面接 |
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星の子(ノーム)としてリヴァアースに転生してから一ヶ月が過ぎた頃、俺は父ターカーからパーティーを組むように言われた(星の子(ノーム)というのは、俗にいう転生者の事)。 転生してから一週間後に冒険者登録を済ませ、道場でみっちり戦士としてのノウハウを叩き込まれた翌日の事である。 とりあえず他の冒険者に手伝って冒険の空気に慣れようかと軽く考えていた俺は面食らった。 生前グレていたニール・アーカム・タッドマンは、タッドマン家の面汚しだったらしい。 彼の死後、入れ替わるように転生した俺は必要以上の期待をかけられている。 父は貴族の娘サラと結婚して貴族の一員となったが、サラの死後は貴族ではなくなった。 サラの血を継ぐ、貴族になる資格があるのは、兄アトフと次男ニール、俺だ。 父自身の実力はタッドマン家でも認知されていたので、領地内にあったダンジョンを管理するという名目でギルドマスターに抜擢される。 領地内に限り貴族相応の身分が保障された事で一応の面目が保たれているものの、再び貴族に返り咲きたいという野心がある父は、どうしても俺達を有名にしたいらしい。 兄の方は、才能に恵まれて順調に下級騎士見習いとして活躍しているが、その兄と事あるごとに比べられたニールは、プレッシャーに負けてグレた挙げ句、ヤンチャな事をして大ケガ。 諦めていた所、俺がニールになった事でワンチャンあるかも?と張り切っているようだ。 親子というより、社長と新入社員の関係に近いと俺は思っている。 最初は、冒険者達をパーティーのメンバーに誘っていたが、ニールがグレてから死ぬまでの五年間に行った武勇伝は町中に響いていたので成果は鳴かず飛ばずだった。 これでは無理と判断した俺は、つい最近冒険者登録をした人なら俺の事を知らないからワンチャンあるかも知れないと父を説得し、会場を借りて面接する事になった。 当日。 会場の一室を借りた俺達は、会場を空にして椅子を並べた。 一人では不安なので、弟のカッツェと奴隷のワーラット達にも同行して貰う。 打ち合わせをしていると、ギルドの案内係から「予定の時間になり冒険者達が集まった」との知らせがあったので彼等を会場に案内して貰った。 しばらくして、少し騒がしくなった。 部屋の扉を開け、困ったような顔でワーラットが入って来る。 そんな彼を追いかけるように部屋へ乱入する女子。 咳払いをするカッツェ。 そこで面接官の俺に気付いたのか、ワーラットに抱きついた格好で固まる女子。 「に、にゃんこ!」 これには温和なワーキャットのカッツェもムッとしたのか、思わず立ち上がる。 俺は、とりあえず彼の肩に手を置き、落ち着かせる。 「これって『ねずみ男Xねこ娘』? 違うわ、ねこ息子? ……は、反則よそれはあぁぁぁ!!」 ここで完成させる訳にはいかない。 もう一人の俺が、そう警告する。 「一旦落ち着こうか?」 俺の声で我に帰った女子が顔を赤らめつつ着席する。 ノックをして「失礼します」という声がした。 「はい、どうぞ」 俺の声に従い気の強そうな女性が入ってきた。 二人の女性も後に続く。 香ばしいコスプレ集団は、間違いない、星の子(ノーム)だ。 よし、全員採用。 俺が全員を採用すると告げると、三人は抱き合って喜んだ。 どうやらその三人は冒険者登録の同期らしい。 ただ一人、納得がいかないという顔で睨む人がいた。 「ええと、君はエトルリア人のエルさんだったね? なんか納得が行かないって雰囲気だけど、どうしたのかな?」 現代では幻の人種とされる、エトルリア人。 この異世界は古代ローマと中世ヨーロッパと近未来のごった煮状態のなんでもアリ世界だけど、まさかエトルリア人がエルフだったとはね。 正直、それだけでテンション上がりっぱなしだけど、当のエルさんは、なぜかご機嫌ななめ。 「ハーレムが出来たと喜んでいる所を悪いけど、実力が伴わない奴をリーダーにしたパーティーの末路は悲惨よ?」 値踏みするような目で俺を見やるエル。 「ふーん、それで? 君は何が出来るのかなぁ?」 挑発的な俺の言葉に、一瞬眉を動かすエル。 ゆっくりと椅子から立ち上がり、詠唱を口にする。 不意に現れた炎が詠唱に合わせてふくれあがり、やがてそれは大男に変貌した。 身長二メートルの、炎に包まれたリザードマン、『サラマンダー』 『サラマンダー』が顕現したという事は、術者の手のひらに『サラマンダー』の力を借りる『代償魔法』とは違い、対等な関係だという事だ。 「エルさん、すごいな君は」 戯れ言は終わりとばかりに外へ出ようとするエル。 「所でエルさん、君は何がしたいのかな?」 俺の声に反応したように動きを止めるエル。 「それ程の実力があれば、ギルドマスターになるのも夢じゃない筈だ。 それなのに、君から見ればママゴト同然の面接会場に来る理由が分からない。 新天地でパーティーを組んで何がしたいのかなぁ?」 カマをかけたつもりだったが、いきなりの殺気に俺は焦った。 「一旦落ち着けえぇぇぇ! 俺の父はギルドマスターのターカー・アーカム・タッドマンだ。 俺がお願いすればクエストも自由に作成出来るし、箝口令だって出来る。 作りたての新米パーティーを一々警戒する輩がいるとは思えないし、君にとっては願っても無い事なんじゃないか?」 うろんな目を俺に向けるエルだが、殺気は無い。 甘言は成功か。 もう一押し。 「ああ、噂通りだよ。 グレて親のスネをかじってパーティーを作ろうとした挙げ句、このザマだよ」 そう言いながら検索の魔法をエルに見せつける。 「うぁ、レベル5って、中級学校も卒業出来なかったの?」 しまった、まだこいつらがいたんだよな。 傲慢とも言える笑顔で俺と握手を交わし、会場を後にするエル。 これで彼女は晴れてパーティーの一員となった。 一息入れた後、ゆっくりと振り返ると、乾いた笑みを浮かべた女子三人が白い目で出迎えてくれた。 ……長い一日になりそうだ。 |
FROGGER 2020年08月08日 10時58分45秒 公開 ■この作品の著作権は FROGGER さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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Re: | 2020年08月25日 19時33分17秒 | |||
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Re: | 2020年08月25日 19時19分00秒 | |||
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Re: | 2020年08月25日 20時25分53秒 | |||
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Re: | 2020年08月25日 20時21分02秒 | |||
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Re: | 2020年08月25日 20時15分31秒 | |||
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Re: | 2020年08月25日 20時10分40秒 | |||
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Re: | 2020年08月25日 20時04分36秒 | |||
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Re: | 2020年08月25日 19時57分01秒 | |||
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Re: | 2020年08月25日 19時49分16秒 | |||
合計 | 9人 | -70点 |
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