このすっばらしい青魔法の効果の恩恵を♪ |
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●下品言うな! 0 青魔法とは、魔物特有の技もしくは種族的能力を擬似的に再現する特殊魔法である。 条件さえそろえば、大地を焼く長命竜の息吹すら再現可能でその攻撃力は最強。 さらには魔物の種類だけ魔法があるとされるので、あらゆる場面に対処でき万能でもある。 故に青魔法を習得する青魔法使いこそが究極の冒険者となりえるのだ。少なくとも俺はそう考える。 だが問題がなくもない。 青魔法の習得にはいくつかの条件がある。 そのひとつにして最大の問題点が、『習得する魔法を我が身で受けなければならない』というものだ。 つまり強い青魔法ほど習得が難しく、人間の身体で耐えられるものは一撃必殺とはなりえない。 さらに低すぎる習得率を補うため、対象の魔物を食ったり、その生態を観察したりと面倒な準備も多い。 そしてそれ故に、俺――アオーバは窮地に追い詰められていた……。 1 「アオーバ、おまえをパーティーから除名する」 名うての冒険者の集う酒場にて、解雇通知をつきつけたのはリーダーのレドだった。 「またまた~、いくら俺とおまえの仲でも冗談がすぎるぜ」 冗談めかして言うけど、ヤツの真面目な表情は少しも緩まない。 レドとは幼なじみで、冒険者になろうと誘ったのは俺だった。 危険な魔物を討伐して人々から感謝され、誰も踏破していない地下迷宮で財宝を手に入れる。その活躍は吟遊詩人に歌われ、女の子たちからモテモテウハウハの勝ち組人生を謳歌しようと誓い、ふたりで冒険者をはじめたのだ。 なのに道半ばにして、俺をパーティーから追い出そうというのか。 「ちょっとまってくれレド。俺たちこれまで上手くやってきたじゃないか。そりゃちっとはトラブルこともあるが、それについては少しずつすりあわせていこうぜ。いい感じにさ」 そう言って、レドの緊張をほぐそうと肩に手を伸ばす。しかしそれを拒む声が横から割り込んだ。 「レドにたかるのはもうやめるッス!」 銀色の毛皮をまとった小柄な女はシルシルである。 素肌に獣の皮をかぶるとか、未開の地の蛮族みたいな格好だが、腕の立つ犬魔法使いである。 「俺はパーティーのリーダーであるレドと話てるんだ。どでかいおっぱい出すのは構わねぇが、口まで出すんじゃねぇ」 「いいや出すッス。リーダーの人の良さにつけ込んでる寄生虫冒険者は排除するッス」 「誰が寄生虫だ。宿主が寝てる間にケツから頭だしたて卵植え付けたりなんてしねーぞ」 年下の後輩魔法使いをにらみつけるが、生意気なシルシルはちっともひるまない。 「『そのうちすっげースキルを覚える』とかビッグマウスぶん回しながら、いつまで経っても役立たずのままじゃないッスか! しかも、みんなに超・超・協力させておいて『ごっめ~ん、習得できなかった(キャハッ』とかナメてるんッスか、舐めてるッスよねぇ!? あんたのせいで希少種にも逃げられてるんすから、樹海よりも深く反省するッス」 「俺は大器晩成型、長い目で見守っていてあげてね!」 劣勢を感じながらも、己の威厳のためにも懸命に押し返す。 「勇者レドの率いるパーティーは、この都市でいま一番熱いパーティーなんスよ。そこにあんたみたいな役に立たないお荷物青魔法使いがいるなんて許されることじゃないッス」 童顔のクセに生意気なオッパイをブルンと震わせながら告げる。 「うっせ、このロリ巨乳! 俺はレドと話してるんだ、おっぱい揉むぞ。むしろ揉ませてください!」 「だれがロリ巨乳ッスか、この最低さげチン野郎! 二度とスタンダップできないように、かみ切ってやるッスよ!」 「やれるもんなやってみろ、俺様のヴィクトリーがテメーのおちょぼ口口に収まるとでも思ってるのか! でもオッパイは揉ませてください! お願いだから!!」 互いに牙を剥き威嚇し合う。 そこへレドが「ふたりともそこまでにするんだ」と仲裁に入った。 俺とシルシルは言い争いを中断する。 どちらもリーダーであるレドに逆らう気などないのだ。 シルシルは和解の印として、俺におっぱいを差し出し、俺はそれを揉ませてもらう。 うむ、性格はともかくポワンポワンとしたおっぱいは実に良いものだ。 「ありがとう」 「どういたしましてッス」 親しき仲でも礼儀は欠かさない。 「さっ、これで一件落着だな」 「アオーバの除名は覆らないがな」 話を水に流そうとした俺だったが、レドはサラッと話をもどす。 おい親友よ。 「いやいや、まってくれ、もうトラブルは起こさない。成果も近いうちに出すし、訓練もまじめにやるからさ」 考え直して欲しいと訴える。 「だが、このままおまえをパーティーに置いておくのは難しい」 「おまえまで、俺を不要というのか ? 駆け出しの頃は一緒に馬小屋で寝泊まりしてたじゃねーか。辛いことも困難も一緒に切り抜けてきたじゃないか」 「アオーバ、俺はおまえに期待しているし、無二の親友だとも思っている」 「だったら……」 「俺はリーダーとして、パーティーメンバーを守らなければならない。他の者たちの命を預かる者として、力になれないものを置いてはおけない」 気づけば、他のパーティーメンバーも俺のことをみていた。 レドとふたりでやっていた頃とちがい、人数は増えている。 それでも実力ある者たちが、うちのパーティーに入りたいと願い、レドもその力を求めている。 かといって、その全てを受け入れようとすれば、パーティーは大所帯になり、小回りが利かなくなる。 戦力として大きくなれても小回りが利かなくなり、せっかくの戦力を活かせず全滅という事態になりかねない。 よって、無能は去れという判断はわからなくもない だがそれでも……。 「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だー! 俺、ここ追い出されたら拾ってくれるとこねーじゃん。眼ブル性の高い青魔法使いだけど、優しく丁寧に育てていこうぜ。雑用でもなんでもするから捨てないでくれ。収入を充てにして武器だって勝っちまったし、なっ、なっ? 頼むよ、お願いだ」 俺は青魔法『土下座』を発動させ床に額を擦りつけたが、シルシルに踏みつけられただけで、レドの判断が覆ることはなかった。 2 レドのパーティーを追い出された俺は、ひとり魔物の出る森を散策していた。 俺はレドのパーティーのお荷物青魔法使いという誤った認識が広がっていた。それでもレドの善意と慈悲でパーティーに残されていたのに、それを追い出されたのにはなにか理由があるにちがいないと勘違いされてしまった。 よって、俺を受け入れようというパーティーはひとつとしてなかった。 「俺、なにも悪くねーのにな」 悪いのは政治と世界だ。 けれど、いつまでもそんなことで愚痴ってはいられない。 「久しぶりのソロだし、なにか金目のもんみつけねーとな」 冒険者ギルドと呼ばれる斡旋業者からも『ひとりじゃダメ』と仕事をもらえず、レアな薬草か肉として売れそうな魔物を狩ろう。 森に生息する魔物は、森で生きていくために必要な技能と能力をもっている。そのいくつかを青魔法で覚えている俺にとっては、ソロのほうが身軽で動きやすくもある。 もともと魔物の特性を調べる際、ひとりで森に籠もるのも珍しくなかったし。 「たいした魔物はいなかったな」 いや、強い魔物に出られてもこまるんだが。 本日の収穫は肉トカゲを数匹。 稼ぎというには少ないが、太ったヤツは結構良い値段になる。 念のため『ゴブリンの胃』を発動させ食事をする。 胃腸は強く、毒耐性も高いほうだが、万が一、ひとりで腹を下しいる最中に魔物に襲われたらと思うと洒落にならない。 処理した肉トカゲの肉、その中で一番小さなものを自分の食事とする。 小さいものは小骨が多く、食いでもよくないが、大きいもののほうが高く売れるのだ。 懐が寂しい以上、節約は考えなければならない。さもしい。 「かけだしのころはレドとこいつをよく食ったっけ。ふたりで毎日馬小屋に寝泊まりしてな。なのにレドのヤツ、俺を捨てやがって……」 正面からのぶつかり合いではレドに敵わない。だが、こうして魔物を狩った感触でいえば、俺は十分に戦え、あいつらにそう劣ったものではない。 それでもヤツらより一枚落ちて見えるのは、強力な攻撃方法がないせいだろうな。 自分の置かれた状況にため息がつく。 青魔法使いになったのは間違いだったのだろうか。 俺は人よりも身体は丈夫だし、体力もあるから、いろんな青魔法が習得できると思ったんだけどなぁ。 大地に寝そべり空をみあげる。 空の青は少しずつ濃くなり、夜の訪れを告げていた。 そんな時、俺の耳は異変をとらえていた。 即座に身体を起こすと、異変の源を探す。 遅れて、ドーンという振動と、鳥や獣が逃げ出す様子が見えた。 「……」 このあたりに爆発音を響かせるような魔物はいない。 冒険者経験の浅い魔法使いが、暴走でもしたか? 魔法自体は座学で覚えられるから、攻撃力と経験のアンバランスな冒険者は珍しくなく、いざ実践というときに過剰な魔法を暴発させることがある。 俺は野次馬根性と、ちょっぴりの親心で、その魔法使いの様子を見に行くことにした。 あわよくば先輩冒険者としての風をビュービュー吹かしながら、パーティーに参加してもいい。 「できれば良いおっぱいの娘がいるといいな」 3 「どうなってんだ?」 木こりが一日がかりで倒すような巨木がなぎ倒されている。それも何十本もだ。 その周囲には魔物の死体。どれもデカイ傷をひとつだけ負っていて、一撃で殺されただろうことが予測される。 どうみても冒険者の手口じゃない。 人間の足跡もないし、素材にもなる魔物の死体を放置している。魔物の仕業で間違いないだろう。 魔物同士の争いは珍しくないが、だからといって無数の死体が放置されるような事態は尋常ではない。 「この先にヤバいのがいるってことか」 問題はどう動くかだ。 このまま立ち去り街に事態を報告するのが無難だ。どんな魔物かわからなくても、確実な脅威が発生してるという情報があれば、それだけで警戒し、対処に動くことができる。 だが、俺がここから去れば、ここで見聞きしたこと以上の情報は手に入らない。 危険な魔物がいるとわかっても、それがどんなヤツかわからないままじゃ、具体的な対処は準備できない。 自分の命はなによりも大事だが、かといって仲間や街の連中の命が軽いわけじゃない。 なにより…… 「この惨状を作った魔物ってのは、青魔法使いとして無視はできないよな」 まだ見ぬ魔物への好奇心は、俺を危険へと誘った。 俺は警戒レベルを最大限に引き上げるため『小動物の危険感知』を発動させる。 その瞬間、全身の毛が逆立つのを感じた。あまりの恐怖に魔法を解除してしまう。 「感度が高すぎたか」 座り込みたい気持ちを抑え、息を整える。それから身体中からあふれ出した汗を拭った。 『小動物の危機感知』は、その名の通り、危険に敏感な小動物の感知能力を宿す魔法だ。 人間の耳では感知できないような微かな音や異変を敏感に察知することができる。 だが、そのせいでリアルにこの惨状を作り上げた魔物の恐ろしさを知ってしまった。小動物なら危機を察知した瞬間に逃げればいいが、あいにくとそういう状況じゃない。 「どのみち、危険のある方角はわかってるんだ。少々ずぶとく行ったほうが逆に安全かもな」 自分に言い聞かすと、再び聞こえたドーンという音をたよりに、森の奥を目指していく。 そして俺は目撃する。 光の息吹をまき散らし、周囲の木々をなぎ倒す竜の姿を。 そしてその竜を圧倒する、青い燐光を携えた半裸の女を……。 4 初めて目撃した巨大な竜の姿は圧巻だった。 魔物の技や体質を盗み覚える青魔法使いとして、その存在は尊敬に値する。 もし、竜の持つ魔法なり能力なりを習得することができれば、俺を追放したシルシルを見返すことができる。 レドだって、パーティーに帰ってこいと言い出すかもしれない だが、俺の目の前で魔物の王とも呼ばれるべき強者は、青白い肌を惜しげもなく晒す女に圧倒されていた。 竜とくらべれば、小さくみえるが、背が高く肉付きがいい美女。張りのよいおっぱいはとてもビューティフォー。服は着ていないが、身体の一部をは虫類の鱗のようなもので覆っている。肌には魔法使いが使うような紋様が刻まれている。 こうして竜とサシで戦っているところを見なければ、人間と勘違いしたかもしれない。 だが、竜を素手でなぐり圧倒するような存在が人間である筈がない。 やがて女の腕に刻まれた紋様が輝いたかと思うと、強大な雷が発生する。 指向性を与えられた雷は竜を呑み、さらには周囲の木々までもを食らい尽くす。 そしてそこには死骸となり果てた竜と、息を切らしながらも五体満足な魔物女が残った。 竜が負けた。 魔物の王とまで呼ばれる存在が、いずれ倒そうと夢見ていた対象が思いもよらぬ形でやられたことにショックを受けていた。 それ故に俺はタイミングを逃す。 竜が生きているうちならば、まだ逃げる機械はあったのに……。 魔物女の瞳がのぞき見をしていた俺を捕らえる。 そこで我に返った俺は荷物を捨て、その場から逃走した。 青魔法使いである俺は、森になれている。楽ではないが、街まで武器だけあれば帰還可能だ。 そのためにはまず、あの魔物を振り切らなければならないんだが。 必死に足を動かすが、距離は離れない。 それならばと懐に忍ばせた煙玉を投げつける。 魔物女は右手から伸ばした爪で難なく切り裂くと、中に収めた煙が視界を覆う。 ただの目くらましと判断したのだろう、魔物女はそれを突っ切ろうとするが、すでにそこは罠の内だ。 得意コンボの煙玉からの『蜘蛛の糸』が女の肢体の動きを封じる。 全力で放った糸は、巨大なゴーレムすら束縛するが、相手が相手だ。長くは持つとは思えない。 「いまの内に距離を稼ぐ」 だが、それは実行できなかった。 背後から放たれた光線が、俺の左足を難なく貫く。 貫かれた激痛と、大地を転がる痛みに泣き出したくなるが、そんな場合じゃない。 しかし、竜をも倒す強力な化け物は、身体を発熱させて蜘蛛の糸を焼き切ると動きを封じられた俺へと近づいてくる。 あらためてソイツの姿を見る。 肌の色は大理石のようになめらかで、熱を感じさせない。 身体は成熟した女を形どっていたが、熱の籠もらない瞳は人間のものとはとうてい思えなかった。 それでも座して死ぬことはできない。 「まってくれ、俺に戦う意思はない!」 そう懇願するが、魔物女は耳を貸そうとしない。あるいは言葉が通じていないのかもしれない。 女は圧倒的な俺を組み伏せると、馬乗りになる。体温のない女の身体は、蛇にでもまとわりつかれているようだ。 ちょうどそいつの股間と俺の股間のあたりが接触していた。 こんな状況にも関わらず、俺の身体は熱を放ちだした。あるいは命の危機であるからこそ生存本能が暴走するのか。 俺の反応に気づいた魔物女は口を三日月のように歪める。 そして俺の唇を強引に奪うと、互いの体液を混ぜ合うように、俺を快楽の沼地へと引きずり込んだ。 5 「……生きてる、のか?」 目覚めると森で横たわっていた。 疲労に冒された身体を起こす。 あたりに魔物女の姿はない。 「夢……じゃないよなぁ」 あれは夢だったのだろうかと思ったが、すぐに思い直す。 あたりにはヤツの暴れた傷跡が残っている。 「それにしても、森で意識を失ってよく生きて目覚められたな」 昨晩の記憶は途切れ途切れだ。 めちゃめちゃ濃厚な夜を過ごした記憶は断片的に残っている。 交わっている最中、『岩巨人の皮膚』で傷を再生させたので、歩けなくはない。 だが疲労は大きく、このまま寝直したいくらいだ。 無論、せっかく助かった命を失うマネをする気はないが……。 おそらく、俺が魔物に襲われなかったのは、近くの魔物たちが魔物女にやられたせいだろうか。 そう考え、背筋が寒くなる。 なんで俺とあんなことをしたのかはわからん。 「とにかく街にもどらないとな」 安全なベッドが恋しい。 ひとまず危険が去ったのならばと、捨てた荷物をとりにいく。 あの場で殺されなかった以上、もう一度魔物女と遭遇しても見逃されるのではないかという希望的観測。 そして改めて、魔物の死体が転がる惨状を目にする。 「圧倒的すぎるだろ」 真面目に修行するのが馬鹿らしくなってくる。 「あーあ、アイツの魔法をひとつでも覚えられていたらな」 もちろん、巨大な竜を殺し、森に大穴を開けるような雷を身体に浴びたら生き残れるわけがないんだが……。 「アオーバじゃないか。何故ここに?」 振り返るとレドがいた。 シルシルを含むパーティーの連中も一緒だ。 「レド、助けにきてくれたのか!?」 持つべきものは親友である。 意外な再会に涙しそうだ。 「もちろんだ……と言いたいところだが、そうではない」 「だろうな」 俺が窮地になってから、長く見積もっても半日だ。それだけの時間で、街から森の奥まではやってこられない。 「ギルドからの依頼でこのあたりの調査に来ていたんだ。それで昨日、このあたりで騒ぎが起こっているのを察知してな。見てきたらおまえがいたってわけだ」 「あんたじゃないッスよね。騒ぎの原因?」 犬魔法使いシルシルが、疑わしい視線を向ける。 「残念ながらちがうな」 『そうだ』と言いたい衝動を抑え、まじめに答える。 「すっげー魔物にあったよ。人型だった」 「人型の魔物? それって魔族なんじゃないの」 「かもな」 魔族なんて与太話だと思ったが、人間と似ていながら、人間以上の存在といえば他に思いつく存在はない。 もっとも本物の魔族をみたことがないのだから、断定はできない。 俺は自分で体感した魔物女の情報を譲渡する。 彼らに教えず、俺がギルドに持ち帰ったほうが金にはなる。 だが、数日前までの仲間だった相手にそんなマネはできない。 それに冒険者同士、おなじ街に住む者同士の持ちつ持たれつの精神も忘れちゃいけない。 「身体に紋様が浮かんでたな。青魔法っぽくもみたが、人間の出力じゃねーな」 「マジッスか? 話盛りすぎじゃないッスか?」 生意気な犬魔法使いは疑り深い。 「信じないならいいよ。実際、証明できるようなもんもネーし」 「いや、足跡が残ってるッス。こんなとこに裸足であるくよう人間なんてそうはいないッスよ」 自分で疑って自分で解消すんなよ。 「それでソイツはどこに向かった?」 レドの質問に俺は「わかんね」と返す。 「バカにしてんスか? それともバカなんスか??」 「殺されかけたんだよ。生き残っただけでも褒めて欲しいもんだね」 エッチな展開に流れ込んだことは黙っておく。 「確かにゴキブリ並の生命力はたいしたもんすね」 まともに褒められねーのかよ。 「そうだ、逃げた場所はわからないが、アイツが戦ってたのはあっちのほうだ。そっちにいけば、驚くもんも見られるぞ」 「おまえはこないのか?」 「疲れた。もう休ませてくれ。ギルド依頼の調査はすぐには終わらないんだろ」 「そうだな」 「んじゃ、気をつけてくれ」 そう言って背を向ける俺だが……すぐにレドたちを呼び止める。 結局、自分がどこで荷物を捨てたか分からない。 嫌な顔をされながらも、予備の食料と武器を別けてもらい、俺は今度こそ帰路についた。 6 ◎視点レド 森はひどい有様だった。無数の死体。竜の死骸には度肝を抜かれた。 「こんな状況を一匹の魔物が作り上げたというのは信じがたいな」 「嘘だったんじゃないッスか?」 「調子のいいことは言うが、こういうところで嘘をつくヤツじゃない」 「そッスね」 なんだかんだでシルシルもアオーバのことを認めている。 「でも、アイツが見たのが一匹だけで、戦い事態は複数でやっていた可能性は?」 「あいつが見逃すような魔物が徒党を組んでるほうが俺は嫌だな。強い魔物一匹のほうが、まだ対処がしやすい」 あたりを手分けして調査する。 無数の死体から、これを創り出した魔物がとても強いという馬鹿らしいことしかわからなかった。 「目的も、どこへ行ったかも判断できないな」 「最後の痕跡はアイツがいたところッス」 鼻の良い犬魔法使いは、四つん這いになり地面に残された臭いをさぐっている。 「まったく、こんな状況でも生き残るんだから、悪運は強いな。もっともアイツはソロのほうが生き生きとしてるから、俺たちと一緒だったら全滅してたかもしれないけどな」 あいつの強みはソロでこそ生きる。 「それはどーッスかね?」 「ん?」 シルシルは怪訝な表情を浮かべてる。 「シルシルもアイツが嘘を言ってるとは思わないッス。でも隠してることはあるッス」 「根拠は?」 「あいつの身体に妙な臭いが混ざってたッス」 「戦った影響じゃなくて?」 「たぶん、やったッスね。あるいはやられたのかもしれないッスけど」 「ホントか?」 うなずくシルシルに、アオーバのバイタリティを呆れる。 「臭いひとつでそこまでわかるものかね。……あっ」 「どうしたッスか?」 「アイツの荷物だ」 街に帰ったら届けてやるか。 7 宿屋のベッドで苦しむ。 感染症かもしれない。犬型の魔物に噛まれた時は教会に担ぎ込まれて一命をとりとめた。その際に高額料金を要求された。運良く腕の良い司祭がいて一命を取り留めたが、高額のお布施を請求されたっけ。 覚えた噛みつき技は、魔物を噛むわけにもいかず封印してある。踏んだり蹴ったりだった。 だが、いまは頼るべき相手はいない。 それから三日ほどが経過し、なんとか俺は生き延びることができた。 「ふー、なんとかなったな」 身体を手ぬぐいで拭いたいが、荷物はほとんどのこってない。 そんなとき扉を叩く音が聞こえた。 扉から現れたのはレドだった。 「調子はどうだ」 「最悪だ。なんか帰ってから死にかけた」 やばい病気でも移されたんじゃないか。 恥ずかしいからレドには言わない。 「調査はどうだった?」 「おまえの言った通りだったよ」 竜の死骸にレドも驚いたらしい。 「今日はひとりか?」 「こいつを届けに来ただけだからな」 それは逃げる時に捨てた俺の荷物。 「ありがてぇ!」 やっぱり持つべき者は親友である。 レドはぼうっと俺をみつめていた。 「どうした?」 「なんだか痩せたか?」 「まぁ寝込んでたからな」 少しくらい細くもなるだろう。 「おまえはほうこそ、なんかかわったか?」 「いや、森に籠もってたから、風呂に入ってなかった……」 そこでレドの言葉が途切れる。 なぜなら俺のヤツの唇が奪ったからだ。 一度は魔物女に奪われた唇が、今度はレドによって奪われた。 俺の唇、大バーゲンだな。 いや、奪ったのは俺の方か? 勝手に身体が雨後k。 極限の空腹を癒やす食事のような反応。 レドの唇を貪るとと、服を脱ぎ捨て押し倒す。 そして、そこまで動いてようやく思い至る。 その所作は、俺があの晩、魔物女にやられたものと同一のものだった。 そして、あの晩の出来事が再現される。 俺とレドによって……。 8 チュンチュンと鳥の鳴く声。 「どうやら悪夢は覚めないらしい」 目覚めると裸のレドが横たわっていた。 「夢ではない。その……どういうことなんだ? おまえ、どうなったんだ」 「あんなことしてひどいぞ! ウンコ太くなったらどうしてくれる」 「そんなわけないだろ。いや、そういうのは俺に言わないでくれ」 わかってる押し倒したのは俺からだ。 なんでやったのかわからない。 「ひょっとして習得したんじゃないのか?」 「どういう意味だ?」 レドに尋ねる 「あの女とやったのだろう?」 「なぜそれを……あっ、あの犬女か!」 シルシルの鼻の良さなら気づいても不思議ではない。 「おそらくおまえは、すっごい青魔法を習得したんだ。自分の力量以上の魔法を手に入れると、ソレに振り回されることがあると言ってたろ」 「だからって、こんな目にあうとかないだろ。それに魔法の習得はそんなに簡単なものじゃない」 簡単なものもあるが。 「ものにもよるが、相手の一部をくったりしないといけない」 俺はそう説明する。 「魔法をその身で受けた上に、相手の一部まで体内にとりこんだんだろう」 「まさか……!?」 ひょっとして、寝込んでたのは感染症ではなく、強力な魔法を得た副作用なのか!? 「でも、男とエッチする魔法なんかいらねー!」 しかし事態はそれだけで終わらないことにこの時の俺は気づいてなかった。 俺とやっちまったことで、勇者と呼ばれたレドの戦力は著しく低下。 俺が覚えた青魔法には吸血鬼のエナジードレインと同様の効果があるらしい。 つまり、この街の最大戦力が失われたことになる。 やべー。どうしよう? (第一和姦) |
Hiro 2022年05月01日 23時57分16秒 公開 ■この作品の著作権は Hiro さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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