【跡地化】あんたのせいよ

Rev.02　枚数： 3 枚（ 840 文字）
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kz

2022年08月12日 09時43分20秒 公開
■この作品の著作権は kz さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
◆テーマ：『喜』『怒』『哀』『楽』
◆キャッチコピー：You can (not) escape.
◆作者コメント：人が死なないミステリーのことを日常の謎と呼ぶみたいです。もっとも、題材が殺人事件でないだけで、犯人当てもトリックも動機もある、真っ当なミステリーを目指しました。推理をしながら読んでもらえたら作者冥利に尽きます。ちなみにキャッチコピーは某有名ラノベの英題から拝借しました。

2022年08月28日 02時05分18秒
 作者レス
  • ◆あとがき


    作品投稿された方、感想参加された方、そして運営の皆さん、お疲れ様でした。また、拙作を読んでくださった皆さんにお礼申し上げます。

    作者レスもといあとがきになります。と言いますか、今まであとがきなんて書いたことはなく、むしろあとがきを書くことに抵抗感がありましたが、作者レスで愚痴るのもどうかと思ったので、この場を借りて一筆述べます。

    当初はもっと穏当で真っ当なパズラーなお話にするつもりでした。犯人を殺す予定はなく、名探偵の説得で犯人が立ち直って、ハッピーエンドで終わらせるつもりでした。初期のプロット通りなら、改心した犯人は一から絵を描き直してコンクールに出品して、佳作なり入選なりして、これからも頑張る的なエンディングを迎えるはずでした。某傑作パズラーにあやかって、冒頭に後日談――コンクールに展示される被害者の絵を読者に先に提示して、部室から持ち出された絵は無事に手元に返ってくると読者に誤認させる叙述トリックを考えたりもしておりました。

    ただ書いている途中に疑問が湧きました。――うそくさいな、と。果たして自分が犯人なら、名探偵の説教で改心できるだろうかと。

    面白い小説を書く能力は百％本人の努力次第ですが、改めて言うまでもなく、世の中には努力だけではどうしようもない場合が多々あります。顔の造形とか、背の高低とか、ハゲとか、家庭環境とか、ハゲとか、どれも天運で、ある程度は努力で何とかなりますが、しょせんある程度止まりです。一流の講師に付きっきりで指導してもらっても私がプロスポーツ選手になれないのと同じです。だから私がもし作中の犯人で、名探偵とかいうチートスキル持ちに上から目線で諭されたら、改心するどころか逆上して、同時に自身の惨めさに耐えかねて逃げ出したでしょう。嫌がらせで自殺するかもしれません。だからあのような結末にしました。

    もちろんそれでもなお穏当に終わらせる手段はありました。説得役が完璧超人の名探偵ではなく、犯人と同じ悩みを抱える作中の語り部（先生）ならば、犯人をなだめることができたでしょう。推理は名探偵に任せて、犯人の説得は語り部（先生）に任せればよかったのです。

    あるいは名探偵を登場させないとか。それなら犯人も逆上しません。そもそも名探偵がいるからこういう事態になってしまったので、一短編――犯人の物語として考えたら、名探偵がいない方がはるかにまとまりがよく、話としてきれいだったでしょう。名探偵なんかがいたせいで、このような要らざる悲劇が起きてしまうのです。

    ただ結局二、三週間くらい悩んで、このような展開にしました。下手に犯人を改心させるより、才能ある者に嫉妬して、嫌がらせで死んだ方が園田の心情をよりよく反映させられると思ったからです。作中で園田は「才能あふれるあなたに私の何がわかるの？」的なことを言っていますが、この独りよがりの台詞こそ園田というキャラクターを端的に表した言葉で、これを書かずして園田というキャラは完成しないと思って、このようなオチにしました。

    もちろんそれなりに体裁は整えようと思って、後期クイーン第二の問題っぽくまとめてもみました。今邑彩『鋏の記憶』（角川書店）で言うところの、『この能力が果たして、自分や自分の周りにいた人間を今まで幸せにしたであろうか。知らないで良いことまで知ってしまうことは、いつも自分ばかりか、周りの人間まで不幸にしてきたような気がする』というわけです。城平京『名探偵に薔薇を』（東京創元社）の『私はこんな思いをするためだけに、生まれてきたのか』でもよいです。ちなみに米澤穂信『春期限定いちごタルト事件』（東京創元社）はあまり意識していないです。作中の犯人は絵の才能があるせいで苦悩を抱えました。そして作中の名探偵も名探偵であるがゆえに苦悩する余地がありました。そして苦悩するには挫折を味わうしかありません。だから犯人には死んでもらいました。青山剛昌先生が『名探偵コナン（16）「名家連続変死事件」』で語っている通り、『バーロー…』『犯人を推理で追い詰めて、みすみす自殺させちまう探偵は…殺人者とかわんねーよ…』というわけです。これでもう名探偵は犯人に偉そうなことは言えません。同じ立場で相手のことを考えることができます。その方が犯人も報われるでしょう。ちなみに肝心のエラリー・クイーンはメジャーな国名シリーズと悲劇四部作だけ読んで、中期・後期作品は本棚に積んだままです。

    あと八千字くらい上限枚数に余裕があったので、その後の展開――名探偵が壮絶な批判（いじめ）にあって、また姪を庇うために叔父が責任を取って自殺して、お祖母ちゃんに「（息子の矢澤達也が死んだのは）あんたのせいよ」と言わせようと思いましたが、メインの事件が終わっているのに長々と後日談を書くのもどうかと思い、あのような形で〆ました。つまりその後の展開を省略してしまうくらいこの物語において名探偵は不要な存在だったわけです。その不要な存在がいたせいで丸く収まるはずだった話が悲劇的な末路を辿ってしまうとは、何とも哀れなことです。

    ちなみにミステリとしては、いわゆる日常の謎に分類されると思います。とはいえ、作者コメにある通り、殺人事件が題材でないだけで、犯人当てもトリックも動機もある、割と正統なパズラーを心がけました。パズラーに全振りするなら、それこそ先ほど述べた叙述トリックを使うのもありだったかもしれません。メイントリックに関しては日常の謎に限らず密室殺人や衆人環視の殺人、そしてそれこそバラバラ殺人なんかでよく使われる着想ですが、舞台設定と動機の組み合せが未だかつてないほど噛み合ったので、結構自信作だったりします。ただ皆さんからいただいた感想を見ると、その組み合わせさえも前例があるみたいで（それも結構有名な作品だとか）、得意になっていた自分が恥ずかしいです。

    そしてこんな結末ではありますが、いわゆるイヤミスではありません。もっとも、私の守備範囲は戦後からゼロ年代前半までなので、イヤミスブームのミステリは何一つとして読んだことがありません。ですから私の理解では、イヤミスとは若竹七海の『水上音楽堂の冒険』や『プレゼント』、『依頼人は死んだ』のようなミステリがイヤミスです。『心のなかの冷たい何か』はイヤミスではなくてサスペンスよりの本格ミステリだと思っております。

    さて、自分語りはこの程度にして、皆さんの感想と向き合おうと思います。ありがとうございました。

    E-Mail pass
2022年08月28日 00時21分43秒
 +20点

  • 作品拝読しました。

    落選を続ける非常勤美術講師と、彼の在籍する中高一貫校で起きた絵画紛失事件の物語でした。

    日頃あまりミステリに触れる機会はなく、うまく読めているかどうか不安ですが、それでも「どうやって」という部分は綿密に考えられているなと感じました。
    また、矢澤の気持ちも丁寧に描かれていたと感じています。

    ごくごく個人的な好みではあるのですが、真犯人の犯行動機の告白の部分は一気に語らせて終わりではなく、もう少しゆっくりとしたペースで読者（もしくは矢澤）を巻き込む感じで書いたほうが好きだったかな……と思っています。

    あとはラストかな……。
    こう……ちょっと新しいストーリーが始まるような予感を感じました。悪く言うと、ちょっと唐突な感じ。
    （ただこの締め方は読者によって賛否両論があるかな、と思っています）

    執筆お疲れ様でした。
    破綻のない、うまくまとまった秀逸なミステリでした。素晴らしかったです。

    E-Mail pass
Re: 2022年08月28日 02時02分06秒
  • いつもお世話になります。ご感想ありがとうございます。

    ＞また、矢澤の気持ちも丁寧に描かれていたと感じています。
    ありがとうございます。半分は作者である私の気持ちです（ぁ　そして私は矢澤ほど勤勉でなければ実力も実績もないので、ある意味理想の私です←

    ＞真犯人の犯行動機の告白の部分は一気に語らせて終わりではなく、もう少しゆっくりとしたペースで読者（もしくは矢澤）を巻き込む感じで書いたほうが好きだったかな……と思っています。
    そこを深堀りしちゃうとミステリとしての切れ味が鈍って普通に人間を書いてる小説になりかねないので……難しい問題です。

    ご感想ありがとうございました。

    E-Mail pass
2022年08月27日 18時23分28秒
 +20点
  • 　レベルの高い学園ミステリで、絵描き達の苦悩を軸にした力作かと思えたのですが……ラストを探偵役のことで締めくくったことで、本題からズレてしまったという印象を受けました。
    　冒頭と謎解き部分以外のところにも彼女の活躍があったなら、ラストの印象もだいぶかわったのではないかと愚考いたします。
    　探偵がその推理により追い込まれるという展開自体は好きですよ！

    　あと、てかきたなという話し言葉が平仮名で地の文にまざりこんで来たところは読み難かったです。
    　あとあと、真面目な作風のなかでガチ勢のようなネットスラングを地の文で用いられるのもいささか違和感をおぼえました。＜このへんは個人差があるかと

    E-Mail pass
Re: 2022年08月28日 02時01分16秒
  • いつもお世話になります。ご感想ありがとうございます。

    ＞ラストを探偵役のことで締めくくったことで、本題からズレてしまったという印象を受けました。
    そうなんですよね、これはプロットレベルの失敗で、この物語において名探偵の存在が不要なんですよね。
    とはいえ空気が読めない名探偵がいたおかげで園田というキャラクターがより輝けたと思うので、これはこれで一つの正解だと作者自身は思っております。

    ご感想ありがとうございました。

    E-Mail pass
2022年08月27日 17時53分24秒
 +20点
  • 執筆お疲れ様でした。感想を落とさせていただきます。

    天才が期待に応えられないので苦悩するっていう割と普遍的なテーマを作者様の力量でこなした作品だったと思います。

    ただちょっと粗が目立つ作品でもありまして。
    ・妹が名探偵であるという定義が物語上の中盤から唐突に出てきた感があり変に思う。
    ・主人公が犯人と同じ立場であった必要はあったのか。なくても最後のオチは成立する。
    ・最後のオチのやはり唐突さと投げやり感
    などなどひたすら読者にマテやと悪い意味で突っ込みせざるを得ないところはあります。
    まぁ作者様が多分常連の方だと思うのでそんなもんだとはお思うのですが、それゆえに余計に上の三点が目立つ結果になったと思うのです。

    私からの感想は以上です。正直作者様におかれましては私が何か言ったところで多分悪影響になるだけだと思うのでどうしたらいいかとかはやめておきます。この部分、作者様の良さに直結してる部分であり良さをスポイルしかねないので。

    それでは、ご縁があればまたお会いしましょう。

    E-Mail pass
Re: 2022年08月28日 02時00分48秒
  • いつもお世話になります。ご感想ありがとうございました。

    ＞妹が名探偵であるという定義が物語上の中盤から唐突に出てきた感があり変に思う。
    いきなり部外者が首を突っ込んできて、そいつのせいで悲劇的な結末になってしまったので、ストーリーとしては不自然でも物語としては必然ではないかと作者自身は思ってます。

    ＞主人公が犯人と同じ立場であった必要はあったのか。なくても最後のオチは成立する。
    実は書いていて気づいたんですが、園田の「ホンモノの才能を持つあなたに中途半端な才能しか持たないニセモノの私の気持ちなんてわからない！」的な台詞が結構気に入ってしまったので、こういう風に落としました。

    ＞最後のオチのやはり唐突さと投げやり感
    まあこれはプロット上の欠陥といいますか、必然といいますか、園田の物語はこれで完結しているので、後の話は蛇足になるんですよね。別に名探偵や矢澤がこの話で救われる必要はないんです。もちろん名探偵も救われる話に改造してもよいのですが、企画の上限枚数と（ミステリとしての）このネタでは正直きついっす←

    ご感想ありがとうございました。

    E-Mail pass
2022年08月25日 23時40分27秒
 +20点
  • あんたのせいよ、拝読しました。感想を記します。

    少女が四人登場する学園ミステリーでした。
    一度に四人も登場したらパニックものでしたが、一人ずつエピソードを交えて登場してくれたので、混乱せずに記憶することができました。
    こういう丁寧な序盤の展開は好印象でした。

    四人の少女が登場し終わったところで事件が起きる。
    そして主人公は窮地に立たされることになる。
    手に汗を握り、個人的にはここが一番夢中で読んだところでした。
    その後、美少女探偵が登場して主人公を救う。

    ラノベ的またはキャラ的には一番の見どころなのかもしれませんが、申し訳ありませんが個人的には探偵は登場しなければよかったのにと思ってしまいました。
    というのも、それまで主人公の気持ちと同化して「これからどうなっちゃうんだろう？」とハラハラしながら読んでいたからでした。
    しかし探偵が登場して、推理を展開されてしまう。
    この部分、窮地に立たされた主人公が自ら導き出したものであれば、読者としてもっと自分のことのように感じられたかもと思いました。
    特にそれを感じたのは、生徒会のポスターの描写のところです。
    最初から主人公の目線で謎を解き明かしてきていたら、この部分はもっと印象的になっていたかもしれません。
    それにしても、このトリックは素晴らしかったと思います。

    犯人の動機も、学園ミステリーとしては納得いくものでした。
    ラストは衝撃的でしたが。
    使われたテーマは喜怒哀楽とのことですが、特に強調されたような印象は受けませんでした。

    一つ、気になったのは、木枠からカンバスを剥がすところです。
    序盤でカンバスは、木枠にガンカッターで固定されているという記述がありました。
    それならば、二、三分で剝がすのは無理なのではないでしょうか？
    もし二、三分で剥がしたとしたら、カンバスの端がちぎれてしまって木枠に残ってしまうんじゃないかと思います。
    まあ、これを指摘しても、本作のストーリーは変わらないと思われるところが、この作品のすごいところだと思います。
    絵が盗まれたと思い込むことで、木枠からカンバスが外されているとは誰も思わなくなるところが上手いと思いました。
    園田さんもなかなかの役者ですね。
    執筆、お疲れ様でした。

    E-Mail pass
Re: 2022年08月28日 02時00分19秒
  • ご感想ありがとうございます。

    ＞個人的には探偵は登場しなければよかったのにと思ってしまいました。
    そうですよね、矢澤がもっとしっかりしていれば園田も自暴自棄にならなかったでしょう。そして名探偵がいなければあんな悲劇も起きなかった。こうなったのも名探偵がいたせいです←
    まあ冗談はともかく、これはプロットの欠陥で、本当は名探偵の説教？で園田は立ち直る予定でした。しかし書いている内に偉そうな名探偵にむかついてしまい、これで園田が立ち直るとかありえない、むしろもっと惨めな気持ちになると思い、あのような展開にすることにしました。
    正直トリックと動機には相当な自信があったので、「名探偵を消してそれっぽく良い話にまとめたら平均２０点以上は堅くね？」とかなり下世話なことを考えたりもしましたが、結局このような展開にすることにしました。いくつか理由はありますが、一番の理由は、園田が自分よりも才能を持つ名探偵に当り散らした「完璧なあなたに私の何がわかるの？」的な台詞が気に入って、今更これをなかったことには出来ないと思ったからです。

    ＞トリックは素晴らしかったと思います。
    ＞絵が盗まれたと思い込むことで、木枠からカンバスが外されているとは誰も思わなくなるところが上手いと思いました。
    ありがとうございます。ちなみに当初の予定だと、冒頭に後日談――展示会で園田の絵が展示されているシーンから物語を始めて、過去を振り返るという形で事件を描く予定でした。要するに、無事な絵を冒頭に配置することで、盗まれた絵はちゃんと返ってくる＝盗まれた時に絵はバラバラになっていない、と読者を騙す予定でした。
    ただ先述した通り、名探偵の偉そうな説教にムカついてしまって、二、三週間くらいどうするか迷って、園田を殺すことにしました。物語としては名探偵を登場させないで、またミステリとしても先の叙述トリックを使った方が効果的な気がしましたが、「完璧なあなたにわたしの何がわかるの？」っていう園田の叫びが結構気に入ってしまったので、この台詞をなかったことにするのは出来ないと思い、名探偵を生かすことにしました。

    ＞喜怒哀楽
    これは喜怒哀楽の物語だと思いますよ。落選を恐れて自分の作品を壊してまで公募から逃げようとする園田は哀れとしか言いようがありませんし、名探偵という絶対的な才能の持ち主に向かって言い放った「中途半端な才能しか持っていないニセモノの私のことなんて、ホンモノのあなたに理解できるはずがない！」という言葉は紛れもない怒りです。一方、才能の塊である名探偵は部外者にもかかわらず喜々として事件に介入して、探偵行為を楽しんでおりました。その結果があの末路です。これは間違いなく喜怒哀楽の物語です。
    ――というのが今作を通して表現したかったことなのですが、まだまだ演出が足りなかったようです。次回の課題として頑張ろうと思います。

    ＞木枠からカンバスを剥がすところです。
    ぶっちゃけ私もようつべでカンバスを張ったり剥がしたりする動画を見ながら、「絵の留め具を二、三分で外すとか大変じゃね？　しかもＢ全サイズの絵とかでかすぎてまず無理やろ」と思いましたが、「周囲の目を盗んで、日ごろから少しずつ留め具を緩めてガバガバにしておいて、犯行当日に簡単に外せるようにしていたのだろう」という設定にしました。推理のシーンでもそれを書こうとも思いましたが、テンポが悪くなるので省略した次第です。
    ちなみにまだどなたからも指摘をもらっておりませんが、「Ｂ全サイズの絵を画架にかけっぱなしにしておくとかありえるのだろうか？」といまだに疑問に思っております。美術エアプなのでその辺の感覚が全くわからないです（ぉい

    ご感想ありがとうございました。

    E-Mail pass
2022年08月24日 01時36分05秒
 +10点
  • 　読了しました。

    　己の才能との向き合い方、というテーマがしっかりと作品の底流に敷かれているのが好印象で、主人公の夢追い人という設定もそれに対してマストなものになっていたと思います。ここははっきり長所だと思います。
    　主人公の内面描写は瑞々しいもので、哀愁のようなものがしっかりと表現されています。分かりやすくのたうち回っている訳でなく、アラサーらしく冷静かつ自分の状況を俯瞰的に見つつため息を放つその様子には、若者の激しい苦悩とはまた異なる味わいがありました。
    　その上教師とくれば、園田の抱える大きな悩みに対し、何かしらの答えを一緒に探してあげられる立場だと思ったのですが、そういう方向には舵を切りませんでしたね。
    　これはこれで一つの結末だと思います。単純に読後の満足感という話をするのであれば、きちんと主人公が園田を導いてあげられた方がより良かったんじゃないかな？　と正直思わないでもないですが、そこは作者様のやりたいことをやったのであれば尊重した方が良いのでしょう。

    　主人公のキャラクターは良く立っていたと思うのですが、女生徒たちはもう少しそれぞれの持ち味をくっきりと持たせてあげても良かったかもしれません。
    　作風的に相応しいのかどうかはともかく、教師と言う立場で女生徒たちと触れあうという設定には一定の「オイシサ」があるはずなので、追及すると言う手もあったかなと。それをあえて避けるにしても、正直登場人物の名前と設定が一致しないこともなくはなかったというのも事実なので、やはり個性はもっと出しても良かったのかも。

    　トリック面。絵とか壺とかが盗まれる系の話で、「いや丸めるとか砕くとかすりゃええやん」というのはお約束ですが、それ自体はプロの作品でも結構やってることなんで、それ自体がつまらないとかではないと思います。
    　問題はそこに至るまでの付加要素というか、「なんで丸めるねん、砕くねん」というところだと思います。トリック面にその理由がある場合と動機面にそれがある場合とがありますが、今回は後者で、かつそれが作品のテーマとも結びついたものになっていたと思います。

    　創作お疲れ様です。これからも頑張ってください。

    E-Mail pass
Re: 2022年08月28日 01時59分00秒
  • ご感想ありがとうございます。

    ＞主人公の内面描写は瑞々しいもので、
    これは半分は作者の内面で、もう半分は嘘と言うか、かっこつけてオーバーに書いてます。私は矢澤ほど実績もなければ、矢澤ほどプロになりたいという意欲もなく、また努力もしていないので←

    ＞そういう方向には舵を切りませんでしたね。
    ＞きちんと主人公が園田を導いてあげられた方が良かったんじゃないかな？
    この点に関しては相当迷いました。矢澤にそれっぽいこと――「ガキが簡単に絶望とかぬかしてんじゃねーぞ、こちとらアラフォーで独身でフリーター同然の最底辺やぞ、お前がその程度で諦めたら俺は何なんだ？」とか言わせたら丸く収まりそうですし。ですから二、三週間くらい考えて、また投稿直前も書き直そうかなと考えました。個人的にトリックと動機が過去一噛み合った話なので、穏当に描けば２０点以下の点数をもらうことはまずないだろうと下世話なことも考えましたが、「名探偵（天才）のあなたに凡才である私の気持ちはわからない！」という叫びを無かったことにするのもどうかと思ったので、結局こういう展開にしました。

    ＞女生徒たちはもう少しそれぞれの持ち味をくっきりと持たせてあげても良かったかもしれません。
    この辺りは欠点というか明確な課題だと思いますが、とはいえどういう風にするのが正解（効果的）だったのだろうかと考えると、結構難しい問題だったりします。正直な話、矢澤と園田と高梨がいれば成立する物語なので、名探偵を含めて他の人物は不要なんですよね。

    ＞トリック面
    これに関しては日常の謎に限らずバラバラ死体や衆人環視の殺人とかでよく使われる発想だと思うので、動機との組み合わせで評価してほしいというのが、作者なりのわがままだったりします。

    ご感想ありがとうございました。

    E-Mail pass
2022年08月20日 20時59分47秒
 +10点
  • ※この感想にはネタバレが含まれます。










    　赤木と申します。読ませて頂いたので感想をば。あと自分はあんまりミステリーを読んでない人なのでとんちんかんな指摘もあるかもしれませんが、その辺ご容赦頂けると嬉しいです。

    　しっかりした推理モノ、だけど所々荒いよ特にラストォ！　というのが一読した直後の感想でした。

    　作者コメントによれば真っ当な推理モノを目指されたとのことでしたがその目的はほぼほぼ達成されているかと思います。丁寧さを感じさせる日常の描写から事件、そして名探偵の登場という流れは王道的な推理モノの構成をしっかり満たしていると感じられ、最後まで安定して楽しめました。また、途中、現在の状況を作者様が整理するパートも盛り込まれ、私のような推理モノあんまり読んでないニキにも親切な作りになっていたように思います。王道的で固い作りである一方で、作者様の造詣の深さを感じさせる絵画・美術という要素を取り込むことでマンネリだとか、どこかで見たような、という印象は感じませんでした。キャラクターについても主要キャラについては個性的に描かれており、全体的な構成として見ればしっかり楽しめる推理モノ、だったかと思います。

    　ただ構成がお見事だった故に、細部の荒さが気になってしまいました。まず悠子ちゃんが実は名探偵でした、というパートは個人的には唐突と感じました…悠子ちゃん登場の時点でそれっぽいことを匂わせる描写を入れ込んだ方が良かったと思います。そして、何よりもラスト……ちょっと投げっぱなし過ぎません？　主人公と同じ苦しみを悠子ちゃんが抱えている、その苦しみを悠子ちゃん自身が吐露し、（枚数的に厳しいでしょうがあわよくば）その解消を果たすことを読者的には期待したところで、実は犯人死にました、了……おいてけぼり感ぱなかったです。
    　今回の企画作品を書き上げるでは私も大変苦労しました。最後の方ではもういいや、クオリティより終わらせること優先じゃーという気持ちにも襲われ、結果的にそんな感じの終わり方になってしまった気もします。作者様ももしかしたらそんな心理状況でこのラストに至ったのかもしれませんし、自分のことは棚に上げて申し上げますが、もうちょっと丁寧に仕上げて欲しかった…全体としてクオリティが高かった故にそこが何よりも残念でした。

    　まとまりない感想で恐縮ですが、以上となります。上から目線で恐縮ですが、次に作者様の推理モノを読むときは、時間をかけて仕上げた作品を期待します…

    　…と、感想を書き上げていざ投稿の段となり、他の方の感想によれば、別作品が今作のアンサーソング様の作品になっており、ラストもそれ故のものらしい的なことを拝見しました。ただまあ、百枚の制限の中で物語を作る企画ですので、あくまで御作単体で評価させて頂き、感想の内容も変えないことにします。

    E-Mail pass
Re: 2022年08月28日 01時57分14秒
  • いつもお世話になります。ご感想ありがとうございます。

    ＞所々荒いよ特にラストォ！
    すみません。悪気はなかったんです。けれど色々と考えた結果あのようにしました。

    ＞現在の状況を作者様が整理するパートも盛り込まれ、
    私自身、あまり頭がよくないので、ミステリを書く時は大抵「整理」のパートを設けます。次回の企画でミステリがあって、整理パートがあったら私の小説だと思ってください(ぁ

    ＞実は名探偵でした、というパートは個人的には唐突と感じました
    これもプロットの欠陥と言いますか、おそらく名探偵がいない方が小説としては綺麗なんですよね。だからあのような末路になってしまったわけです。

    ＞主人公と同じ苦しみを悠子ちゃんが抱えている、――中略――おいてけぼり感ぱなかったです。
    これもやはりプロット上の欠陥で、名探偵の存在が園田の物語において不要なんですよね。園田の物語を長々とやっている以上、悠子の物語は蛇足です。悠子の存在をなかったことにすればよかったのでしょうけど、とはいえ上から目線の名探偵がいないと園田の魂の叫びが書けないので、色々と考えた結果、あのようにしてまとめました。

    ＞別作品がアンサーソング
    嘘くさいですが、最初からこういう仕掛けをしようと思ってこういうオチにしたわけではありませんでした。アンサーソングなんてご立派なものではなく、私自身投げっぱなしで気持ち悪かったので、無理やり回答を書いたというのが正直なところです。

    ご感想ありがとうございました。

    E-Mail pass
2022年08月20日 20時24分41秒
 +10点
  • あんたのせいよ、読ませて頂きました。
    以下、がっつりネタバレ感想です。





    【一通り読んでみての印象】


    　貫井徳郎というミステリ作家が、推理作家協会賞の選考の場で「日常の謎というジャンルはない」と発言したそうです。それは彼が「日常の謎なんて認めるか。人が死ななきゃミステリじゃない！」と思って発言した――というわけではないと思います。なぜなら彼は、他のミステリ作家（西澤保彦）の、『パズラー』という短編集の解説をつとめているからです。一篇だけ、犯罪が出ないタイプの作品もあるのですが、彼はそれを褒めています。そもそも貫井徳郎は、御作で引用されている作品の作者・北村薫の愛弟子でもありますからね。日常の謎そのものを否定するわけがありません。彼が言いたかったのはおそらく「日常の謎は、本格ミステリであり、わざわざ『日常の謎』という言葉でくくる必要がない」と考えての発言だったのではないか、と思います。

    　ちなみにその『パズラー』という小説の解説で、貫井徳郎は「本格ミステリは基本的につまらない（大意）」と書いています。つまらないが、たまにめちゃくちゃ面白いものがあるから、本格ミステリファンは、本格ミステリを読み続ける。個人的に共感できる解説でした。あと、『パズラー』はおすすめです笑

    　もちろん、これはあくまで貫井徳郎というミステリ作家の個人的な考えで、押し付けるつもりはありません。普通に「日常の謎」ってワード、僕は使ってます笑

    　前置きが長くなりました。御作を読んでの第一の感想は、ちゃんと本格ミステリしていたな、というものでした。

    　なお、僕は御作を、あくまで単体作品として評価したいと思います。


    【タイトル】

    　内容がはかれないタイトルだな、と思いました。登場人物の誰かが呪詛の言葉を吐くのだろうな、とは思いましたが。

    【書き出し】

    　＞問題は、誰がどうやって何のために部室から絵を持ち出したかだ。

    　この作品では、フーダニット、ハウダニット、ホワイダニットを解くことが要求されるぞ、と冒頭で示すあたり、作者さまの自信がうかがえました。ミステリ好きであれば興味を惹かれる書き出しでしょう。

    　そのあとの、主人公の家での描写も巧く、筆力の高さがうかがえました。


    【ストーリー】

    　まず純粋な小説としての評価を。文章は全体的にこなれていました。主人公の抱える葛藤もよく描けています。謎が解き明かされた後の、登場人物たちの想いの発露も、良かったと思います。

    　しかし、ジャンルものの呪縛からは逃れられていない印象を受けました。やや不自然な設定、動きがありました。本格ミステリはやるべき手順が多く、どうしても人工的になってしまうので致し方ないでしょう。その不自然さを帳消しにできるレベルのミステリ的な面白みがあるかが問われるわけですけど……ちょっと難しいなと思ってしまいました。

    　以下、ミステリ部分について。

    　御作は、いわゆる名探偵が登場するタイプの本格ミステリでした。彼女の飄々とした名探偵像は、嫌いではないのですが、今作においてはいまひとつ魅力を感じられませんでした。これには理由があります。
    　近年の学校を舞台とした日常の謎系ミステリに出てくる名探偵って「折木奉太郎（古典部シリーズ）」にしろ「小鳩常悟朗（小市民シリーズ）」にしろ「伊神さん（市立高校シリーズ）」にしろに「ハルタ（ハルチカシリーズ）」にしろ、皆、連続殺人事件みたいな非現実的で大きな謎を解き明かしているわけではないのでいいのですが、悠子のように、実質幼稚園児の時に、大量殺人事件を解決しているような人間を名探偵にすると、過剰にハードルがあがってしまいます。彼女みたいな名探偵が介入するのだから、絵の消失には、凄まじいトリックがあるのだろうとか、消失の背景でとんでもない犯罪行為がおこなわれているのだろうとか、斬新なロジックが見られるのだろうとか――少なくとも僕は必要以上にハードルを上げてしまいました。そして、そのハードルは残念ながら超えてくれませんでした。個人的にハードルを越えてくれなかったので、悠子という名探偵に対しても、小さな事件でハッスルしすぎじゃないか、と思ってしまい、魅力を感じられませんでした。


    　とはいえ、本格ミステリとしての破綻はありませんでした。推理を成立させるための細かい配慮が行き届いていて、素晴らしいです。少なくとも僕には穴は見つけられませんでした。絵を解体したところまでは読めましたが、スカートの中というのは、思い至れませんでした。

    　一方で、悠子の推理は消去法によるもので、論理の飛躍（意外な要素と要素が組み合わさり、意外な真相に至る）ような派手さはありませんでした。メインの絵の解体のトリックもわかりやすく、トリックがわかれば、犯人自体もわかる構造になっていたところも評価の難しいところです。正統派で素晴らしいんですが、前述した通り、悠子のような名探偵が挑むには小粒な印象をぬぐえませんでした。

    　それからフーダニットである以上、容疑者候補がある程度必要になってくるわけですが、正直なところ、彼女らの見分けはつかなかったです。リアリティラインが高めなので難しいかもしれませんが、あざといくらいキャラ分けをしてもよかったかもしれません。


    【ラスト】

    　ここは間違いなく賛否わかれるポイントでしょう。え、ってなりました。

    　御作は、「名探偵の悲劇」「名探偵の業」を描くことが目的として作られたのでしょう。近年、またそういう作品が増えてきている気がします。阿津川辰海の『館四重奏シリーズ』とか。ベストセラーとなった『屍人荘の殺人シリーズ』なんかも、そういう要素はありますよね。個人的に『名探偵に薔薇を』がそれ系の最高傑作だと思っているのですが。

    　やや話が脱線しました。

    　「名探偵の悲劇」「名探偵の業」を扱った作品はそれなりにあるのですが、御作とそれらの作品に違いがあるとすれば、それは「フリ」ですね。御作はそういうテーマの作品であるという前フリが少なかったので、「え、急になんだ？」となりました。映画がエンドロール前にぶつ切りされた印象を覚えました。個人的にこのテーマは好きなのですが、テーマの扱いが、この作品単体に限って言えば、微妙に思えました。

    ＞「『名探偵はなるのではない。ある時に自分がそうであることに気づくのです。』」※１
    ＞悠子は詩でも詠むように続ける。
    ＞「『《名探偵》というのは、行為や結果ではないのですか』『いや、存在であり意志です』――要するに、そういうことだよ、おじさん」※２
    　
    ＞「つまりおじさんは、自分が画家だから絵を描くの？」
    ＞「……そうだな」
    ＞悠子は珍しくはにかんで言った。
    ＞「わたしと同じだね」

    　上記がフリと言えばフリとも言えますが、悠子は自分が名探偵であることにその段階では疑いを持っていないので、オチのフリとしては、弱いと思いました。破滅を暗示させるようなフリにはなっていないです。業、悲劇を描いた商業作品を思い返してみると、少なくとも僕が読んだ範囲の中では、必ず破滅への暗示がありました。御作でも、名探偵の危うさを、もっと早い段階で提示できていたら、印象が変わっていたかもしれません。

    　才能があり、そうとしかなれないから自分は名探偵をしている――御作は、名探偵という唯一無二のアイデンティティが揺らぎ、名探偵の称号が十字架に変わる瞬間をとらえた作品だと思うのですが、これ単体だけだと、「うん、そういう話として読んでなかったから、普通に後味悪いぞ！」となってしまいました。すみません。


    【本作の強み（セールスポイント）】


    「名探偵の悲劇」でしょう。
    いっそのこと最初から「名探偵の悲劇が描かれています！」と声高にアピールするのもありかもしれません。


    【総評】


    　本格ミステリは好きなので高いレベルを求めてしまい、いろいろ言いましたが、レベルの高い作品なのは間違いないでしょう。正直、僕はこういうの書けないので羨ましいです。また、本格ミステリは伝統芸能のようなもので、先人たちの過去作との比較でしか評価を決めざるを得ないので、いろいろな作品の名前をあげつらってしまいました。すみません。最後に一個だけ作品名を出します。凄い既視感があるなと感じていたんですが、途中まで読んだ段階で、二年前に、似鳥鶏の『彼女の色に届くまで』という作品を読んだな、と思い出しました。推理作家協会賞、本格ミステリ大賞にノミネートされていたと思います。美術の世界の中で「日常の謎」が出現するという作品で、割と本作と似たトリックが使われていたのも（完全に同じと言うわけではないです）、評価に影響しました。


    　以上です。執筆おつかれさまでした。


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Re: 2022年08月28日 01時55分01秒
  • はじめまして、でしょうか？　ご感想ありがとうございます。

    ＞内容がはかれないタイトルだな、と思いました。
    これは若竹七海の葉村晶シリーズの一編からパクリました。ちなみにあちらは名探偵の悲劇モノではないです。

    ＞トリックがわかれば、犯人自体もわかる構造になっていたところも評価の難しいところです。
    私はそれを美しいと思っているのですが、一般的な感覚では無いみたいですね。「いや、お前の書き方が悪いからそういう評価になるんだぞ」と言われたらそれまでですが。

    ＞容疑者候補がある程度必要になってくるわけですが、正直なところ、彼女らの見分けはつかなかったです。
    ＞あざといくらいキャラ分けしてもよかったかもしれません。
    これは個人的な意見なのですけど、キャラの書き分けって必要ですかね？(ぁ
    そんなのに余計な枚数を使うくらいなら短く綺麗にまとめた方がいいんじゃね？　というのが私のモットーだったりします。高梨、真木、大久保の三人を固めて行動させたのも、三人共犯説をダミーとして成立させるためだったりします。

    ＞名探偵に薔薇を
    『名探偵に薔薇を』――あれは実にいいですよね！（食い気味　瀬川さんどこかで救われてくれませんかね。実質的な続編『スパイラル』である種の回答が示されましたけど、結局ビターエンドでしたし。
    ちなみにこの作品の話ではありませんが、企画に出した別の作品を書くにおいて『名探偵に薔薇を』と今邑彩『鋏の記憶』は再読しました。やはり『名探偵に薔薇を』はこの問題における金字塔で、「俺が改めてこの問題を書く意味無くね？」と思うくらい素晴らしくて凹みました。でも書いちゃいました。また未読でしたらぜひ『鋏の記憶』、そして『i』『ブラディ・ローズ』『盗まれて』を読んでみてください。一昔前に再評価されて簡単に手に入るようになったので、おすすめですよ。

    ＞似鳥鶏『彼女の色に届くまで』
    ガチで未読なので、どこまで似ているか気になります。「このままだと持って行けないからバラバラにするンゴｗ」程度なら腐るほど前例はあると思いますが、動機まで似ているとなると、正直凹みます。個人的にトリックと動機が過去一噛み合ったと思っていただけに、そんな有名な作品とネタが被っていて、しかもそれを読んでいないとか恥ずかしい限りです。

    ご感想ありがとうございました。

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2022年08月20日 07時32分01秒
 +30点
  • 　こんにちは来栖らいかです。作品を拝読しました。
    　感想です。

    「アマデウス」、「カミーユ・クローデル」など、芸術の天才に対する嫉妬と羨望は映画のテーマにもなっていますね……。

    　本作品は、ミステリ要素より「自らを凡才と認めたくない主人公と、天才ともてはやされることに限界を感じている園田」の描写が秀逸だったと思います。探偵の悠子はオマケみたいな……いてもいなくても、謎解きをするのは彼女である必要もなかったような。
    　トリックも犯人も序盤で予想したとおりでした。

    　単体の物語としては主人公である矢澤が謎解きをし、結果、悲劇が生まれる方が完成していたかもしれません。

    　タイトルの「あんたのせいよ」は園田さんの美術部友人や、ご両親の心の叫びになっているんですね……最後にタイトルを回収すると胸が痛くなりました。

    「コナン」も「犯人を死なせたのが一番の失敗」と言っていましたが、自分はドラマ「シャーロック」のように「名探偵は人間味不必要。謎解き機械であれ。フォローは相棒の仕事」というパターンが物語として面白いとおもっています。
    　となると今作の場合、矢澤が何かしらのフォロー入れたら園田も救われたのかもしれないですね。

    　他の方の感想で今作が別作品の伏線らしいと知ったので、そちらも読むのを楽しみにしています。（感想期間内にたどり着けるか自信ないので、企画終わっても跡地にしないで欲しいですｗ）
    　
    　ではでは作者様の、さらなるご活躍を祈りつつ。

    　＠らいか

    　追伸：

    　ところで、「白樺荘一族惨殺事件」はどこで読めますか？

    　

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Re: 2022年08月28日 01時51分58秒
  • いつもお世話になります。ご感想ありがとうございます。

    ＞悠子はオマケみたいな……いてもいなくも
    そうなこと言ったらかわいそうじゃないですか！(ぁ
    まあ真面目な話をすると、書いている途中に「こいつを消して書き直そうかな」とも考えました。名探偵がいない話にして、アラサー夢追い人の矢澤がそれっぽく説教すれば、犯人も素直に言うこと聞いてくれんじゃないかな、と。ただ犯人が抱いた名探偵という天才に対する嫉妬、怒りを無かったことにするのもどうかと思い、こういう展開にしました。

    ＞タイトルの「あんたのせいよ」は園田さんの美術部友人や、ご両親の心の叫びになっているんですね
    実を言うと、このセリフを言ったのは、悠子のおばあちゃんでした。叔父さん、責任を感じて自殺したみたいで、おばあちゃんは孫の悠子に向かって「（息子の達也が死んだのは）あんたのせいよ」って言ったみたいです。

    ＞「コナン」も「犯人を死なせたのが一番の失敗」と言っていましたが、
    この作品の話ではありませんが、企画に出した別の作品でその台詞を引用しようとしましたが、枚数上限が理由で泣く泣く削除しました。

    ＞矢澤が何かしらのフォロー入れたら園田も救われたのかもしれないですね。
    俺がちゃんとしてたらもっと違った結末があったって本人も地の文で言ってましたものね。

    ＞「白樺荘一族惨殺事件」
    鮎川哲也『白の恐怖』ないし中絶した『白樺荘事件』をお読みください←

    ご感想ありがとうございました。

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2022年08月18日 21時39分39秒
 +30点
  • ※この感想には【本企画に参加している他の作品】のネタバレを含みます。閲覧は自己責任でお願いします。







    感想の中に当該作品のネタバレを含むのは当たり前なので、わざわざ断りを入れる必要も無いと思いますけどね。







    こんにちは。kanegonと申します。『あんたのせいよ』読みましたので、感想です。
    いやはや、今まで見た企画作品の中でも最大くらいのギミック盛りまくりの作品でした。
    作者コメントからして読者をだましに来ている。人が死なないっていうけど、ターゲットの犯罪が殺人事件じゃないだけで、結局死んでいますし。それも二人も。
    で、物語自体は面白かったです。
    主人公、というか視点人物の設定も良かったです。自分の夢を追って頑張っているけど、結果が出ずうだつが上がらない感じ。それでいて姪との二人暮らしというシチュエーション。非常に感情移入しやすいキャラなので、すぐに物語に入って行けました。聡明な姪とさえないおじさんという、謎解きパートでのコンビぶりもいいマッチ具合でした。
    美術部の描写もていねいで良かったです。園田さんの才能溢れる感じが、才能の乏しい主人公目線から上手く提示できていました。
    ただ、園田さん以外の美術部の面々に関しては、ちょっと弱かったかな、と。ミステリなので容疑者要員として人数を出さないとならないので、高梨部長、真木副部長、大久保、と三人出てきましたけど、結局動機の部分であまり三人の違いが見えなかったので、ワイダニットの部分よりもハウダニットに重みがついてしまったかな、と（だからこそ消去法で園田さんが犯人という推理になりますが）。三人とも、園田さんに対して疎ましく思っているとかコンプレックスを抱いているとかの感じが無かったので、ミステリとしては惜しい部分だったのですが、園田さんの絵を真剣に探して園田さんの心配をするという終盤の行動に繋がっているので、いいキャラではあるよなと思いました。
    んで、事件が起きたタイミングで、中等部の悠子が高等部にしゃしゃり出てきて、さらには自分が名探偵ですと強引に事件に介入してくるのは、ミステリのお約束とはいえタイミングの良さはややご都合は感じました。もちろんミステリとしては許容範囲なのは承知しています。
    布を剥がして、というのは良いトリックでした。その後どうするかに関しては消化試合みたいなもので、布を剥がすというところまで分かればその後はどうとでもしようがあるので、それはどうでも良かった部分。
    そして事件の結末がなかなかに衝撃でした。
    悠子が喜々として探偵ごっこをしにきて、園田さんに対して正論を吐く部分は確かにいけ好かない感じでした。世にあるミステリ作品って、探偵がトリックを見破るだけならまだいいけど、容疑者のプライバシーに土足で踏み込んでデリケートな部分を動機としてさらけだしてしまうので、事件は解決されても誰も幸せにならない、というもにょり感を常々抱いていたのですが、本作品はそういったミステリの傾向に対するアンチテーゼとしても秀逸だったと思います。
    園田さんが死んだ、というところでぶつ切り感で終わるエンディングは、先に述べたアンチテーゼ作品としてはアリですが、顛末としては普通に考えれば後味が最悪に悪く、短編小説作品としては、ぶつ切りすぎて、ちゃんと終わりきっていないんじゃないかという印象を読者に持たせてしまうものでした。
    私は、まあ、それもそれでアリだよな、という感想です。
    ↑
    ここまでは『恋する女帝』を読むまでの感想です。
    『恋する女帝』は、本作品に対するアンサーソング的なというべきか、本作品の事件のその後と悠子の結末を描いているのは良かったです。
    いや、なるほど。『恋する女帝』まで含めてだったら、ぶった切りのラストも大いにアリですよね。複数作品に跨ってギミック仕掛けているんだから凄いわ。
    あ、もちろん点数はあくまでも本作品を単独の短編として考えたものです。

    とまあ、ごちゃごちゃ言いましたけど、本作品は本作品単体で面白かったです。日常系ミステリとしてトリックもほどよい感じでした。ご都合主義的な部分もミステリのお約束として流すことができる程度のものでしたし。
    私は基本的にあまりミステリは読みませんし、あまり好きでもありません。でもそれは、無理矢理すぎるトリックやご都合主義が物語をつまらなくしているからであって、良くできた面白い作品であればミステリであっても楽しく読むことができます。
    そういう意味では本作品は、ミチル企画では珍しく、ちゃんと楽しめる良質なミステリだったんじゃないかと思います。
    余力があれば『恋する女帝』にも感想を書こうと思います。書けなかったらすみません。
    感想は以上です。企画参加おつかれさまでした。


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Re: 2022年08月28日 01時51分02秒
  • いつもお世話になります。ご感想ありがとうございます。
    って、何で早々に仕掛けをばらすんですか！ｗ←

    ＞今まで見た企画作品の中でも最大くらいのギミック盛りまくりの作品でした。
    本当は「喜」「怒」「哀」「楽」がテーマの四つの無関係の短編を投稿して、最後にそれらをまとめる五つ目の短編を投稿する予定でしたが、話が一つも思いつかなかったので断念しました

    ＞結局死んでいますし。それも二人も。
    悠子さんのおばあちゃんも「達也が死んだのはあんたのせいよ」と言って病死しているので、実は三人死んでます←

    ＞ただ、園田さん以外の美術部の面々に関しては、ちょっと弱かったかな、と。
    ぶっちゃけ容疑者は高梨部長だけでよかったんですけど、それだとあからさまなんで、あと二人テキトーに揃えました。テキトーすぎると言われないために、三人共犯説を成立させるために絵画のサイズを巨大にして、三等分にして分けたというミスリードを用意したりもしました

    ＞三人とも、園田さんに対して疎ましく思っているとかコンプレックスを抱いているとかの感じが無かったので、ミステリとしては惜しい部分だったのですが、
    この三人のキャラを強くしてしまうと、どうしても枚数が必要になってしまうんですよね。正直、この程度のネタに三万字も使ってしまったのは失敗です。二万五千字程度にまとめたかったというのが正直なところです。だから名探偵を登場させたのは間違いだったと思ってます。

    ＞その後どうするかに関しては消化試合みたいなもので、
    胴回りにせよ太ももにせよ午後の授業の間ずっと巻いたままとか無理じゃね？　といまだに疑問に思ってます←

    ＞本作品はそういったミステリの傾向に対するアンチテーゼとしても秀逸だったと思います。
    実は当初はアンチテーゼとして書くつもりはありませんでしたし、犯人を殺すつもりもありませんでした。
    当初は名探偵の説教で改心してハッピーエンドで終わるつもりだったのですが、書いているうちに犯人に共感してしまい、偉そうにしているチート女に嫌がらせがしたくなり、犯人を殺すことにしました。コナン君いわく、犯人を自殺に追い込むような探偵は探偵失格らしいので。
    本当は今邑彩「三時十分の死」のように一短編として上手く落とし込みたかったのですけど、どうあがいても蛇足になってしまいそうだったのでぶった切りました。

    ＞『恋する女帝』は、本作品に対するアンサーソング
    本当は恋する女帝を書くつもりなんてなかったんですけど、このまま放置してしまうのは作者として心残りだったみたいで、勢いで書いてしまいました。おかげでお盆休みが飛びました。

    ご感想ありがとうございました。

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2022年08月15日 22時21分54秒
 +30点
  • ※この感想にはネタバレがあります。













    　作者さま、こんばんは。
    　ミステリ好きとして、本作を最初に読もうと決めていました。感想一番乗りは残念ながら叶いませんでしたが、読了後に感じたことなどを述べさせて頂きます。


    　丁寧な構成でした。
    　最初の一文は親切ですね。本作がフーダニット、ハウダニット、ワイダニット全てを解き明かすものだと明言されていました。
    　作者さまはフェアな方だろうなと思って読み進めていきましたが、期待通りでした。舞台背景の説明、登場人物の紹介、不可能状況の提示という序盤戦では伏線と思われる『やや不自然な』描写が散りばめられていました（不自然というのは難癖ではありません。ミステリを読み慣れていると何となく伏線が分かっちゃうんです）。
    　しかしそんな中でも、トリックの伏線はさりげなく隠してありましたね。一読しただけでは気付きませんでした。トリックが解明されてから気付く「ああ、あれが伏線だったんだー」という瞬間。これこそミステリの醍醐味というものです。
    　ちなみに読みながら推理してみましたが、トリックは半分だけ当たり。木枠から○○○○を外して運びやすくするという発想は同じでしたが、運ぶのに使った物が予想と違っていました。
    　ところでこのトリック、盗まれた物の再生は難しいですよね。だから動機をあんな風にして、自ずと犯人があの人になってしまったのかなと。ミステリはトリックありきで書く私はそう思うわけでして。本作はトリックが先にできたのか、物語が先に思いついたのか、気になるところです。
    　キャラクターについては平均的。インパクトのあるキャラはいなかったけど、それぞれに役目があって、台詞回しもよかった。ガチのミステリに比べて少しライトな読者層に寄せた感じがありました。企画で参加者にミステリ読ませるには、キャラにも気を配らないといけないから大変ですよね。私の経験則ですが。
    　構成はオーソドックス。欲をいえばミスリードが一つ欲しかった（語り手が疑われる展開はミスリードとして認めない）。事件発生から解決までが一本道なんですよね。解りやすくはあるのですが、ミステリを読み慣れた読者としてはもうひとヤマあれば大満足でした。
    　そうそう、謎を解明するロジックは矛盾なくまとめられていました。探偵役が出した結論に反論できる点はないか考えてみましたが、特に思い当たりませんでした。矛盾なくロジックをまとめられるだけでも凄いことです。なにげにミステリを書く時の苦労する点って、ロジックなんですよね。書いてるうちに穴があることに気付いちゃったりなんかして。本作を書く時にはあまり苦労しませんでしたか？　個人的に気になります。
    　ラストの展開は評価が別れるところ。私も遠い過去に、本格ミステリの探偵批判を作品に組み込んだことがあるのですが、探偵って犯人の動機に関連して、犯人の辛い過去とか隠したかったことを、大勢の前でべらべら喋っちゃうんですよね。それって人としてどうなのよ？　本作のラストは探偵としての責任を問うものに思えました。謎を解くなら、解いたことへの責任を持ちなさいよ、なんて。タイトルは無責任に謎を解き、犯人を追い詰めていく探偵への戒めなのでしょうか。探偵がつきものの本格ミステリとしては、深く考えさせられる内容でした。


    　さて評価についてですが。
    　私は過去何度か企画にミステリを投稿し、苦い経験をしてきました。某バーテンダーには「企画ではミステリの需要がない」と言われ、失意の底に沈んだこともあります（誇張表現）。
    　しかし敢えて本格ミステリを投稿してくれた作者さまには敬意を表します。
    　そして純粋に嬉しかった。まがいものじゃなくて本物のミステリを読ませてくれてありがとう。
    　その感謝の気持ちを込めて、評価はこのようにさせて頂きました。どうぞお受け取り下さい。
    　ミステリに栄光あれ！
    　それではまた、ご縁がありましたら。

    E-Mail pass
Re: 2022年08月28日 01時47分58秒
  • いつもお世話になります。ご感想ありがとうございます。

    ＞最初の一文は親切ですね。
    読者は必ずしもミステリを読みたいわけではないとか仰る方もいるので、冒頭にわかりやすくどういうお話か提示することにしました←
    というのは冗談で、序盤を丁寧に書いたせいで主題たる謎の提示が遅くなってしまったので、冒頭に「こういうお話だよ！」と掲げることで、退屈な序盤を我慢して読んでもらう狙いがありました。

    ＞『やや不自然な』描写が散りばめられていました
    ＞トリックの伏線はさりげなく隠してありましたね
    伏線とかミスリードってわかりやすいぐらいがちょうどよいと個人的には思ってます。その方が回収された時にすぐに思い出してもらえたり、「ああ、やっぱりこれ伏線だったんだ。俺って聡いから見逃さないぜ」と読者の気分を良くしたり出来るので（ぁ
    ちなみに授業の合間にカンバスを組み立てるシーンを挟んだのは、恥ずかしながら私、このお話を書くまでカンバスと画用紙の違いをハッキリと認識していなかったので、私と同じような勘違いをしている方がいても大丈夫なように露骨に描写しました←

    ＞本作はトリックが先にできたのか、物語が先に思いついたのか、気になるところです。
    基本的に私も動機よりトリックが先のタイプですが、実は今回ばかりは動機が先です（何
    東京の三軒茶屋で経営者をしているＡＱＵＡさんに十年ほど前に「小説の専門学校の生徒が落選を恐れて公募原稿を隠して、そのことを作家志望仲間に悟られないように『誰かが俺の原稿を盗んだ！』って言い張ってるミステリとかどうかな？」と聞いてみたら、「えー、つまらなくね？」と一蹴されてしまい、また具体的なトリックも思いつかなかったので、その際はお蔵入りしました。そして去年の冬ぐらいに「跡形もなく壊さないと盗めない物を実際に粉々に壊して盗んだら面白くね？　あ、そういえばあの時のネタ使えるじゃん！」と相成り、具体的な構想を進めました。

    ＞企画で参加者にミステリ読ませるには、キャラにも気を配らないといけないから大変ですよね。
    一応こういう場なのでティーンでポップな感じにはしました。とはいえサブキャラにまでキャラ付けをしてしまうと枚数がかさんでしまい、ミステリとしての切れ味が鈍くなってしまうので、結構悩ましい問題です。

    ＞欲をいえばミスリードが一つ欲しかった
    確かに原稿用紙換算で一〇〇枚ぐらいありますから、ドンデン返しがあってもよかったかもしれませんね。あるいは名探偵の下りを消して、六〇枚程度に書き直すか。

    ＞なにげにミステリを書く時の苦労する点って、ロジックなんですよね。書いてるうちに穴があることに気付いちゃったりなんかして。本作を書く時にはあまり苦労しませんでしたか？
    この辺りは詰めるのが大変なので、書きながら細部を考えたり修正したりする場合が多いです。今作の論理の弱点というか別解としては、「①体に巻くくらいなら目撃されるのを覚悟で窓の隙間から落として、誰かに拾われる前に回収した方がよくね？」「②そんな面倒なことするぐらいだったら事故を装って絵を傷つけた方が簡単じゃね？」「③美術展に作品を送るときにへし折ってから佐川〇便に渡して、輸送中に佐川が傷つけたから落選したことにすればいいんじゃね？」の三つくらいですかね？

    ＞ラストの展開は評価が別れるところ
    最初は名探偵に説得されてまた一から絵を描いて美術展に出して、佳作ないし入選させる穏当なオチを考えておりましたが、「名探偵みたいな完璧超人に努力は裏切らないとか言われても説得力ないよなあ」と思ったので、あのようなオチにしました。途中でぶった切ったような終わりに見えるかもしれませんが、その後の展開を細かくのは蛇足だし野暮だと思い、あそこで終わらせました。

    ＞失意の底に沈んだこともあります
    布団探偵くらいサービス盛り沢山でやったのにあれだけ言われてしまったら、そりゃあねえ？(ぁ
    まあ元々ミステリは、興味のない人からしたら全く面白くないし、好きな人からは厳しく見られるという過酷なジャンルなので、「わかる者だけがついてくればよい、俺は我が道を行く！」と、ある程度の開き直りが必要ではないかと最近は考えております。

    ご感想ありがとうございました。庵さんもまたミステリを書いてください。

    E-Mail pass
2022年08月15日 19時58分17秒
 +30点
  • あんたのせいよ、読ませていただきました。

    実はバトルとかラブコメばかり読んでいる自分は本格的なミステリーを読んだ事が無くて、最後まで読めるか不安でしたが、しっかりと楽しむ事ができました。

    ほんの僅かキャラ分けに混乱がありましたが、引っ張る力が強く、読ませる作品という印象です。トリックに関しても分かりやすく、自分の頭でも理解できて納得のいく内容でした。

    個人的に絵という題材が珍しく、これだけで個性点として評価できます。物語的にはヒロインの探偵の設定に魅かれるものがあり、このキャラが登場してからより物語にのめり込む事ができました。

    高梨に当てた才能に対する思いが、園田に刺さっていた部分が意外性があって良かったです。最近では青のアウトラインってラノベを読んだのですが、絵を題材にした物語って才能の無い方の葛藤と才能がある方の葛藤が表現できて良いですね。

    ただ、ラストが個人的にモヤっとする終わりでした。というより、もしかしたら自分が物語を理解してないだけかもしれませんが、ラストで盛り上がって面白くなってきた！って部分で終わってしまった印象です。
    衝撃的なシーンで終わっているのですが、その先、主人公とヒロインがこの事実を受け止め、どういう答えを出して生きていくのか。そういった部分が読みたかったです。特にヒロインに関してはあの結末についてどういう感情を持ったのか読み取りにくく、不完全燃焼な印象がありました。

    ただ『インパクトのある終わり方』という意味でならあの終わりの方が正解な気もします。物語的な答えを重視するのか、インパクトを重視するのか。この部分は好みかもしれませんね。
    どちらにせよ『面白い』という評価は変わりません。というより面白いからこそ自分の望む結末の欲が感想に出てしまったと思ってもらえたら幸いです。

    それでは失礼します。執筆お疲れ様でした！

    E-Mail pass
Re: 2022年08月28日 01時46分09秒
  • ご感想ありがとうございます。

    ＞本格的なミステリーを読んだ事が無くて、最後まで読めるか不安でしたが、しっかりと楽しむ事ができました
    ＞トリックに関しても分かりやすく、自分の頭でも理解できて納得のいく内容でした。
    ありがとうございます。ミステリを書く時はミステリが好きな方向けに書くのを心掛けておりますが、一方でわかりやすさも重視しているので、そのように仰っていただけて何よりです。

    ＞ほんの僅かキャラ分けに混乱がありましたが
    正直キャラの書き分けをするようなお話でもないので、その辺は開き直って書いておりました（ぉい

    ＞個人的に絵という題材が珍しく、これだけで個性点として評価できます。
    当初は絵画ではなく小説を題材に書こうと思っていたのですが、トリックと上手くかみ合わなかったので、最終的に絵画を選択しました

    ＞絵を題材にした物語って才能の無い方の葛藤と才能がある方の葛藤が表現できて良いですね。
    才能（実力）が無い私からしてみたら、贅沢な悩みですよホント←

    ＞ただ、ラストが個人的にモヤっとする終わりでした。
    ＞衝撃的なシーンで終わっているのですが、その先、主人公とヒロインがこの事実を受け止め、どういう答えを出して生きていくのか。そういった部分が読みたかったです。
    本当はその辺りも書きたかったのですが、まともに向き合うと本筋（絵画消失の謎）とずれてしまうので、今回はバッサリ省きました。あと八万字くらいあればちゃんと書けるかもしれません←

    ご感想ありがとうございました。

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合計 11人 230点

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