キャッチコピー集です! |
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こんばんは、夏企画主催のミチルです。 たくさんの力作が集まり、運営一同脱帽しております。 お忙しい中、ありがとうございます! いよいよ感想投稿期間となりました。 感想投稿期間は8/9~8/21です! 作品を投稿した方はもちろん、感想のみの参加も歓迎いたします♪ 感想を書けそうな作品があれば、どしどしお書きください☆ どの作品を読むか選ぶ手助けとなるように運営からはキャッチコピー集を提供いたします。 --以下、キャッチコピー集です-- ◇タイトル:ライド オン ライフ! ◆テーマ:【夏】×【風】 ◆キャッチコピー:懸命に生きるってことさ。 ~書き出し~ 1. ドスンという衝撃を腹に受けて、僕は地面に転がった。 「うげぇだって。ヒャハッ、マジでウケんやけど」 そう言って僕を見下ろしてくるのは同級生の平野高志だ。その取り巻き数人がにやにやと笑ってこっちを見ている。 同級生といっても立場は同等なんかじゃない。 あっちが上で、こっちが下。 捕食者と非捕食者。強食と弱肉。 いじめっ子と、いじめられっ子。 校舎裏の逆光で、平野の歯を剥き出しにする笑みがなおさら凶悪に見える。 「へ、へへっ。痛いよ平野くん……」 ◇タイトル:生命の兎は鈍色に眠る ◆テーマ:【夏】×【風】【土】 ◆キャッチコピー:貴方の物語は、私達の物語へと進化する。 ~書き出し~ 枯れ落ちた花弁を拾い上げて、窓の外へ投げた。七月の風は生温く、余り肌触りの良いものとは思えない。けれど私は空気を吸い込んで、その味をぎゅっと噛み締めた。 「おはよう、小夜《さや》」 今は午後三時頃だけれど、たとえ何時であってもそう話しかけると決めている。 彼女は眠っている。あるいは目覚めている。その差異は私の目では判別がつかない。ただ目を閉じていることだけは確かだ。 「あ、美影《みかげ》ちゃん!」 と、心からの笑みで私を迎えてくれることも無い。 散らばった前髪を指先でつまみ、そっと綺麗な形に整える。ぴくりとも動かないものだから、時々生きているかどうか分からなくなる。 ◇タイトル:いかずちと夏の嵐 ◆テーマ:【夏】×【火】【風】【水】【土】 ◆キャッチコピー:青空は広がるか? ~書き出し~ それは突然の事だった。 屋根を激しく叩く水滴の音が非現実を演出する。空が光り、唸る轟音が後に続く。豪雨だ。ちょっとやそっとの事では動じない優斗もこれには肝を冷やす。 安アパートの一室、部屋の隅にあるしわしわのベッドで丸くなる。雷に怯えるのはいつ以来だろう。照明が消える。扇風機の羽が弱弱しく止まった。ブレーカーが落ちたのかもしれない。 「勘弁してくれ」 思わず呟いた声は雨の音に掻き消された。 「で?」 ようやく繋がった携帯で紗羅が口にした言葉に「うっ」と優斗は言葉を詰まらせた。 「怖いから来てくれと? この夜の雨の中? 近いからいいと思った?」 ◇タイトル:#RTした人の小説を読みにいく ◆テーマ:【夏】×【火】【風】【水】【土】 ◆キャッチコピー:そして世界(企画)は火の海へと沈む。 ~書き出し~ 「やれやれ、にぎやかなのはテレビの中だけだな」 ひとつため息をつくと早々に、閑古鳥の居着いた店内を出ることを決めた。 軽くメイクを直し、頭に白のウサ耳を乗せる。それに外出用の白衣をあわせれば準備は万端。あとは運次第だ。 いつもの垢抜けないバーに入ると、そこもまたガラガラ。どこも客足が遠のいているのは変わらないらしい。 ドアベルで私に気づいたバーテンダーは、軽い会釈で受け入れ、野暮なツッコミはしないでくれた。 カウンターで水割りを注文し、グラスに浮かんだ氷をぼんやり眺めていると再びドアベルが鳴る。 ――どうやら、本日もタダ酒にありさけそうだ。 開け放たれた扉の向こうには、ベソをかいたアラフォー男が見苦しい姿をさらしていた。 ◇タイトル:塩味なのに甘いスープ ◆テーマ:【夏】×【水】 ◆キャッチコピー:初デートに海のようなラーメン、いかがですか? ~書き出し~ 高校に進学した途端、付き合う人間の幅が広がった。友人、クラスメイト、先輩、先生。 その中の一人に、俺の人生初の恋人である美奈川真昼という女の子がいる。入学時から学業優秀で美人としても知られていた子だ。 俺たちが付き合いだしたのは高校一年生の九月のことだ。 告白したのは彼女、告白されたのは俺のほうだった。思い出補正かなんなのか、思い出す時いつも神々しいとも呼べるキラキラした情景を思い起こす。 それは高校のビッグイベントたる文化祭が終わり、代休を挟んで翌日。 俺は朝一番、他に誰もいない、文化祭の出し物であったアイス屋の飾り付けがされたままの教室で美奈川と二人きりだった。 ◇タイトル:駄弁論部 ◆テーマ:【夏】×【火】【風】【水】【土】 ◆キャッチコピー:ここは未記入でした。 ~書き出し~ ○ 1 ○ この物語は、ごく普通の女子高生である私の、平凡な日常を紡ぐものである。 ……と、いう冒頭の書き出しを見たあなたは、この作品が本当に面白いのかどうか、疑問を感じたことだろう。 まず、創作初心者がやりがちだし。 別に、玄人が『平凡な日常』を題材にしないとは言わない。 でもじゃあ玄人が今やったような書き出しを積極的に採用するかというと……それは多くの場合、否である。 まずこんな書き出し誰でも思い付く。誰にでも思い付くというだけならまだしも、作品を読み始めてもらう為の動機付けとして、こんな書き出しは決して効果的でも魅力的でもありはしない。 ◇タイトル:日本昔話 クリオネ女房 ◆テーマ:【夏】×【水】 ◆キャッチコピー:この夏、君はクリオネの愛に涙する ~書き出し~ それは、長いながーい夏休みも半ばに差し掛かった、とある日の事でした。 苦学生の田中 次郎は、この日も下宿で質素な昼食を食べていました。 すると。 「こんにちはっ! 先日助けて頂いたクリオネです!」 突然スパーン! と窓が開け放たれ、ひとりの少女が現れたではありませんか。 「……………………えーと。あんた誰?」 次郎は至ってクールに聞き返しました。 あまりにも予想外な事が起きると、人は一周回って冷静になるものです。 なので、ここが古い下宿の二階でベランダなんてものは無いという事も、彼女の浮世離れした容姿にも、クリオネなどと名乗っている事にも臆する事無く、彼はそう尋ねる事ができました。 ◇タイトル:白の耳飾り ◆テーマ:【夏】×【火】【風】【水】【土】水と土はそれぞれ川と山、ということで… ◆キャッチコピー:後世に虐殺卿と伝えられる、一人のエルフの物語。 ~書き出し~ それは、あまりにも脆かったのだ。危うかったのだ。 そして、それは。 私は、役割に徹することが出来なかった。 私に残された、未熟さがそれを邪魔したのだろうか。 あるいはそれは、私の人としての部分だったのだろうか。 ……今となっては、理由は分からない。 ただ確かなことは、私が非情になりきることが出来なかった、そのことだけ。 ◇タイトル:繋ぐ為に ◆テーマ: ◆キャッチコピー: ~書き出し~ ユンボと呼ばれる大型重機のショベルカーが地面を抉り、木々を薙ぎ倒して行く様を僕は図面を片手に眺めている。 うだる様な夏の暑さのなか、幼い頃の思い出を破壊する指示を僕は出す。 義兄と妻に出会った場所が僕によりあっけ無く破壊されて行くが悔は無い。 邪魔な木々を撤去し、広がる空の蒼さは僕にあの夏の日を思い出させる。 ◇タイトル:地獄の釜の蓋が開くまで ◆テーマ:【夏】×【風】 ◆キャッチコピー:夏は怪談、盆の頃はさらなり。異国もなほ。 ~書き出し~ 赤黒くよどんだ空の下、生ぬるい風が吹きすさびペンペン草も生えぬ荒地に多数の男女が集っていた。 若きもおり、老いたるもおり、衣装も様々。 共通点を強いて探せば、誰もが夏の装いであることと、いくばくかの荷物を持っていること、そしてどこかしら浮かれた様子があることぐらいか。 アロハシャツにスーツケースとこれからハワイに行くのだと言わんばかりのスタイルをした若者が、誰にともなく問いかける。 「今年は何日でしたっけ?」 「いつも通り4日間ですよ。16日にはちゃんと戻ってこないと、ペナルティですからね」 四角四面な返事を返したのは、スーツの男だった。彼だけは荷物を持っておらず、代わりにクリップボードの書類にせわしなくチェックをつけている。 ◇タイトル:氷の魔女 ◆テーマ:夏×(月+火+水+木+金+槌+日) ◆キャッチコピー:もしも愛した相手がビッチな魔女だったら? ~書き出し~ ※本作品はフィクションです。 十二世紀中盤のヨーロッパを舞台としてはおりますが、作品の都合上、改変している場所が多々ございます。ご了承ください。 * * * * * 0◆プロローグ 周囲を高い石壁で囲まれた中にはでは黒髪の少年とまだら髪の老人が戦っていた。 一方はまだ幼さを残した十五歳の少年。手にした長剣を真剣に握ってはいるが、その面持ちはどこか遊びを楽しんでいるかのようにみえる。 身体にまとう筋肉が薄く、鉄で作られた鎧がいかにも不釣り合いだ。 頼りなさを残しているが、彼こそがこの城の主であり、このあたり一帯を領土とする領主でもある。 もう一方は顔に深い皺を刻んだ老騎士だ。 少年領主とは真逆に、いかつい身体に見合った強固な鎧を着込んでいる。その視線に弱さはなく、一分の隙も見いだせない。 ◇タイトル:夏にあらわる少女 ◆テーマ:【夏】×【火】【風】【水】【土】 ◆キャッチコピー:五人の歌声が重なる時、夏の奇跡があらわれる ~書き出し~ 第一話 夏にあらわる少女 私の名前は大津菜摘(おおつ なつみ)。 向葉高校という県立女子高に通う二年生。 兄弟は一人、大学一年生の兄貴がいる。 アコースティックギターをじゃんじゃか鳴らしてオリジナル曲を歌うのが趣味で、高校生の頃はそんな姿を動画にしてネットにアップしてたり。 そんな兄貴もこの春に大学生になり、親に買ってもらったパソコンにすっかり夢中になってギターを弾かなくなってしまった。今までうるさいほど兄貴の部屋から歌が聞こえてきてたというのに。 と思ったら、なんだか変な歌声が壁越しに聞こえてくる。 『夏になれば、君がひょっこり顔を出す〜』 ◇タイトル:天狗の殺人 ◆テーマ:【夏】×【風】 ◆キャッチコピー:民俗学者、怪なる事件と相対す ~書き出し~ 犬が飛び出してきたため、思わずブレーキを踏み込む。 幅の狭い峠道ということで速度は出していなかったが、それでも急な減速に体はつんのめる。野犬だろうか。流石は山奥だな――などと妙な感心をしていると、後部座席から恨みがましい声が聞こえてきた。 「……急に何だね。車は苦手なのだからと、静かな運転をお願いしたはずだが」 「すまんすまん。いきなり犬が出てきてな」 「山道だ、それくらい出てくるだろう。現職の警官なのだから、そのあたりも含めての安全運転じゃないのか」 「いや、実は俺もあまりこういうところを走った経験はないんだ」 苦笑しながらそう返すと、ふん、と鼻を鳴らされる。 運転させておいてその態度はどうかと思わないでもないが、こちらから随伴を依頼した手前、滅多なことは口にできない。何せ、研究で多忙なところを付き合ってもらっているのだ。それを思えばこの反応も正常の範囲内だろう。 ◇タイトル:マイマヰカブリ ◆テーマ:【夏】×【火】【風】【水】【土】 ◆キャッチコピー:忘レ5れフよヰ特別7ツ休みガ、今女台まる……。 ~書き出し~ ※ この作品には凄惨な演出があります。 [マイマイカブリ] 鞘翅目オサムシ科オサムシ亜科 主としてカタツムリを捕食する肉食の昆虫である 和名の由来は、マイマイ(カタツムリ)を捕食する姿がその殻を被っているように見えたため 『――プロローグ ある夏の始まり ――』 ――落ちてくる、何かが。 それが何かはわからない。 ただ星空の片隅から、夜がこぼれ落ちたかのように真っ黒い何かが飛来してくるのを、倉内麻衣香は確かに見ていた。 ◇タイトル:始まりの町ベルルにて ◆テーマ:【夏】×【火】【風】 ◆キャッチコピー: ひとりぼっちの女の子とひとりぼっちの男の物語 ~書き出し~ 夏の日差しが、古びて所々欠けている石で出来た街道をチリチリと焦がし、陽炎がゆらゆらと空気を震わせる。べルルと呼ばれる町に続く一本道に、一人の少女がフラフラと歩いていた。暑さに悪態をつくかの如くうめき声を上げながら、一人黙々と歩き続けている。 少女は小柄な体格に比べて大きめの、ベージュ色をしたフードを目深に被り、その隙間からは赤い髪の毛と白い肌が見え隠れしていた。頬を伝って汗が一粒、また一粒地面に落ちていく。汗が地面に触れる度に熱された石がジュッという音を立てて、すぐ様乾いていった。 背中には小柄な少女が背負うには少々大きめな茶色のリュックを背負い、左手には魔法使いが持っているような立派な木製の杖を持ちながら支えにして、赤いロングスカートを引きずるように様に歩いていた。 ◇タイトル:豪雨の中、運転を強行してみました ◆テーマ:【夏】×【水】 ◆キャッチコピー:豪雨は激しくフロントガラスに叩きつけてくる、その先には煌々と輝く満月がくっきりと見えていた。 ~書き出し~ 俺は激怒していた。 コロナ禍の影響で、俺が勤務する銀行支店の経営状況の深刻さは、最近では下っ端の俺でも肌に感じられるほどひどかった。 だから、すこしでも経費を削減するために、「定期預金が満期になった」と顧客の皆様にお知らせするサービスを中止するのじゃなかったのか。 これからは、要望するお客様にだけ預金が満期になったとお知らせをする。 そのために、先週も今週も、俺たちは、定期満期のお知らせを要望するお客様に対して、必要な書類を郵送するために、忙殺されていた。 残業に次ぐ残業が続いていた。 「それなのに、なんでいきなり支店が閉鎖になるのだ!」 ◇タイトル:花火と通帳 ◆テーマ:【夏】【火】【風】【水】【土】 ◆キャッチコピー:六〇年の時を超え ~書き出し~ 「ごめんくださーい! 特上うな重二人前、お持ちしましたぁ!」 家政婦の御厨ちゃんがワゴンを押して私の部屋に入ってくる。 この家政婦サービス付き高齢者向けマンションに入ってもう5年になる。結婚することもなく小金をためて、最後にこういった贅沢をしながら死を迎えるというのは悪くないと思っている。 「御厨ちゃん、悪かったわね」 「そりゃ、このお盆にうな重上をゴチになるんですから文句ありませんよぉ!」 まだ二十代の御厨ちゃんは、うな重の前にテンションが高い。 このマンションは高層ビルのワンフロアにあって、下の階にはマンション専用厨房があってメニューから好きなものを作って、こうやって家政婦さんに持ってきてもらうことができる。普段は下の階にある食堂で同居の人たちとおしゃべりしながら食べるのだけど、毎年夏の今日この日は特別だった。 ◇タイトル:誰が何と言おうとドラゴン ◆テーマ: 【夏】→夏の物語 【火】【風】【水】【土】→ドラゴンの属性として使用 ◆キャッチコピー:この夏、大切なことはドラゴンから教わった。 ~書き出し~ それはとても暑い七月中旬の昼下がり。両親が休日出勤なのをいいことに、クーラーの効いたリビングでガッツリ昼寝を決め込んでたら、枕元に誰かが舞い降りた。 ――起きてください、今市仲男(いまいちなかお)さん。あなたに重要なお知らせがあります―― 何だそれ。セールスならお断りだぜーとか思いながら、俺はうっすらと目を開ける。 誰かが顔を覗き込んでいた。髪をショートに切り揃えた、とびきりの美人だ。眼鏡の向こうにある澄んだ蒼い瞳が、不安げな光を宿していた。 まさか俺の人生の中で、こんな美人から声をかけられることがあるなんて。しかも向こうは何故か俺の名前を知り、自宅に押しかけてきている。 ああそうか。きっとこれは夢なんだ。だったらこの人と、楽しく話をしたってバチは当たらない。 「ふぁい……」 ◇タイトル:ただのしかばね ◆テーマ:【夏】×【火葬】【風葬】【水葬】【土葬】 ◆キャッチコピー:へんじがない。ただのしかばねのようだ。 ~書き出し~ ドアを開いて剣道部室の中に入ると、床に女子生徒が転がっていた。 半袖のセーラー服に身を包んだその女子は、両手両足を投げ出してコンクリート床に横たわり、死体のように微動だにしない。目はカッと見開かれ、口は半開きになっていた。 本当に死んでいるのかと思ったが、胸が規則的に上下しているので呼吸はしているようだ。 杉井明(すぎい あきら)は後ろ手でドアを閉め、身じろぎもしない女子生徒に話しかけてみた。 「なにやってんだ?」 数瞬の間のあと、女子はゆっくり口を動かした。 「返事はありません。私はただのしかばねですから」 「確かにお前は鹿羽根だが、返事はあったじゃねえか」 鹿羽根陽光(しかばね ようこ)というのが、彼女の名前だった。杉井よりも一学年下の高校二年生で、男子剣道部のマネージャーを務めている。献身的でそつのない仕事ぶりには、先日まで主将として部を牽引していた杉井も、ずいぶん助けられたものだ。 ◇タイトル:音速で飛ぶゲイビデオ ◆テーマ:【夏】×【土】 ◆キャッチコピー:彼のゲイビデオは音速で飛ぶ。 ~書き出し~ 最速の焼き芋はあたかもラグビーボールのパスのように、横回転しながら飛行した。 ○ 「ケーッ! このゲイビデオもハズレだ!」 田舎町にある八百屋の店主、佐藤めち男は怒りを堪えきれず、ビデオのリモコンを布団に叩きつけた。 めち男は五十四歳だが、すごく健康な男だ。病気だとか、腰や肩を悪くするという感覚自体を知らない。 そんな彼の趣味は、二十歳の時から続けているゲイビデオ収集だ。自室の一辺には、ニトリで本棚として売られていた家具があり、それにはこれまで買い集めたゲイビデオがパンパンに詰まっている。この趣味や棚の存在は、八百屋の三十年来のお得意様である奥さんも知らない。 「どんなに出来の悪いゲイビデオでも、一度見ればそれは唯一無二の思い出になる。捨てることはできっこない。しかし……」 ◇タイトル:盛夏の王 ◆テーマ:夏×火、風、水、土、木、金、氷、雷、光、闇 ◆キャッチコピー:いまだ王は敗北を知らない。 ~書き出し~ ※本作品はフィクションです。 土台となる物語や歴史背景はございますが、それらを変更・脚色して掲載しております。ご不快な点もございますかもしれませんが、どうぞご了承ください。 * * * * * ◆プロローグ その塔には美しい少女が囚われていた。 月の光を宿したような肌をもつ汚れを知らぬ少女。 だが、彼女を少女というにはいささか語弊がある。 何故なら『氷の魔女』と呼ばれる彼女は御年六十一になる老婆なのだから。 魔女はすでに十年もの間、塔に幽閉されている。 不自由の多い生活を強いられてはいるが、犯した罪に罰は必要だと受け入れている。 冬の寒空を一羽の白鳩が飛んでくる。 白鳩は窓にはめられた格子の隙間を抜けるとテーブルに着地し、そして一通の手紙へと姿を変えた。 |
夏企画運営 3021年08月09日 00時15分05秒 公開 ■この作品の著作権は 夏企画運営 さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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