鍵 |
Rev.01 枚数: 3 枚( 802 文字)
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鍵というのは家や部屋、机や金庫や日記帳にいたるまで。かける物がなんであろうと、外から身を守るための最終防衛線に他ならない。 そのために鍵は、すべからく重要視されるのだ。
逆に言えば、鍵を預けられると言うことは、その人から絶対と表しても過言では無いくらいの信頼を得たと同意義になる事は自明の理だろう。
鍵とは、親愛の情を最も端的に示すことのできるマジックアイテムだ。
重要で重大な鍵。
大事で大切な鍵。
そういう、何事にも代え難いような鍵を――俺は今日、彼女から預かったのだ! 一人暮らしである彼女から鍵を預かったのだ!
一年目の春にしてついに――ようやく彼女から鍵を預かる事が出来たのだ! 信用され、信頼に値する存在だと思われたのだ。今以上に心を許してくれたという事だ。
こんなに嬉しい事がこの世にあるだろうか!
これが何を意味しているのか分るだろうか?
新たなる旅立ちが今、ここから始まるのだ!
これから先を期待せずにはいられない。
何を期待するのかって? そいつを聞くのは野暮ってもんだ。想像力に任せるがいいさ。
ああ! 本当に素晴らしい!
鍵というのはこんなにも重いものだったのか。
鍵というのはこんなにも輝くものだったのか。
たかが鍵。されど鍵。だから鍵。
早くこの鍵を使いたい。早くこの鍵を使ってみたい。
早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早くっ!
俺は、この鍵を使いたいんだ……!
● ●
「……結構気にいってたんだけどな」
手の平にあるのは、ふたつに割れてしまったピンクのハートをかたどったキーホルダー。彼女はそれを、しばらくの間名残惜しそうに眺めていたが、ため息をひとつ吐いてから決心したようにゴミ箱へと捨てた。
そして、一年程前から付けているウサギのキーホルダーを鞄から外し、それに家の鍵を取り付けてポケットにしまった。
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山城時雨
2023年04月30日 21時44分18秒 公開 ■この作品の著作権は 山城時雨 さんにあります。無断転載は禁止です。
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- ■作者からのメッセージ
- ◆キャッチコピー:鍵は重い
◆作者コメント:こういうのもありですか?
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