ばれるその大陸では、いくつもの王国が興り、たがいに覇権を争っていた。そのうちのひとつ、蛮族の王が率いる王国が急速に勢力を拡大して、ついに大陸を統一した。 蛮族の王は統一された王国をアケロン帝国と命名し、みずからをその皇帝と宣言した。 その情報はローラシア大陸にももたらされていた。 イーブル王国の国王は、あわてて参集した家臣たちを前にして、御前会議の口火を切った。 「新興のアケロン帝国がローラシア大陸に対して、はるかテチス海を越えて大軍を差し向けてきた。このような事態はさすがに想定外であったな」 大臣の一人が追従する。 「まさか、アトラン大陸の外に向けて軍を進めるとは……」 宰相が引き継ぐ。 「独立の気風が強いアトラン大陸で、いつまでも帝国が統一されたままであることは困難でありましょう。内政が整わぬうちに各地で独立する動きがでて、帝国はほどなく崩壊するに違いない。そのように予想しておりました」 それはローラシア大陸の支配者たちに共通した認識だった。 王が重々しく言った。 「帝国がローラシア大陸の侵攻を目指す理由に心当たりがある。支配を盤石にするためにイーブル王国に眠るとされる遺失神器を手に入れんとしておるやもしれぬ」 家臣一同に納得の表情が浮かんだ。しかし、それはすぐに渋面に変わる。 「それが理由であるならば、蛮族皇帝が目指すのはイーブル王国ということになりますな」 王は深くうなずいて、対応策を示した。 「聖女ローラよ。剣士メルクリウスとともに大迷宮の最奥に眠る遺失神器を探し出して持ち帰るがよい。なお、大迷宮について知り得た事柄を余人に語ってはならぬ」 「大迷宮については極秘でございますね。承りました」 「では、ただちに出立せよ」 「「御意!」」 王の御前を辞してのち、剣士は聖女に尋ねた。 「遺失神器ってどんな物なのだ?」 「『門の鍵』と呼ばれる古代の神器よ。蟲孔を通じて強大な存在を召喚できると伝えられているわ、……メルクリウス様」 「俺のことはマークと呼んでくれ。名前を呼ばれている間に魔物に襲われてはかなわないからな、聖女ローラ様」 「私のことは、ローラと呼んでください。それから、大迷宮の魔物たちはすでに死に絶えているというわ。だから大迷宮に潜るのは私たちだけなのよ」 「そうなのか? 魔物が大量に湧いて出たら恨むぜ」 「あなたとは運命を共にいたします。だから私を恨まないでくださいね」 「毎晩、夢枕に立って恨み言をいうわけにはいかないのか……」 「大迷宮で死ねないのが残念なのですか?」 「いや、そりゃあ生きてる方がいいさ」 そんな軽口を叩きながら、二人は城の備品で装備を整えて、ただちに王宮地下にある大迷宮の入口に向かった。 古い石造りの通路は予想外に長かった。壁には燃える松明が刺されて通路を照らしていた。 岩を積み上げて造られた通路の奥には、かがり火が焚かれていた。近衛騎士団員二十人ほどが二列に分かれて整列していた。 大迷宮への入口は予想外に狭かった。二人が並んで通れる幅しかない。 すでに入口の封印は大部分が解かれていた。 騎士団長が最後の封印を解除して、大迷宮の分厚い扉がゆっくりと左右に開かれた。 戦士のマークは剣を抜いて下段に構えた。聖女ローラは右手に持つ杖の先端に魔法の明かりを灯した。左手には着火したランプを持っている。 二人は並んで大迷宮へと入っていった。 しばらく進むと、正面は高い壁になっていた。天井が高い。広間になっている。壁に大きな窪みがあり、細長い隆起が手前にある。 「まるで冒険者ギルドの受付だな。大きさは桁違いだが」 マークの独り言にローラが答えた。 「本当に受付だったみたいよ」 ローラは驚くマークを見ながら微笑んだ。 「この階層には、大迷宮をまかなう物資の貯蔵庫と、魔物を連れ出すための大きな出入り口があったそうよ。いまは厳重に封印されてるけれどね」 「よく知ってるな」 「大聖女様から口伝で教えられたの。正しく伝わっているかは確かめられていない、とも言われたわ」 右手に折れて先へと進み、左手に折れて行きついた先に金属の扉があった。 聖女ローラの指示に従って、マークは扉を引きあけた。 その先には、魔法の明かりもランプの光も届かないほど広大な空間が広がっていた。 「さすがは、大迷宮と呼ばれるだけの大きさがあるな」 「ここは貯蔵場所だったそうよ」 今は空になった広大な貯蔵場所を進んだ先に、下層へと続く階段があった。 「この階段は金属でできてるのか? 信じられないほど贅沢だな」 「だから大迷宮については、すべてが極秘なのよ。階段がなくなる迷惑を考えずに金属を奪おうとする奴らが必ずいるからね」 階段を降りた先には、いくつもの通路が広がっていた。 「この階は呪いの階だそうよ。いまは大部分が浄化されているけれど、人を殺す呪いがいくつもあったそうだわ」 「まだ生きている呪いがあるのか」 「わからない。 だから、寄り道をせずに進みましょう」 二人は、さらに階段を降りていった。 その先の階段は崩れていた。 「ロープで降りれるが、神器を持って帰ることを考えたら……」 「別の階段を探しましょうね」 聖女ローラは、通路の途中にある扉を開いた。ためらわずに部屋の中へと進んでゆく。 その先には床が無く二階層が吹きぬけになっている。そこには数多くの巨大な水晶があった。水晶の中には朽ちた魔物の死骸が入っている。その形態はさまざまだった。 階段を降りて床を歩きながらマークは言った。 「魔物が生きていなくて良かったぜ」 「次の階層には邪神とその眷属が封じられていたそうよ」 さらに階段を降りる。三階層が吹きぬけになっていた。 三階層の上まで届く巨大な水晶がいくつも並んでいる。 ほとんどの水晶は、空だった。 「邪神というと、神だよな。神が死ぬのか?」 「邪神について、こんな言葉が伝えられているわ。 『久遠に臥したるもの死することなく 怪異なる永劫のうちには死すらも終焉を迎えん』」 「どういうことだ?」 「邪神は死んでいるように見えても、それは仮そめの死で、いずれ復活するという意味……、だと思うわ」 「物凄く危険じゃないか」 階下では、割れた水晶から巨大な根のようなものが伸びている。干からびた蛸の触手のようにも見えた。 ローラが警告する。 「干からびてるけど生きてるかもしれない。近づかないでください」 「生きてるのか? この状態で」 「邪神とその眷属を甘く見ない方がいいわよ。生贄の血をそそげば蘇ると言う者もいるわ」 「この邪神を信奉する教団はあるのか? あったらヤバいじゃないか」 「この邪神が復活したら生贄も信者たちも全て喰らい尽くすでしょうね。たぶん、それがこの邪神に教団が存在しない理由だと思うわ」 「信者を全て喰らい尽くしてしまったのか」 二人は割れた水晶を迂回した。奥の階段をめざす。 「ようやく目的階の入口か。大迷宮だけあってやたらと広いなあ」 「次の階層には危険な魔道具が封印されてるそうよ。勝手に手を触れないでください」 マークはあわてて手を引っ込めた。 最終階層の壁には古代語の表示があった。 「何て書いてあるか分かるか?」 「固有名詞は分からないの。一応、こんな風に解釈されてるわよ」 『 大迷宮 第1階層 貯蔵庫、出入り口 第2階層 呪いの領域 第3階層 魔物の領域 第4階層 邪神と眷属の領域 第5階層 封印の領域 』 実際には、古代語を翻訳すると下記のようになる。 《 総合研究施設 レベル1 正面入り口、搬入口、受付、倉庫 レベル2 ウイルス、細菌の研究棟 レベル3 人造生命体の研究棟 レベル4 危険生物の隔離棟 レベル5 廃棄物処理、危険物の貯蔵 》 最終階層には、広大な壁を埋めつくすように箱が積み上げられていた。 マークはローラの指示に従って、長い梯子を登って箱のひとつをあけた。 中から灰色の板を取り出す。 それが遺失神器、『門の鍵』だった。 二人が王宮に戻ると、アケロン帝国の先遣隊数千がすでにイーブル王国の海岸線から内部の平原にかけて展開しているという知らせが届いていた。 王の命令によって、二人は海岸線近くの平原へと向かった。 小高い丘の上から様子を見る。 アケロン帝国軍は、進撃基地を造営しているようだった。 「一刻も早く対処した方がよさそうね」 「神器の使い方は分かるのか?」 「口伝が正しいか、試しに使ってみるわ」 「味方を攻撃しないでくれよ。召喚した獣に自分が喰われたら間抜けだからな」 「努力するわ」 聖女ローラは、遺失神器『門の鍵』に魔法文字を描きながら呪文を唱えた。 「天空の果てより来たれ虚無の竜。 その顎門(あぎと)を開きて、汝が贄(にえ)を喰らい尽くせ」 『門の鍵』が声を発した。 『ナビゲーターより報告。ワームホールを通じてゲートを大気圏外と接続します』 マークが訊ねた。 「ナビゲーターって何だ?」 「『案内人』と解釈されてるわ」 「大気圏外は?」 「暗黒餓竜の住む『虚無の世界』と解釈されているわ」 「ゲートは『門』か」 『門(ゲート)の鍵』が応えた。 『その解釈で差支えありません』 空中に見たことも無い魔方陣が描かれる。球形でゆっくりと回転している。その魔方陣が上に移動した。 その下方に、第二の魔方陣が描かれた。 剣士マークは、魔方陣と重なる図形に見覚えがあった。 地図だ。 このあたりの地図だった。 聖女ローラの指が遺失神器の表面をなでる。 アケロン帝国の軍勢数千は平原に陣を構えている。地図のそのあたりに六芒星の模様が現れた。 「暗黒餓竜召喚!」 平原の上空に黒い点が現れた。 そこから、細い針が伸びてくる。 針は伸びて平原に達した。 ついばむように平原を舐めてゆく。 突然に、巨大な顎門が出現して、平原を噛み砕き始めた。大地が砕かれて空中に巻き上げられる。 凄まじい強風が平原に向かって吹き始めた。 剣士マークは思わず叫んだ。 「まずいぞ、やめさせろ!」 聖女ローラが遺失神器の上に指を走らせると、平原に出現した暗黒餓竜は姿を消した。 平原の上空に黒い雲が現れた。いくつもの雷をともないながら、急速に広がってゆく。 平原に強烈な雨が降り始めた。 ずっと離れた丘の上にいる剣士マークと聖女ローラにも、その雨脚がはっきりと見えた。 聖女ローラは蒼ざめていた。 「暗黒餓竜を見せて脅かすつもりだったけれど、予想よりはるかに強い力を持っていたようね」 雨は雪にかわったようだった。 平原が白く覆われてゆく。 暗黒餓竜の振るった暴威が隠されてゆく。 事態が落ち着いてから、平原に調査隊が派遣された。 平原は広範囲にわたって深くえぐられていた。 調査隊は、アケロン帝国の軍勢も、軍勢がいた痕跡も、見つけることができなかった。 イーブル王国に面した海域にはアケロン帝国の大艦隊が見えた。水平線を越えて展開しているようだった。 「とんでもない数だな。少なくとも数十万はいるようだ」 艦隊は沖合で密集隊形を取りつつあった。 一斉に海岸線に押し寄せて一気に上陸する作戦のようだ。 「上陸する前に、攻撃するわよ」 「できるのか?」 「ええ。神器の使い方が分かってきたの」 聖女ローラは、遺失神器『門の鍵』に魔法文字を描いた。呪文を唱える。 「地の底の劫火を纏いし灼熱の竜よ。 業火を放ちて敵を滅ぼせ!」 空中に球形の魔方陣が描かれる。 その下方に、海図が描かれた。 聖女ローラの指が遺失神器の表面をなでる。 アケロン帝国の大艦隊が集結しつつある、その海域が示される。 海図に六芒星が描かれた。 聖女ローラが唱える。 「灼熱竜召喚!」 『門の鍵』が声を発した。 『ナビゲーターより報告。ゲートと大地のコアをワームホールで接続します』 マークがつぶやいた。 「灼熱の竜は、たぶん火山の深奥に住んでいるのだな?」 『門の鍵』が応えた。 『その解釈でおおむね差支えありません』 遥か沖合の空中に、真紅に輝く線が見えた。ゆっくりと上に伸びてゆく。 神器は召喚魔方陣のあたりの様子を空中に描いた。 灼熱の竜が凄まじい勢いで空中へ飛びあがってゆく。その巨体がどこまでも伸びてゆく。 いつまでも終わる気配が見えない。 剣士マークが叫んだ。 「そこまでだ。やめさせろ!」 聖女ローラが遺失神器の上に指を走らせると、召喚魔法陣が消失した。 天空たかく飛びあがった灼熱の竜は向きをかえた。 大洋に向かって身を躍らせる。 海中へと飛び込む勢いで下降する。 海面が爆発した。 「灼熱の竜の息吹か」 凄まじい量の蒸気が吹き上がる。 巨大な半球を形成して膨れ上がる。 アケロン帝国の大艦隊は、すべて呑み込まれた。 それでも、半球は勢いをとめることなく膨れ上がり続けた。 「凄まじいな」 「身を隠しましょう。ここまで息吹が届きそうよ」 二人が岩陰に身を隠すと、強風が押し寄せてきた。強烈な熱気をともなっている。 ぽつり、ぽつりと雨が降り出した。 たちまち、凄まじい豪雨にかわる。 熱湯のように熱い雨だった。 海岸線では巨大な津波が観測されていた。 後日、調査隊が派遣された。 灼熱の竜が降臨したあたりの海面上に、黒い塔のような構造物が発見された。 無数の砕けた欠片は、重く、硬質で、優れた武器や防具の材料になった。 灼熱の竜の鱗と抜け殻だと判断された。 「竜も抜け殻を残すのだな」 「鱗は成長しないものね」 綿密な調査にもかかわらず、アケロン帝国の大艦隊が存在した痕跡はどこにも発見できなかった。 それから数日後、聖女ローラは剣士マークを伴って、宮廷で王に奏上した。 おもな大臣たちも同席していた。 王がローラに尋ねる。 「『門の鍵』で遠方を視ることができるのか?」 「はい。アケロン帝国の宮殿の中を視ることができました」 マークは思わずつぶやいた。 「すげえな……」 ローラは神殿に伝わる神具をあやつって、『過去の声』を再現した。 アケロン帝国の蛮族皇帝の声が響いた。 「ローラシア大陸の全土を攻めて、四方からイーブル王国を攻撃する。遺失神器で召喚される竜の威力がどれほど強大でも、召喚できるのは一体のみだ。一方を防いだところで、残る三方から制圧すればよい」 「ご明察でございます。さっそくアトラン大陸の全土に出撃命令を発しましょう」 「では、アケロン帝国の総力をあげてローラシア大陸を攻めよ。攻略した土地は、攻略した者の所有とすることを認める」 「御意!」 イーブル王国の宮廷を沈黙が支配した。 王が口を開いた。 「遺失神器『門の鍵』をもってしても、アトラス大陸を攻撃することは困難であろうな」 聖女ローラは、しばらくためらってから言葉を紡いだ。 「攻撃する手段はございます。しかし、それは禁呪とされております」 王は深刻そうに言った。 「アケロン帝国に『門の鍵』を奪われれば、イーブル王国は滅び、禁呪が解き放たれる恐れがある。禁呪でアケロン帝国の首都を攻撃できぬか? 使用は一度だけでよい」 「御意」 聖女ローラは臣下の礼をとった。 すでに禁呪を使う覚悟を決めていたようだった。 聖女ローラは、剣士マークとともに王城の尖塔に登った。 マークが訊ねる。 「禁呪とはどんなものなのだ?」 「上位精霊の召喚よ。とてつもない力を持つから、決して召喚してはならない、と伝えられているわ」 「それじゃあ、やめた方が良いのじゃないか?」 「危険を知らない蛮族の皇帝よりも、危険を承知している者が使う方が、多少はましだと思うわ」 ローラは決意の表情を浮かべていた。 アトラン大陸の方向に向かって立ち、『門の鍵』に魔法文字を描いて呪文を唱える。 「いと高き光輝の苑におわす君。 その威光にて世界を照らせ!」 『門の鍵』がほのかな光を放った。 声が響く。 『ナビゲーターから警告です。破滅的な結果がもたらされる可能性があります』 ローラが訊ねた。 「警告の具体的な内容は?」 『上位生命体の個体名フレイアから警告が届いています』 「上位精霊のフレイア様ですか?」 『はい。ただし、対象が人間とは異なる知性体なので、翻訳の正確性には重大な疑義が存在しています。警告は以下のとおりです』 《フレイアの名で我を呼ぶ者たちには覚えがある。 我を召喚しようとするのであれば、止めておくがよい。 上位の存在と下位の存在との間には隔絶した力の差がある。 我の前にあれば、お前たちは存在することを許されずに、即座に消滅する。 かつて我を召喚せし者たちは消滅した。彼らの文明は崩壊した。 大切な事なので、くりかえし伝えよう。 我を召喚すれば、お前たちは存在することを許されずに消滅する。 警告は行ったぞ》 ローラが応えた。 「あなた様の周りをめぐる風の一筋、そのごく一部をいただく事をお許しいただけますでしょうか」 上位精霊フレイアが応えた。 《許す、許さぬの話しはしておらぬ。 じゃが、風の一筋、そのごく一部であれば、下位の存在であろうとも、生き残る者がおるやも知れぬな。 自らの決断で成した事は、自らの責任となる。己の選んだ結果を受け入れるがよい》 「御忠告を賜り、ありがとうございます」 ローラは『門の鍵』をあやつり、アケロン帝国首都の上空に、上位精霊フレイアの周囲をめぐる風の一筋、そのごく一部を召喚した。 アケロン帝国首都の上空に閃光が現われた。 一瞬のうちに広がって、アトラン大陸の大部分が閃光に呑み込まれた。 その光景は『門の鍵』を通じてマークたちの元にもたらされた。 「なんか、ヤバいぞ。地下に逃げよう」 マークはローラとともに、王族と大臣たちをともなって、地下の大迷宮へと避難した。 的確な判断だった。 アトラン大陸の方角から強風が吹き寄せた。強風は城の尖塔を崩壊させた。積み上げられた城壁の岩が強風に吹き飛ばされてゆき、宮殿も崩れ落ちていった。 しばらくして、大地が鳴動した。強烈な地震がローラシア大陸の全土を襲った。 強風に耐えた建物が地震で崩壊していった。 大地は引き裂け、大洋は荒れ狂い、強烈な嵐が追い打ちをかけた。 強風は何日も吹き荒れた。 風が止んでしばらくの後に、城があったあたりの瓦礫を押しのけて、地面に扉が開いた。 まず、近衛兵たちがあたりを偵察して、危険がないかを確認した。そののちに、地下の大迷宮に避難していた人々が地上に姿を現わした。 マークが地上に出てきたローラに語りかける。 「あの短時間で水や食料、果実酒まで大迷宮に運び込んでいたのは凄かったな」 「城に勤めている人達は、それぞれその道の達人なのよ」 「なるほど。それにしても、あの邪神はけっこう美味かったな」 『第4階層 危険生物の隔離棟』に保管されていた巨大海洋生物クラーケンの干物のことである。 どうやら一番の危険生物は人間であったようだ。 イーブル王国の復旧には何年もかかった。 やがて、調査艦隊がアトラン大陸へ向けて派遣された。 調査艦隊は、アトラン大陸を発見することができなかった。アトラン大陸は海中に没したと結論された。 |
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朱鷺(とき) 2026年08月21日 00時00分54秒 公開 ■この作品の著作権は 朱鷺(とき) さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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