世界で一番孤独なウサギ (作 : 粘膜王女三世) / 春・旅・うさぎ企画

世界で一番孤独なウサギ

Rev.09　枚数： 25 枚（ 9,932 文字）

　ウサギは脚が速いから、カメのことを追い抜いてびゅんびゅん遠くへ走り去っていく。しかし先にゴールにたどり着けるのは、眠ることなく走り続けたウサギに限る。涼しそうな木の陰だとか、心地良さそうな芝生の上とか、そう言った誘惑を振り切ってストイックに走り続けるウサギだけが、誰よりも先にゴールテープを切ることができる。
　だがウサギは自分の脚が速いことを知っているだけに驕りがあって、それが故にしばしば慢心し、ゴールの手前で眠りこけるのだという。そうしている隙に、健気に歩き続けた脚の遅いカメに、しばしば追い抜かされるのだという。
　本当にそんなことが起こるのだろうか？
　『ウサギのカメ』の話を聞く度に、私は疑問を感じずにはいられなかった。だってウサギがそう簡単に怠けるとは思えない。生れ付き脚が速く、その速さを自慢げに誇示し人を見下すような奴ならば、そもそも走るのが好きじゃなくちゃおかしい。ウサギにとって走ることは風を切る爽快感で、のろまな奴を引き離し前へ前へと突き進む優越感で、誰よりも先にゴールテープに飛び込む征服感だ。そんな心地の良いことを前にして、誰が木陰でだらだらと横たわるというのだろうか？
　「いや別にウサギだって走ったら疲れるのは一緒だからね。怠けるのが楽なのもさ。ソロバンは才能のある人を過大評価してるだけだし、そもそも走るのが得意かってことと走るのが好きかってのは、別問題だから」
　なんていうのは同級生のマキジャクで、そいつは私の通う剣道場で一番強い選手だった。というか中学生の女の子で一番剣道が強かった。中学二年生の時点で既に、全国大会で他を寄せ付けない強さで勝ち進み、見事日本一に輝いていた。
　そのマキジャクは言う。
　「そもそも先にゴールすることが『征服感』って何なのさ。そりゃあ実戦には相手がいるし、そいつの小手とか胴とか引っ叩けるのは楽しいっちゃ楽しいけど、そこだけ延々とやってられる訳じゃないじゃん？　日頃の練習は自分との戦いだっていうし、それは別に『風を切って走る爽快感』とか『相手を退き放つ優越感』とかじゃないからね？　地味ぃな練習のしんどさはソロバンが感じてるのと一緒だよ。わたしだって怠けてたいし楽したいし、剣道なんてやめたいんだってば」
　「じゃあなんでやめないのさ？」
　「お婆ちゃんにやらされるからに決まってるでしょ！」
　そうなのだ。
　マキジャクは童話にしか存在しない『怠けようとするウサギ』で、そもそも走ることが嫌いなウサギだった。ただ道場の師範である祖母に強引に竹刀を持たされて、強引に練習をさせられ続け、強引に強くさせられただけの奴で、そんな奴のまま全国優勝を果たしてしまっていた。
　マキジャクは幼稚園の頃から多くの時間を道場での稽古に費やしていたが、それでもこいつの情熱は何一つ剣道に向けられていなかった。こいつが関心を向けるのは、コンビニでたまに買って貰えるポケモンパンからどんなシールが出るかということと、休憩時間に行われるDSのポケモンバトルで、下級生相手にどんな戦略を取るかということだった。
　私がマキジャクに対して持つ一番の印象は、その強さではなく、祖母に睨まれて嫌そうに泣きながら素振りをする、みっともない姿だった。道場には近所の小中学校から色んな生徒が詰めかけていたが、マキジャクは強さの割にはあまり尊敬されていなかった。
　だいたいこいつのする剣道には丸っきり華やかさも気高さも品もない。道場でただ一人だけ下段に構え、怯えたいじめられっ子みたいに相手の顔色だけを見て防御に徹し、焦れた相手が隙を見せたら申し訳なさそうに小手を打って終わりにする。そうして勝っても、怒られないことに安堵はしても、嬉しそうな表情は何一つ見せない。
　そんなんだから、中学二年の全国大会が終わった数か月後、病に伏していた師範である祖母が亡くなった時は、通夜にやって来た私達にマキジャクは心底から嬉しそうな表情を見せた。
　「これでやっと剣道がやめられるっ！」
　マキジャクは小躍りでもせんばかりの様子だった。そして道場の幼馴染である私とモノサシを近所の公園に連れて行き、初めて見せる気前の良さで自販機のコーラを三本買った。そしてその一本ずつを私達に手渡し、これまでに発したこともないような明るい声でこう言った。
　「お祖母ちゃんの死と、これからのわたしの自由に乾杯！」
　そう言ってコーラを天へと突きつけたマキジャクの顔面を、モノサシが全力で殴打した。
　マキジャクは鼻血を吹きながらその場を吹っ飛んで、シーソーの角に後頭部を殴打した。そして顔面蒼白になってモノサシの顔を見上げると、アタマを抱えて呻くような声で言った。
　「たすけて」
　モノサシは表情を殺してマキジャクに襲い掛かった。多分モノサシはマキジャクのことを殺すつもりだった。防御と逃走に徹するマキジャクに、モノサシは一切の容赦をせずに襲い掛かり、顔を殴打し顎の骨を折った。
　そんなモノサシを命懸けで止め、マキジャクを逃がしたあの夜のことを、私は正直、思い出したくもない。

　モノサシは名門と呼ばれる我が道場でも二番目に強い女子で、もしかしたら全国でも二番目に強い中学生だった。少なくともマキジャクは、『わたし以外だとモノサシが日本で一番強い』と断言していた。
　「面打ちがとにかく速いし、無茶苦茶重たいんだよ。良く上級生の竹刀吹き飛ばしたりしてるでしょ？　正直あんなに派手にやる必要ないし隙もあるんだけど、初見の人とかはやっぱりビックリするから。良く見て先に手元をパチンとやれば勝てるって気付けないまま、『すごい』って印象のままやられちゃうんだよね」
　モノサシの剣道には華があったし、モノサシ自身にも華があった。上背があり鼻が高く、切れ長の目はやや三白眼気味だったが、その視線は鋭く凄みがあった。上級生とのトラブルも折衝できる度胸があったし、鷹揚な性格で目下の面倒見も良かった。誰よりも練習熱心な努力家で、その両手にはいつも潰れた血豆があった。
　当然、人気はある。モノサシの周りにはいつも誰かしら人がいた。対するマキジャクはいつも一人でゲーム機を抱え込んでいた。マキジャクはマキジャクで綺麗な子ではあったけれど、弱気そうな黒目がちの垂れ目を俯けて猫背で歩くその姿には、モノサシのような気位に欠けていた。
　だがそんなマキジャクのことも、モノサシは普通に認めていたし尊敬もしていた。倒すべき目標に定め、いつかは越えてやろうと息巻いていた。
　「あんた良くマキジャクにキレないよね」
　当時のある時、わたしがモノサシにそう言うと、モノサシは小さく鼻を鳴らしてこう答えた。
　「キレたらあたしがダサいだけだろ？」
　「まあね。でも内心面白くないでしょ？」
　「あいつはあれで、まあまあ大した奴だと思うぞ？」
　「そう？」
　「ああ。意欲のない、人にやらされてるだけのことで、あそこまで力を出せるのは立派だろ。根は誠実ってことなんだろうな。それに、どんなに強くなって結果を出そうと、周りから持て囃されようと、嫌いなものを嫌いだと言い続けられるのは、自分を強く持ってる証拠だと思う。ひ弱にも見えるけど、芯は強いっていうか、頑固なんだな」
　モノサシはマキジャクに優しかったし、上級生にいじめられないよう庇ってやってもいた。マキジャクもモノサシには懐いていて、不器用に媚びるところもあった。同じ道場の幼馴染として、概ね円満な関係が出来ていた。
　それでもモノサシは尊敬していた師範の死を踏みにじったマキジャクを許さなかったし、マキジャクもまた、自分の顎を折ったモノサシから背を向け、口を利かなくなっていた。
　マキジャクは病院のベッドで稽古のない日々を堪能しつつ、綺麗な顔を元通りにした後、本当に剣道をやめてしまった。そして中三の夏に挨拶もないまま転校して、わたし達の前から姿を消した。
　モノサシはというと家裁送致を免れた後、師範の変わった道場に通い続け、血が滲むほど稽古に打ち込んで中三の時に念願の全国優勝を果たした。
　皆がモノサシを祝福した。あれだけ練習していたのだから報われて欲しいのだという気持ちが、モノサシの周囲の人々にはあった。誰からも応援されて然るべき奴だったと思うし、それに応えるだけの才能もあった。
　しかし当のモノサシに心からの笑顔はなかった。
　「優勝出来て嬉しいんだけどさ。マキジャクの奴に勝ち逃げされたのは、やっぱ癪だよ」
　祝勝会の片付けを終えた後、私と二人きりになった時、モノサシは漏らすようにそう打ち明けた。
　「そんなの気にすることないよ。だってあいつもう剣道やってないんでしょ？　勝ち逃げとかじゃないって。勝つとか負けるとか、そう言うの以前の問題じゃん」
　「理屈の上ではな。でも気持ちの部分ではやっぱりどうしても、もやもやする」
　「あんた高校でも剣道やるんでしょ？　だったらそこでマキジャクより強い奴になんていくらでも会うよ。そういうのと戦って勝ったり負けたりしてる内にさ、土俵降りたバカへの気持ちなんて、なくなってくれると思うよ」
　私がそう言うと、モノサシは腕と足を組んで首を捻った後、悩まし気な顔のままこう言った。
　「それが嫌なんだよ」

　中三の春休み。何かを終えて新たな何かを始める季節。
　高校への入学を控えたモノサシの脚に、骨肉腫が見付かった。
　脚を切断しなければならないという。でなければ腫瘍はリンパ節に転移して全身を駆け巡り、やがて重要な内臓を脅かしてモノサシを死に至らせる。
　ふとした脚の違和感から診察を受けた際、それはモノサシの身体から見付かった。その場で緊急入院となり家族が駆けつけ、医師からの説明を聞いて膝を折って泣き崩れた。
　泣きじゃくり嘆く両親の姿を見て、モノサシはただ夢でも見ているような気持ちで、呆然としていたという。そりゃそうだろう。だってモノサシはつい数時間前まで元気に素振りや足運びの練習をしていたのだ。そういう平凡で正常な世界があっさりと砕け散り、片脚が消えてなくなり剣道も出来なくなるという事実を、モノサシはすぐには理解できなかったのだ。
　モノサシは手術をすることを承諾しなかった。モノサシの両親は嘆き苦しみながらも、娘の命を救う為、色々な方法でモノサシに手術を受けるように説得を図った。私もそれに加わった。私はモノサシの親友だったし、モノサシが死ぬのは嫌だったのだ。
　「あんたさ。手術受けなよ」
　病室でわたしはモノサシに言った。何の説得にもなってない単刀直入な物言いだったが、他にどう言えば良いか分からなかった。
　「黙れ。脚を切られるのはおまえじゃねぇ癖に」
　ふてくされたような顔のモノサシが布団から顔を出した。髪を縛っていないモノサシの顔には覇気がなく、年相応を通り越して、遥かに幼い子供のようだった。
　「あんた大した奴なんだからさ。義足になろうとなんだろうと、命あったら剣道で一番になるより立派なこといくらでもできるよ。手術受けなよ。そしてちゃんと生き延びるんだ」
　「黙れボケっ。自分の脚でもない癖に！　帰れよ！　つか死ね！　死んでいなくなれ！」
　らしくもなく甘ったれてやがって。でもしょうがない。大事な脚を切られるとなったら誰だってこうなる。私だってこうなる。
　こいつの怒りも苛立ちも哀しみも、全部を受け止め許容した上で、私はこいつを脚を切る決断に導かなければならない。その方法を私は考えなくちゃいけないし、考えたことを実行しなければならないのだ。
　私は五分ほどその場で沈思黙考した後に、こう声を掛けた。
　「マキジャク、連れて来ようか？」
　布団の中で、モノサシが僅かに身じろぎをしたのが分かる。
　「別にマキジャク連れて来てマキジャクと決着付けたら、それで脚切れっつってんじゃないんだよ。ただまあ私は私にできることしかできんし、それをしてやった上でどうするのかは、あんたが自分で決めりゃ良いんだし」
　モノサシは答えない。
　「で、どうなの？　連れてきた方が良いの？　それとも顔も見たくない？　どっち？」
　しばしの沈黙。
　時計の針の音だけが響き渡って、やがてその回数も分からなくなった頃、モノサシは答えた。
　「……連れて来てくれ」

　長い旅路となった。
　マキジャクが転校して行ったのは県境を三つほど超えた先のところだった。そこでマキジャクは中途半端な偏差値の進学校を受験し合格し、もちろん剣道などはせず、ニンテンドースイッチで好きなポケモンをしながら春休みを過ごしているのだという。
　私は貯金をはたいてマキジャクのいる街まで訪れていた。調べて置いたマキジャクの家のチャイムを鳴らし、マキジャクの母親に「久しぶりね」と歓迎されつつ屋内に侵入。マキジャクの部屋の前に立つと勢い良く扉を開け放った。
　「わぁっ」
　驚いた様子でニンテンドースイッチを放り出すマキジャクは、以前よりもやや丸みを帯びた様子だった。おっぱいがEカップくらいになっている以外にも、剣道をやっていた頃の若干ゴツゴツした体型から女性らしい柔らかな姿に変わりつつある。机に置かれたポケモンパンとスナック菓子とコーラの組み合わせも、そのことと無関係ではないだろう。
　「あんたデブった？」
　「いきなり来てそれは失礼じゃない？」
　「いや実際デブってるし」
　「確かに体重増えたけどまだ普通だし。つか細いし。BMIも２１くらいだし。昔がちょっとおかしかっただけだし。ササミばっか食わされたりとかさ。何だったのあれボディビルでもさせるつもりだったの？　中学生だったんだよあたし？　そういうのやめて普通の体格に戻ってるだけで別に太った訳じゃ……」
　「あんたがデブった言い訳とか良いから」
　「ソロバンが言って来たんだし。つか何？」
　「とにかく行くよ。電話で言ったでしょモノサシが脚切るんだよ早くしろよ」
　「だから、やだし。やだって言ったし」
　「何でやだの？」
　「なんであたしがモノサシと剣道なんかしなきゃいかんの？」
　「良いから来いよ！　ほら、ポケモンカードあげるから！」
　私は貯金をはたいて弟から買い上げたレアポケモンカードをマキジャクに握らせ、無理矢理に家から叩きだして特急列車に引っ張り込んだ。
　「何でわたし殴って大けがさせたモノサシにそこまでしなきゃダメなのさ」
　マキジャクが不承不承という風に言う。
　「あんたが殴られたのは、師範の死をコーラでお祝いなんてしようとするからでしょ？」
　「あんなお祖母ちゃん、死を祝われて当然だしっ。つか虐待だよあれ？　剣道行くの嫌がったら、普通にぶん殴られたり熱湯掛けられたりしてたし。強くなるからとか言って、漢方とか言ってお腹壊す変な泥水みたいな飲まされたり。長い休みのたんびに、変なお寺みたいなところでおっきな火の前で、意味わかんない呪文を何時間も唱えさせられたり……。熱いんだよあれ！　死にかけるんだよ！」
　「その辺の事情はまあ薄々察してたけどさ。あの婆さん、最後の方明らか耄碌してたし。だからってモノサシの前で死んで嬉しい言うのはまずいっしょ。モノサシは師範のことガチ崇拝してたんだから。そりゃあキレられるし殴られるし殺されかけるっしょ」
　「怒ったからって殴ったり殺そうとするのは野蛮だと思いますぅ！」
　「うっせ。モノサシに言え。とにかくほら、付いたよ」
　特急列車の扉が開く。生まれ育った街に回帰したマキジャクを連れ、私はモノサシの待つかつての道場に向かって歩きはじめた。

　マキジャクのお祖母ちゃんから道場を引き継いで運営している人に事情を話し、門下生がいない時間帯に三十分だけ道場を借りていた。
　モノサシは防具を付けたまま正座して待っていた。もちろん、病院を抜け出して。今頃医者も看護士もこいつの親もパニックになっていることだろう。申し訳ないと心から思うが、この一度だけ迷惑をかけるのを許して欲しかった。
　「来たか」
　モノサシは言う。
　「うん」
　「悪いな、来てもらって」
　「良いけど。えっと、やるの？」
　「頼めるか」
　「……うん。いいよ」
　マキジャクは葛藤を飲み込むように言って、私から借りた防具と竹刀を身に着け始める。
　試合の結果は分かり切っている。私は思った。
　確かにマキジャクは強かった。モノサシよりも前に全国制覇を果たした実績があった。道場での打ち合いでもモノサシに一度も負けなかった。マキジャクは先頭を走り続ける才あるウサギだったのだ。
　しかしマキジャクは剣道をやめた。走り続けることをやめたのだ。そして木陰で眠りこける童話のウサギのように、丸一年以上に渡って竹刀を握らずにいたのだ。身体もしっかりたるんでいた。そんな奴が努力を続けたモノサシに敵う訳がない。　
　マキジャクが防具を付け終える。モノサシは竹刀を持って立ち上がり、静かにマキジャクと対峙する。モノサシの鋭い視線と、マキジャクの意外なほど澄んだ視線とが、同時に私の方へと注がれた。
　「はじめっ」
　自然と、私は強くそう叫んでいた。
　マキジャクは下段に、モノサシは上段に竹刀を構えた。守備型と攻撃型。当時から変わらない、それぞれのスタイル。モノサシは高く構えた竹刀を鋭い踏み込みと共にマキジャクの面へと打ち下ろす。
　「メェエエン！」
　それであっさり決着がついてもおかしくないと思った。しかしマキジャクは竹刀をふらりと持ち上げると、あっさりとモノサシの面打ちを振り払ってしまう。
　再びにらみ合い。続く二度目の面打ちも、それを防ごうとする駆け引きの中で新たに放たれた胴打ちも、マキジャクはかつてのようにあっさりと跳ね返してしまった。
　モノサシの動きに焦りが生じ始める。その焦りを突くように繰り出されるマキジャクの小手打ちに苛立つように裁いた後で、しばしの対峙の後、モノサシは竹刀を大きく振り上げた。
　「メェエエンっ！」
　それは過去最高の鋭さを持った渾身の一撃だった。その動きはしなやかで素早く、振り下ろされる斬撃の威力はどっしりと重い。
　しかしその一撃がマキジャクを倒すことはなかった。
　マキジャクはモノサシの面打ちをひらりと躱し、その間隙に、誰よりもすばしっこい手でモノサシの小手を打っていた。
　私は呆然とした。モノサシもその場で立ち尽くして動けなくなっていた。思わずわなわなと震え出そうとするわたし達の前で、マキジャクだけが静かに防具を脱いで一言、口にした。
　「……別に良いでしょ。声とか」
　マキジャクは気だるげに竹刀を放り出すと、淡々とした様子で防具を抜き始めた。
　「恥ずかしいんだよ、あれ」
　モノサシはその場で膝を着いて崩れ落ちた。
　私は思わずモノサシの方へと走り寄り、倒れ伏そうとするその肩を抱いた。防具越しに見えるその顔には涙が滲み、あまりの悔しさに強く歯を噛みしめていた。
　「ちくしょう……。ちくしょうっ！」
　拳を床に叩き付け、泣きわめくその姿に、私は何と声をかけて良いのか分からなかった。モノサシの精神がどこか遠くの、取り返しの付かない場所に行ってしまったかのようだった。どうすればそれを取り戻せるのか、私には皆目と見当が付かなかった。
　おろおろと震えるだけの私の肩を、マキジャクが落ち着いた手つきで触れた。
　「一人にしとこう」
　そのマキジャクの判断が正しいのかは分からない。しかしとにかく私は役立たずだった。自分では何も判断できず、マキジャクなんかに流されて道場の外に出た。

　道場の庭には桜が埋められていた。四月の上旬の今それは満開になっていて、風が吹く度に花弁がわたし達の頭上を舞っていた。かつて道場からの帰りにいつも見ていたその風景を、マキジャクは少しだけ目を細めてそっと見詰めた後、壁を背にして座り込んだ。
　「こういうのがやだったんだよ」
　マキジャクは言う。
　「は？」
　「こういう時、わたし無茶苦茶独りっきりじゃん」
　わたしはマキジャクの言い分を鼻で笑い飛ばして、言った。
　「贅沢言うなよ」
　むっとした顔で、マキジャクは私の方を睨む。
　「皆そう言う」
　「実際、贅沢だからだよ」
　「やっぱ独りだぁ」
　「独りでいろ」
　忌々しい気持ちでそう言ってやると、マキジャクは真っ赤な目をして真っ赤な舌を突き出して来た。その目尻には涙が浮かんでいた。
　「ばあか」
　マキジャクは言った。バカって言う方がバカなんだよ。私はそうは言わなかった。
　代わりに、私はこう問い掛けた。
　「なんで剣道好きになれんかったの？」
　「え？　だってお婆ちゃんにすごい怒られるし。無理矢理やらされたら何だって嫌いにならない？」
　「剣道自体はどうだったの？　競技として面白いとかつまらないとか」
　「別に普通」
　「でもあんた強かったじゃん。自分が強いってこと楽しめなかったの？　誰だってそれが欲しいし、手に入ったら楽しいって思うよ？　自分が強いってことが嬉しくて、誇らしくて、それを手に入れ続けられる剣道が好きって、なんでならなかったの？」
　「わたしそんな単純じゃないよ」
　自嘲するように、マキジャクは笑った。
　「単純じゃないし、バカじゃない。騙されない。嫌いなものは嫌い。それだけ」
　ああやっぱりこいつ……わたしは思った。
　バカなんだ。
　適応しないんだ。迎合しない。どれだけお膳立てされても環境を整えられても、その上本人に凄まじいまでの素質があっても、求められる色に染まったりしない。考えや好みを歪めたりしない。限りないマイペースをどこまででもいつまででも貫くことが出来る。そんな精神的な強さが、頑固さが、皮肉なことにこいつを強くしたのだろう。
　周りの人間の気持ちなんてお構いなしだ。自分の強さで誰かをどれほど打ちのめそうと、そこに責任を持とうとしない。その癖本人はいけしゃあしゃあと、王者の孤独なんてものを感じていたりもする。
　なんて奴だ。
　そりゃあね。あんたはあんたで苦しかったと思うよ。望まずに得た強さの所為で、勝ち続けるのが当たり前にされて、肩を並べて同じ目線で喜んだり悔しがったりする相手も得られなかったあんたの孤独は、そりゃあ凡人には分からなかろうよ。
　でもその不理解を嘆く前にさ。あんたはあんたで、他に考えるべきことがあったんじゃないの？　剣道を好きになれないのもやめるのも良いのだけれど、それでも何かもっと、目を向けるべきこと、感じるべきことがあったんじゃないの？
　でもそれが何なのか、どう言葉にすればマキジャクにそれが伝わるのか、私には分からなかった。そもそもそんなものはどこもなくて、つまりマキジャクに落ち度なんてまったくなくて、私自身の己が卑小さへの苛立ちを、ただ腹いせにぶつけたいだけなのかもしれなかった。
　やがて目を赤くしたモノサシが道場の外に出て来て、私達の方に声をかけた。
　「気を使わせて悪かったな」
　「別に」
　「全然」
　私とマキジャクがそれぞれ言った。
　「手術、受けることにするわ」
　あっさりとそう言ってのけたモノサシに、わたしとマキジャクは思わず顔を見合わせる。
　「大丈夫なの？」
　「ああ。ありがとうなソロバン。どんなに頑張って努力して、そいつなりの最善を尽くしても、勝てない相手ってのはいる。それが当たり前だ。あたしにとってはそれがマキジャクだった。あれから一年経って、勝てるか勝てないか分からないまま終わるより、最後に決着を付けられて、本当に良かった」
　悔いがない訳じゃないだろう。納得がいっている訳じゃないだろう。それでもモノサシはそう言った。無念も後悔もすべて飲み込んで、この先の人生で感じ続けることになる苦悩の全てを覚悟して、今目の前にある運命を受け入れる。そんな強さを、わたしはモノサシから感じ取った。それは誰よりも尊敬できる友人の気高い姿だった。
　すべてのことに終わりはある。
　どんな分野でも、鍛錬や挑戦を終える時は必ず来る。
　だから、誰もがいつかこうしなければならない。
　モノサシのようにならなければならない。
　そうならずに済むのは頂点を極めたただ一人だけだ。そしてその一人は今もつぶらな瞳で、バカみたいな顔で、半口を開けてモノサシの言葉をぼんやり聞いている。
　「それとマキジャクも。あたしの剣道に、おまえがいてくれて良かったよ。ありがとう」
　「ううん」
　モノサシの言葉に、マキジャクは首を横に振って、やけに無邪気な声で言った。
　「仲直り出来たんなら、ちょっと嬉しい」
　また春風が吹いて、木々がしなり、桜が舞った。
　何かを終え、また新たな何かが始まる。春とはそんな季節だった。

粘膜王女三世

2023年04月30日 04時32分51秒公開
■この作品の著作権は粘膜王女三世さんにあります。無断転載は禁止です。

■作者からのメッセージ: ◆キャッチコピー：誰も追いつけない。傍にはいない。
◆作者コメント：感想よろしくお願いします。

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2023年05月13日 19時43分04秒

でんでんむし

+30点

世界で一番孤独なウサギ、読ませていただきました。

まず、間違いないのはこの作品が一定以上の水準を満たした高いレベルである事。特にキャラクターおいては非常に尖っており強烈な印象を表現できています。この作品を読んで「マキジャクって誰だっけ？」とか「モノサシがどんなだったか思い出せない」という人は絶対にいないでしょう。

シナリオもドラマ性があって良く作り込まれており、高いリーダビリティがあって惹きつけられる内容でした。点数もそれに応じた評価としております。

ただ、タイプだからこそ本っっっっっ当に好みの話になるのですが、それ以上に惜しいと思える印象が強烈に残った一作でもあります。早い段階で読んではいたのですが、これを言おうか言うまいか、今この瞬間まで毎日ずっとこの作品を読み返しながら悩んで、単に『面白かった』だけで終わった方が良かった気もしたのですが、きっとこれだけ書ける作者様なので取捨選択できる能力が高く、自分ごときの言葉程度で崩れる方では無いと信じて思ったことを書いてみようと思います。もはや完全に好みの範疇を超えたエゴかもしれないので１％でも不快に感じたら読み飛ばしてください。

自分はこの作品で最も好きだったのがマキジャクです。そしてこの作品のタイトルが『世界で一番孤独なウサギ』。これはマキジャクを指していると思われ『誰も追いつけない。傍にはいない。』のキャッチコピーもマキジャクの事を言っているのだと思いました。つまり、この作品が『マキジャクの孤独』を主とした物語と考えることもできます。

そういった視点で見た場合、マキジャクの『孤独』の表現がちょっぴり弱く感じました。マキジャクの『持ちたくもない才能のせいで酷い虐待を受けて、やりたくもない事をやらされる』という点は表現されていましたが、その先である『そのせいで結果も出せていない人間から上から目線で偉そうに説教されたり、理不尽なエゴをぶつけられる苦しみ、そしてそれを誰も理解されない孤独さ』までもっと強烈に表現して欲しかった思いがありました。

作中でマキジャクは多少は苦しんでいる素振りはあったものの、表現としては弱く見えました。個人的に今作の一番のポイントは後半に明らかになる『マキジャクが虐待されていた』という事実なのですが、そこまで過酷な環境のわりにマキジャクから違和感と言えるレベルで『苦しさ』が伝わってきませんでした。これはマキジャクの頭の弱さやウサギとしての怠慢を表現していたかもしれませんが、ちょっと納得感が弱かったです。

ここまでくればもうマキジャクは虐待のせいで『苦しい』と思う感覚が壊れてしまった。それをある種の狂気として、もしくは魅力的に描いてくれた方が好みだったかもしれません。まあ、これはちょっと表現がラノベすぎてそれこそ作風が崩れてしまいかねないくらい難しい表現方法なのですが……。例えば、取り扱いが非常に難しいですが、マキジャクが精神的な障害を持っていた、とかの設定があればギリギリ納得感を得られたもしれません。

ただ、そもそもの話、この物語自体がマキジャクの孤独を描くものではなく、ソロバン、モノサシの『才能を持たない側の苦しみ』を描いた物語かもしれません。しかしそうなるとマキジャクの『虐待』の設定が大きなノイズです。このせいでマキジャクに同情の余地が出てしまい、正当性すら感じました。熱湯をかけられるような惨い虐待されていながらも嫌々剣道を続けていたマキジャクこそむしろ最も努力していたのでは？　と思ったり、祖母に対する憎しみから死をコーラで祝うくらい歪むのはむしろ当然なのでは？　と。そのせいでモノサシの対する共感度も半減、むしろ全く無くなってしまいました。モノサシが虐待の事実を知っていたかは分かりませんが、知っていたとしたら虐待をするような師範を崇拝し、解放されたことに喜ぶマキジャクを暴行するの不快感に自分は繋がりました。知らなかったならそれで「虐待されたこともないくせに、何も知らないくせに」と思ってしまいます。マキジャクがそれを口にしなかったのが一番のモヤモヤ感でした。また、同時にソロバンの「その辺の事情はまあ薄々察してたけどさ」という台詞には「いや、察していたなら、友達なら助けろやっ！！」と思ってしまいました。

そのヘイトのせいもあってかモノサシの『限界まで努力したけど才能には勝てない』の『努力』の描写が弱く見えてしまいました。マキジャクとの最終戦、モノサシはマキジャクに対して『対策』をする描写がもっと欲しかったです。ブランクがあるとはいえ、圧倒的な強さで全国一位を手にした相手。小手が非常に危険な選手と分かっていたのならもっと警戒して対策を練る余地はあったと思ってしまいました。予定調和のように小手で負けた点に対してまだまだ努力できる余地があるように見えて、モノサシの悔しさが完璧には伝わってきませんでした。

例えばモノサシの小手を封じる対策は完璧だった。しかし、マキジャクは気まぐれに面を打って勝利。その面打ちはモノサシが何年も努力して得たものよりさらに強烈だった。そこでマキジャクが一言「あ、面って簡単じゃんｗ　現役時代にもっとやっておけばよかったわｗｗ　声出すのめんどいけどｗｗｗｗｗ」くらい言ったら本気で悔しい感覚を得られたかもしれません。まあ、これも表現がラノベ過ぎてリアリティの点で問題があって別の指摘に繋がってしまうかもしれませんが……

マキジャクはもっともっと才能を笠に着て楽して偉そうにふんぞり返るような怠慢なウサギとして描いてくれなければ、モノサシ達の方が理不尽に見えてしまう余地を自分に与えてしまいます。今作は特に虐待の事実のせいでマキジャクが完全な『被害者』に見えてしまい、それが結果としてモヤモヤ感に繋がってしまいました。

マキジャクの孤独とソロバンたちの苦しみを両方とも表現しようとされたのかもしれませんね。もしくはこのモヤモヤする感じを面白さとして表現していたのかもしれません。しかし、今回の文字上限で完璧な評価として自分の納得感を得られるのは少し難しかったみたいです。今回は相反する二つの表現が結果的に両方とも中途半端に見えてしまう、と自分は思ってしまいました。自分がマキジャク好きすぎるのと『虐待』に過剰に反応してしまったせいで、この作品の読み方を間違えてしまったかも。

これは作品自体のポテンシャルが高いからこそ出てしまうエゴかもしれません。もし文字上限が五万字でこれらの表現をもっと強くできていれば評価はもう一段階、もし上限が十万字で同じようにできていればさらにもう一段階高いものになっていたと考えると自分としては非常に惜しくて悔しく思うのです。

本当の本当に、エゴの中のエゴなのですがマキジャクが何を考えているのかもっと知りたかったので、ソロバンだけでなくマキジャク視点の物語も見たかった。ついでを言うとモノサシ視点の物語もあって、それぞれの思いが交差するみたいな物語だったら自分の好みのジャストミートでした。もちろん、この文字上限でそれを言ってしまうのは無茶である事は重々承知ですが……

長々と余計な事を言ってごめんなさい。最初に言った通り、面白い作品である事には変わりません。どうしても好み的に思う部分がありましたが、何回も読み直した作品だし、良くも悪くも惹きつける力が強く、むしろ優勝を争う作品だと思います。

それでは失礼します。読ませてくれてありがとうございました。

Re:

2023年07月01日 22時13分08秒

粘膜王女三世

　でんでんむし様。読了ありがとうございます。

世界で一番孤独なウサギ、読ませていただきました。
まず、間違いないのは……
☆ありがとうございます。マキジャクは結構前からわたしの中にいるキャラクターで、年単位で温めたキャラをたった一万文字にぶち込むという割と豪華なことを結果的にしているので、その分自分でも満足できる登場人物に仕上げられたかなと思っています。
　モノサシは割と良く使う「真面目な努力家で男口調」というフォーマットで、これはこれで自分の中で安定してるのかなと思います。

シナリオもドラマ性があって……
ただ、タイプだからこそ本っっっっっ当に好みの……
☆配慮ありがとうございます。楽しく読ませていただいてます。

自分はこの作品で最も好きだったのがマキジャクです。……
そういった視点で見た場合……
作中でマキジャクは……
ここまでくればもうマキジャクは虐待のせいで……
☆でんでんむし様の考察は実に鋭く、実際マキジャクの内面に関しては書けることがまだまだたくさんあります。それは「あえて書かなかった」とか恰好の良いものではなく断腸の思いで取捨選択した部分ではあるんですが、しかし取捨選択の上で捨てることができたのにもそれなりに事情がある、という話も実はちょっとあります。
　と、いうのも、こいつの感じてる「孤独」について書けば書くほど、マキジャクという人間のチープさにボロが出て来るんですよね。
　こいつの本来の精神性って「ヘタクソ同士師範との愚痴とか言いながらタラタラやる」くらいの人間のそれで、そこにトップクラスの技術と体力がくっ付いてしまっています。なのでヘタクソ仲間の輪には入りづらく、真面目な強い相手とは水が合いません。そして試合となれば圧倒的に勝ってしまう訳ですが、打ちのめされて悔しがってる対戦相手を見て、「好きで勝ってる訳じゃないんだからそういうのやめてよあたしが悪いみたいジャン」くらいのくっだらないことをぶつくさ考え、時には口に出しさえします。そんなモンは真面目に剣道やってる連中からしたら「贅沢言うな」って話ですし、「一人でいろ」って話な訳です。
　客観的には割とチープな、というか平凡で平和な問題にも思えます。「もうちょっと上手くやれんのか？」と言いたくなりますし、大人になる為には上手くやれるようにならなきゃいけません。とは言え実際にそれが上手くやれないマキジャク当人からしたら問題は深刻で、それこそ世界で一番くらいには孤独です。近しい問題を抱えてる連中も世の中には多分いるんでしょうけど、その中でマキジャクの才能は世界で一番な訳ですから、孤独の深さも世界一でしょう。
　ただしその孤独は解決方法が明確な孤独でもあり、すなわち剣道をやめてしまえば済むことで、済んだことです。だからこそソロバンは彼女を突き放せた訳です。「おまえのくだらない孤独はとっくに終わった話に過ぎないのに、今もがき苦しんでるモノサシの前で、ぴいぴいさえずりやがんなバーカ」という具合です。それがソロバンにとっての「世界で一番孤独なウサギ」への接し方です。「一生そこの木陰で一人で寝てろ。心地良さそうで良いじゃねぇか」と思っていますし、それは多分正しい感想で、正しい接し方だと私は思います。
　この物語は視点人物こそソロバンですが、主人公は多分マキジャクでしょう。しかし視点人物がソロバンである以上、つらつら何かを説明するにしても「ソロバンから見たマキジャク」を描くしかありません。枚数があるならともかくとして、一万文字で全部直接書くのは難しく、なのである程度は読者に想像してもらう形にしました。そしてこれには、マキジャクの幼く割と自分勝手な精神性について、私の方からあれこれ言い訳せずに済むという大きなメリットもあります。雄弁は銀です。私がくだらなく言い訳はすればするほどボロが出てマキジャクというキャラが矮小化します。だったら都合の悪いところは深堀せず読者の想像にでもゆだねりゃ良いじゃないかと考えた訳ですが、しかしそんな沈黙の金が通用しない相手もいて、それがでんでんむし様だったのでしょうね。

ただ、そもそもの話……
そのヘイトのせいもあってかモノサシの……
例えばモノサシの小手を封じる対策は完璧だった。しかし、……
マキジャクはもっともっと才能を笠に着て楽して……
☆マキジャクは剣道というスポーツの被害者です。正確には剣道自体が悪いというより、嫌がる子供に無理に習い事をやらせる行いにおいて発生する、情操教育上の失敗の被害を受けたと言えます。そしてその被害はマキジャク本人のみならず、周囲の剣道少女達にも波及しています。
　もちろん二人とも年相応に未熟です。本当に酷いことをした相手が死んだのなら、ひそやかに一人で乾杯するくらいの権利はありそうなものです。しかしどんなに酷い人であっても中にはそれを尊敬する人間がいる可能性は当然あり、それは尊敬する側の勝手とも言えます。そのことを想像できずに他人を乾杯に誘ったのはマキジャクの落ち度です。そして、モノサシにはもちろんそんなマキジャクを咎め怒りを露わにする正当性はありますが、直接手を出したり大ケガをさせる程の権利がある訳でもありません。なのでこの問題についてはアホなガキ二人がアホらしく諍い周りに迷惑をかけたという次元の話でしかありません。
　とはいえその程度のアホさや迷惑っていうのは、当時中学二年生という幼さで中和できる域からは出ておらず、それぞれの未熟さをそれぞれの親に言い諭されればおしまいです。どっちが悪いかって言われたらどっちも悪いんですけど、それはあくまでこの喧嘩における過失の話でしかなく、二人の人間性まで否定する話ではありません。どちらにもそれなりに足りない部分がありますが、均せば良い子です。どっちかが明確に悪い必要はありません。そのあたりが伝えられなかったのはもったいなかったですね。
　モノサシの努力の描写が薄かったのならそれは実力不足でしょうね。骨肉腫になってからはもちろんベッドに縛り付けられてるので練習などできませんが、それでも過去のモノサシは最大最強のライバルであるマキジャクの小手を想定した練習をたくさんしていたはずですし、それはマキジャクが去ってからも同じことだったはすです。その点についての言及がなかったのは確かに、もったいなかったという気はしますね。

マキジャクの孤独とソロバンたちの……
☆中途半端になったのは正直その通りです。もっと書ける点があったのはその通りです。もちろんなんでもかんでもアウトプットするのは愚策も愚策で、大事なことだけを取捨選択して描くのが文章の基本だとは思っているのですが、その取捨選択に誤りがあったのは間違いないでしょうね。

これは作品自体のポテンシャルが高いから……
本当の本当に、エゴの中のエゴなのですがマキジャクが……
長々と余計な事を言ってごめんなさい。最初に……
☆マキジャクの内面はそう高尚なもんではなくただの平凡なジャリガールです。祖母からの虐待まがいの剣道の強要もぶつくさ耐えられる根性があり、しかし根性がある割には努力はせず、頭の中はポケモンで一杯。ほどほどに露悪的でほどほどに甘ったれで、ほどほどに上手にほどほどに苦労してこの先も生きていくんでしょう。
　そんな奴だから、無暗に掘り下げすぎる必要もないと考えて、内面を語らせるシーンはコンパクトに納めました。沈黙は金であると。しかし単に書く方の楽しさの話だけをするのならば、それを思う存分やってみたかった、やれなくて残念だったというのも、一つの本音ではあったりします。

それでは失礼します。読ませてくれてありがとうございました。
☆感想ありがとうございました。

2023年05月13日 18時59分30秒

朱鷺（とき）

+20点

　拝読いたしました。朱鷺（とき）と申します。
　他の読者様と重なる感想は極力省いてみました。
　モノサシは、義足になったあとでも剣道を続けるだろうなあ。血のにじむような努力のはてに、義足だからできる攻撃を編み出しそうな気がする。かつて、壊れた膝関節だから繰り出せるオリジナル技を武器に、オリンピック代表となった選手が実在しています。
　マキジャクはどんな競技を選んでも、卓越した動体視力と余人の追従をゆるさない反応速度で、チャンピオンであり続けるだろうなあ。
　病気の実名を出すと、いろいろと不都合が起こりうるわけですね。それなら全て架空の病名にすればいい。
　『カレーの王子様』では、機長が食べた機内食がボツモネラ菌に汚染されていたため、副機長の主人公が機長にかわって旅客機を着陸させることになります。作中で、ボツリヌス菌とサルモネラ菌が合体したような名前のこの菌は、「数時間にわたって行動不能となるが、命にかかわることのない、（作者にとって）きわめて都合の良い菌である」と、説明されています。
　本作ならば、新型コロナウイルスをもじって、『新型骨肉腫』、とか、『高度耐性型骨肉腫』、あるいは『高悪性型腫瘍』などとするのはいかがでしょうか。『ウルトラスーパーデラックス癌細胞（ウルトラスーパーデラックスマン：藤子不二雄）』、『トラツグミ系癌細胞（虎鶫を参考）』などの命名もありかもしれません。たんに『悪性の腫瘍』としてもいいかな。
　治療を受けて、下肢を切断しないですむ展開もありですね。
　執筆お疲れ様でした。次回作も楽しみにしております。

Re:

2023年07月01日 22時13分44秒

粘膜王女三世

　朱鷺様。読了ありがとうございます。

　モノサシは、義足になったあとでも剣道を続けるだろうなあ。血のにじむような努力のはてに、義足だからできる攻撃を編み出しそうな気がする。かつて、壊れた膝関節だから繰り出せるオリジナル技を武器に、オリンピック代表となった選手が実在しています。
　マキジャクはどんな競技を選んでも、卓越した動体視力と余人の追従をゆるさない反応速度で、チャンピオンであり続けるだろうなあ。
☆それで勝てるかどうかはともかく、義足で剣道を続けるという物語自体に魅力はあると思います。そこについて言及してしまうと話がすんなり終わらなくなるから一切無視しましたし、最強の相手に義足で勝つということの現実性の薄さを考えれば無視しても構わないと判断していましたが、そうではないみたいでこれは感想を読んでいて少し驚きでもありました。
　マキジャクは動体視力やら何やらも強いですが、一番優れてるのは駆け引きというか、戦術的な部分だと思ってます。剣道に思い入れない分、戦い方をとことん合理化できるのが強いのかなあと。

　病気の実名を出すと、いろいろと不都合が起こりうるわけですね。それなら全て架空の病名にすればいい。
　『カレーの王子様』では、機長が食べた機内食がボツモネラ菌に汚染されていたため、副機長の主人公が機長にかわって旅客機を着陸させることになります。作中で、ボツリヌス菌とサルモネラ菌が合体したような名前のこの菌は、「数時間にわたって行動不能となるが、命にかかわることのない、（作者にとって）きわめて都合の良い菌である」と、説明されています。
　本作ならば、新型コロナウイルスをもじって、『新型骨肉腫』、とか、『高度耐性型骨肉腫』、あるいは『高悪性型腫瘍』などとするのはいかがでしょうか。『ウルトラスーパーデラックス癌細胞（ウルトラスーパーデラックスマン：藤子不二雄）』、『トラツグミ系癌細胞（虎鶫を参考）』などの命名もありかもしれません。たんに『悪性の腫瘍』としてもいいかな。
☆これはそう本当にそう。
　アシキラナイトシヌシヌ病とかで良いですよね。マジで。

　治療を受けて、下肢を切断しないですむ展開もありですね。
　執筆お疲れ様でした。次回作も楽しみにしております。
☆感想ありがとうございました。

2023年05月13日 12時09分18秒

赤木

+40点

　こんにちは作者様。読ませていただきましたので、感想を残させていただきます。

　いや素晴らしい、というのが読後の率直な感想でした。文章、構成、そして作中に籠められていただろうメッセージ、それらが全て高いレベルにある秀作であったと思います。
　突出した剣道の実力を持つマキジャク、その友人を襲った不幸と青春の一コマを見事に書き切られていました。始まりこそ少々地味にも感じましたが、絶妙な文章で綴られる彼女達のキャラクター（ただマキジャクの祖母の死を喜ぶシーンでは若干引きましたが）で物語に一気に引き寄せられ、モノサシを襲う不幸…という展開に最後まで一気に読まされた感じがします。
　ちょっと話は飛びますが、最近読んでる漫画で「ダイヤモンドの功罪」という野球漫画があります、あれもまた突出した才能の持ち主と、彼が望むものと周囲の人からの期待・羨望とのズレを描いた作品で、連載開始からまださほど経っていないこともあり、現在は主人公と周囲とのズレによる葛藤・苦しみばかりが強調される展開が続いています。御作は同様に天才の突出した才能とそれに翻弄される周囲の人、それによって天才が味わう苦しみが描かれていますが、様々な出来事をを経た周囲の人々が前を向き、天才も救われるというとても後味の良い幕引きをされています。ソロバンはマキジャクという天才を理解し、モノサシはマキジャクに敵わないことを受け止め、前に進もうとし、マキジャクはその純粋な人となりのまま友人達の輪に再び迎え入れられる、この爽やかで綺麗な締め方にはただ凄い、としか表現できませんでした。
　…超余談ですが、こういう後味の良い終わり方が、物語を陰鬱に締めることが多い私には逆立ちしてもできなさそうなので、ちょっと作者様に嫉妬しています。

　気になった点としては、三人の渾名の由来が語られなかったこと（これは作品の欠点ではなく、読者としての不満の要素が大きいです）と、三人の人間関係が女性のそれというより男性のそれっぽさが強く感じたことになります。偏見かもしれませんが、三人の人間関係は対立や感情のすれ違いもありますが、基本的にさっぱりとしているもので、女子同士ならもっと湿っぽさや陰湿さを孕んだものになる気がします。純粋なキャラのマキジャクと、人間が出来上がっているソロバンがいるからこそ、後腐れのない人間関係が作れている、とも解釈できるかもしれませんが、個人的にちょっと気になりました。

　雑多な感想で恐縮ですが、以上とさせていただきます。今後ともお目見えできれば幸いです、ではでは。

Re:

2023年07月01日 22時14分11秒

粘膜王女三世

赤木様。読了ありがとうございます。

　いや素晴らしい、というのが読後の率直な感想でした。文章、構成、そして作中に籠められていただろうメッセージ、それらが全て高いレベルにある秀作であったと思います。
☆照れるぜ。

　突出した剣道の実力を持つマキジャク、その友人を襲った不幸と青春の一コマを見事に書き切られていました。始まりこそ少々地味にも感じましたが、絶妙な文章で綴られる彼女達のキャラクター（ただマキジャクの祖母の死を喜ぶシーンでは若干引きましたが）で物語に一気に引き寄せられ、モノサシを襲う不幸…という展開に最後まで一気に読まされた感じがします。
☆冒頭が地味ってのは言われてますね。ウサギとカメの逸話についてつらつら語ったのは良かったのか悪かったのか。それをモチーフにした話なんだよと印象付けること自体は別に悪くないんですけど、じゃあ冒頭の文章がそんなに上手かと言われるとそうでもなさそうな。
　その後の展開が一気に読めたなら良かったです。詰め込むって良し悪しあるけどテンポは確実に良くなるんで詰め込んで良かったです。

　ちょっと話は飛びますが、最近読んでる漫画で「ダイヤモンドの功罪」という野球漫画があります、あれもまた突出した才能の持ち主と、彼が望むものと周囲の人からの期待・羨望とのズレを描いた作品で、連載開始からまださほど経っていないこともあり、現在は主人公と周囲とのズレによる葛藤・苦しみばかりが強調される展開が続いています。御作は同様に天才の突出した才能とそれに翻弄される周囲の人、それによって天才が味わう苦しみが描かれていますが、様々な出来事をを経た周囲の人々が前を向き、天才も救われるというとても後味の良い幕引きをされています。ソロバンはマキジャクという天才を理解し、モノサシはマキジャクに敵わないことを受け止め、前に進もうとし、マキジャクはその純粋な人となりのまま友人達の輪に再び迎え入れられる、この爽やかで綺麗な締め方にはただ凄い、としか表現できませんでした。
☆野球は好きで野球漫画も好きなんでちょっと読んでみたいですね。とか言ってこの乾燥もらってから一か月以上経ってるのに手に取ってないんですが。今イオンのフードコートにいるんですけど帰りに本屋覗いてみようかな。
　天才って割と周りに気を配らないと色々ギスギスしちゃう訳ですし、周りにも気を使わせてしまうものですが、でも天才であることが悪い訳じゃないのでその辺理不尽だよなあと感じちゃう子はいそうですよね。自分に落ち度がないことと、自分の状況に応じて振る舞いを考えることはまた別の問題だと気付ければ、あるいは気付くとか気付かない以前にそういう風にできる奴なら、割と上手にやってるとは思うんですが、マキジャクはまあ無理だったなりにモノサシに出会えたのは良かったんでしょう。顎折られたけど。

　…超余談ですが、こういう後味の良い終わり方が、物語を陰鬱に締めることが多い私には逆立ちしてもできなさそうなので、ちょっと作者様に嫉妬しています。
☆照れるぜ。

　気になった点としては、三人の渾名の由来が語られなかったこと（これは作品の欠点ではなく、読者としての不満の要素が大きいです）と、三人の人間関係が女性のそれというより男性のそれっぽさが強く感じたことになります。偏見かもしれませんが、三人の人間関係は対立や感情のすれ違いもありますが、基本的にさっぱりとしているもので、女子同士ならもっと湿っぽさや陰湿さを孕んだものになる気がします。純粋なキャラのマキジャクと、人間が出来上がっているソロバンがいるからこそ、後腐れのない人間関係が作れている、とも解釈できるかもしれませんが、個人的にちょっと気になりました。
☆名前考えるのが面倒だった、の域を出なかったりします。小さいころ秘密基地遊びしてた頃武器に見立ててたのがそれ、って設定が実はありますが書いた方がよかったんでしょうかね。
　女子って生き物が良く分らんのでそのあたりは正直僕には難しい気はしますね。妙な偏見で女子っぽさを猿真似した挙句単なる嫌な奴になったりしたらそれこそ女子が怒るでしょうし。これについては結局僕の能力限界だし、今んところしゃあないのかなと。

　雑多な感想で恐縮ですが、以上とさせていただきます。今後ともお目見えできれば幸いです、ではでは。
☆感想ありがとうございました。
　こっちは既に一本仕上げてリベンジに備えてます。覚悟しろ！

2023年05月12日 19時06分06秒

ミチル

　企画参加お疲れ様です！
　読了いたしましたので、感想を残します。

　読後感の良い青春ものでした。
　モノサシも、マキジャクも、愛おしくなります。剣道に対する価値観がとても生き生きとしていました。やる気がないのに高みに昇れるマキジャクも、コツコツと努力するモノサシも、素敵です。気を遣うソロバンも苦労しますが、嫌な雰囲気がないのが良いです。
　モノサシが無事に生き延びる事を切に願います。
　文章も良かったと思います。いい場面で風景描写になるのがグッドです。

　楽しめました♪
　これからも執筆を頑張ってください！

Re:

2023年07月01日 22時14分33秒

粘膜王女三世

　ミチル様。読了ありがとうございます。

　読後感の良い青春ものでした。
　モノサシも、マキジャクも、愛おしくなります。剣道に対する価値観がとても生き生きとしていました。やる気がないのに高みに昇れるマキジャクも、コツコツと努力するモノサシも、素敵です。気を遣うソロバンも苦労しますが、嫌な雰囲気がないのが良いです。
　モノサシが無事に生き延びる事を切に願います。
　文章も良かったと思います。いい場面で風景描写になるのがグッドです。
☆ありがとうございます。
　剣道に対する、というか子供にとってのスポーツとか習い事に関する価値観みたいなのは特に書きたかったところです。やる気があるとかないとか上手いとかヘタクソとか、個々に様々な違いがある中でそれでも同じ空間で同じことをやってる中で、いろんな感情が入り乱れる様子を描いてみたいと思ってました。
　風景描写はかなり削りましたがグッドと言ってもらえるなら削り方が良かったのかもしれません。やったぜ！

　楽しめました♪
　これからも執筆を頑張ってください！
☆感想ありがとうございました。
　次回も感想を書かれるのなら点数もつけてください。
　不公平にならないように全員に５０点です！

2023年05月08日 21時20分14秒

つとむュー

+30点

世界で一番孤独なウサギ、読まさせていただきました。

兎と亀のお話をモチーフにした、剣道女子三人の物語でした。
心情描写が豊かで、思わず物語にのめり込んでしまいました。

一年以上剣道をやっていなかったマキジャクが、努力し続けたモノサシに勝てるのかな？と思わなくもないのですが、そう思えば思うほどモノサシが手術を決断することへの説得力が増す、という構造はお見事だったと思います。

＞「恥ずかしいんだよ、あれ」

個人的に気に入っているのはこの部分です。
剣道って何で声を出さなきゃ一本もらえなんでしょうね。
自分は声を出すのが本当に嫌で、やらされ感がすごくありました。
その時のことを思い出すと、無理やりやらされていたマキジャクの苦悩がひしひしと伝わってきます。
そして最後の最後で、友人に引導を渡す一撃で、自分の信念を貫くマキジャクにしびれました。

あえて難点を探すとすると、お題の『旅』の使い方がちょっと強引っぽいところでしょうか。
逆に考えると、今回の三つのお題を無理なく使ってこのレベルの物語を紡ぐことは不可能に近いということなのかもしれません。

執筆お疲れ様でした。

Re:

2023年07月02日 01時22分58秒

粘膜王女三世

　読了ありがとうございます。

＞兎と亀のお話をモチーフにした、剣道女子三人の物語でした。
＞心情描写が豊かで、思わず物語にのめり込んでしまいました。
☆ありがとうございます。
　ウサギとカメって思いのほか多かったですね。ウサギから思い浮かぶ事柄って無茶苦茶種類があるはずなのに何でみんながみんなこれ選ぶんでしょうね？　意外と人気のある童話なんでしょう。努力は大事だし、才能をフイにするのはもったいないってのは、良い教えですしね。

＞一年以上剣道をやっていなかったマキジャクが、努力し続けたモノサシに勝てるのかな？と思わなくもないのですが、そう思えば思うほどモノサシが手術を決断することへの説得力が増す、という構造はお見事だったと思います。
☆ありがとうございます。そういうお話を目指してました。

＞＞「恥ずかしいんだよ、あれ」
＞個人的に気に入っているのはこの部分です。
＞剣道って何で声を出さなきゃ一本もらえなんでしょうね。
＞自分は声を出すのが本当に嫌で、やらされ感がすごくありました。
＞その時のことを思い出すと、無理やりやらされていたマキジャクの苦悩がひしひしと伝わってきます。
＞そして最後の最後で、友人に引導を渡す一撃で、自分の信念を貫くマキジャクにしびれました。
☆ここでマキジャクの人間性をよくも悪くもしっかり伝えたい気持ちはあったので、伝わってくれたなら本当に良かったです。本当に嫌だったんでしょうねマキジャク。

＞あえて難点を探すとすると、お題の『旅』の使い方がちょっと強引っぽいところでしょうか。
＞逆に考えると、今回の三つのお題を無理なく使ってこのレベルの物語を紡ぐことは不可能に近いということなのかもしれません。
☆個人的に一番消化がきつかったのは「春」のところで、きついと思っていたからこそ色々と消化してるように見えるように工夫した結果、実際見えてくれた部分もあるんでしょうけど「旅」についてはあんま気を遣えてなかったです。プロットを考え始めた段階で「骨肉腫の友達の為にライバルの子を連れて来る為に旅に出る話にしよう」というのがあって、「これで旅はOKや！」って気持ちがあったんですが、プロット練る内に徐々に旅要素縮小していったのにいまいち気付いてませんでした。
　長編か中編でやれるなら旅の途中で不良に絡まれて走れメロス状態になったりとか、色々旅路について盛り込めたかもしれません。

＞執筆お疲れ様でした。
☆感想ありがとうございました。

2023年05月07日 18時16分06秒

いりえミト

+30点

　こんにちは。『世界で一番孤独なウサギ』、読みましたので、簡単ですが感想をば。

　三人の剣道女子による青春ドラマでしたが、『ウサギとカメ』の話を絡めることで、より深みのある物語になっていると思います。
　絶え間ない努力を続けた末に、片足切断という人生の岐路に立たされ、全身全霊をかけて最後の「試合」に挑んだモノサシ。そのモノサシを、一年ものブランクがありながら下したマキジャク。
　どれだけ才能があっても、どれだけ努力を続けても敵わない相手がいるという話は、このミチル企画で何度も打ちのめされてきた自分としても刺さるものがありました。まあ自分の場合は才能もなけりゃ努力もしてないんで当然の結果なんですが。

　キャラの名前が勉強道具から取られているところなども作者さんの独自のセンスが感じられ、印象に残ります。
　文章力も非常に高く、リーダビリティがありました。

　枚数制限ゆえか、全体的にダイジェスト感があったり、語り部のソロバンがほぼ狂言回しだったりと、惜しさを感じる部分もありますが、純粋に小説としてのレベルの高さが感じられる作品だったと思います。

　それでは失礼します。執筆お疲れさまでした。

Re:

2023年07月02日 01時34分12秒

粘膜王女三世

　読了ありがとうございます。

＞　三人の剣道女子による青春ドラマでしたが、『ウサギとカメ』の話を絡めることで、より深みのある物語になっていると思います。
＞　絶え間ない努力を続けた末に、片足切断という人生の岐路に立たされ、全身全霊をかけて最後の「試合」に挑んだモノサシ。そのモノサシを、一年ものブランクがありながら下したマキジャク。
＞　どれだけ才能があっても、どれだけ努力を続けても敵わない相手がいるという話は、このミチル企画で何度も打ちのめされてきた自分としても刺さるものがありました。まあ自分の場合は才能もなけりゃ努力もしてないんで当然の結果なんですが。
☆努力の力は無限大ですが、でも努力は自分以外のあらゆる人間もやってることな以上、競争って分野において極めて重要なことではあっても万能ではないはずです。万能じゃないことが自明なのにそれでもやり続けるのが苦しい時もあると思います。
　色々しんどい思いもしてますが、今んとこ自分はマイペースにやってます。誰かと比べてどうとか誰かに勝つ為にどうとか、そういうのはまったく否定しませんしむしろ重要ですが、今んとこはそうでなく自分自身を見つめて昨日よりマシな姿になって行くのを楽しんでます。その所為で大分置いてかれてる気はするんですがね。

＞　キャラの名前が勉強道具から取られているところなども作者さんの独自のセンスが感じられ、印象に残ります。
＞　文章力も非常に高く、リーダビリティがありました。
☆ありがとうございます。名前考えるのを面倒くさがった甲斐がありました！

＞　枚数制限ゆえか、全体的にダイジェスト感があったり、語り部のソロバンがほぼ狂言回しだったりと、惜しさを感じる部分もありますが、純粋に小説としてのレベルの高さが感じられる作品だったと思います。
☆主人公は語り部以外の誰それで、語り部はあくまでカメラ、って構成割と好きです。
　それが良いか悪いかは分かりませんが、メリットとデメリットをそれぞれ言語化できないままでやってるのは、たぶん普通に良くないんでしょうね。

＞　それでは失礼します。執筆お疲れさまでした。
☆感想ありがとうございました。

2023年05月06日 21時31分25秒

HiroSAMA

+40点

　ども、そういえば井上雄彦の『リアル』を随分長いこと読んでいないな～と思い出したＨｉｒｏです。＜だからどうした

　御作『世界で一番孤独なウサギ』を拝読させていただきましたので、感想らしきものを残していこうかと思います。

　これはすごい。
　誰もが知る『兎と亀』の童話を引き合いに鮮烈な人間ドラマ（青春と呼ぶには青臭さがない）が描かれていました。
　登場人物たちがガチで殴り合っている痛みのある書き方が特に良いですね。

　枚数は少ない分、足りなく感じる部分もありますが、『兎と亀』の物語の解答編としてはこのくらいの文字数で問題なかったように思います。
　むしろ、このくらいの方が間延びせずに良いかと。

　マキジャク、モノサシ、ソロバンの命名は、最初は面食らうものがありましたが、そういう作風なのだと受け入れました。

　あとは……「いくらガンでも早期発見でいきなり切断はない？」と思いはしましたが、そこは物語の進行に必要なアイテム（？）として受け入れました。
　先のネーミングの件もそうですが、一万文字上限の作品でリアリティーにこだわるより、インパクトをドッカーンする書き方は正解だったように思えます。

　こんなところでしょうか？

　なお、本感想らしきものは、かなりの一般ズレを起こしている偏った生き物が書いております。
　内容を鵜呑みにすると一般ズレが感染する恐れがありますので、取捨選択には細心の注意を払うようお願い申し上げます。

　ではまたﾉｼ

Re:

2023年07月02日 02時12分26秒

粘膜王女三世

　読了ありがとうございます。

＞　これはすごい。
＞　誰もが知る『兎と亀』の童話を引き合いに鮮烈な人間ドラマ（青春と呼ぶには青臭さがない）が描かれていました。
＞　登場人物たちがガチで殴り合っている痛みのある書き方が特に良いですね。
☆ありがとうございます。ウサギとカメの童話人気過ぎるだろと今回の企画で思いました。自分が好きだと思うものって他人も同じように思ってる蓋然性は高いんだなと当たり前のことを思いました。

＞　枚数は少ない分、足りなく感じる部分もありますが、『兎と亀』の物語の解答編としてはこのくらいの文字数で問題なかったように思います。
＞　むしろ、このくらいの方が間延びせずに良いかと。
☆極端な例を除き、作品ってのは短くできるんなら短くできる程良いってのは、少なくとも理論上はそうなんだと思います。
　でもその理論を実践する人間（作者（私））に限界があるんで、やっぱり長さは欲しくなりますし、欲しい欲しいと思いながら書いてました。

＞　マキジャク、モノサシ、ソロバンの命名は、最初は面食らうものがありましたが、そういう作風なのだと受け入れました。
☆緑川晶、松本楓、坂東光がそれぞれの本名です。
　今決めました。
　当時決めときゃ良かった、とはあまり思ってません。

＞　あとは……「いくらガンでも早期発見でいきなり切断はない？」と思いはしましたが、そこは物語の進行に必要なアイテム（？）として受け入れました。
＞　先のネーミングの件もそうですが、一万文字上限の作品でリアリティーにこだわるより、インパクトをドッカーンする書き方は正解だったように思えます。
☆現実的な部分細かく気にして作業速度落とすくらいなら、ガンガン作品作った方が、鍛練的には効率が良いと考えてはいます。
　ただ今回のミスが細かいって程細かいかというとどうなんですかね。まあそれで点数下がったとしてもせいぜい20点ってところじゃないすかね。
　でも20点はでかいわ。

＞　こんなところでしょうか？
＞　なお、本感想らしきものは、かなりの一般ズレを起こしている偏った生き物が書いております。
＞　内容を鵜呑みにすると一般ズレが感染する恐れがありますので、取捨選択には細心の注意を払うようお願い申し上げます。
＞　ではまたﾉｼ
☆感想ありがとうございました。

2023年05月06日 20時14分37秒

庵（いおり）

　作者さま、こんばんは。
　御作を拝読しましたので感想を述べさせて頂きます。

　どんなに努力しても、勝てない相手はいる。厳しい内容ですね。長らく競作企画に参加してきましたが、そんな場面に何度も出くわしてきました。真に才能豊かな人間は存在するという自分ではどうしようもない現実に、打ちのめされてきたのは私だけではないはず。おそらくあらゆる分野において、一定の結果を出してきた人間が必ずぶつかる壁なのだと思います。
　自分が経験してきたことだから、本作の内容は心に刺さりました。それだけ、登場人物の心情が細かくリアルに描写できていたのだと思います。

　内容的には申し分ない、むしろこれだけの内容をよくこの枚数に詰め込んだなと感嘆するばかりなのですが、この枚数に詰め込んだからこそ見えてくる粗があります。
　まず、物語が動き出すのが遅く感じました。
　冒頭から

＞「それが嫌なんだよ」

までが過去の出来事と登場人物の紹介。これ以降が現在の出来事、つまり本編だと解釈しました。
　物語を進める上で必要な情報を読者に伝える為に、過去や登場人物のことを書くのは必要だと思うのですが、読んでいて登場人物が実際に動いている感じがせず、ダイジェストを読んでいるようでした。
　次に、登場人物の感情描写や３人の関係性の描写が、作者さま（作風からして私の知っている方だと思います）にしては薄いかなと。
　たとえばマキジャクに負けたモノサシの悔しさや無念さ、妬ましさなど、もっと詳しく、もっと深く書けたはず。なんなら負けた悔しさで涙と鼻水撒き散らしながら暴れ回ってもよかった。
　思うのですが、本作は長編や中編用のプロットを掌編用に構成し直したものではありませんか？
　序盤のダイジェストが苦肉の策に思えてなりません。また中盤以降も、もっと描写できるところを、最小限に絞らざるを得なかったような印象を受けます。
　作者さまの異常とも言える描写力や情報の取捨選択により高い水準を保った作品に仕上がってはいるのですが、やはり掌編の為に練られた作品とは思えませんでした。

　この感想は、作者さまの高い実力に敬意を抱いているからこそ。要求したくなるものも増えてしまうんです。
　私の好みの問題もありますから、点数評価についてはこのようにさせて頂きました。ご容赦下さい。
　それでは今後ともよろしくお願いします。

Re:

2023年07月02日 02時27分28秒

粘膜王女三世

　読了ありがとうございます。

＞　どんなに努力しても、勝てない相手はいる。厳しい内容ですね。長らく競作企画に参加してきましたが、そんな場面に何度も出くわしてきました。真に才能豊かな人間は存在するという自分ではどうしようもない現実に、打ちのめされてきたのは私だけではないはず。おそらくあらゆる分野において、一定の結果を出してきた人間が必ずぶつかる壁なのだと思います。
＞　自分が経験してきたことだから、本作の内容は心に刺さりました。それだけ、登場人物の心情が細かくリアルに描写できていたのだと思います。
☆競争ってことをする上では絶対こういうことはあって、それは多分その人の実力の程度とか努力の程度とか関係なく、誰しもにあることなんでしょう。
　でもそういう経験をしないで済む可能性がある人も一人だけが存在し得て、それを「世界で一番孤独なウサギ」と定義しました。

＞　内容的には申し分ない、むしろこれだけの内容をよくこの枚数に詰め込んだなと感嘆するばかりなのですが、この枚数に詰め込んだからこそ見えてくる粗があります。
＞　まず、物語が動き出すのが遅く感じました。
＞　冒頭から
＞＞「それが嫌なんだよ」
＞までが過去の出来事と登場人物の紹介。これ以降が現在の出来事、つまり本編だと解釈しました。
☆そこが起承転結の「起」のおしまいですね。骨肉腫発見が承で、剣道で試合するところが転、試合後のやり取りが結って感じです。
　起承転結の割合は色々言われてますし、統計的には多分２５２１くらいが一番多いんでしょうけど、少なくとも自分はどうするのが正解かを根拠を持っていうことできんし、この作品の「起」が３か４くらいある点についても許容してました。
　起、の部分だけもうちょっと長い作品の時の書き方してて、後は枚数相応の書き方にしてある、ってのは事実です。

＞　物語を進める上で必要な情報を読者に伝える為に、過去や登場人物のことを書くのは必要だと思うのですが、読んでいて登場人物が実際に動いている感じがせず、ダイジェストを読んでいるようでした。
＞　次に、登場人物の感情描写や３人の関係性の描写が、作者さま（作風からして私の知っている方だと思います）にしては薄いかなと。
＞　たとえばマキジャクに負けたモノサシの悔しさや無念さ、妬ましさなど、もっと詳しく、もっと深く書けたはず。なんなら負けた悔しさで涙と鼻水撒き散らしながら暴れ回ってもよかった。
＞　思うのですが、本作は長編や中編用のプロットを掌編用に構成し直したものではありませんか？
＞　序盤のダイジェストが苦肉の策に思えてなりません。また中盤以降も、もっと描写できるところを、最小限に絞らざるを得なかったような印象を受けます。
＞　作者さまの異常とも言える描写力や情報の取捨選択により高い水準を保った作品に仕上がってはいるのですが、やはり掌編の為に練られた作品とは思えませんでした。
☆ぶっちゃけその通りです。４万文字の作品の為に考えたテーマとキャラを使いました。
　ここは素直にご明察と言うべきところです。
　ただバトルものでいろんなキャラ同士をぶつけ合わせたいとか、そういう長さが求められる必然性がハッキリしてる場合を除き、中心となるテーマの部分だけを掬いあげる限りにおいて、同じものを長編にも掌編にもできるんじゃないかみたいなのは正味あるんですよね。一回長編化されたものを掌編に落とし込もうとすると全く別物のようになってしまいそうですが、プロットも組んでないキャラとテーマが決まってるだけの段階でなら、どちら側にでも舵を切ること自体はできるんじゃないかと思っています。
　その上で、元が長めの作品向けの構想だったのを見抜かれたのは、僕の構成力の不足が原因です。とは言え仮に小説の神様がいて、今回書いたテーマに適切な長さを定義してもらった時に、これが適切だと言ってくれるかというとたぶん違うんでしょうけど。

＞　この感想は、作者さまの高い実力に敬意を抱いているからこそ。要求したくなるものも増えてしまうんです。
＞　私の好みの問題もありますから、点数評価についてはこのようにさせて頂きました。ご容赦下さい。
＞　それでは今後ともよろしくお願いします。
☆感想ありがとうございました。

2023年05月06日 15時46分39秒

たてばん jQYhbezob6

+30点

初めまして、たてばんと申します。

僕も柔道をやっていたので、やりたくもないのにやらされる嫌な感じがよくわかりました。
社会人になり10年ぶりに柔道を再開して1週間で肉離れを起こし、下手な技をかけて首を痛めて朝起き上がるのが困難になったりしましたが、数年後に黒帯を取りました。
好きなことって何かがあっても時間が経てば戻りますが、嫌いなことって、どんだけ時間が経ってもその場所には戻らないんですよね。

本作ですが、スラスラと読めて良い青春ものだと思いました。
オチを含めて、作者様の熱い想いが伝わるようでした。

さて、僕が感じた問題点ですが、主人公がサポート役に回っているせいで、少し他人事感が出てしまっていると感じました。
ソロバンはモノサシの親友的ポジションではありますが、正直貯金をはたいてまでマキジャクを連れ出すほど、仲が良いのかわかりませんでした。
金額はわかりませんが貯金を崩す行為って、余程のことがないとしないと思うのです。
家族や兄弟、恋人ならわかりますが、親友――しかも中学生がそこまでするのかなと。

それを踏まえて、『3人は孤児院の出身で家族同然だった』とか、『ソロバンはモノサシに惚れていて力になりたいと思っていた』とか、読者を納得させる決定的な理由が必要かなと思います。

あとは、全体的な文体なのですが、「」の時に全て行頭が1マス開いています。
「」の時は開けなくて良いです。

あとあと、骨肉腫が治るとかいう話ですが、今作はモノサシの剣道を通した成長物語なので、そこはさらーっと流しました。
まあ、実際問題、中学生が医者から『骨肉腫です。簡単にいうと骨のガンです』って言われたらビビると思うんですよね。
中学生は大人みたいなメンタルしてませんし、人生経験も浅いので不安がいっぱいです。
治る治らないは別にして、そこが起爆剤として物語が動くので、今のままでも良い気がします（詳しく検査したら足を切らなくても大丈夫だったエンドに持っていける）
どうしても足を切断してほしいなら、足を切断しなくてはならない時代設定にすれば解決します。
足を切断した後の物語で、『義足の剣士』みたいな物語も良さそうですね。

次は文章です。

シーソーの角に後頭部を殴打した。
↓
殴られているわけではないので、『後頭部を強打した』が良いと思います。

僕からは以上です。
GW企画の参加お疲れ様でした。
引き続き楽しんでいきましょう！

Re:

2023年07月02日 22時47分13秒

粘膜王女三世

　読了ありがとうございます。

本作ですが、スラスラと読めて良い青春ものだと思いました。
オチを含めて、作者様の熱い想いが伝わるようでした。
☆ありがとうございます。

さて、僕が感じた問題点ですが、主人公がサポート役に回っているせいで、少し他人事感が出てしまっていると感じました。
ソロバンはモノサシの親友的ポジションではありますが、正直貯金をはたいてまでマキジャクを連れ出すほど、仲が良いのかわかりませんでした。
金額はわかりませんが貯金を崩す行為って、余程のことがないとしないと思うのです。
家族や兄弟、恋人ならわかりますが、親友――しかも中学生がそこまでするのかなと。
それを踏まえて、『3人は孤児院の出身で家族同然だった』とか、『ソロバンはモノサシに惚れていて力になりたいと思っていた』とか、読者を納得させる決定的な理由が必要かなと思います。
☆語り部をあくまでカメラ役として割り切り、本当に描きたい主人公は別にいる、という手法自体は結構やったりします。今作の場合、平凡な少女からマキジャクみたいな突出した人間がどう映るのか、みたいなのを描きたいところがあったのでこうしています。
　もちろん語り部にも人間性はあるべきだし、ソロバンにも物語を与えてあげるのが本来ではあったと思います。描写はできませんでしたけど、この子はこの子で色々思うところとか抱えてる問題とかある訳ですし。
　ソロバンとモノサシの友情についての描写の不足は確かに盛り込めていなかったと思いますね。どの枚数で何を描いてもちょっとずつ余力は残ってしまうのは、構成力が未熟だからでしょう。精進すべきかもしれません。

あとは、全体的な文体なのですが、「」の時に全て行頭が1マス開いています。
「」の時は開けなくて良いです。
☆開けちゃいけない作法なんてないじゃん。これはもう勘弁してよ。

あとあと、骨肉腫が治るとかいう話ですが、今作はモノサシの剣道を通した成長物語なので、そこはさらーっと流しました。
まあ、実際問題、中学生が医者から『骨肉腫です。簡単にいうと骨のガンです』って言われたらビビると思うんですよね。
中学生は大人みたいなメンタルしてませんし、人生経験も浅いので不安がいっぱいです。
治る治らないは別にして、そこが起爆剤として物語が動くので、今のままでも良い気がします（詳しく検査したら足を切らなくても大丈夫だったエンドに持っていける）
どうしても足を切断してほしいなら、足を切断しなくてはならない時代設定にすれば解決します。
足を切断した後の物語で、『義足の剣士』みたいな物語も良さそうですね。
☆骨肉腫って名前出したのが問題なだけなんで、そこを悪性の腫瘍とかそういう書き方にしたら解決しますね。
　問題は問題ですけど、一言指摘してもらえりゃ一手間で治せる程度のことなんで、しでかした方が言うと開き直りですけど実際大した瑕疵って程でもないんだと思います。
　もっとも、その一手間を後から加えさせてくれないのがミチル企画なんで、結局悔いにはなっちゃいましたが。

次は文章です。

シーソーの角に後頭部を殴打した。
↓
殴られているわけではないので、『後頭部を強打した』が良いと思います。
☆それはそう。

僕からは以上です。
GW企画の参加お疲れ様でした。
引き続き楽しんでいきましょう！
☆感想ありがとうございました。

2023年05月04日 21時38分11秒

+20点

拝読しました。
まるで短編小説のお手本のようでした。
一応この企画の括りだと掌編らしいですが、フツーは一万字もあれば立派な短編です。とはいえたった一万字で読み応えのあるドラマを描くのは至難の業。しかし御作はそれが見事に達成されております。感心するばかりです。
改良点は特に思い浮かびませんでした。これ以上のクオリティを求めようと思ったら枚数を倍にしてイベントを増やすしかないので、今回の企画には適さないでしょう。
ところで、枡多部とあるさんが病気について指摘されておりましたが、恥ずかしながら骨肉腫に関する知識を持ち合わせていなかったので、私はまったく気にしませんでした。とはいえそういう知識がある方からすると、現実味に欠けた薄っぺらい話のように思えてしまうかもしれないので、病気モノは難しいなあと思ったりもしました。
感想は以上です。少しでも参考になれば幸いです。

Re:

2023年07月02日 22時47分44秒

粘膜王女三世

　読了ありがとうございます。

拝読しました。
まるで短編小説のお手本のようでした。
一応この企画の括りだと掌編らしいですが、フツーは一万字もあれば立派な短編です。とはいえたった一万字で読み応えのあるドラマを描くのは至難の業。しかし御作はそれが見事に達成されております。感心するばかりです。
☆あざっす。やっぱ詰め込んだり削ったりするのは正義なんすよ。そりゃデメリットはあるにしろ、テンポとかは絶対に良くなるはずなんで。

改良点は特に思い浮かびませんでした。これ以上のクオリティを求めようと思ったら枚数を倍にしてイベントを増やすしかないので、今回の企画には適さないでしょう。
☆枚数を増やせば過去語り的に説明してるところをシーン的に見せるとかはできますね。
　４万字ならマキジャクをモノサシのところに連れてくるまでの紆余曲折が一番描きたいです。ぐずって嫌がるマキジャクをどう説得するかとか、手術の時間に間に合わせる為に走れメロスをやるとか。その過程でソロバンとマキジャクの間のわだかまり（これも色々盛り込む）が解消されていくとかやりたいことはそれなりにあります。
　一番大事なのは根幹ですし、枝葉は剪定されるものですが、それはそれとして広げることにも楽しみはあります。

ところで、枡多部とあるさんが病気について指摘されておりましたが、恥ずかしながら骨肉腫に関する知識を持ち合わせていなかったので、私はまったく気にしませんでした。とはいえそういう知識がある方からすると、現実味に欠けた薄っぺらい話のように思えてしまうかもしれないので、病気モノは難しいなあと思ったりもしました。
☆まあググる手間省いた僕の落ち度っすよ。
　その一手間省いた所為で机三回叩くくらいの屈辱は味わったんで、次はちゃんと検索します。

感想は以上です。少しでも参考になれば幸いです。
☆感想ありがとうございました。

2023年05月03日 17時13分13秒

桝多部とある

+20点

一万字をフルに使い切ったアオハルものとして愁眉ではないでしょうか。
マキジャクとモノサシの因縁を解消して三人の仲が、関係は変化しても元に戻るという展開をよくこの文字数で押し込んだと思います。

さて、ぱっと見素晴らしい作品なんですが粗が見えます。
まず、マキジャクとモノサシ。才能の長さという意味が込められているんでしょうが、名前があまりにも惨い。あだ名なんでしょうけど。個人的に伝説のロボットマンガ「ザ・ムーン」を連想しました（※主人公の小学生たちの名前がサンスウだのシャカイだの教科名をそのまま名前にしてるのです、この漫画）

次に、さすがに1万字で表すには少々巻きが入ってて急展開感がありました。これ、1万字ではなく10万時まで書いてスニーカー大賞に送り付けた方がよくないですか（笑）

そして。
実は私はこの作品を楽しめませんでした。それはこの作品でモノサシがかかった骨肉腫という病気の扱いです。
1980年代ぐらいまで確かに骨肉腫は不治の病同然でした。治療は四肢の切断しかなく、切り取っても転移の確率は極めて高いという厄介極まりない病気でした。ですので物語ではスポーツ系ドラマで物語を盛り上げる小道具として重宝されてきました←言い方

で。

現在は骨肉腫の扱いはどうなっているかというと。
『医療技術の発達の恩恵を一番受けたガン』
という別名を授かっております。
科学の進歩で放射線治療の出力が馬鹿みたいに上がり骨肉腫細胞も殺せるようになり、有効な抗がん剤が見つかり放射線と併用することで切除することなく完治できるようになりました。また進行して切除しかなくなったがんでも、がん化した骨のみ切り取って人工の骨を埋めるという方法が開発され切除しなくてよくなりました。現在の五年生存率は９割。もはや死病なんかじゃなくなってているとのこと。

もう一つ言うと。

義足で剣道してる人おるで……（義足　剣道でぐぐられたし）
医療の進歩ほっといたとしても、モノサシだと義足になってもマキジャクに挑むんじゃないかなぁ。

最近は文学作品で病気を扱うのが難しくなっております。昔の不治の病が今やまず死なない病気というのが増えてきました。
ぶっちゃけ作者様ぐらいの力量なら、安易に病気に頼らなくても三人の関係の変化から未来に勧める作品書けるやろと思うのです。ですのであえて厳しい書評を書かせてもらいました。

私からの感想は以上です。それでは、ご縁があれば……、すいません、あなたがいると勝てそうにないので公募に回っていただけませんか（笑

Re:

2023年07月02日 22時48分08秒

粘膜王女三世

　読了ありがとうございます。

一万字をフルに使い切ったアオハルものとして愁眉ではないでしょうか。
マキジャクとモノサシの因縁を解消して三人の仲が、関係は変化しても元に戻るという展開をよくこの文字数で押し込んだと思います。
☆押し込むのは好きです。小説書いてる奴全般そうなんでしょうけど、文章扱うの自体好きなんで、同じ内容をどういう風に描けばどのくらいの枚数になるかみたいなの考えるのは楽しいです。

さて、ぱっと見素晴らしい作品なんですが粗が見えます。
まず、マキジャクとモノサシ。才能の長さという意味が込められているんでしょうが、名前があまりにも惨い。あだ名なんでしょうけど。個人的に伝説のロボットマンガ「ザ・ムーン」を連想しました（※主人公の小学生たちの名前がサンスウだのシャカイだの教科名をそのまま名前にしてるのです、この漫画）
☆小さいころやってた秘密基地遊びの時武器に見立ててたものだって設定を今考えました。
　そんな酷いっすか？　かわいいでしょ。

次に、さすがに1万字で表すには少々巻きが入ってて急展開感がありました。これ、1万字ではなく10万時まで書いてスニーカー大賞に送り付けた方がよくないですか（笑）
☆適正は四万字っすかね。十万字にするならマキジャク視点も入れます。ソロバン視点でマキジャクの街までやって来るとこ描いて、マキジャク視点で部屋でだらだらしてたらソロバンがやって来るのを描きます。でモノサシのところまで行くまでをマキジャク視点で書いてからソロバンに戻るかモノサシに回すかです。

そして。
実は私はこの作品を楽しめませんでした。それはこの作品でモノサシがかかった骨肉腫という病気の扱いです。
1980年代ぐらいまで確かに骨肉腫は不治の病同然でした。治療は四肢の切断しかなく、切り取っても転移の確率は極めて高いという厄介極まりない病気でした。ですので物語ではスポーツ系ドラマで物語を盛り上げる小道具として重宝されてきました←言い方
で。
現在は骨肉腫の扱いはどうなっているかというと。
『医療技術の発達の恩恵を一番受けたガン』
という別名を授かっております。
科学の進歩で放射線治療の出力が馬鹿みたいに上がり骨肉腫細胞も殺せるようになり、有効な抗がん剤が見つかり放射線と併用することで切除することなく完治できるようになりました。また進行して切除しかなくなったがんでも、がん化した骨のみ切り取って人工の骨を埋めるという方法が開発され切除しなくてよくなりました。現在の五年生存率は９割。もはや死病なんかじゃなくなってているとのこと。
☆これはまあ一手間「悪性の腫瘍」と治せば解決するんで。
　念のため病気についてググっておくという一手間惜しんだ所為で、この感想貰って机三回叩く羽目になったのは痛恨の極みです。
　ただこの指摘が原因で点数や順位に影響があったかというと、点数については全体で２０点くらいは影響したかもだけど、順位には多分影響しなかったんじゃないでしょうか。ざまぁみろ！　と思いましたが王冠出るか出ないかの違いはあるんでやっぱり机叩いときます。

もう一つ言うと。
義足で剣道してる人おるで……（義足　剣道でぐぐられたし）
医療の進歩ほっといたとしても、モノサシだと義足になってもマキジャクに挑むんじゃないかなぁ。
☆義足でマキジャクに勝てる訳ないだろおおん！
　チャットルームで「そういう物語が生まれる余力を残すこと自体に良し悪しが」みたいな話しましたっけ？　大分前だから覚えてない。たぶん微妙に違う話したと思う。結論からいうと骨肉腫云々は手間惜しんだだけの怠慢ですがこれについてはまあ別に良いんじゃねって思ってます。

最近は文学作品で病気を扱うのが難しくなっております。昔の不治の病が今やまず死なない病気というのが増えてきました。
ぶっちゃけ作者様ぐらいの力量なら、安易に病気に頼らなくても三人の関係の変化から未来に勧める作品書けるやろと思うのです。ですのであえて厳しい書評を書かせてもらいました。
☆一手間必要になったってだけで手はいくらでもあるとは思うんですよね。それこそ骨肉腫だって進行具合云々によっちゃ今でも足切ることは全然あるんだし、特殊なケース言えばいくらでもどうとでもなるし、そもそも新しい病気を発明したっていい訳ですし。
　この話に脚切るイベントは必要っすよ。でないとキャラだけ一緒で別の話になりますし。

私からの感想は以上です。それでは、ご縁があれば……、すいません、あなたがいると勝てそうにないので公募に回っていただけませんか（笑
☆感想ありがとうございました。

2023年05月01日 21時36分22秒

kanegon

+30点

こんにちは。
『世界で一番孤独なウサギ』読みましたので感想です。

前回の中二病企画よりも圧倒的に読む文字数が少なく、もう２０作品全部読んでしまいましたが、本作品が一番面白かったし、クオリティも高かったと断言します。

今回は、うさぎ、がお題に入っているということで、ウサギとカメをモチーフにしたキャラ配置の作品がいくつか見られましたが、本作品も、高いレベルでウサギとカメの逸話を物語に落とし込んでいたと思います。
春、旅、うさぎ、というお題だからといってうさぎをこねくり回すのではなく、きちんと物語の面白さを描く中にお題要素を盛り込んでいる、というアプローチの仕方の時点でスタート地点からして勝っている感じがします。

どうしても勝てない相手に最後に再戦を挑む展開は熱いし、防御タイプの方が攻撃タイプよりも強い、という設定も面白かったです。

１００００字、というなんとも微妙な上限文字数ですが、そこできちんと物語が過不足無く終わっているのも上手いところでした。

しいて問題点を言えば、マキジャクとモノサシの確執が物語の主幹であって、主人公が傍観者であって当事者感がやや薄い、というのはあると思います。ですがそれでも、文章力、キャラクター造形、物語展開など全体のクオリティのハイレベルさで充分にカバーできていて、他の参加作品を圧倒していたかな、というのが私の感想です。

簡単ですが感想は以上です。企画参加おつかれさまでした。

Re:

2023年07月02日 22時48分30秒

粘膜王女三世

　読了ありがとうございます。

　返信遅れて申し訳ありません。えらい褒められたんで照れて返信するのが恥ずかしかったってのが正直あります。それにしてもえらい遅れましたね。二か月越しっすよ二か月越し。返信したって気付いてくれるのかなってちょっと心配ですし反省っすわ。

前回の中二病企画よりも圧倒的に読む文字数が少なく、もう２０作品全部読んでしまいましたが、本作品が一番面白かったし、クオリティも高かったと断言します。
☆ありがとうございます。これ言うてもらえて「おっ、これ今回俺優勝かも」とちょっと本気で思いましたが無理でした。残念でした。

今回は、うさぎ、がお題に入っているということで、ウサギとカメをモチーフにしたキャラ配置の作品がいくつか見られましたが、本作品も、高いレベルでウサギとカメの逸話を物語に落とし込んでいたと思います。
春、旅、うさぎ、というお題だからといってうさぎをこねくり回すのではなく、きちんと物語の面白さを描く中にお題要素を盛り込んでいる、というアプローチの仕方の時点でスタート地点からして勝っている感じがします。
☆ウサギとカメの話こんなに多かったのは正直聞いてないです。いや言ってもらえる訳ないですけど予想してなかったです。努力と才能みたいな話題ってみんな好きだし、それに伴ってこの話もみんな好きなんでしょうね。
　お題の扱いには毎回苦労しますが、書きたい話がまずあってそこにお題をぶち込むやり方をとりがちです。それが良いか悪いかでいうとたぶん悪いというか、そんなんするんならお題決めての競作に意味ないじゃんみたいなんあると思うんですけど、でもお題ありきで面白い話錬成する技術を競うとかそういう難しいことできる人間がそうそういるんかみたいな話もあるし、少なくとも自分にはこのやり方が正解なんかなと思ってます。

どうしても勝てない相手に最後に再戦を挑む展開は熱いし、防御タイプの方が攻撃タイプよりも強い、という設定も面白かったです。
☆華やかさの欠片もない、何なら無様な戦い方なのに、腹が立つほど強い、みたいなの好きなんですよね。ハンデスコントロールとかデッキ破壊とか昔から大好き。相手の嫌がることをするのが勝負の基本です。

１００００字、というなんとも微妙な上限文字数ですが、そこできちんと物語が過不足無く終わっているのも上手いところでした。
☆これについてはミチル企画、というかラケン方式の投稿サイトで掌編とか短編とかに作品ぶちこんで来た経験だと、恥ずかしげもなく自信に思ってるとこだったりします。押し込むのは任せろ。クオリティは知らん。

しいて問題点を言えば、マキジャクとモノサシの確執が物語の主幹であって、主人公が傍観者であって当事者感がやや薄い、というのはあると思います。ですがそれでも、文章力、キャラクター造形、物語展開など全体のクオリティのハイレベルさで充分にカバーできていて、他の参加作品を圧倒していたかな、というのが私の感想です。
☆語り部はカメラ役で、主人公はほかにいる、みたいな構成割と好きっちゃ好きなんですよね。メリットとデメリットを把握したうえでやってる訳じゃなく単に好きってだけなんですけど。
　凡人から見たマキジャクみたいな子がどんなか、みたいなのを描きたかったんです。マキジャクを主人公にするよりはこっちのが楽しく書けるかなって。
　
簡単ですが感想は以上です。企画参加おつかれさまでした。
☆感想ありがとうございました。

合計

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