【跡地化】【長編】ざまあみろナイフ

Rev.14　枚数： 3 枚（ 840 文字）
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●○●○●○●　この作品は跡地化されました。　○●○●○●○
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春木みすず

2024年12月28日 01時31分12秒 公開
■この作品の著作権は 春木みすず さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
◆使用したイラスト：②
◆キャッチコピー：ここはそう、永遠の夏休みのような所なんだ。
◆作者コメント：
「自由とは何か」をテーマとした現代ファンタジー作品です。構想から6年越しくらいでやっと完結できたので良かったです。普段とは違って（？）純粋で暖かみのある仕上がりになりました。

【以下あらすじ】
豆腐メンタルで、母親の過干渉に苦しむアヤカは自称「親を捨てた」少年カケルと夜の街・イケブクロに導かれる。イケブクロは停滞している人間を受け入れるが、出るには混沌の王・スズキと戦い、自身の停滞を打ち破らなければならない。現実から目を背けた人間たちが紡ぐ、暖かい現代ファンタジー。

2025年01月19日 01時12分56秒
 作者レス
  • 読んでいただきありがとうございました！
    さて、この作品について説明するに当たり、少々昔の話をします。
    私がこの作品を書き始めたのは６年くらい前、まだコロナ禍すら起きていない大学生の時でした。当時のサークルの後輩に「ネタがないorz」と愚痴ったところ、彼女がこの作品のアイデアをくれたので、書き始めたものです。

    しかし、「もうやめてソード」が出たところで私は筆を投げてしまいました。理由は、スミカ・ナガシマ・ミヨシといった大人たちの心情を描くのが当時では難しかったためです。その頃の私はまだ精神的には成熟していなかったため、アヤカとカケルの性格は理解できました。ですが、作中の大人たちが陥っている「停滞」を描くには、まだ経験が足りなかったという他ありません。

    「自由とは何か」というテーマに対する答えも、まるで出ませんでした。大学の学部生の頃、私は生きる目的は自分で決めるべきだ、ということに気づきました。しかし人生を捧げるべきと思える目的は特になかったので、「生きる目的を見つけるために生きよう」という消極的とも言える目的を掲げ、とりあえずの生存の維持を行っていました。モラトリアムにただ漬かっていた私には、自由の意味など分かるはずもなかったのです。

    続きを書き始めたのは確か一昨年だったと思います。その時、私はまさに人生における「停滞」の最中にいました。つまりこの作品を描くに足りる経験を得たわけです。私は今こそ続きを書くべき時だ！　と強く感じました。そしてついに去年、停滞から脱しました。「自由とは何か」の答えはこのタイミングでなければ出なかったのだろうな、と思います。自分自身と向き合い、現実から目を逸らさないで生きること。それが私にとっての自由です。

    作品テーマに対し真摯に向き合うことができたので、結構満足のいく出来ではあると思います。企画のイラストも綺麗に使えたので良かったです～
    最終章のタイトルは、木下牧子作曲・三好達治作詞の合唱曲『鷗』の詞を引用してつけました。皆さんも時間があればYoutubeで聞いてみてください。松原混声合唱団のやつが私は好きですね。戦争で亡くなっていった若者たちに向けて書かれた詞が、きっとミヨシさんを自由へ導いてくれたんだと思います。

    この作品を書く上で、キャラクター一人ひとりの選択が真に迫るものになるには、とても時間がかかりました。自分と向き合い、自由に選択するというのは、それほど難しいことなのだと思います。周囲の環境も必要ですし、さらに勇気を持たなければいけないからです。

    私は環境に恵まれましたし、それなりには勇気も出せたので、停滞から運よく脱することができました。しかし、そうでない人も世の中には沢山います。精神科のデイケアに通っていた時、私はそういう人を目にしました。普通の人が、ありふれた悲劇によって何年も立ち上がれなくなることは、まったく珍しいことではないのです。そのまま身をゆだね続ける人もいれば、立ち上がって出て行く人もいる。それだけのことです。

    皆さんは今、自由ですか？

    E-Mail pass
2025年01月18日 20時12分08秒
 +40点
  • 　読ませていただきました。

    　タイトルでまさかのざまぁ系かと思いましたが、そんな事はなく(笑) 登場人物らが己の問題とちゃんと向き合う王道なお話でした。
    　途中、帰る派と残る派に分かれて争うことになっちゃうのかな、なんて心配もしていました。スミカさん、ミヨシさんは帰るメリットが少ない設定だし、スズキさんの要素がニャルラトテップ的なので……。でも、最終的にはみんなイケブクロから踏み出すことができたし、スズキさんはなんだかんだで良いニャル様で良い感じでした。

    　強いていうなら、ミヨシさんの過去を話す時のセリフ選びが現代人目線なのがちょっと気になりましたが、良いお話を読ませていただきました。
    　ありがとうございます。

    E-Mail pass
Re: 2025年01月19日 01時18分55秒
  • 感想ありがとうございます！

    ＞　タイトルでまさかのざまぁ系かと思いましたが、そんな事はなく(笑) 登場人物らが己の問題とちゃんと向き合う王道なお話でした。

    タイトルは複数の方からご指摘があった通り、再考の余地ありですね～

    ＞　途中、帰る派と残る派に分かれて争うことになっちゃうのかな、なんて心配もしていました。スミカさん、ミヨシさんは帰るメリットが少ない設定だし、スズキさんの要素がニャルラトテップ的なので……。でも、最終的にはみんなイケブクロから踏み出すことができたし、スズキさんはなんだかんだで良いニャル様で良い感じでした。

    実は構想の段階ではミヨシさんはイケブクロから出ない予定だったんですが、ミヨシさんは死という現実と向き合わなければ自由になれないので、最終的には出る選択に変えました。
    スズキがニャル様イメージなのを見抜いてくれて嬉しいです！！今回はたまたま良いニャル様になりました。

    ＞
    ＞　強いていうなら、ミヨシさんの過去を話す時のセリフ選びが現代人目線なのがちょっと気になりましたが、良いお話を読ませていただきました。

    確かに、話し方が時代背景とあまり合っていないかもです……あまりその時代のことを勉強せずに書いちゃったのがバレてますねw

    40点という高評価つけていただき光栄です！！ありがとうございました～

    E-Mail pass
2025年01月09日 18時50分22秒
 +30点
  • こんにちは。『ざまぁみろナイフ』を最後まで読ませていただきました。

    中心となる二人が年若く、かつ平易な文章で描かれている点や武器のネーミングセンスから、児童文学作品のような印象を受けました。かといって読み応えがないのではなく、悩みに共感したりスズキのやり方に憤ったりと、物語の中にどっぷり浸かって楽しむことができました。

    淡々と書かれているようでいて、カケルの「泣きたくても泣けない」シーンには胸を突かれるものがありましたし、アヤカが偽の母親と対峙するシーンは心底ゾッとしました。
    一番感動したのは、ナガシマの歌ですね。「お前の どうしようもなく優しい所は　きっと そこで 出来たんだろう♪」という歌詞がとても優しくて、なんだか私もすごく慰められました。

    こうやって書いていると、自分はアヤカにすごく感情移入していたんだなぁと改めて思うんですが、タイプ的にはむしろアヤカのお母さんに近いものがあると自覚しています。
    ヘリコプターペアレントの気があることをいつも自戒してるんですが、そういう母親に対しても、彼女の気持ち（「いつも自分で決められないから、ママが代わりにやってあげてるんでしょ？」）がきちんと表現されており、それを受け止めつつアヤカが「それでも、もうやめて」と返すのは、母親はアヤカにとって葛藤の種だったけれど決して敵ではないんだ、ということの現れなのかなと思えました。

    最後にミヨシの最期を持ってくるところなんかも含めて、全体的にとても優しい物語でした。でもそこに押し付けがましいところがないので、読み終わってからジワジワ沁みてくるような、そんな作品だったと思います。

    貴作は「自由とはなにか」というテーマについて、真っ向から取り組んだ作品でした。ですが作中に『自由』というワードはほとんど登場しません。母親からの過干渉や束縛でがんじがらめになっているアヤカや、「永遠の夏休み」と称されるものの実はなにもできないイケブクロという舞台で、「自由・不自由」というのが表現されており、そこが秀逸でした。
    ただその分、偽の母親と対峙したアヤカが「それが自由だ」と叫ぶセリフは、とってつけたように感じられました。個人的には、ここは別の言葉に置き換えた方が、これまでの雰囲気を損なわないのではないかと感じました。

    『ざまぁみろナイフ』というタイトルも、語感がよくあらすじとセットにするとなんとなく内容を想像できてよかったです。よかったんですが、これ、カケルの武器なんですね。主人公であるアヤカ自身は「ざまあみろ」という性格ではないし、物語の着地点も「ざまあ」ではないので、読み終わって少し違和感が。かといって『もうやめてソード』が相応しいかといえばそこは首を傾げるところです。ここは一考の余地ありではないかと感じました。

    以上です。
    色々と書いてしまいましたが、合わない点はスルーしてくださいね。
    執筆お疲れさまでした。今後の創作活動を応援しています。

    E-Mail pass
Re: 2025年01月19日 01時30分27秒
  • 感想ありがとうございます！

    ＞中心となる二人が年若く、かつ平易な文章で描かれている点や武器のネーミングセンスから、児童文学作品のような印象を受けました。かといって読み応えがないのではなく、悩みに共感したりスズキのやり方に憤ったりと、物語の中にどっぷり浸かって楽しむことができました。

    実際に児童文学寄りで書いてます。辻村深月の「かがみの孤城」にちょっと影響を受けてるのもあるかもです。


    ＞淡々と書かれているようでいて、カケルの「泣きたくても泣けない」シーンには胸を突かれるものがありましたし、アヤカが偽の母親と対峙するシーンは心底ゾッとしました。

    個人的に「泣きたくても泣けない」キャラを見ると泣けるんですよね。
    アヤカと母の関係はちょっと勉強して書きました（後述します）。

    ＞一番感動したのは、ナガシマの歌ですね。「お前の どうしようもなく優しい所は　きっと そこで 出来たんだろう♪」という歌詞がとても優しくて、なんだか私もすごく慰められました。

    ナガシマの歌の歌詞は自分でも良く書けたと思ってたので、褒めてもらえて嬉しかったです！

    ＞ヘリコプターペアレントの気があることをいつも自戒してるんですが、そういう母親に対しても、彼女の気持ち（「いつも自分で決められないから、ママが代わりにやってあげてるんでしょ？」）がきちんと表現されており、それを受け止めつつアヤカが「それでも、もうやめて」と返すのは、母親はアヤカにとって葛藤の種だったけれど決して敵ではないんだ、ということの現れなのかなと思えました。

    「過干渉な母親」の心理については、色々調べたりして書いたんですよね。どうして過剰に干渉してしまうのか、子はどうしてそれを受け入れてしまうのか。リアルに書けていたみたいで良かったです。

    ＞ただその分、偽の母親と対峙したアヤカが「それが自由だ」と叫ぶセリフは、とってつけたように感じられました。個人的には、ここは別の言葉に置き換えた方が、これまでの雰囲気を損なわないのではないかと感じました。

    確かに、ちょっとここはクサすぎたなと思いました。自由というワードをあえて出さないようにしてたのは確かなので、ここでも使わない方が伝わりますね。

    ＞『ざまぁみろナイフ』というタイトルも、語感がよくあらすじとセットにするとなんとなく内容を想像できてよかったです。よかったんですが、これ、カケルの武器なんですね。主人公であるアヤカ自身は「ざまあみろ」という性格ではないし、物語の着地点も「ざまあ」ではないので、読み終わって少し違和感が。かといって『もうやめてソード』が相応しいかといえばそこは首を傾げるところです。ここは一考の余地ありではないかと感じました。

    おっしゃる通りですね。後輩にもらった構想メモのタイトルをそのまま作品タイトルにしたので、あんまり考えてなかったんですよね……再考しようと思います。

    高評価いただき嬉しいです！　ありがとうございました！

    E-Mail pass
2024年12月31日 21時49分17秒
 +30点
  • 　読了しました。粘膜です。

    　いきなりかなり完成度の高い作品に出合いました。作品に込めたテーマやメッセージに沿って必要な描写だけを真っすぐ積み重ねているという感じで、余計な寄り道をせず個々のキャラクターにしっかりと向き合って完結させている点が愁眉だと感じました。
    　高い構成力によって全体を掌握しコントロールしているというよりは、いやもちろんそれもあるんでしょうけど、それ以上に作者様の「これを書きたいんだぞ」という気持ちが真摯であることが要因なのではないかと思います。気持ちが籠っているというんでしょうかね。他の作品読んでないから分かりませんが、優勝する確率は高いかなと。

    　描きたかったテーマ、自由とは何か、というのについては、一読者としては「自分に打ち勝つ」「現実を直視する」のが自由であることなのだと解釈しました。何を手にするも失うも、その二つが出来ていないと全部自分と関係のないところで起きてしまうし、逆にそれさえ出来ていればこの世界の喜びも悲しみもすべて自分自身のものになるんだろうなと。勝つも負けるも幸せも不幸も望みが叶うも叶わないも、全部そこから始まるんだろうなと。
    　自由とは自分に由ること、なんて福本信行先生も行っていましたね。前向きそうだけど実はこれすごく厳しいというか、自己責任論的なものの裏返しでもあるような気はします。だから書き方によってはすごく苛烈で厳格な印象の読み味になりそうなストーリーですが、今作は伝え方がすごく優しんですよね。
    　時間が止まったイケブクロという空間。これは心の傷を負った人々が現実と自分に向き合うモラトリアムを与えて貰う為という風に考えることが出来ると思います。実際にはそんな猶予期間なく時間だけが無情に進み続ける訳ですからね。そういう意味ではスズキって無茶苦茶優しいし何なら甘い存在でもあるように思えますが、あくまでも悪役を演じて各々の生きる力を込められた武器で滅んでいく様は非常に味わい深いキャラクターでした。
    　家庭環境や愛しい人との離別や夢との向き合い方や病と死、それぞれ多くの時間を必要とする問題に対する個々の向き合い方については、キャラクターの項でまた触れてみようかと思います。

    　文章はシンプルで素朴な感じで余計なことをつらつら描いていなくて、それでいてピュアな心理がしっかりと伝わって来るように感じられました。
    　正直序盤は物足りない印象もありました。読みやすいけどそれ以上ではないのかなと。しかし文章に外連味や凄みを求めて空回りするくらいならそっちの方が良いというのが今時の考え方ではあるんだろうなーくらいの読み方をしていたんですが、要所では結構切れ味も感じましたし、それに何よりキャラの心理がすごく出来上がっているので素朴な文章でもきちんと胸に訴える書き方になってるんですよね。
    　特に幸せだアックスが炎を打ち払ったところとかの描写はシンプルながらすごく良かったです。

    　タイトルから受けた印象。これは正直それほどセンスが良いなとは、読む前の段階では思っていませんでした。
    　しかし物語が進みその意味が明らかになって来るに連れ、かなり好きな言葉になって行きました。ざまあみろナイフ、もうやめてソード、変わるんだボウガン、ありがとうシールド、幸せだアックス、こういうちょっとアホっぽいけどそれだけに素朴さが滲むような言葉が個人的にはかなり好きで。
    　言葉としては好きですが、タイトルはどちらかというと入り口なので、他の言葉にするのが上手いと言えば上手いのかな？　とは思いますが、しかし読み終えてみると好きなタイトルになったことも確かです。

    　キャラクターの雑感。

    　アヤカは尖ったところのない、言い換えれば没個性的な主人公ではありましたが、そこがすごく等身大で、どこにでもいるごく普通の女の子がありがちながら深刻な悩みの中で苦悩し、そしてイケブクロに辿り着くという序盤の導線がすごく大切なものなのだと感じられました。このポジションで、というよりこの作品に尖った個性っていらないんだろうなと思います。瑞々しさが描けていればそれで良いんだろうなと。
    　その上でこの子優しいんですよね。カケルに対する接し方とか気持ちとかが。こんだけ抑圧されてたら割と色々ひねくれた心情を持ちそうなもんですし、自分だったらそういう方向に舵を取ってしまいそうになりますが、すごくピュアというか。この子って人格的にはすごく良い子で、必要なのはほんのあと一歩の勇気と周囲の応援だけなんですよね。優しいし真っすぐだけど、それゆえに母親への思いやりや流されもあって、それが障壁になってたみたいな。
    　作品のテーマ的に「まず自分と向き合う」というのが必要とされる訳ですが、その向き合うべき主人公の鏡像をすごく醜く混沌としたものにすることが一つ物語に深みを持たせうる要素じゃないかと考える部分も個人的にはあって、影で動物いじめて発散してるとか言い出したら流石に露悪的だけど、とにかく何かしら主人公自身をものすごく心の弱い人物に描くことで超えるべきハードルを無茶苦茶でかく設定した挙句、収集付かなくなって「乗り越えなくてもくぐったり迂回したりすりゃ良いじゃん」みたいな方向に行っちゃうところが私自身にはあるんですが。しかしこの子の場合はこの子自身の心の屈折はそこそこ緩やかで、普通に良い子で強い子で、だから正面突破出来たんだみたいなストーリーラインになっています。作者様は豆腐メンタルとか言ってますが自分はそう感じました。こっちの方がストーリーとしては綺麗ではあるし、主人公に好感も持ちやすいので、このあたりのアプローチの仕方はこれで正解というか王道の魅力を引き出せている感じがありました。それでいて「単に弱いから、無力だから」何も出来ない訳でなく、母親が好きだから、という理由で立ち向かえない部分を描いているのは、すごく繊細で良かったと思います。

    　カケルくん。可愛いショタですね。
    　生意気ではあるけど子供らしくおっさん共に怖い顔されたら反発しきれなかったりします。それでいて誰よりも先に戦う力に目覚める男の子らしい強さ、負けん気も持ってます。良いですね。
    　正直野郎である自分だと理解しきれない部分があるんだろうとは思います。が、良いキャラなのはすごく伝わりました。自分の方が割と社会的には深刻と言われそうな状況にあるのにアヤカの方を気遣えるあたりの思慮深さや優しさもグッドというか、基本的にどのキャラもすげー善人でピュアなんですよねこの物語。

    　スミカさん。男前で素敵な女性です。
    　スミカさんだけに住処を提供してくれます。
    　恋人を失う苦しみっていうのも正直良く分からないような恋愛経験をしている自分ですが、だから、という訳でもないのですが、この人がハートは一番弱いというか繊細な感じはするんですよね。二十年イケブクロに引き籠っちゃってるのを差し引いても、生きて現実に存在していくのにはこれと言って支障はない状況で、イケブクロにいたらアランの偽物とずっと戯れられるとかそういうのではなく、会えはしないし何ならスズキに嫌がらせまでされるのに、それでもイケブクロにずっといる。アランがいない現実、というのに向き合うのがつらいということにしても、イケブクロにいてもそれは変わらない訳で、打ちひしがれた状態で人生の色んな事をこなしていくのが無理＝単なる無気力なのかと言われればそうではなく、イケブクロではイケブクロでのやること見付けてメシ作ったり店経営したりとか割とちゃんと健全で意味のあることしてるし。このあたりの心理というのは正直この感想書きながらでも全部は理解しきれないというか、キャラに説得力がない訳では決してない、むしろとても魅力的なキャラでお題の画像のイメージでとてもくっきりと読みながら頭の中で動いてくれたんですが、それでも多分僕の人生観とは違うところで作られたキャラなのかなと思いました。

    　逆にナガシマは無茶苦茶分かりました。こいつが一番好きでした。こいつについては色々考えすぎてしまうのでこれ以上触れることはしないでおきます。

    　ミシマはこいつが一番深刻ですよね。こいつだけはイケブクロを出るの無理だろって思いました。だって死ぬんだもん。
    　でも結局こいつも出て行くんですよね。こいつにとって「現実を受け入れる」ってつまり「死を受け入れる」ってことなのに、その究極を成し遂げたのはすごかった（小並）です。それだけに幸せだアックスを奮うシーンはすごく印象に残りました。これが嘘くさくならずにきちんと説得力持って描写されてたのは冷静に考えるとすげーやって改めて思いました。
    　死ぬ前にイケブクロで幸せに過ごせて、だから死を受け入れられた。イケブクロは優しい場所だと思いますが、誰に優しかったってこいつに一番優しかったですよね。もう死んでも良いやって思えるくらい幸せな時間をくれた訳ですから。

    　スズキはイケブクロそのもので、前述のとおり悩める人間にモラトリアムを与えてくれる、悪魔のように見えてすごく優しい存在……だと自分は解釈してます。
    　ただなんでスミカさんのことはいじめてたのかな？　ってのは、ちょっと良く分かんなかったりもしました。これについて今からつらつら妄想を開始してここまでに描いて来たような長文を展開することももちろんできますが、そろそろ4000文字超えるので止めておきます。

    　感想は以上です。
    　素朴で前向きでピュアで良い奴らばかりで、メッセージも無茶苦茶前向きで、すごく清潔な作品という印象でした。
    　ここまで来るとかえってなかなかみないアプローチで、それでいて説得力があって、これはちょっとした傑作だろうなとそう思いました。

    　創作お疲れ様です。これからも頑張ってください。

    E-Mail pass
Re: 2025年01月19日 02時27分22秒
  • 感想ありがとうございます！

    ＞　いきなりかなり完成度の高い作品に出合いました。作品に込めたテーマやメッセージに沿って必要な描写だけを真っすぐ積み重ねているという感じで、余計な寄り道をせず個々のキャラクターにしっかりと向き合って完結させている点が愁眉だと感じました。

    めっっちゃ褒めてくれるじゃないですか……。ありがとうございます！！

    ＞　高い構成力によって全体を掌握しコントロールしているというよりは、いやもちろんそれもあるんでしょうけど、それ以上に作者様の「これを書きたいんだぞ」という気持ちが真摯であることが要因なのではないかと思います。

    作者コメントにもちょっと書きましたが、確かにこの作品には色々思い入れがあったので、真摯にテーマと向き合えたんだと思います。

    ＞　描きたかったテーマ、自由とは何か、というのについては、一読者としては「自分に打ち勝つ」「現実を直視する」のが自由であることなのだと解釈しました。何を手にするも失うも、その二つが出来ていないと全部自分と関係のないところで起きてしまうし、逆にそれさえ出来ていればこの世界の喜びも悲しみもすべて自分自身のものになるんだろうなと。勝つも負けるも幸せも不幸も望みが叶うも叶わないも、全部そこから始まるんだろうなと。

    おっしゃる通りです！！　ズバリ伝わってて感動しました～。

    ＞　時間が止まったイケブクロという空間。これは心の傷を負った人々が現実と自分に向き合うモラトリアムを与えて貰う為という風に考えることが出来ると思います。

    イケブクロは、スズキが生んだ空間です。彼がイケブクロを作ったのは停滞した人間たちを集めて狂気と混沌に堕としたかったから（つまりお遊び）。スズキはそこに誘った人間を騙したり悲しませたりして苦しめることで楽しんでたんですが、副次効果としてモラトリアムも与えてた、みたいな感じです。

    ＞　文章はシンプルで素朴な感じで余計なことをつらつら描いていなくて、それでいてピュアな心理がしっかりと伝わって来るように感じられました。

    ありがとうございます！！　主人公が16歳なので、余計なことをあんまり考えさせないようにしてました。あんまややこしい思考すると高校一年生らしさが失われちゃうかなと。

    ＞　正直序盤は物足りない印象もありました。読みやすいけどそれ以上ではないのかなと。しかし文章に外連味や凄みを求めて空回りするくらいならそっちの方が良いというのが今時の考え方ではあるんだろうなーくらいの読み方をしていたんですが、要所では結構切れ味も感じましたし、それに何よりキャラの心理がすごく出来上がっているので素朴な文章でもきちんと胸に訴える書き方になってるんですよね。

    最初の方は書いたのが6年前だったので、今より書くのが下手なんですよ……。キャラの心理、色々考えた甲斐がありました。

    ＞　タイトルから受けた印象。これは正直それほどセンスが良いなとは、読む前の段階では思っていませんでした。
    ＞　言葉としては好きですが、タイトルはどちらかというと入り口なので、他の言葉にするのが上手いと言えば上手いのかな？　とは思いますが、しかし読み終えてみると好きなタイトルになったことも確かです。

    タイトルは何も考えずに後輩からもらった構想メモのタイトルからつけたので、あまり完成時の作品と合ってないんですよね。再考しようと思います。ざまあみろナイフが作中で最初に出るのも、タイトル回収どこでしようかな～という所から武器の設定を考え付いたからです。

    ＞　アヤカは尖ったところのない、言い換えれば没個性的な主人公ではありましたが、そこがすごく等身大で、どこにでもいるごく普通の女の子がありがちながら深刻な悩みの中で苦悩し、そしてイケブクロに辿り着くという序盤の導線がすごく大切なものなのだと感じられました。
    その上でこの子優しいんですよね。カケルに対する接し方とか気持ちとかが。こんだけ抑圧されてたら割と色々ひねくれた心情を持ちそうなもんですし、自分だったらそういう方向に舵を取ってしまいそうになりますが、すごくピュアというか。この子って人格的にはすごく良い子で、必要なのはほんのあと一歩の勇気と周囲の応援だけなんですよね。優しいし真っすぐだけど、それゆえに母親への思いやりや流されもあって、それが障壁になってたみたいな。

    アヤカはとにかく普通であることにこだわって書きましたね。「過干渉な母親」像については、ちょっと調べたりして心理面を勉強しました。リアルに書けていたようで良かったです。
    アヤカが普通なのは、精神科デイケアでの経験が影響しているんだと思います。デイケアに居る人ってすごく普通で、そして大人しい人ばかりなんですよ。理由は単純で、他者を攻撃したりする人はデイケアから出禁にされるからです。そんな普通の人でも、場合によっては十数年も一歩を踏み出せない場合もあります。アヤカは周囲の環境に恵まれ、カケルの言葉で勇気を持てたからこそ自由を勝ち取れたんです。

    ＞　カケルくん。可愛いショタですね。
    生意気ではあるけど子供らしくおっさん共に怖い顔されたら反発しきれなかったりします。それでいて誰よりも先に戦う力に目覚める男の子らしい強さ、負けん気も持ってます。良いですね。

    彼は作中一悲惨ともいえる家庭環境でしたが、それにしては確かにスレてないです。とは言え心の傷は相当に深いですが。スミカがいなければ、彼は自分が誰かに愛されるというイメージが湧かず、人間不信から抜け出せませんでした。

    ＞　スミカさん。男前で素敵な女性です。
    ＞　スミカさんだけに住処を提供してくれます。
    ＞　恋人を失う苦しみっていうのも正直良く分からないような恋愛経験をしている自分ですが、だから、という訳でもないのですが、この人がハートは一番弱いというか繊細な感じはするんですよね。

    間違いなくそうですね。スミカ自身は無意識ですが、彼女は自分をイケブクロに縛ることで、自分の中からアランのことが絶対に薄れないようにしたいんです（その証拠に、イケブクロにいた20年は誰とも付き合ってないのに、イケブクロから出たら割とすぐパートナーを見つけてます）。永久ともいえる悲しみに自らを閉じ込めてまで現実で生きることを拒んだ彼女は、かなり繊細と言えます。スズキとの利害が無意識下で奇跡的に一致した結果、ずっといじめられてたんですね。

    ＞　逆にナガシマは無茶苦茶分かりました。こいつが一番好きでした。こいつについては色々考えすぎてしまうのでこれ以上触れることはしないでおきます。

    実はナガシマは私の作風としては異質なキャラです。彼は明確に私とは違う「他者」という感じがしてて、心理を書くのが一番難しかったですね。最初は彼には歌手やめて動画編集者になってもらおうかなと思ってたんですが、心のナガシマさんが「そんなことする訳ねーだろ！！」と言ってきたので世界に飛び立ってもらいました。彼は典型的な夢追い人であり、夢を追っていないと生きていけない人間です。逆に言えば夢を追っているときに最も輝ける人間であると言えます。彼は元々「自分と向き合う」という習慣がありません。アヤカに問いかけられなければ、現実で夢を追うのに疲れていたことに自分では気づけなかったでしょう。
    粘膜さんが考えすぎてしまうのは、ナガシマさんと何かしら共通点があるからなんですかね？　差し支えなければ共感したポイントを教えてほしいです。考えることも向き合うことになるかもしれませんよ（何様なんだ）。


    ＞　死ぬ前にイケブクロで幸せに過ごせて、だから死を受け入れられた。イケブクロは優しい場所だと思いますが、誰に優しかったってこいつに一番優しかったですよね。もう死んでも良いやって思えるくらい幸せな時間をくれた訳ですから。

    ミヨシは死ぬのが怖かったからイケブクロに来ました。彼が死に向き合う覚悟を固められたのは、イケブクロに居た時間こそが幸せだったのだと自覚できたためです。彼は元の人生では得るはずの無かった幸せを得ることができたので、間違いなくイケブクロは彼に優しかったと言えます。スミカと出会わなければ幸せを知ることはなく、ただ無為に永遠の時を過ごすことになったでしょう。ミヨシが自由になれたのは、死に向き合ったからというのももちろんですが、スミカが現実で幸せになる手助けができたからでもあります。自己に対する自信の無さによって、彼は長年スミカに想いを伝えられずにいました。スミカたちを助けることで、彼は自信を得たのです。

    スズキはニャルラトホテプイメージのキャラなので、善悪を超越した存在です。たまたまこの化身は人間に興味があったので、「人間って面白いな！　停滞してる人間集めて遊び場作ろ」くらいのノリでイケブクロを作りました。でも書いてるうちにめっちゃ人間寄りになっちゃいましたね。ハンターハンターのヒソカくらい主人公らを助けてくれてます。ラストでミヨシに優しくしたのは気まぐれですが、ミヨシが自身の死を看取るような行動をした真意を知りたかった、というのもあったかもしれません。

    高評価いただいた上、非常に丁寧に読み込んでいただきありがとうございます！！

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合計 3人 100点

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