最強の教師 |
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「彼の名前は『ウンコ味のチャーハン』です。このことを聞いて、どう思いましたか?」 うおおおおおお知るかああああああ。こんなつまらないホームルームは、今すぐ終わりにしろおおおお。俺は今すぐ家に帰って、友達と一緒にスプラトゥーンがやりてえんだよおおおおおお。 俺は、先生が黒板の前で喋り続ける午後のホームルームに、辟易としている。しかもただ喋るだけじゃなく、意味のわからんことをこの先生は延々と喋る。 「それでは、続いて瞑想の時間です。目を瞑って、ゆっくりと呼吸をしましょう」 くそが。今日は瞑想の時間もあるのか。何なんだよ瞑想の時間ってのは。 頭の中をクリアにすることが大人にとって大事なのはそうかもしれねえけど、俺ら小二だぞ! 元から頭空っぽみてえなもんなんだって! 「あなたたちは、クジラの背中に乗っています。クジラには扉がついていますね。それはどこに繋がっていますか?」 しかもこのクソキモオリジナル瞑想。こんなので悟りが開けたとしても、そんな汚い悟りは俺は願い下げだぜ。 俺は、ほかのクラスの友達から話を聞いて、この担任以外の先生のクラスでは、ホームルームに瞑想の時間など無いと聞いた時、愕然としたものだった。 俺は偶然にも二年連続でこいつの生徒だ。だから、文科省のカリキュラムにない意味のないオリジナルの教育を、一年以上受けてきたのだと知って、さすがにその時は発狂しそうになったが俺は堪えた。 落ち着くんだ、俺。小学校で発狂して暴れたら、将来に差し支えるぞ。キチガイ教師にはもう色んな意味で『現在』しかないかもしれないけど、俺たち小学生には『未来』があるんだ。 「うおおおおやってられるかああああこんな瞑想!!! 意味ねえだろうがああああああ!!!!!」 教室中に響き渡った大声を聞いた時、俺は、ついに自分がキレて叫んだのかと思って本気で焦った。 だが実際には、叫んだのは離れた席の大谷くんだった。よかった、俺じゃなかった! ……いや、大谷くんが危ない! 先生に殺されるぞ! 「瞑想の邪魔をするとはあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 キチガイもとい先生は絶叫し、チョークを手に取った腕を、見えない速度で振った。投げたぞ! 大谷くん! 奴は今、チョークを投げた! 大谷くんは、素早く金属製の筆箱を顔の前に出していた。凄まじい破裂音と同時に、大谷くんが後ろにふっ飛んだ。見ると、筆箱は二つ折りぐらいに曲がっていた。なんて威力のチョークだ! だが直撃しなかったのなら、大谷くんは無事だろう! と、そこで俺は、己の認識の甘さを思い知った。 普通、教師が児童にチョークを投げた後は、カッとなって行動したことで、後悔したり、気が済んだりするだろう。 だが奴は! 「うおおおおおおおおおおおおおおおおお不出来な生徒めがああああああああああああああああああああああ」 巨大三角定規を手に、大谷くんのもとへ!!! このままじゃ、大谷くんが殺されちまう! 「大谷くん、逃げろ!」 俺は、よせばいいのに、先生にタックルをした。押し倒す。「なんだああああガキがああああ。殺すぞおおおおおお!!!」 近くで浴びると、めちゃくちゃなヘビースモーカーである先生の口臭は、公衆便所が天国に思えるほど臭い。だが俺は怯まない。 「大谷くんは、俺とは違う! 将来は、メジャーリーガーになれる器だ! 俺の屍を越えて、アメリカに行ってくれ! 頼む! …………く、くるち…………! やっぱ助けて…………!!!」 俺はあっという間に先生に首をとられ、締め上げられている。こ、殺される。 「先生、ありがとうございました!」 大谷くんが叫んだ。「先生は素晴らしいです!」 その言葉の直後、俺の首を絞める力が緩んだ。 見ると、先生は満面の笑みだった。 「そうよねええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」 先生は上機嫌になり、この日のホームルームはお開きとなった。 その時大谷くんは、おべっかを言ったのではなかった。彼は野球で、バッティングは得意だが、球を放るのには苦手意識があった。 だが、先生のチョーク投げのフォームを見て、投球のヒントを掴んだのだという。この日を境に大谷くんはピッチャーもバッターも高いレベルでこなせる選手になった。 (今思えば、あの瞑想って、意味あったのかもな……) 社会人になった俺は、大谷くんのことを思い浮かべながらそう思い、ビールを空けてテレビを見る。流れてきたニュースで、あの先生が銀行強盗で捕まったのを知った。先生は強盗グループのリーダーで、これまでに少なくとも49件の犯罪に関与していると見られていた。 |
競作企画 2025年08月23日 14時27分59秒 公開 ■この作品の著作権は 競作企画 さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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