救済の手

Rev.01 枚数: 3 枚( 836 文字)

<<一覧に戻る | 作者コメント | 感想・批評 | ページ最下部
 ジャックは老若男女の人間を看取って来た。
 不思議なことに、死期が近付いた人間は何かに縋るように手を伸ばしてくるのだ。
 目の前のベッドで横になっているロバートも例外ではない。
「どうした。苦しいのか?」
 白衣姿のジャックの問いに、ロバートは口で答えることができず、代わりに、ジャックの胸ぐらを力いっぱい掴んだ。
 そのことについて、ジャックは意に介せず淡々と説明をし始める。
「キミには少量の鎮静剤を打ってある。少し眠くて力が入りづらいかもしれないが、心配する必要はない」
 ジャックは震えるロバートの手を握り、胸元から優しく引き離した。
 それに対しロバートは、鬼気迫る形相で男を睨んでいる。
「そんなに怖がることはない」
 ジャックは、ベッドの隣に置いてある椅子に腰を下ろした。
「休日、映画、デート、命。明確な終わりがあるものは誰でも怖いものさ。だから、キミが死ぬことによって誰かが救われる。次に繋がると考えてみるのはどうだろうか」
 ロバートは必死に体を起こそうとするが、力が入らず唸るばかりだ。
「我が国では全ての歯がセットで1000ドル、心臓が12万ドル。腎臓に至っては26万ドルもの値が付く。それをキミが死にそうな誰かに提供できたとしたら、それは素晴らしいことだと思わないか?」
 その時、ベッドの頭元にある電話が鳴り、ジャックは誰かと話しをする。
 話が進み、受話器を置いたジャックはおもむろにロバートへ笑いかける。
「おめでとう。キミの死期が決まったようだ。ボスの話では、キミは何人かを手にかけた殺人鬼だそうじゃないか。キミが手にかけた者の中にウチの仲間がいてね。そいつの家族が路頭に迷わないように大金が必要なんだ」
 ロバートはジャックの胸ぐらを再び掴むが、今度は乱暴に振り払われる。
「ボスから許可が下りるまではお客様だが、今からキミは商品だ。キミの腕には値段が付かないから、自由に使ってもらってかまわない。臓器は全て売らせてもらうがね」
 ロバートは何かに縋るように手を伸ばした。
こばりん jQYhbezob6

2024年04月28日 22時58分16秒 公開
■この作品の著作権は こばりん jQYhbezob6 さんにあります。無断転載は禁止です。

■作者からのメッセージ
◆キャッチコピー:その手は誰を救う
◆作者コメント:主催者様、運営の皆様、GW企画の開催おめでとうございます。
少しずつ執筆を進めていたのですが、お風呂から上がって『あ、間に合わねぇな』と思ったので、急遽別作品に切り替えました。

2024年05月12日 23時01分33秒
作者レス
2024年05月11日 21時53分40秒
0点
Re: 2024年05月20日 22時59分30秒
2024年05月08日 03時28分50秒
+10点
Re: 2024年05月20日 22時42分47秒
2024年05月06日 11時30分32秒
Re: 2024年05月16日 23時26分32秒
2024年05月05日 21時09分29秒
Re: 2024年05月12日 23時27分43秒
2024年05月01日 01時01分31秒
+10点
Re: 2024年05月12日 23時09分17秒
合計 5人 20点

お名前(必須) 
E-Mail (必須) 
-- メッセージ --

作者レス
評価する
 PASSWORD(必須)   トリップ  

<<一覧に戻る || ページ最上部へ
作品の編集・削除
E-Mail pass