| 生者と死者のはざまにて |
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| 昔々あるところにとても性悪(しょうわる)なタヌキが住んでいました。 タヌキは作物を盗み、まわりに大変な迷惑をかけ、悪質なウソをついて周囲をだましては喜んでおりました。 ある日、性悪タヌキは悪運が尽きて、とうとうお爺さんに捕まってしまいました。 お爺さんは言いました。 「性悪タヌキの日頃の悪行のせいで皆ひどい目にあっている。今夜はタヌキ汁にして食べてしまおう」 タヌキは必死にあやまりましたが、お爺さんは耳を貸しません。性悪タヌキがひどい嘘つきだと良く知っていたからです。 お爺さんが家から出てゆくと、かわってお婆さんが入ってきました。お婆さんは包丁を砥ぎ出しました。タヌキを料理するためです。 「もう二度と悪いことはいたしません。だから助けてください」 手足を縛られて吊るされたタヌキは必死でお婆さんに何度も何度も謝りました。 人の好いお婆さんは、とうとう性悪タヌキの言葉を信じて、タヌキを縛る綱を解いてしまいました。 たちまち性悪タヌキは人の好いお婆さんを叩き殺し、鍋に入れてババア汁にしてしまいました。 性悪タヌキは何食わぬ顔をして人の好いお婆さんに化け、帰ってきたお爺さんにババア汁を食べさせました。 「やい、ジジイ、お前がいま食べたのはババア汁だ。オレを食べようなどとしやがるからだ。それにしても馬鹿なババアだな。オレにあっさりと騙されるなんて」 性悪タヌキは、さらに死んだお婆さんを口汚くののしりました。 今回の性悪タヌキの悪行は、もはや見過ごすことはできない。 性悪タヌキの悪行を聞きつけて皆が集まってきました。皆はこれまでも性悪タヌキのせいで大変な迷惑を受けていたのです。 しかし、誰が性悪タヌキを罰したらいいのでしょうか。 山の熊が言いました。 「俺はタヌキを食う。だから俺がタヌキを罰したら、熊はタヌキを食べたかったから罰したのだと嘘つきタヌキたちは非難するだろう」 山の狼が言いました。 「俺もタヌキを食う。俺がタヌキを罰したら、狼はタヌキを食べたかったから罰したのだと嘘つきタヌキたちは言うだろう」 沢のイノシシが言いました。 「俺がタヌキを罰したら、嘘つきタヌキたちはタヌキのエサを横取りしたかったからだと言い立てるだろう」 キツネが言いました。 「俺がタヌキを罰したら、嘘つきタヌキたちはタヌキのエサを横取りしたかったからだと非難するだろう」 皆の話しを聞いていた白ウサギが言いました。 「わたしが性悪タヌキに罰を与えましょう」 皆はそろって言いました。 「それがいい、それがいい。白ウサギにはタヌキと利害関係がないから性悪タヌキを罰しても非難する者はいないはずだ!」 こうして白ウサギが性悪タヌキの刑を執行することになりました。 白ウサギは、性悪タヌキの背中を炎上させ、さらにその傷にトウガラシ味噌をすり込みました。そして性悪タヌキを泥船に乗せて深い海中の闇の底へと沈ませ、二度と日の目を見ることができないようにしたのでした。 めでたし、めでたし。 |
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競作企画 2025年11月29日 22時35分01秒 公開 ■この作品の著作権は 競作企画 さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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