天才博士とメイドロボ ~2号誕生の巻~

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「やったぞ。ついに、ついに」
 胸の奥から湧き上がるワクワク感を抑えきれず、ヒロシはニヤついた。
 広々とした地下室。彼の前には、高さ2メートルほどのカプセルが立っている。
 カプセルの前面についた蓋は透明な素材になっており、中に入っている人型ロボットが見えた。
 10代中盤に見える少女の容姿をしている。
 丸みのある頬。小さな鼻とくちびる。今は閉じられているが、クリッとした瞳。ツインテールの黒髪。
 服装は、黒い服にフリルのついた白エプロンを組み合わせた、王道的なメイド服。
 身長は150センチ弱。あどけない雰囲気の、ロリ系美少女ロボだ。
「メイドロボ2号、完成だーっ!」
 両腕を上げて喜ぶヒロシ、32歳。このロボの作者である。
 天才と称される科学者であるヒロシは、自らの世話をしてくれるメイドロボを作ることにしたのだ。自宅の地下にあるこの研究室で、日夜制作に明け暮れ、先ほど2体目のメイドロボが完成した。
 カプセルの上部についてるボタンを押せば、蓋が開いてメイドロボが動き出すのだ。
 徹夜つづきだったが、興奮のためか疲れは感じなかった。
 と、ヒロシの前に細長い缶が差し出された。表面には『デビルエナジー』の文字。
 ヒロシが愛飲しているエナジードリンクだ。
「どうぞ」
 それを差し出すのは、20代前半くらいに見える女性だった。
 彼女はプリメーラ。
 ヒロシが昨年完成させた、メイドロボの第1号である。
「無理はなさらないでください。徹夜は身体に毒ですよ」
 ヒロシの身体を気遣って用意してくれたらしい。ヒロシはデビルエナジーを受け取って、一気に飲み干した。
「ありがとう。でも大丈夫さ! 全然疲れてないから!」
「それは錯覚だと思いますよ。一度休まれてはいかがですか」
「いや、今は早く2号を起動させたいんだ! 一度眠ったら、しばらく起きられないだろうからね」
「なるほど。そのまま永眠してくださっても結構ですよ」
「おいっ!」
 ヒロシはずっこけそうになった。
「ずいぶんな言い草だな! 主人に向かって!」
「冗談ですよ。ヒロシが死んだら、私の存在意義がなくなってしまいますからね」
「そうだよ、もう。僕の世話が、きみの役目でしょ?」
「はい。だから私は、永久にヒロシの世話をつづけます。たとえヒロシが死んで、白骨になったとしても」
「軽くホラーだな! そこまでしなくてもいいよ!」
「白骨になったヒロシは、今よりもずっと魅力的でしょうね」
「どういうことだよ! 僕は肉体よりも骨のほうに魅力があるのかっ?」
「冗談ですよ」
 大きなため息をつくヒロシ。
「あのさプリメーラ、お願いだからもうちょっと従順にしてくれないかな?」
「私はいつも従順ですが、なにか問題でも?」
「口の悪さだよ! まず、呼び捨てにしないでよ! 僕は『ご主人さま』って呼んでほしいんだ」
「わかりました、ご囚人さま」
「捕まってねーよ! しゅうじんじゃなくて、しゅ・じ・ん!」
「失礼。ご臭人さまでしたね」
「もっとひどくなったよ! 僕が悪臭をまき散らしてる不潔野郎みたいじゃないか!」
「そのとおりじゃないですか」
「僕はちゃんと、毎日お風呂に入ってるよ! 清潔だよ!」
「いくら身体を洗っても落ちないほど、ヒロシの生まれ持った悪臭は強烈ですから」
「うそだよね? うそだと言ってよ!」
「安心してください。私、ヒロシのくささは結構好きですから」
「喜んでいいのかどうか迷う発言だな!」
 ヒロシはプリメーラをにらみつける。
 170センチ近い長身、大きなバストに締まった腰、形のいいヒップに長い脚という、モデル体型。頭部は長い金髪を一本の三つ編みにしている。目つきは美しくも鋭く、筋の通った鼻梁と相まって、聡明さを感じさせる美人だ。
 服装はやはり、黒に白いエプロンを組み合わせたメイド服で、下半身はロングスカート。
 プリメーラの出来栄えには満足していたが、ひとつ問題があった。
 性格をツンデレに設定したつもりが、どこをどうミスったのか、ツンだらけの超絶毒舌女になってしまったのだ。
 掃除や炊事といった家事は完璧にこなすプリメーラだが、この暴言攻めにはまいってしまう。
「ところでヒロシ、本当にメイドロボ2号を起動させるのですか?」
「起動させるに決まってるでしょ」
「しかし、メイドロボはすでに私がいます。私がメイドの役目をまっとうしているのに、なぜ2体目を?」
 たしかに、口の悪さはともかくとして、プリメーラのメイドのしての能力は一級品だ。料理もおいしいし、掃除もぬかりない。先ほどのエナジードリンクのように、気が利くのも助かる。
「2号にはメイド役じゃなく、別の部分に期待してるのさ」
 ヒロシは、これから動き出すメイドロボ2号の姿に想いをはせながら言った。
「癒しだよ。2号はあまえんぼうの妹で、僕をお兄ちゃんと呼んで慕う設定なんだ。見た目もそれに合わせて、ロリ系にしてね。まさに理想の妹キャラというわけさ」
「きもっ。ちょっと吐いてもいいですか?」
「なにを? きみ、なにも食べないだろ!」
 プリメーラは電動式である。4時間の充電で20時間稼働する。
「ヒロシのあまりの気持ち悪さに、お腹のあたりがムカムカしてきたんです。ヒロシに会ったときに、思わず嘔吐してしまう人たちの気持ちがよくわかりました」
「会った人に吐かれたことなんてねえよ!」
「冗談ですよ。それにしても、ロリな妹がヒロシの理想なんですか。私は理想とは違うんですね」
「いやいや、プリメーラも僕の理想なんだよ? セクシーなお姉さんも、ロリ妹も、どっちも好きなんだ」
「うわっ、女ならなんでもいいってことですか。最低ですね。即刻死んでくださいます?」
「ただしその毒舌以外だけどね! まったくもう」
 ヒロシはカプセルのほうに目を向けた。
 透明な蓋から覗く美少女ロボを見て、身震いする。武者震いというやつだろうか。
「さあ、いよいよ起動させるぞ」
「ヒロシ、本当にいいんですか? そのロボを起動させたら、あなたの人生は終わりますよ?」
「なんでだよ!」
「少女を監禁してると知られれば、逮捕されるに決まってるでしょう」
「監禁じゃねえし! 僕が作ったロボだし!」
「ですが、30過ぎの男が少女をメイドにするなんて、マスコミの餌食になりますよ」
「心配しすぎだよ。マスコミが僕の私生活を見張ってるわけじゃあるまいし」
「大丈夫です。私がマスコミに報せしますから」
「なにが大丈夫なんだよ! お願いだからやめてよね!」
「冗談ですよ」
「そう言えば許されると思ってない?」
「思ってます」
「せめて否定してよ! 言ってるだけ感ありありじゃん!」
「とにかく、2号を起動させるのはやめたほうがいいと思います」
 プリメーラは真剣な表情だ。
「なんでそんなに反対するのさ?」
 そのとき、ヒロシの頭の中で電球が光った。思わず頬がゆるみ、ニヤついてしまう。
「ははーん、そういうことかぁ」
「なんですか、その気持ち悪さを極めた顔と声は。もう気持ち悪いを通り越して、逆に気持ち悪いですよ」
「逆になってないじゃん! いやね、なんだかんだ言ってプリメーラは、僕のプログラムどおりの性格なんだなと思ってね」
「どういうことです?」
「プリメーラは、2号に僕を取られちゃうと思って、あせってるんでしょ? なんだよプリメーラ、ちゃんとツンデレじゃん!」
 はっはっは、と高笑いするヒロシ。
「いやー、ツンが多いぶん、ちょっとのデレがものすごく魅力的に感じるよね! ツンとデレの対比が1000対1くらいだけど、これはこれで悪くないかも」
「ええ、そうでしょう」
 プリメーラは満更でもなさそうだ。
「では今度、ヒロシをコンクリートで固めて海の底に1時間沈めたあとで、頭をなでなでしてあげます」
「そのツンは1000どころじゃないな! デレが来る前に死んじゃうよ!」
「冗談ですよ。でもヒロシ、私はいつもデレているんですよ?」
「この暴言の嵐がデレなのかっ? 僕は責められて喜ぶドMじゃないぞ!」
「ええ。MじゃなくてHですよね」
「イニシャルのことだよね?」
「はい。ヒロシはHです。間違いなくHです」
「そういう言い方やめて!」
 まったく、どこがデレなんだよ、とヒロシはため息をつく。
「デレですよ。私の発言は、言わばアドバイスなんです。ヒロシは頭はいいんですから、磨けばもっと魅力的になると思うんですよ」
「え? そ、そうかな」
 意外な言葉に照れ、頬を掻くヒロシ。
「はい。気持ち悪い性格、ブサイクな顔、平凡な名前などの欠点がなくなれば」
「顔と名前はどうしようもないだろ! それに僕の性格ってそんなに気持ち悪い?」
「自分でメイドロボを作って身の回りの世話をさせる男が、気持ち悪くないとでも?」
「そう言われると反論できないけどさ! とにかく僕は、2号を起動させるからな!」
「そこまで言うならもう止めませんが、どうなっても知りませんよ」
 ヒロシはカプセル上部のボタンに指を伸ばしたが、押す前に動きを止めた。
「待てよ、まだ2号の名前を決めてなかったな」
 腕を組み、頭をひねるヒロシ。
「うーん、かわいい名前にしたいけど、思いつかないな。あ、そうだ!」
 プリメーラを指差した。
「プリメーラが名前を決めてくれない? 女の子らしいセンスでさ」
「いいですよ」
「よし、かわいい名前を頼むよ!」
「権三郎佐衛門というのはどうでしょう?」
「似合わないにもほどがあるな! かわいい要素がどこにあるんだよ!」
「ヒロシ、突っ込みどころはそこじゃなくて、『2号なのに三郎かよ!』ですよ」
「どうでもいいわ! きみに決めてもらおうとしたのが間違いだったよ!」
「はい。ヒロシが作ったロボなんだから、ヒロシが名前を決めたほうがいいと思いますよ。私も自分の名前、気に入っていますし」
「え? 本当?」
「冗談ですよ」
「ここでそのセリフは使ってほしくなかったな!」
「うそです。本当に気に入ってますよ。プリメーラって、かわいいじゃないですか。それに、スペイン語で『最初の』という意味ですよね。ヒロシの初代メイドロボである私にピッタリの名前です」
「ははは。そう言われると照れるね」
 頭を掻くヒロシ。
「なんで脈絡もなくスペイン語にしたのかは疑問ですけどね。中二病としか思えないんですが」
「別にいいじゃん! 何語でも!」
「ねえ、教えてくださいよ。なんでスペイン語にしたんです?」
「しつこいな! だったら今度は日本語で名づけるよ!」
「いえ、スペイン語で名づけるべきでしょう」
「ん?」
「たとえ中二病でも、それがヒロシらしいところです。それにスペイン語にしたほうが、私との統一感も出ますし」
「そうか。よしじゃあ妹キャラだから、スペイン語で姉妹を表す言葉はエルマーナだったかな、それにしようか」
「ええ、いいんじゃないでしょうか」
「よし、決まった。メイドロボ2号の名前はエルマーナだ!」
 ヒロシはカプセルの横で屈み、床に置かれているノートパソコンを操作した。このパソコンはカプセルと接続されており、メイドロボ2号のパーソナルデータを設定することができるのだ。
 モニターには、さまざまなデータが表示されている。名前の欄に『エルマーナ』と入力し、リターンキーを押した。
「よし!」
 ヒロシは立ち上がり、ついにカプセル上部についているボタンを押す。
 プシューッという音と共に、カプセルの蓋が開いた。
 息をのんで、メイドロボ2号・エルマーナの様子を見守るヒロシ。
 数秒後、閉じられていたエルマーナのまぶたが、ぱっちりと開かれた。
「おお!」
 そのかわいさは絶品だった。小顔の中で輝く、黒目がちな両目。鼻、口とのバランスもよく、美少女としか言いようがない顔立ちだ。ツインテールもよく似合っている。
 まさにヒロシが求めていたロリな妹の姿だった。
 エルマーナは、ゆっくり身体を動かしてカプセルから出る。
 すぐ前にいたヒロシと視線を合わせると、ぱっと表情を明るくした。
「あ、お兄ちゃんだ!」
 ヒロシに抱きつくエルマーナ。
「えへへ、お兄ちゃん、大好き!」
 文句なしだった。性格もあまえんぼうだし、声も設定どおりの、かわいらしいハイトーンボイス。
「うおおおおおおおおおおっ!」
 エルマーナの理想的な妹っぷりに、思わず叫ぶヒロシ。
「どうしたの、お兄ちゃん?」
 不思議そうに小首をかしげるエルマーナ。実にかわいい。
「いや、エルマーナがあまりにもかわいいから、驚いちゃったんだよ」
「もー、お兄ちゃんったらぁ」
 満面の笑みを浮かべるエルマーナ。
 ヒロシの顔面は緩みっぱなしだった。この顔をプリメーラに見られたら、また「気持ち悪い」と罵倒されるだろうが、そんなことはどうでもよかった。
「ねえ、ところでお兄ちゃん」
「なんだい? エルマーナ」
「うしろにいる女は誰?」
 その声は、さっきまでとは打って変わった、冷たくて鋭いものだった。
「え? ど、どうしたの?」
「ねえ、答えてよ。うしろの女は誰?」
 エルマーナにもう笑顔はない。無表情のまま、ただならぬ殺気を漂わせている。
「え、えっと、あの人は、僕の付き人というか」
「付き人? つまりカノジョ? わたしというものがありながら、あんな女と」
 エルマーナは、両手をヒロシの首元に添えた。
「お兄ちゃん、すぐ別れてよ、あの女と」
 じわじわと、ヒロシの首に圧がかかる。
「ちょ、ちょっと、どうしたのさエルマーナ!」
「バグです」
 そう言ったのは背後のプリメーラだ。ヒロシは首をひねり、彼女を見た。
「バグ?」
「はい。ヒロシのプログラミングにはわずかな綻びがあり、そのせいでエルマーナの性格がヤンデレになってしまったのです」
 2号を起動させないほうがいい言っていたのは、これが理由だったのか。
「でもちょっと待って! なんでプリメーラがそれを知ってるの?」
「私はずっと見ていましたから。ヒロシがエルマーナを作る様子を」
 ヒロシの首を絞める力は徐々に強まっていく。エルマーナの両腕をつかんで外そうとしたが、その力は強く、非力なヒロシには無理そうだ。
「プ、プリメーラ! バグがわかってたなら、なんで教えてくれなかったのさ!」
「メイドロボ2号の制作において、私は一切の手出し口出しをしないようにと、ヒロシがおっしゃったので」
 たしかにヒロシは、そう言ったのだった。プリメーラはそれを律義に守ったのか。
「あいつと別れてくれないなら、お兄ちゃんを殺してわたしも死ぬううううっ」
 首がどんどん絞まっていく。息が苦しくなってきた。ヒロシは声をしぼり出す。
「プ、プリ、メェラ、た、たすけ、てぇ」
「それはご命令ですか?」
 冷静なプリメーラの声。
「そ、そう」
「では、『2号に手出しをしない』という命令は解除ということですか?」
「う、うん」
「ヒロシを助けるには、エルマーナを破壊しなければなりません。それでもよろしいですか?」
 もはや声が出ず、必死にうなずくヒロシ。
「お兄ちゃああああん。わたしだけを見てよおおおおお」
 狂気に満ちたエルマーナの顔。ギリギリと締め上げられるヒロシの首。もう完全に息ができず、折れてしまいそうだ。
 死ぬ。そう思ったとき。
 バギィッという音とともに、首にかかっていた圧が解けた。脱力し、うしろに倒れ込むヒロシ。その刹那、視界に入ったのは、プリメーラの横顔と、両腕を肘のあたりで切断されたエルマーナだった。
 プリメーラが手刀で、エルマーナの腕を破壊したのだ。
「おイタがすぎたようですね、お嬢さん」
「な、なによあんた! わたしのお兄ちゃんを取らないでよおおおおおっ!」
「悪いですが、『2号に手出しをしない』の命令が解けた以上、容赦はしませんよ」
 首を上げ、メイドロボたちの様子を確認するヒロシ。見えたものは、長いスカートをたなびかせながら回し蹴りを決めるプリメーラの姿だった。
 直後、エルマーナの首が吹っ飛んだ。
 そのまま壁に激突する生首。頭部を失った身体は、床に崩れ落ちた。
「なんぴとたりとも、ヒロシの肉体を傷つける輩は、私が許しません」
 アニメで観た戦うメイドに憧れて、プリメーラは戦闘能力も高く設定していたのだ。それが幸いした。
 ともかく、命が助かってよかった。安堵感とともに急激に眠気が襲ってきて、ヒロシの視界はブラックアウトした。

 目を覚ましたとき、まず視界に入ったのはプリメーラの顔であった。無機質な表情でヒロシの顔を覗き込んでいる。
「おや、目が覚めましたかヒロシ」
 ヒロシは身体を起こした。自分の部屋にあるベッドで眠っていたことがわかる。プリメーラが運んでくれたのだろう。
「ああ、なんだか頭がフラフラするや」
「長時間にわたる睡眠の影響でしょう。なにしろ30年間も眠っていたのですから」
「そんなにっ? 僕ももう、おじいさんだな!」
「冗談ですよ。30時間です。徹夜つづきで疲労がたまっていたのでしょう」
「そっかぁ。ごめんなプリメーラ」
「おや、なにを謝ることがあるのです? くささのことでしたら、私は結構好きだと言ったじゃありませんか」
「くささのことじゃねーよ! ていうか、僕って本当にくさいの?」
「冗談ではないですよ」
「マジかよ! さすがにショックだよ!」
「それで、なにがごめんなのです?」
「ごめんって言うか、ありがとうかな。助けてもらってさ」
「当然のことをしたまでです。ヒロシに危害を加えていいのは私だけですから」
「できれば、きみも危害を加えないでほしいんだけどな!」
 ヒロシはふたたび、ベッドに身体を倒した。
「あーあ、それにしてエルマーナは残念だったなぁ。プログラムミスをしてたなんて、僕もまだまだだ」
「精巧な人型ロボットを作れるだけでも、ヒロシは天才ですよ。ミスは誰にでもあります。弘法にも筆の誤り、河童の川流れ、猿も木から落ちる」
「そう言ってもられると、ありがたいんだけどね」
「そうだよ! お兄ちゃんはすごいんだから、自信を持ってよ!」
 かわいらしい声が耳に届き、ヒロシはまた身を起こした。
「こ、この声って」
「えへへー」
 ひょっこりと、エルマーナがプリメーラの背後から姿を現した。
「エ、エルマーナ! 直ったの?」
「うん!」
 ヒロシの胸に抱きつくエルマーナ。
「私が修理したんです」
 とプリメーラ。
「切断された首と腕の接続、それにヤンデレバグも修正しました」
「そ、そうなんだ。ありがとうな」
「お兄ちゃん、目が覚めてよかったぁ! わたしもプリメーラちゃんも、心配してたんだよ!」
 プリメーラをちゃんづけで呼んでいるところを見ると、本当にヤンデレバグは直ったようだ。
「この短時間で修理するなんて、プリメーラは僕が作ったロボなのに、僕以上の天才かもね」
「珍しいことではありませんよ。青は藍より出でて青し。トンビが鷹を生む。鳴かぬなら殺してしまえホトトギス」
「最後のは全然違うでしょ!」
「ですが、そんな私を生み出したのは、間違いなくヒロシなんです。そしてエルマーナも」
「そうだよ! わたしもプリメーラちゃんも、お兄ちゃんのことが大好きだし、感謝してるんだよ!」
 無邪気な笑顔でエルマーナが言う。
 その笑顔が、にじんで見えた。
「あ、あれ? おかしいな。目から汗が」
「それは大変ですね。人間の機能として、明らかに異常です。病院に行ったほうがよろしいのでは?」
「涙をごまかす表現だよ! それくらい察してよ!」
「お兄ちゃん、なんで泣いてるの? 悲しいことがあったの?」
「違うんだ。違うんだよ」
 自分は幸せ者だとヒロシは思う。
「僕は子供のころから女子に気持ち悪がられてて、大人になっても女性と付き合うことができなくて、ずっとみじめな思いをしてきたんだ。だけど今、最高のメイドと妹に迎えられて、涙が出るくらいハッピーな気分なんだよ。と思ってるんですね、ヒロシ」
「僕の過去を勝手に作るなよ! 当たってるけどさ!」

  おわり
いりえミト

2020年05月03日 23時51分54秒 公開
■この作品の著作権は いりえミト さんにあります。無断転載は禁止です。

■作者からのメッセージ
◆キャッチコピー:ヒロシはくさい
◆作者コメント:ギャグはむずい

2020年05月17日 22時16分16秒
作者レス
2020年05月16日 23時56分34秒
+20点
Re: 2020年05月23日 00時43分30秒
2020年05月16日 22時57分24秒
+10点
Re: 2020年05月23日 00時41分21秒
2020年05月16日 20時30分40秒
Re: 2020年05月23日 00時39分43秒
2020年05月16日 14時55分03秒
+10点
Re: 2020年05月23日 00時38分15秒
2020年05月16日 12時44分42秒
Re: 2020年05月23日 00時36分36秒
2020年05月16日 04時20分46秒
+10点
Re: 2020年05月23日 00時35分46秒
2020年05月10日 17時22分34秒
+20点
Re: 2020年05月23日 00時34分45秒
2020年05月10日 16時16分41秒
+10点
Re: 2020年05月23日 00時32分40秒
Re:Re: 2020年05月23日 08時32分28秒
Re:Re:Re: 2020年05月23日 11時20分36秒
2020年05月07日 18時17分42秒
+20点
Re: 2020年05月23日 00時30分35秒
2020年05月06日 13時59分09秒
+10点
Re: 2020年05月23日 00時28分34秒
2020年05月06日 13時09分39秒
+10点
Re: 2020年05月23日 00時27分22秒
2020年05月06日 12時37分32秒
+20点
Re: 2020年05月23日 00時24分17秒
合計 12人 140点

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