適者生存 |
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※この物語はフィクションです。 俺は人を呪い殺すことができるらしい。 俺が初めて人を呪い殺したのは高校生の時だった。その時には呪いなんてまったく考えてなかった。 クラスに虐められてる奴がいた。ちょっと見てくれの良い顔をしてたから嫉妬されたのだろう。周り中から嫌がらせを受けていた。 それなのに、そいつはいつも薄ら笑いを浮かべてた。 構ってもらえるのが嬉しいのだろう。そう思って、俺もちょっとだけからかってみた。 「おまえ、クッセイなあ。風呂に入ってないだろう」 周囲から笑いが起きた。俺に同意する声が次々にあがった。 そいつは、いつもどおりヘラヘラしていた。 周りに付きまとっている運動部員たちの方がよっぽど汗臭かったから、軽い冗談のつもりだった。 そいつは翌日から学校にでてこなくなった。しばらくして、自殺していたという噂を聞いた。 次に皆が気晴らしの対象に選んだのは、おとなしい女の子だった。 鉛筆の芯を全部折ったり、ノートに卑猥な落書きをしたり、消しゴムを隠したり、教科書を破いたり、スカートを椅子に画鋲で止めて、座るとまくれあがったり、立ち上がると引き裂けたりさせるといった、小学生でもやりそうなたわいもないイタズラばかりだった。 放課後に、皆でそいつを取り囲んでからかってたから、俺も加わってみた。 「男にカラダを差しださなけりゃ、誰もお前なんか相手にしてくれないぜ、ブスだから!」 「ああ、ブスだもんな」 「ブ~ス!」 「カラダを差しだされても、俺はお断りだぜ!」 俺はその子を、けっこう可愛いと思ってたから、冗談のつもりだった。 その子は、顔を真っ赤にして教室から飛び出してゆき、屋上から転落して死んだ。 教室にいた全員が事情聴取を受けた。もちろん俺たちはシラを切りとおした。密告する奴がいれば、次にもてあそぶ相手にすることが暗黙のうちに了解されていたからだ。 イジメの事実はなかったし、遺書もなかった。チクる奴はおらず、結局は事故として処理された。 当然のことだ。 ああ、そうだ。『玩(もてあそ)ぶ』という言葉は、『まるくかこんだ手の中でころがしてあそぶ。大切にして楽しむ』、という意味だ。 俺たちは、からかって遊ぶ相手を大切にしながら楽しんでいた。だから、文字通り玩んでいたわけだ。 「面白い考え方をするのね」 同級生の蒼穹 光が俺の背後に立っていた。 「なんだァ? 俺の考えていることが分かるのか?」 「ええ」 断言された。 「それじゃあ、…… どうする気だ?」 「あなたの考え方に共鳴したから一緒に行動するわ。これからはあなたの影になるわよ」 蒼穹 光は本当に俺の影になった。どこにゆくときも、何をするときも、つねに俺と一緒にいるようになった。 蒼穹 光が情報を集めて、俺が方針を決める。そんな役割分担が出来あがっていった。 「本当に自分で決めなくていいのか?」 「実家ではこのやり方が普通なの。私はこれに慣れているのよ。それに、あなたに伝える情報を正しく選べば、私に都合の良い方針を決めてもらえるから、文句はまったくないわよ」 「気が付かなかったが、俺はいいように操られてたのか」 「違うわ。うまくチームを組めば大きな力が発揮できるというだけのことよ」 授業中に中退した先輩が教室に入ってきた。俺は外に呼び出された。教師は何も言わなかった。 教師の許可がある。そう解釈してよさそうだな。黙認というやつだ。 アニキと呼ぶ方がしっくりくる。そんな先輩だった。誘われて、借金の取り立てを手伝うようになった。俺はサングラスを掛けると凶悪に見えるようだ。ガタイがいいから脅す役に適任だった。 借金をした相手に多額の生命保険を掛けさせた上で自殺させる手口で効率よく借金を回収した。 職場や家族など、周囲を脅して本人の居場所を失くしてしまうと、人は簡単にこの世から姿を消す。 すぐに、脅迫して自殺させるのは、言葉で人を殺すことだと気が付いた。 蒼穹 光は、いつも俺に付きまとい、薄ら笑いを浮かべながら俺を眺めていた。 アニキからダメ出しされた。 「お前がからむと皆すぐ死んじまう。逃がさず殺さずでないとメシの種にならねえんだよ」 俺は平安時代の呪殺に興味をもち、呪殺の方法をさらに効率化することにした。 呪物や呪符は、標的に呪われていることを実感させるために使われていた。また、多くの弟子を使って世間に吹聴させれば、相手の心を弱らせて、呪いの力を増すことができた。鬼や屍鬼を差し向けると脅せば、相手の精神を削ることができた。 「相手の様子を調べてSNSに投稿しよう」 そう書き込むだけで、今ではSNSで簡単に情報奴隷や情報ゾンビを相手に向かわせることができる。屍鬼よりもはるかに強力だ。 相手に対する中傷は、理不尽であるほど効果が高かった。相手の精神を強くむしばむことが分かってきた。 俺の呪殺の腕前は殺し屋レベルになっていた。アニキの推薦で政治家の『敵』を呪うことに手を貸すことになった。 議員たちは政敵が怨霊になることを恐れて呪殺を依頼してきた。いまの法律では呪殺は殺人と見なされない。 「生霊がいちばん恐ろしいからな」 詳細は省く。秘守義務に違反するからな。 標的をうまく自殺させることには成功した。 しかし、議員たちは死者を冒?した。 「まずいな」 死者を冒?するのは大罪だ。 罪には、法律上の罪(クライム)と倫理上の罪(シン)がある。 たとえば、選挙の立候補者はいずれ人々を導くことになる立派な人だから、その行動をいちいち規制する法律は定められていない。規制しなくとも自分から模範的な行動をとることが期待されているからだ。 だから、人々に候補者を知らせることが目的の選挙ポスターを張るべき場所を赤の他人に高額で売り出すといった非常識で反社会的行為を規制する法律は定められていなかった。 そのような行為は倫理上の罪(シン)だからだ。明文化されていないが、自然法に定められているとも言える。 議員たちは死者を冒?した。死者を冒?するのは大罪だ。 利害関係の無い蒼穹 光が処罰をくだすことになった。人の心を読む能力を最大限に生かして、支持者・支援者たちに議員の行動を伝えて反感を持つように巧妙に誘導してゆく。 議員自身の失言をきっかけに、支持者たちは激しく非難し始めた。議員たちは炎上によってその身を焼かれ、過去の傷に悪意に満ちた毒を塗られ、無明の闇へと堕ちていった。 こうして、国会議員の砕頭喪彦、「虚偽報道から国民を守る会」の橘貴屍、大日本帝国威信の会に所属していた、奇死巳規、巣山魔児、白切乞冥らは社会的に葬られた。 政治家を目指して驚いた。 「なぜ、皆はこんなに簡単に俺に従うのだろう。不安になるぜ」 蒼穹 光が即答する。 「コロナの流行をきっかけに社会関係が希薄になったからよ。個人がむきだしになってしまったの。だから、ちょっとの不快や不安でも過剰にそれから逃れようとするようになってるの。不快や不安に抗おうとせずに破滅へと突進すこと選ぶ。 身元を押さえて、危害を加えるとほのめかすだけで、それを避けるためにすぐに捕まることが判り切っている襲撃の実行犯になってしまう。それと根は同じよ」 「強く主張した者の勝ち、なのか」 「ええ、弱者を思いやる社会常識が機能しなくなっているの。私が好きな星座占いで例えると、お互いの自由を大切にしながら連帯感と友情を重視する水瓶座の時代が終わって、我が強くさまざまな欲望を持つせいで嫉妬心や復讐を生み周囲に不都合な反応やもめごとを生じさせるワガママで目立ちたがりで負けず嫌いな牡羊座の時代になったのだわ。弱肉強食の時代になったのよ」 「牡羊座ってロクな星座じゃないのだな。はた迷惑だよ」 「果敢に挑戦して自分を高める挑戦者、という言い方もあるわよ」 「水瓶座の時代ではあるまいし、俺には各国と狎れあってお友達付き合いをする気はない。 日本の国内は、すでに俺の支配下に入っているのだよな。 ならば、星の巡りに合わせて牡羊座の時代にふさわしく世界支配を目指すとしようか。 では、作戦会議を始めよう。まず、世界の盤面の状況とコマの配置を分析してくれ」 「どのコマから解説したらいいかしら。大ゴマからにする?」 「小物から始めよう。まずは中東をかき回してるネタニャー?総統について教えてくれ。これまで何度も停戦できる機会があったし、他国から和平の働きかけがあったけれども、そのたびに停戦の機運をぶち壊し続けてるように思えるな」 蒼穹 光の解説が始まった。 「ネタニャー?総統は自身の不正を隠すため、隣国に攻め込んで武力による民族大虐殺、宗教弾圧を開始したのよ。自身の不正が追及されるのを防ぐために戦闘を続ける以外に選択肢がなくなっている。だから停戦の機運が出てくるたびに非人道的な攻撃を相手に加えて怒らせ、反撃を誘発してるのよ」 「自分を護るために自国民を戦争に駆り立て、他国の人々を殺している卑怯者、という評価でいいのかな?」 「ええ。自分から戦いを止めることはないわ」 自分の不正を隠すために戦争を宣言した、…… どこかで聞いたことがあるな。 「ああ、そういえば自分の不正を隠すために非常事態を宣言してやめさせられた指導者がいたなァ」 「そうね。あの時に韓国では非常事態宣言が発令されると、即座に十万人の市民が集まって軍隊が議事堂を制圧するのを防いだわね。指導者の命令通りに軍隊が議事堂を制圧していたら、法律に基づいて指導者の横暴を防ぐことはできなくなっていた。イスラエルや○シアのように戦争を始めるか、内戦になって多くの血が流れた可能性があったわ。 結果的に流血の事態が防がれたけれど、多くの人たちが、即座に、命を掛けて、最高指導者の命令で行動している軍隊に立ち向かったのは凄いことだと思うわ」 「指導者側は、不当に行政を妨害され続けていたから非常事態宣言は正しい判断だった、と強弁し続けてるようだな」 「自分の考え方に従う人数の多い方が主導権を握るから、完璧に敗北するまでは諦めずに逆転を狙うのでしょうね」 支持者が多くなれば、それが真実になる。そういえば、ナチスの宣伝担当だったゲッペルスが言ってたそうだな。 「デマでも百回繰り返せば真実になる!」 「スランプ大帝の横暴で世界は大荒れになっているけれど、君はどう思うのかな?」 「スランプ大帝はこれまでに六度の破産を経験した口先だけの元悪役プロレスラーよ。悪役レスラーとして国民に意外と人気があるわね。支援者の一人は、『アイツは嫌いだが、ヤツの減税は好きだよ』と、語っていたわ。 高校の世界史Bの知識を元にすると、産業革命後に工業生産の主体はヨーロッパだった。そこから十九世紀末には米帝国が工業力で世界首位になり、一世紀近く貿易黒字を保っていた。ヨーロッパの各国は世界大戦の戦場となったために生産が低下した。 米帝国は国内で戦闘がなかったから工業生産の低下がなかった。米帝国は第一次大戦後に高関税で国内産業を保護し、英仏の旧連合国の戦時国債返済免除の要請を拒否して富を蓄えた。第二次大戦後の1947年に米帝国の人口は世界の6%だったが、鉱工業生産では六割以上を占め、世界の金の七割近くを保有していた。 このためドルが世界の基軸通貨となったのよ。 各国の産業が戦禍の中から復興するにつれて、米帝国の製造業は時代遅れになっていった。各国はそれぞれ新たに最新の工場を建てたけれど、米帝国は古い工場のままだったからね。やがて米帝国では、各国が作る部品を集めて組み立てることが主体となっていったの。 部品を国内で製造せずに輸入に頼れば、当然貿易赤字が発生するわね。 1971年になって米帝国は貿易赤字を計上するようになった。そこでネルソン大統領はドルと金の兌換を停止したのよ。 ドルは金による裏付けを失って、ただの紙切れになったわけ。 ドルは世界の基軸通貨だったから、米帝国はドル札を印刷するだけで、諸外国が労働力をつぎ込んで生産した製品や部品、貴重な原料や資源などをいくらでも輸入できた。さらに、仮想通貨の流通によってドル札を印刷する必要すらなくなった。 ドルを基軸通貨でありつづけさせるために、米帝国はヨーロッパ圏のユーロ、中国の元などの新たな経済圏が拡大するのを防止するように努めた。 米帝国は海外援助や国連への資金提供などによって世界の指導者および警察官の地位を維持して、引き続きドルが世界の基軸通貨となるように努めてきたの。 そのための資金はドルだから、いくらでも印刷して補うことができた。 ドルは基軸通貨だから、ドル札と言う紙切れを刷れるだけで、いくらでも世界の物資を米帝国に集めることが可能になっていた。『金の卵を産むニワトリ』を所持してるようなものだったのよ。 でも、スランプ大帝にはこの価値が理解できなかった。スランプ大帝の考え方は米帝国が世界一を誇っていた二十世紀前半の幻影に基づいているようね。 スランプ大帝は世界の指導者としての責務を放棄したわ。米帝国が世界の指導者・警察官とみなされるために必要な出資をすべて停止してしまった。そのあとは中つ国が出資を引き継いでいるようね。一週間で出資が決まったこともあるようよ。 世界の指導者が確実に替わろうとしているわね。 スランプ大帝はゼンスキー司令官との会談で、 『ウキライナー問題? そんなのは一日で解決してみせる。この世界の根本原理は弱肉強食だ。弱いウキライナーはさっさと○シアに喰われればいいのだ。そうなればもっと強い我が国が一番おいしいところを喰らってやる。弱いのに戦いを長引かせているゼンスキー司令官、お前が諸悪の根源だ』 と、言い放ったの。 ゼンスキー司令官は激怒したわ。 『強者と弱者が戦えば、弱い方の被害が大きくなるものだ。そして、攻め込んだ○シアの方が被害は大きい。とうとう兵力が不足して北挑戦から一万人以上の援軍を頼むほど弱っているだろう? 何と言っても、ウキライナーは国土防衛のために○シア最強と謳われたコサック兵団が駐屯してきた土地の一つだから、その子孫が弱くないのは当然だ。ウキライナーを見くびるな!』 プーチキン総統は、子飼いの情報機関からの報告を鵜呑みにして状況判断を誤り、勝てない戦争を始めてしまった侵略者よ。 ○シアはこれまでナポレオンやドイツに首都まで攻め込まれている。とくにドイツとの戦いでは国民の五分の一が国内で死亡しているわね。 一家族に一人が目の前で死んでいったことになるわ。 この悲惨な体験は○シア国民の精神的外傷、トラウマになったの。当然でしょうね。 だから○シアは国内で戦争が起きないように周囲を侵略して衛星国家を作り続けた。連邦を形成し、鉄のカーテンと呼ばれる情報管制によって軍事情報が西側に漏れることを必死に防いだ。 ○シアは、祖国戦争を実際には体験していない指導者、言い換えるとトラウマ体験のない指導者が政権をとるまでは、鉄のカーテンを閉ざして、西側と交渉を持つことはなかったのよ。 プーチキン総統は、トラウマを引き継いで いる。だから、『ウキライナー全体を○シアに組み込み、そのの周囲の国々を○シアが支配しなければ、○シアの安全は保てない!』 それがプーチキン総統の本音よ。 自分に心からの忠誠を捧げないと判断すれば、腹心でもつぎつぎに粛清する臆病者だから、新たな連邦が形成されるまで領土拡大政策は止まらないわ。もちろん戦略的な『一時的中断』はあるでしょうけれどね。 プーチキン総統は、ウキライナーが西側に付きそうな様子をみせたので脅威に感じて侵略を開始したのだわ。 ウキライナーに対して開戦したとき、当時の情報部の報告では、ウキライナーの政府内部では不正がはびこり腐敗しているから、○シアが侵攻すれば政府は即座に諸手を挙げて歓迎するはずだった。そうなれば強壮なウキライナー軍が無傷で手にはいる。ベラルーシー軍とともに周辺諸国を併合できる戦力を手に入れられる。そのはずだった。 応酬連合はウキライナーがすぐに圧勝して○シアを国外に叩きだせないように、援助を押さえて消耗戦を続けさせた。戦いは三年を越えたわね。○シアは応酬連合の陰謀によっていまや国力が著しく低下しているわ。 プーチキン総統にとっては、想定外の大損害を被ったから戦いを止めることができなくなっている。負けが込んだ亭主が、奥さんに怒られるのが怖くてますます賭博に金をつぎ込むのと同じようなものね。 これだけ大きな犠牲をだしたからウキライナーとその周辺諸国を支配するまで、戦いを止めることができないでいるの。 スランプ大帝が妄言を吐いているから、受け入れるふりをして、一気に応酬連合に攻め込む準備を整えるでしょうね。 ところで、中つ国の皇帝にしてみれば、今の○シアとの国境線は不利な条件下で決められているの。 だから、力で他国の領土を奪い、主権を奪うことが国際的に認められたら、中つ国は弱体化した○シアに攻め込んで『もともとの領土』を奪い返そうとするでしょうね。 おそらくその時には、まず台風湾に攻め込むふりをしてスランプ大帝の注意を引き、第七騎兵隊艦隊を東南アジアに移動させるのを待ってから始める可能性が高いわよ。スランプ大帝が援助しなければ武力による台風湾支配に乗り出すでしょうね」 「米帝国と中つ国とでは、どちらが強いのだい?」 「強者と弱者が戦えば、弱い方の被害が大きくなるものよ。高関税の応酬では仕掛けたスランプ大帝の方が被害が大きくなったから撤回せざるをえなくなった。レアアースの輸出停止と米帝国債の売り出しがずいぶんと堪えたようね。これからも口では威勢の良い事を言うけれど、スランプ大帝の基本方針は弱肉強食だから、今後は自分より強い中つ国をまっこうから相手にするのを避けるでしょうね。 もともとスランプ大帝は悪役レスラーとしていかに観衆の興味を引くかに全力をそそいでいる。どのように行動するか、何を目指すかは最初から二の次なのよ。 中つ国が○シアに攻め込める状況が整ってきたと思うわよ」 「○シアと中つ国の国境にはウキライナーからさらわれてきた反○シア派の人達が集められているそうよ。危険地帯だから軍は駐留させても自国民を住まわせたくはない。だからさらってきたウキライナー人を住まわせた。考えてみれば、当然ね」 「インドやブラジルはどうかな」 「今はまだ世界支配をする上で、それほど考慮しなくてもすむわよ」 情報は十分に集まった。 ありがとう、蒼穹 光。 俺が決断をする時が来たようだな。 「俺はこれから呪殺によって世界を陰から支配することを目指す。世界支配の妨げになる敵は周囲をイエスマンで固めた独裁者たちだ。本人は、実は打たれ弱そうに思える。呪殺するのは難しくないだろう。 ネタニャー?総統は、国民から見限られて、いずれ失脚するだろう。 プーチキン総統は応酬連合の陰謀によって、今後も消耗戦を続けさせられるだろう。 スランプ大帝は、主軸通貨の価値が理解できずに七度目の破産に向かって突き進んでいる。 中つ国の皇帝は、かつて○シアと不利な条件下で国境線を確定させられている。 今後はプーチキン総統、スランプ大帝が他国を侵略して占領したた、それを支持したうえで、弱体化した○シアに攻め込んで新たな国境線の確定をめざすだろう。 『○シアが不法に占拠している我が国固有の領土が返還されることを要求する』と、主張するだろうな。 それに先立って台風湾への進攻をほのめかし、スランプ大帝が第七騎兵隊艦隊を東南アジアに派遣して○シアをすぐには援護できなくしておくなど周到に準備を進めてゆくだろう。中つ国の皇帝が発揮している深謀遠慮と機会を待つ忍耐力は群を抜いている。 だから、俺はこれからもしばらくのあいだは中つ国の皇帝に協力するようにふるまって、中つ国が世界を支配したところで皇帝を呪殺するつもりだ」 蒼穹 光は右手を胸に当て、片膝を床に付けた姿勢をとり、気取った口調で言葉を発した。 「御心のままに……」 |
朱鷺(とき) 2025年04月27日 19時08分59秒 公開 ■この作品の著作権は 朱鷺(とき) さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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