ちんバト! 最強のおちんちん決定戦 |
Rev.03 枚数: 88 枚( 34,813 文字) |
<<一覧に戻る | 作者コメント | 感想・批評 | ページ最下部 |
注意! しょうもない下ネタが満載です。 苦手な方はご注意ください。 プロローグ おちんちんが欲しい! 「私もおちんちんが欲しい」 突然そんなことを言い出したのは、今年小学生に上がったばかりの妹の沙綾(さや)だった。 湯船の縁に顎を乗せ、くりくりとした大きな瞳で俺の股間を凝視している。 「何言ってんだよ。女におちんちんはないんだぞ」 俺は沙綾の言葉に呆れつつ体を洗い終えると、さぶんと湯船に飛び込んだ。水面が大きく波打ち、沙綾の小さな体が右へ左へと揺られた。 沙綾は不満げに頬を膨らませると、突然湯船の中で立ち上がった。つるっぺたでどこまでも平らな体を豪快にさらし、俺を恨みがましい瞳で見つめた。 「にぃにだけずるいよ! にぃにはかけっこも早いし、お友達も多いし……私が持ってない物たくさん持ってる!」 そう言うと、沙綾は大きな瞳いっぱいに涙を溜め、鼻をすすりだした。 沙綾は小学生に上がってから、あまり友達ができなかったらしい。控えめな性格の沙綾はクラスメイトに声をかける勇気も出せず、孤立しているというのを母親から聞いた。反対に俺はというと、友達は多かったし成績は学校でも上位だった。四年生になってからは、運動会でのかけっこは一番だった。 俺は沙綾の頭をやさしく撫でてやった。頭を洗ってやったばかりで、濡れた髪が手のひらに張り付く。構わず撫でてやると、沙綾は気持ちよさそうに目を細めた。 「大丈夫だよ。きっと今にたくさん友達もできるし、かけっこも早くなるさ」 沙綾が静かにうなずく。シャンプーの良い香りが辺りに漂ってきた。 「よぉし! 良い子の沙綾にはすっげぇものを見せてやる!」 その言葉に、沙綾の表情に輝きが戻った。俺は得意げになって立ち上がった。 期待に応えるように、俺はちいさなおちんちんを沙綾の眼前に突きつけた。 「おっちんちん! おっちんちん!」 沙綾が興奮した様子で、水面をばちゃばちゃと叩く。 「沙綾は本当におちんちんが好きだなぁ」 「うん! おちんちん大好き!」 そんな沙綾の目の前で、俺は腰を激しく振りまくった。ぺたしんぺたしん、とおちんちんが肌に当たり軽快な音がした。 ふんふん、と頬を赤く染め、興奮した様子の沙綾を見ていると、俺もなんだか嬉しくなってきた。 「うっ……わあぁぁぁ! にぃに! なんだかおちんちんがおっきくなってきたよ!」 固く大きく、おちんちんはどんどん大きくなっていく。 「これがおちんちんの最終形態だ!」 俺は得意げになり、胸を張った。おちんちんは誇らしげに天井を向いている。 やっぱり兄はこうでなくっちゃな。頼れる兄の姿を沙綾に刻み付けられたことで、俺の胸は満足感でいっぱいになっていた。 がしっ! 「あっ」 突如、沙綾は俺のおちんちんを力強く握った。 「やっぱり沙綾もおちんちんが欲しい!」 「うぎゃああああぁぁぁぁぁぁ!」 俺は大声で叫んだ。ぐいぃ、と引っ張られると「ひぃん」とさらに情けない声を出してしまう。 「痛いの?」 おちんちんを握ったまま、沙綾が心配そうな声で俺に尋ねる。 「い……痛いよ……離して」 段々と、おちんちんが小さくなっていくのが分かった。 「小さくなっちゃった……」 沙綾は小さくなっていくおちんちんを疑問顔で眺めていた。 ちょっと、調子に乗りすぎてしまったのかもしれない。また掴まれてはたまらない。俺は沙綾に背を向けると、静かに湯船に浸かる。 「ねぇ。にぃに?」 「ん?」 「いつか私にもおちんちん生えてくるかなぁ?」 「…………ないなぁ」 浴室内は、ただ穏やかに水滴が落ちる音だけが響いていた。 九年前。沙綾六歳。俺九歳の時のことであった。 一章 おちんちん消失 つるりん。 とした感触が、指先に触れた。 草木も眠る丑三つ時。寝ぼけ眼でトイレに行きパンツを下ろすと、本来そこにあるはずのモノがなかった。 もう一度股間をさすりさすり。やっぱりなにもない。 ぼけーっとした頭に徐々に熱がこもってくる。おちんちんがあった場所をまさぐる度に、背筋が冷たくなり、冷や汗が額に浮かび、血の気が引いてくる。やっぱり何もない。 どっかに落としたのかな? 「あっはっはっは」 妙に笑いがこみ上げてくる。 「そんなわけあるかあぁぁぁぁぁっ!」 自分自身につっこみながら、片足を便器にかけ、もう一度自分の股間を凝視する。 この十八年間、苦楽をともにし、親兄妹よりも常に傍らにいた俺の相棒。 おちんちんが忽然と姿を消していたのである。 もげたわけでもなく、元々そこに何もなかったかのように、滑らかな感触が手に残った。 「女の子になっちゃった」 闇夜に俺の声が吸い込まれていく。 「夢だあぁぁあ! これは夢に違いない!」 頬を思い切りつねってみても、頭をトイレの壁にはげしく打ち付けても、この悪夢は覚めることはなかった。頭の痛みが容赦なく、これは現実なのだと告げてくる。 便座に座って天井を見上げる。思考を巡らす。 えっと、今日はなにがあったっけ? いつも通り、昼過ぎに起きて台所にあるカップラーメンを食べてから、二度寝決め込んだんだよな。夕方に起きてネット巡回しながらだらだらしてて……。そうしたら、沙綾が学校から帰ってきて……。父さんと母さんが今日は仕事で帰ってこられないっていうもんだから、沙綾の作ったチャーハン食べて……。 うん。なにも変わったことはない。 あっ。変わったことといえば……。 俺は、パジャマのポケットをまさぐった。 「にぃに」 「うひいぃぃぃ!」 俺は反射的に叫んでしまうと、ポケットから取り出そうとしたものを奥に押し込んだ。 心臓が張り裂けそうなほどに鼓動を強めている。背後を振り返ると、少しびっくりしたような表情で、沙綾が立ち尽くしていた。 淡いピンク色を基調とした上下のパジャマは、くまさんの絵柄が描かれておりとても可愛らしい。さらりと流れる黒髪は、肩のあたりで切り揃えられており、薄暗い室内でもよく映える。たっぷりと日の光を浴びた肌は俺とは反対に色つやも良く、とても健康的だ。控えめなお胸はつん、とパジャマを押し上げ未成熟ながらとても魅力的に映る。将来が楽しみだ。 沙綾はその胸のあたりで手をきゅ、と握り俺の顔を凝視していた。 「ど、ど、どうしたんだ? こんな夜中に」 沙綾は俺の異常なほどの慌てっぷりを気にする様子もなく、目線を泳がせ口をもごもごと動かしている。突然、何かを決意したように握っていた手に力が込めると、へたり込んだ俺に近づいてきた。 「に、にぃに!」 「はひっ!」 「私の部屋にきて。話したいことがあるの」 沙綾の声が、両親のいない静かな家の中に溶け込んでいく。 俺は特に返事を返すこともできず、力強く輝いた沙綾の目を見つめ返すことしかできなかった。 妙に甘ったるい香りが鼻孔をくすぐる。 なんだろう。女の子の部屋はこんな香りがするのかと思うと、股間がむずむずする。そういやおちんちんが無かったんだ。明日病院に行こう。きっと新しい病気が発見されたと、大騒ぎになるはずだ。しくしく。 久しぶりに入った沙綾の部屋はとても整頓され、壁に掛かったコルクボードには沙綾とクラスの女の子が笑顔で写っていた。今年高校生になったばかりの沙綾はしっかりと勉強にも打ち込んでいるらしく、机には綺麗に教科書が陳列されていた。 うーん。俺の部屋とは大違いだ。 くまやうさぎのぬいぐるみがベッドの脇に置かれ、まさに女の子の部屋といった感じだった。 何となく緊張してしまった俺は、床に正座すると手持ちぶさたになってしまい、部屋のあちこちに視線を泳がせていた。 沙綾は俺とあまり目線をあわせようとはせず、そそくさと自分のベッドに腰掛ける。 ううむ。沙綾も少し緊張しているみたいだ。 別に俺たち兄妹は仲が悪いわけではない……と思う。 普通に会話はするし、今日だってチャーハンを作ってくれた。 ただ、昔みたいにじゃれあうことはなくなったし、ましてや一緒にお風呂に入ることなんて一切なくなった。まあ当たり前だろう。沙綾は高校生になったし、俺だってもう十八歳だ。にぃに寂しい。 沙綾はというと、ふとももの間に手を入れて、もじもじと肩を揺らしている。 「沙綾。何か話があるって言ってなかったか?」 沙綾はぴくん、と体を跳ねさせると、眉尻を下げて俺を見つめる。口を開きかけるが、何かを思い立ったように再び閉じてしまう。うーむ埒があかない。 「俺、今日さ。ちょっとへこむことあったんだ。悪いけどたいしたことじゃないならまた今度にしてくれないかな……」 立ち上がり部屋から出ようとすると、沙綾は慌てたように俺の背中にすがりついた。 「ま、待って! 言う! 言うから……」 そんな風にすがりつかれたら俺も観念するしかない。もう一度腰を下ろすと、沙綾の言葉を待った。 沙綾は観念したように、一度自分の頬を叩くと床を踏みならし立ち上がった。 潤んだ瞳で俺を見ると、お尻をくいっ、と突き出しパジャマに手をかけた。そのまま勢いよくパンツと一緒にパジャマのズボンを足首まで下ろした。 「…………は、い?」 突然の出来事に、俺の思考が追い付かない。沙綾の手は自分の股間を隠していた。 「に、にぃに……見て」 「すとっぷすとっぷ。すとおぉぉぉっぷうぅぅ!」 俺は片方の手で自分の目を覆い隠し、反対の手をぶんぶんと振りながら迫ってくる沙綾を制止した。 「にぃに……違うの」 「何が違うんだよ! 俺は沙綾をそんなエッチな子に育てた覚えはないぞ!」 「いや、育ててくれたのお父さんとお母さんだし」 沙綾は制止を振り切り、俺の腕を掴んだ。引きはがそうと思い切り引っ張ってくる。 「うぎぎ……にぃに。意外と力が強い」 「あったりまえだろぉー! 俺はお前のにぃにだぞ!」 一進一退の攻防が続くが、普段から部屋にこもりっきりの俺に対し、沙綾は様々な部活からスカウトが来るくらい運動神経は良い。つまり女子高生に負けそう。 「てえぇぇーい!」 沙綾の気合と共に、俺の鉄壁のガードは崩されてしまった。 「はぁ、はぁ。にぃに。見て」 荒い息を整えながら、沙綾が俺の眼前に突きつけたのは…………おちんちんだった。 てれーんと垂れ下がったおちんちん。先っぽまでしっかりと皮をかぶった温室育ち。おちんちんが沙綾の股間から生えていた。 「これ、俺のおちんちんだああぁぁぁ!」 頭で考えるよりも早く、俺は沙綾のおちんちんを掴んでいた。「ひゃん」と小さく悲鳴が聞こえる。 「お、おっ、俺のおちんちん! なんで? なんで? 俺のお……っちんちん!」 「なんで自分のおちんちんだってすぐにわかるのっ!」 「わかるに決まってんだろっ! 自分のおちんちんだぞ! 世の中の男は、自分のおちんちんはすぐにわかるんだ!」 沙綾はあたふたとしながら、おちんちんを握る俺の手を掴んだ。この手を離さない。俺の魂ごと離してしまう気がするから。 そんなことを思っていても、力の差はどうしようもならない。沙綾は俺の額に足の裏を押し付けると、力の限り前蹴りをかましてきた。 叫び声を上げる間もなく、俺はごろごろと床を転がっていった。壁に体を打ち付けてようやく止まった。 「あっ! つい。ごめん。にぃに。大丈夫?」 心配そうな沙綾の声を聞いていると、なんだか情けなくなってきてしまい涙が溢れてくる。 「うう……なんで。俺のおちんちんが沙綾に……」 乙女のようにしくしくと泣いていると、沙綾が心底申し訳なさそうな表情で俺を覗き込んできた。 「にぃに……ごめん。私どうしても、にぃにのおちんちんが必要だったの」 「ひうぅぅ……どういうことだよぅ……」 ぐずぐずと泣きながら沙綾に問う。 沙綾は床に転がったスマホを手に取ると、何やら操作をしているようだ。俺の顔をちらり、と見ると目の前に突き出してきた。 「ちん……バト?」 スマホの画面にはちんちんを生やした女性が二人、ドヤ顔で腕を組み、仁王立ちでポーズを決めていた。 頭上にはおちんちんを模した字体で「第百五十回『ちんバト!』 最強おちんちん決定戦!」と銘打たれていた。 ええっと……企画もののエッチなDVDですか? しかも、百五十回って……すっごい歴史ある企画もののようだ。 「私……どうしてもこれに出場したいの」 沙綾が真剣な瞳で俺を見つめる。 「あああ! だめだ! だめだ沙綾。そりゃー、俺はこういうものには大変お世話になってるけど、こんなエッチな作品に出演するのはいかん! 絶対に許さない!」 「エッチな、って……にぃに、何か勘違いしてるでしょ?」 「そりゃ、お前、こんな立派なモノぶら下げた女の子同士がすぱしんすぱしん、うりうりするDVDなんて……正直好きです……いやいやいや、妹がこんなのに出演するなんて……あっ、でも女の子同士なら……」 なんだか妙な感情がわき起こってくるのを必死に我慢していると、沙綾は自分の体を抱きジト目で俺を睨んでいた。 「変態」 「おまっ……! 沙綾だって、俺のちんちんぶら下げて喜んでる変態じゃねーかよ!」 「違う! にぃに何か勘違いしてる! 『ちんバト』はおちんちんを武器に使って戦う、由緒正しき戦いなんだからっ!」 沙綾はふーふーと獣のように息を荒げながら、俺の言葉を否定する。 文明開化と共に始まった『ちんバト!』はおちんちんバトルの略称らしい。その名の通り、おちんちんを武器に見立て、一対一で戦う由緒正しき戦いだそうだ。 ただ、戦うのは女性だけ。本来おちんちんの持ち主である男性はその対象ではない。 日本の欧米化が進むにつれ、おちんちんで戦うのは野蛮だということになり、表向き『ちんバト!』は終焉したかに見えた。 もう、何だコレ。俺の感性がおかしいのか。なんだコレ。その前の時代は、おちんちんで戦うのは野蛮じゃなかったってこと? 意味わかんない。こんなの教科書に載ってなかった。 沙綾は混乱する俺をちらり、と一目見ると、再び画面をスクロールし始めた。 『ちんバト!』はその後も、世間の目を逃れひっそりと地下で行われることになった。『ちんバト!』をスポーツとして開催する人物も次々と変わっていき、現在はまだ若干二十歳の美人さんが今回の『ちんバト!』を開催しているようだ。 「この人凄いんだよ!」 沙綾は、スマホに映る美人さんをキラキラとした目で見つめる。 「ワコールさんっていう女の人なんだけどね。百四十九回大会の優勝者なの! すっごい綺麗で、しなやかで優雅なおちんちんを駆使する元「ちん闘士」。私のあこがれ!」 なんだよ「ちん闘士」って。いや、『ちんバト!』で戦う人たちなんだろうけど……ネーミングがヤバイ。 「これまで、限られたちん闘士しか参加できなかった『ちんバト!』をオープン大会にしてくれて、すべてのちん闘士を参加できるようにしてくれたの!」 あああ……頭が痛い。さっき、しこたま壁に頭を打ち付けたのもあるけど、この痛みは『ちんバト!』のせいだ。理解が追い付かない。 ……しょうがない。一つ一つ疑問を解決していこう。 「なぁ。沙綾。この『ちんバト!』って、なんで女性が戦うんだ? 本来、おちんちんは男の物だろう?」 沙綾は、俺の質問に視線を泳がせる。頬が赤く染まり、俺の上目遣いで見つめてきた。 「だっ……て……女性は……する男……おちんちんで…………から」 「え? なんだって?」 沙綾の喉の奥から「うう」とうめき声が聞こえる。 「だ、だって!」 沙綾が苦しそうに言葉を紡ぐ。 「愛する人のおちんちんで戦う女性は、とっても綺麗だからっ!」 突然、せきを切ったように沙綾が叫んだ。 「あ、愛する……?」 俺の言葉に、沙綾の顔は真っ赤に染まる。おちんちんがピクピク、と震えた。 「あ、愛するって言っても、家族だからだよ! 勘違いしないでよね!」 あ、家族だからか。ま、まぁそうだよな。うん。でも、父さんよりも俺の方を愛してくれているのは正直……嬉しい……かも? 「私がこの『ちんバト!』のうわさを聞いたのは、中学に入る前。ネットのうわさで、おちんちんで戦う女性だけのバトルがあるって知ったの。それで、調べていくうちに、どんどん興味がわいてきて……」 そんな、おちんちんで戦うバトルなんて……そんな噂があったって、調べたりはしないだろ……ただのアホなうわさとして一蹴されておしまいだ。 「それで、去年ワコールさんが優勝した『ちんバト!』を見に行ったの……それで、本当に綺麗でかっこよくて……私も出場して見たくて……」 沙綾の言葉の節々には、強い熱意が感じられる。おちんちんで戦うという羞恥心は一切ないようだ。 「でもさ……沙綾」 俺は、『ちんバト!』のページの最下部にある一文を指さした。注意事項の一文の中に「ちんバト! に使用するおちんちんは所有者に許可を取ること」と書かれていた。所有者。つまりは俺のことだ。 「悪いけど、俺は自分のおちんちんを戦いなんかに使ってほしくはない」 はっきりと言い放つ。 当たり前だ。自分のおちんちんを女性に預け、戦うなんて馬鹿らしい。許可を出す男なんて本当にいるのか? 沙綾は半ばそう言われることを分かっていたかのように、頭を下げ、俺の顔を見ようとしない。 「お前の『ちんバト!』への情熱は痛い程にわかった。でも、おちんちんで戦うなんてバカげてる。『ちんバト!』なら毎年観戦しにいけばいいだろ?」 その言葉に、沙綾は俺の顔を睨む。あまり見たことのない表情だ。俺は、怖気づいてしまう感情を押し込み沙綾の顔をじっと見つめた。 「さぁ、今すぐ俺のおちんちんを返してくれ。このままじゃおしっこもできない」 俺は沙綾のおちんちんを見た。不満げにてれーん、とたれるおちんちんは……女の子におちんちんが……正直ぐっと来た。 「ええっと……無理」 沙綾は悪びれもせずそう答えた。ぷいっと俺から顔をそむける。なんか怒ってる? 「にぃにの、おちんちんの魂は今、私の股間に憑依してるから」 「……おちんちんの魂?」 「略して『ちんたま』」 しらねーよ! そんなこと聞いてるんじゃねーよ! 「このちんたま解脱薬を、今日のチャーハンに混ぜたの。何も知らないでモグモグ食べてたよね。薬が効いてきてさっき、私の股間ににぃにのちんたまが憑依したの」 沙綾はその「解脱薬」とやらの瓶を振って見せた。中身は空だった。 「その解脱薬は『ちんバト!』の会場に行かないと手に入らない。その会場の場所はにぃには知らない。『ちんバト!』が開催されるのは一か月後。つまり、にぃにには『ちんバト!』開催までおちんちんを返すことはできない」 ……おちんちんを返すことができない? 一か月も? 世界が歪み、立っていられない。俺は力なくその場に腰を下ろす。目の前では、沙綾が冷酷な瞳で俺を見下ろしていた。 なんなんだ? この沙綾の態度は? 混乱する頭を振って、俺は沙綾のスマホを手に取る。 「会場に電話する」 おちんちんの所有者には許可を取ること。 そう書かれている以上、脅したりだましたりしておちんちんを『ちんバト!』に使うのは、会場側の意図することではないはずだ。掛け合えば対応はしてくれるはず! さすがに、沙綾の顔色も蒼白になり、スマホを持つ俺の手にすがりついた。 「お願い! やめて! にぃにのおちんちん貸して!」 「いやだよ! 健康的な男子は一か月もおちんちん無しじゃいられないんだよ! この年の男子は、頭の中の九割はエロい事しか考えてないんだから!」 俺の悲痛な叫びに、沙綾が二、三歩後ずさる。体全体を震わせ、唇がきゅっと引き締められた。涙目で俺を射抜くと、大きく息を吸った。 「にぃに、私でおちんちんシコシコしてるの知ってるんだからねえぇぇぇ!」 スマホを落としてしまった。 「さささささ沙綾? ななな、なにを言って……言ってるのかな? そんな兄が妹で……ねぇ?」 沙綾は顔全体を真っ赤にして、俺に迫ってくる。あまりの迫力に俺の体はのけぞってしまった。 「その、ポケットに入ってるのなに!」 沙綾は返答を待たずに、俺のズボンのポケットに手を突っ込んだ。 ずるる、と布のようなものが取り出された。 「私のパンツ! なんでにぃにが持ってるのよ!」 「あああああああああああああああああああああああ! これはっ! これは違うんだ!」 「お父さんとお母さんが仕事で家にいないとき、にぃに、私のお風呂覗いてるのも知ってるんだからぁっ!」 ばれてるぅっ! 「ち、違うんだ! 大事なところは見てない! それは兄としてしちゃいけないことだからな!」 「そういう問題じゃないでしょっ!」 「い、いや。俺はだな。お前の成長ぶりをだな」 「このド変態にぃに! クソニート! 妹の体でちんちんシコシコしてるくらいなら、私に貸してくれてもいいじゃない!」 「あああああ! お前! クソニートは言い過ぎだろっ! 俺は仕方なくニートしてるんだよっ!」 「うるさいっ! この犯罪者! うんこ製造機!」 あーそこまで言っちゃいますか……。 俺は、一度深呼吸をする。 俺は兄だ。どんな罵声を浴びせられても、冷静になって妹を説き伏せなければならない。 「沙綾……お前は一つ勘違いをしている。俺のちんちんなんか借りなくたっていいじゃないか」 沙綾は興奮しつつも、俺の言葉に耳を傾ける。 「お前の股間にも、ちゃんとあるじゃないか」 「…………?」 「クリ(ばきゅーん)スが!」 沙綾は一瞬、何を言われたのか分からない様子で、俺の顔を見つめていた。 「女の子にも、ちっちゃなおちんちんがあるんだよ!」 静寂が辺りを包む。 沙綾は、しばらくは無表情で立ち尽くしていたが握ったこぶしを振り上げると、ためらいなく俺の顔面に叩きこんできた。 「うげふらっ!」 ぶっ飛んでいく俺を、鬼の形相で睨みつけながら今度は腹にけりを入れる。 「この変態変態変態ド変態! い、い、い、い、妹になんてこと言うのっ!」 「……だって……本当にあるんだよ……? ちっちゃなおち……ぐえっ!」 今度は、俺の脳天に見事なかかと落としを見舞う。 「なん、でっ……。なんで私はこんなにぃにを好きになっちゃったの? なんで? こんなニートでエッチなのに……」 沙綾はその場にぺたん、としりもちを着くとわき目もふらず泣き始めてしまった。 あああ、しまった……泣かしてしまった。 『ちんバト!』とかふざけたスポーツだと思ってたけど、沙綾にとっては重要なことなのかもしれない。おちんちんを勝手に奪われたのは、腹立たしいことだけど……。でも、沙綾がここまで本気なら…… あー! もう。どうにでもなれ! 「わかった! わかったよ! あと一か月だな! それまでは俺のおちんちん貸してやるから……。もう泣くな」 沙綾は、涙でぐしゃぐしゃのままの顔を俺に向けた。 「ほんと?」 「ああ、いいよ」 沙綾はぐずぐずと鼻を鳴らす。 「うん……ありがとう。にぃに。ごめんねおちんちん勝手に借りて……絶対ダメだって言われそうだったから」 まぁ、そりゃ―そうだろうな。でも、一か月か……。 「おしっこどうするのかな?」 沙綾がきょとんと小首をかしげる。 「にぃに。勘違いしているようだけど、ちゃんとおちんちんは残ってるよ? よく触ってみてよ」 俺は、もう一度自分のおちんちんのあった場所をまさぐってみる。なんとなく……指先に糸のようなゴミのようなものが触れた。勢いよくズボンを下ろす。沙綾が驚いて自分の目を手で隠した。指の間からちろり、と俺の股間を見つめている。 「こ、これ、俺のおちんちん?」 「うん。『ちんたま』が抜けちゃったから……でも安心して。ちゃんとおしっこは出るから」 「じゃ、じゃあ。夜の自家発電は?」 「そ、それはごめんだけど、我慢して……だから」 沙綾は覆っていた手を俺に突き出す。 「私のパンツ返して」 「あっハイ」 沙綾は俺から自分のパンツを受け取ると、胸に抱えジト目で俺を見つめてきたのだった。 二章 おちんちんを携える女たち あれから一か月。今日はいよいよ『ちんバト!』開催の日だ。 空には薄く雲が張り、煌々と輝く満月が怪しく辺りを照らしていた。 すでに灯っている明かりが少なくなってくる夜中。俺と沙綾は「ちんバト!」会場のある場所へと向かっていた。 「こんな夜中に開催するんだな……」 「日中に堂々と開催できる内容でもないしね。ばれたらばれたで面倒くさそうだし」 「かもな」 俺の言葉が闇夜に溶け込んでいく中、沙綾は小さく吐息を吐いた。少し呼吸が震えているみたいだ。外には出さないが、やっぱり相当緊張しているみたいだ。 このひと月。俺たちは「ちんバト!」に向けて準備を整えてきた。 譲り渡したばかりのおちんちんは、沙綾曰く『ちんバト!』に耐えられるほどの強度、太さは無いらしい。 ただひたすら摩擦をして、長時間強度を保ったり、凍ったタオルでひたすらおちんちんを殴って太くしたりと、血のにじむような特訓を続けてきた。 ああ……なんか、こう言ってると、すごいヤバイことしている気がするけど……なんか慣れた。 とりあえず特訓のおかげで、沙綾に生えている俺のおちんちんは見違えるほどに大きくなった。強度も太さも最初とは段違いだ。 正直なところ、今すぐにおちんちんを返してほしいという気持ちはある。しかし、沙綾の努力が『ちんバト!』でどういった結果をもたらすのか。 沙綾の想いは、今日一日だけは見守っていてもいいかな? という気持ちにさせた。 そのまま、てくてくと静けさの漂う街中を、お互い会話もせずに歩んでいく。ふと、沙綾が立ち止まると、目の前にはわずかな明かりの中、営業しているバーがあった。 沙綾はスマホの画面を確認すると、ためらいもなくバーに足を踏み入れた。 『ちんバト!』の会場は地下にある。 俺はそれだけしか聞いていなかったので、大人しく沙綾の後をついていっただけだ。慌てて沙綾の後を追っていく。 バーの中に足を踏み入れた瞬間――いかつい野郎どもが一斉にこちらに視線を向ける。 俺がビビッて声も出せずに、固まっている中、沙綾は鋭い視線をものともせずに、ずんずんとカウンターの方へと進んでいく。 二メートルはあろうかという、つるつる頭のバーテンダーは沙綾を一瞥すると、拭いていたコップをカウンターに静かに置いた。 「そろそろ店じまいなんですがね」 バーテンダーはぶっきらぼうにそう言うが、沙綾は一切引こうとはしない。 「聞こえないのかい? 終わりだよ」 バーテンダーが、勢いよくカウンターを叩く。 沙綾が危ない! 俺は震える足を叱咤し、沙綾に駆け寄ろうとする。 「気の抜けたおちんちん置いてないかい?」 と、言う沙綾の言葉にずっこけそうになってしまった。 「大した注文だな」 「ピクリとも立たないおちんちんよりマシなら文句はねぇよ」 「奥にあるかもな」 「そいつはありがてぇ」 沙綾の言葉とは思えない会話の応酬に、俺の頭の中には疑問符しか浮かばない。 すると、バーテンダーは目線で沙綾を促した後、酒の入った棚の奥へと消えていった。 「にぃに。いいよ。来て」 沙綾は普段と同じ、家でくつろいでいるときのような表情で、俺の腕を掴んだ。 「な、なんだ? 今の会話……」 「ん? 合言葉。こういうの漫画とかで見たことない?」 「あ、いや。あるけど……実際、目の前で見ると、戸惑うというか、なんというか……」 沙綾は去年『ちんバト!』を見に来ているから慣れているだろうけど、俺は初めてなんだ。もう少し、俺に対してフォローがあってもいいんじゃないか――と、思ったとき、腕を掴んでいる沙綾の手が、小刻みに震えているのが分かった。 そうだった。沙綾は今回、観戦者じゃなく、『ちん闘士』として戦いに来ているんだった。沙綾だって、胸の中は穏やかではないはずだ。俺はにぃにとして、今日だけは沙綾を支えてやらないといけない。 「にぃに」 「ん? どうした?」 「さっきまで、おちんちん物凄いことになってたのに……ちっちゃくなっちゃった」 沙綾はぺろり、と舌を出してはにかむ。 そうかそうか。さっきまで沙綾のパンツの中も穏やかじゃなかったんだな。 ここ最近、衝撃的なことばかり起こっていたので、俺の常識も穏やかではなくなっていたようだった。 バーテンダーに促され、バーの裏口へと行くと、地下への階段があった。 人ひとりがやっと通れるくらいの狭い階段を、薄暗い照明の中、ずんずんと下りていく。どこまでも地下へと続いていく階段。そろそろ不安になってきたころ。ようやく、小さな踊場へと出た。目の前にはやたら大きく、重厚な扉。俺と沙綾は、体全体を使ってその扉を押し開けた。 そこはまさに異世界だった。 円形の闘技場はぐるり、と覆うように客席が設置され、すでに空きがないくらいに客が入っていた。闘技場の中心には、巨大なスクリーンが設置され、過去に開催された『ちんバト!』の映像が流されていた。数千人の客たちの興奮は既に、最高潮に達しており、スクリーンの中のちん闘士たちの決着がつくと、客席からは地鳴りのような歓声が上がる。 沙綾はこんなところで戦うのか……? 「ちん闘士の方ですか?」 俺が目の前の光景に圧倒されているとき、すらり、としたパンツスーツに身を包んだ女性が、沙綾に声をかけてきた。 「『ちんバト!』の案内役です。ちん闘士の方は控室の方に……そちらの男性は?」 案内役の女性は俺を怪訝な目で見た後、直ぐに沙綾へと視線を戻した。 「私のおちんちんの所有者です。付き添いとして来てもらいました」 「珍しいですね……所有者の方が付き添いで来るなんて……まあ、構いません。違反ではありませんから」 そのあとは、特に気にするふうでもなく案内役の女性は俺と沙綾を控室へと案内していく。 「なぁ、沙綾。俺ひょっとしてここに来ないほうが良かったのかな? 女性がおちんちんで戦っているわけだし……男子禁制みたいな感じあるんじゃないのか?」 「ううん……男子禁制なんてことはないよ。ただ、私たちみたいな関係も珍しいんじゃないかと思う」 「関係?」 「ちん闘士は、愛する男性のおちんちんで戦う……これって、愛した男性のおちんちんこそが最強なのだと証明したい。ってことでもあるの」 「……つまりどういうことだ?」 「……本来は彼氏や夫を亡くした女性がちん闘士になるみたい。負けてしまえば、愛した人のおちんちんが最強だったと証明することができないから。負けられない戦いに命を懸けて赴く女性は、それだけで美しいから」 沙綾の表情が不安に曇る。自分は、そこまでの覚悟があるのか。愛する者を失っているわけではない自分が、この『ちんバト!』で戦い切ることができるのか。沙綾はそんな表情をしていた。長い間共に過ごしてきた家族だ。それはすぐにわかった。 「でも、私だって。にぃにのおちんちんが大好き! 確かに、あこがれはあるけど……絶対に負けない!」 辺りに響き渡る歓声に負けないくらいに、沙綾は叫び、自らを奮い立たせた。 「あの……盛り上がっていないでそろそろ控室に入ってくれませんか? もう皆集まっておりますので」 案内役の女性が、小さくため息を吐きながら沙綾を見つめている。 沙綾は、少しだけ頬を赤らめながら控室の扉に手をかけた。 扉が開いた瞬間。俺は内部のオーラに圧倒されそうになった。 だだっ広い部屋の中には、ちん闘士であろう女性が数十人、おそらくは自らが最高だと思っているおちんちんを入念に手入れしていた。 持参した炉におちんちんをくべて、巨大なハンマーで叩きあげている者。おちんちんを研ぎ石で鋭く尖らせている者。ただ力の限り、壁に打ち付けている者。どのちん闘士たちも強く、太く、強固なおちんちんを携えていた。 おおお……改めてみるとものすごい光景だ。 さすが、戦いの場に身を置く女性たちだ。すらりとした肢体に、健康的な肌艶。流れ落ちる汗は、その一つ一つが宝石のように輝いており、俺の目をくぎ付けにしていた。股間から生えるおちんちんは、卑猥な感じが何一つ感じられず、むしろ芸術のようにも感じられた。ああ……しゅごい! 「にぃに、よだれ」 「お、おう……」 「変態童貞」 童貞は余計じゃね? 「他の女性のおちんちんを変な目で見ないで……なんか嫌」 「わ、悪かったよ……俺は、部屋から出ていくから……客席から沙綾の雄姿を見てるよ」 沙綾は控室から出ていこうとする俺の服の袖を掴むと、もじもじと体をくねる。 「い、行かないで……始まるまで一緒にいてほしい」 沙綾は体全体で俺の腕にすがりついてきた。服の上からでも分かるくらいに、沙綾のおちんちんが膨らんでいるのが分かった。 「いちゃいちゃするなら、外でやってくんねーかな?」 場を切り裂くナイフのような言葉が、俺と沙綾に投げつけられた。 その言葉を発した女性は、自分の身長ほどもあるおちんちんを振り上げると、目にもとまらぬ速さで、沙綾に突きつけた。ふわりと風が起こり沙綾の髪の毛が浮き上がった。 一瞬、気圧されたような表情をしていた沙綾だったが、ぎりりと歯を噛みしめると、履いていたズボンをずり下げた。股間にあるのは、一か月前よりも、二倍も三倍も大きく鍛えられた俺のおちんちん。そのおちんちんで、目の前に突きつけられた巨大なおちんちんを払いのけ――ようとするが、相手のおちんちんはびくともしなかった。 「粗末なおちんちんだ。しかも、まだ童貞のおちんちんじゃないかよ。被って先細ってやがる」 巨大なおちんちんの女性――巨ちん女さんは、くくっ、と笑うと、俺を哀れんだ目で見る。 うう……そんな目で見られたら……正直気持ちが良いです。 ちょっとした恍惚を感じている俺に気が付かず、二人のちん闘士はバチバチと場外乱闘を起こしそうな雰囲気だ。 「にぃにのおちんちんをバカにしないで! このおちんちんは私にとって、この世の何よりも大好きなおちんちんなの!」 「ハッ! 見れば、お嬢ちゃんも処女かい? 抱かれてもいないおちんちんでよく『ちんバト!』に出場する気になったね」 沙綾のおちんちんはいきり立ち赤く腫れあがっていた。今すぐにでも爆発してしまいそうだ。 「はぁ……ワコールの奴は、何で今回の大会をオープンにしちまったのかね? 遊び半分の奴らがわらわらと沸いてきやがって、うっとおしいったらありゃしない。まぁ、私はワコールのふにゃちんは認めていないがな」 巨ちん女さんは、両腕を上げるとやれやれとため息を吐いた。 「ワコールさんはとても美しくて気高い人! 馬鹿にしないで!」 沙綾はおちんちんだけではなく、顔中真っ赤にして憤っている。巨ちん女さんは心底うっとおしそうに沙綾を見つめる。 「お前は自分以外のおちんちんを最強だと認めているのか? そんなだからお前らみたいなやつらは遊び半分って言われんだよ!」 巨ちん女さんのおちんちんは、一度天井に向け大きくそそり立つと、勢いそのままに床に叩きつけられる。部屋全体が大きく揺れ、ウォーミングアップをしていた周りのちん闘士たちは何事かと視線を向けた。 「私はもうだれにも絶対に負けない」 巨ちん女さんからは、沙綾をちゃかしていたときのへらへらとした表情は消え失せていた。全身から漂う覇気はほかのちん闘士たちをも震え上がらせていた。 「この緊張感。たまらないですね」 巨ちん女さんから発せられた覇気が、一層際立っていく。 「てめぇ……ワコール」 ワコールさんは怪しく微笑むと、室内で戦いの準備を整えているちん闘士たちを一瞥した。巨ちん女さんで視線を止めると、小首をかしげる。微笑みは絶やしていない。 まるで紳士淑女の晩さん会に出席するように。 深紅のパーティードレスを身に着け、きらびやかな装飾品を身に着けたワコールさんはとても元「ちん闘士」とは思えない。薄く染めた茶色の髪の毛は、控室の簡素な照明に照らされ、上質な絹糸のように背中に流れていた。 「物凄い殺気。確かあなたは……ええっと。誰でしたっけ?」 巨ちん女さんはぎりり、と歯ぎしりをすると沙綾に向けていたおちんちんをワコールさんへと向けた。 「ああ……思い出しました。たしか、前回大会の決勝戦で私に負けた……大きいだけで何の取柄もないおちんちんの……やっぱり名前までは思い出せませんね」 「私はお前なんか認めちゃいない。ワコール……お前のおちんちんは決しておちんちんなんかじゃない」 「あら? そんな憤って……青筋がビクビクしていますよ?」 ワコールさんは、穏やかな瞳で巨ちん女さんのおちんちんを撫でると――人差し指でおちんちんをはじいた。 その行為に巨ちん女さんのおちんちんはビクリ、と大きく震える。振り上げられたおちんちんは部屋中に台風のような風を起こすと、ワコールさんに向け振り下ろされた。 ――が、おちんちんはワコールさんに振り下ろされることなく、空で止まった。 「あらあら。早漏ですね」 ワコールさんの股間からは一本の紐のようなものが床を這い、巨ちん女さんのおちんちんに巻き付いていた。巨ちん女さんのおちんちんはビクビクと小刻みに震えていた。ワコールさんは、笑みを絶やさずに激昂する巨ちん女さんを見つめる。 「……くっ……! て、テメェ!」 反対に、巨ちん女さんの額には、汗の玉がいくつも浮かび全身を震えさせていた。 「……ふぅ。せっかく私が開催する『ちんバト!』に出場するちん闘士たちの激励に来たと言いますのに……興が削がれてしまいました」 ワコールさんのおちんちんは、まるで何の力も込めていないかのように、巨ちん女さんをおちんちんごと空中に持ち上げると、そのまま壁に叩きつけた。 「……ぐっ、は!」 部屋中のちん闘士たちは、あまりの力の差に声も出せず、その場に佇んでいた。ただ一人、沙綾だけが震える足を押さえつけ、ワコールを見据えていた。 「それでは、皆さん。私はおいとまします。汚らしいおちんちんしか持っていないちん闘士さんたち。健闘をお祈りします」 ワコールさんは、床を這うおちんちんを、まるで蛇のように操ると自分の腕に巻きつけた。 「私こそが最強」 そうぽつりと漏らすと、自分の股間におちんちんを収納した。優雅にドレスのスカートを揺らしちん闘士たちに背を向け、去っていった。 後に残るは静寂。誰一人声を発する者はいなかった。 あれほどしなやかで、柔らかく、力強いおちんちんは見たことがない。あんなものがこの世に存在したのか……。 「……ワコールさん」 その消え入りそうな声に、俺は我に返った。大きく息を吸い隣にいる沙綾を見た。 「ショックだよな。あこがれていたワコールさんが、あんな嫌な人で……」 沙綾は大きくかぶりを振ると、決意に満ちた瞳で俺を見上げた。 「ううん。私が甘かった。ワコールさんも、他のちん闘士たちも……みんな自分の愛する人のおちんちんが最強なんだと思ってる。あこがれなんかで戦っちゃいけなかったんだ」 沙綾の体中に震えが走る。恐怖ではないだろう。 「にぃにのおちんちんが最強。私はそれを証明するために戦う。だから」 沙綾は自分の股間から生えている、俺のおちんちんをきゅっと抱く。 「にぃに。私を見ててね」 沙綾は自らを鼓舞するように、穏やかに笑った。それを見て俺の中のもやもやとしたものが吹き飛んでいくようだった。 「そろそろちん闘士の方たちは準備をお願いします」 事務的な口調で、案内役の女性が声をかけてきた。 ついに……『ちんバト!』が始まる! 第三章 おちんちんの行く場所は 「……うっ……く。うう……ひっ、ぐぅ……うぇぇ」 しん、と静まり返った空間で、沙綾の押し殺したような泣き声だけが響いていた。 『ちんバト!』闘技場へと続く、通路のさらに奥。非常階段へと続く、あまり人が訪れることのない場所で、沙綾は悲痛なうめき声を漏らしていた。 沙綾のデビュー戦はあっさりと終わってしまった。 相手は巨ちん女さんのように、強者のオーラは感じないちん闘士だった。お互い緊張状態の中、先に仕掛けたのは沙綾だった。この一か月鍛え上げたおちんちん。自信はあった。しかし、その自信は直ぐに打ち砕かれた。 沙綾の攻撃をひらり、と交わした相手は体制を崩してしまった沙綾の背中に強烈な一撃を見舞った。それが決定打となり、沙綾のおちんちんは急速に硬度を失い、小さくなっていった。 「ごっ……ごめん、な、さい……! ごめんなさい。にぃに。ごめんなさい。私……何もできなかった……にぃにのおちんちんが最強だって、証明することが、でき、無かった……」 「沙綾……しょうがないよ」 俺はこんな言葉しかかけてやることができない。 沙綾を倒した相手は、二回戦で巨ちん女さんにあっさりと負けた。 沙綾は『ちんバト!』初参戦とはいえこんな負けっぷりを晒してしまえば心が折れてもしょうがないと思う。 闘技場からは、時折すさまじい程の歓声が聞こえてきた。 巨ちん女さんは順調に勝ち進み、決勝戦まで駒を進めているようだ。おそらく、控室で巨ちん女さんと衝突した時は、沙綾も負ける気などさらさら無かったのだろう。しかし、いくら虚勢を張ったところで、現実は容赦なく力の差を突きつけてくる。 そう。現実というモノは本人の思いを一切無視し、非常な鉄槌を下す。 幼い頃は何でもできた。勉強だって、運動だって。これからだって出来ると思っていた。 高校受験に失敗した。今から考えてみれば、受験勉強なんてこれっぽっちもしていなかった。受からないはずがないと思っていたからだ。初めて拒否された現実。積み上げてきた空っぽの自信は、軽くつついただけでもろくも崩れ去ってしまった。残ったのは再び積み上げることなどあきらめてしまった自分だ。 皆がんばっている? やれば出来る? そんなことわかっているさ。なにを頑張る? なにをやる? 非情な現実が霞むくらい、自分の心を埋め尽くすモノなんて見つかるわけがない。 「……沙綾。帰ろう。もうここには用はないだろ?」 ぐずぐずと泣きはらす沙綾の腕をつかみ、立たせる。闘技場とは反対側の出口の方へ歩き出すと、沙綾は体をこわばらせ歩こうとしない。 「私帰らない。最後まで『ちんバト!』を見届ける」 顔中、涙でぐちゃぐちゃだったが、瞳の中には熱が籠もっていた。ふれている肌はしっとりと汗で濡れており、時折、自らを奮い立たせるかのように力が入る。 「もうあきらめろよ。あのちん闘士たちに勝つなんて無理だ」 「今は無理でも、私はいつかあの人たちに勝つ。それは今じゃなくてもいい」 「そのいつかのために、お前は傷つき続けるのかよ! 別に俺は自分のおちんちんが最強なんて証明してもらわなくなって構わない」 自信を失い、何の努力もせず、日々怠惰に過ごしている俺などそんな資格はないのだ。 「……にぃには最強なんだからっ! なんでそんなこと言うのっ!」 沙綾の絶叫が静まりかえった通路に響く。 「私はちっちゃい頃、自信なんて何もなかった。でも、にぃには何でも出来て……堂々としてて……私もにぃにみたいになりたかった。童貞でも……先細ってても! 私はにぃにの堂々としたおちんちんが欲しかった。そんな私が『ちんバト!』に参戦できたのはにぃにのお陰なの」 床に突っ伏しながらも、沙綾は声を張り上げる。俺はただ、そんな沙綾の溜まっていた思いを静かに聞いていた。 「だから、今度は私の番。今のにぃにに、堂々とした私を見せたいの。私はにぃにのお陰で自信が持てた。だから、こんどは、私が……」 沙綾の思いが、俺の体に染みていく。 俺は俺自身を見捨てた。だけど、沙綾はこんな俺を見捨てなかった。 「沙綾。お前に見せていたのは中身なんてない空っぽの自信なんだ。ただの虚勢だったんだ。偽物なんだよ……」 「でも、私にとってはかっこよく見えた。その気持ちだけは本当」 「それだけで……たったそれだけでお前は傷つきながら、積み上げていくことができるのかよ! こんな情けないにぃにの為に」 俺の中の淀みが流れ出る。意識しないようにしていた暗闇が。 流れ出る闇を振り払うかのように、俺の頬に鋭い痛みが走った。 沙綾のおちんちんが俺の頬を叩いたのだ。 「……たとえにぃにでも……にぃにをバカにするのは許さない!」 痛い。世界が揺れるほどの衝撃を受ける。まるで足が無くなってしまったかのように、俺は床に膝をついた。 殴られた頬に触れる。俺のおちんちんはこんなにも硬かったのか。 皮をかぶったままのおちんちんは、沙綾によってこんなに大きく、硬く、まるで胸を張る様に堂々と反りあがっていた。 「……いってぇ、な……クソ。俺のおちんちん。こんなに硬いなんて初めて知ったよ」 崩れ落ちそうになる膝に精一杯力を入れ、立ち上がる。 「沙綾。俺……」 沙綾は瞳に涙をいっぱいにため、俺を凝視している。 「沙綾!」 「……んぁっ!」 俺は無意識に、沙綾のおちんちんを力の限り握っていた。突然のことに、沙綾の体が悩ましくくねる。 「俺……情けないにぃにだったよな。こんな立派なおちんちんを持っていながら……殴られるまでわかんないなんて……」 「んんんっ! にぃに……そんなに強くっ……んっ! 握っちゃ……らめぇ……! アぁっ!」 沙綾の体が、がくがくと震える。全身の力が脱力したかのように、俺の胸に体を預けた。 ここまで消耗するほどの戦いを繰り広げたのか……。 勝負は一瞬だったが、全身全霊で『ちんバト!』に挑んだに違いない。俺は沙綾のおちんちんをやさしく撫でた。 「んんんんんんんんんんんんんんんんんん!」 沙綾が体をのけぞらせて、辛そうにうめく。全身を熱く燃え上がらせ、獣の雄たけびのように咆哮した。 「俺もこの『ちんバト!』を最後まで見届ける! そして、俺のおちんちんを最強だと証明してくれ。俺は、最強のおちんちんを持つ者として、恥ずかしくない男になるから!」 まるで、今までの自分の中に溜まっていた穢れが浄化されていくようだった。沙綾はこんな俺をこれからも好きでいてくれるだろうか? 「沙綾!」 沙綾は、痙攣するようにおちんちんを震えさせると、 「ハアアアァァァァァァ……ん」 と大きく息を吐いた。うつろな瞳で俺を見据える。 「う……うん。にぃに。分かってくれたのなら……良かった」 俺は急に沙綾が愛おしくなり、何度もおちんちんを撫でた。 「まってまってまってまってまって。これ以上触られたら、私おかしくなっちゃういやほんとにぃっ。あううっ――」 気合が爆発してしまいそうなのだろう。そんな沙綾に俺はたくさんのモノを貰った。これからの俺を見ていてほしい。もう一度、俺は沙綾のおちんちんを強く握り直した。 沙綾が、もう一度大きく体をビクつかせた――その時、 「オオオオオオオオオオオオオォォォォオオ!」 今日一番の歓声に俺は無意識に『ちんバト!』会場へ視線を向けた。 「そうだ……決勝戦」 そろそろ百五十回『ちんバト!』の決勝戦が始まる頃合いだ。 「よし! 見に行くか。次の『ちんバト!』に向けて、ちん闘士の弱点を暴いてやろうぜ!」 俺の胸に、これまで忘れていた情熱が燃え上がっていった。次の『ちんバト!』では、沙綾には必ず勝ち上がってもらう。そのためには俺は助力を惜しまない。 「う、うん……でも、ちょっと待って……足腰が……」 「よし! 俺の肩を貸してやる! ……おちんちんも支えてやろうか?」 へろへろだった沙綾が、表情をこわばらせる。 「いい! いいから! もう触らないで!」 「…………? そうか?」 フーフーと息を荒げる沙綾に肩を貸しながら、俺たちは『ちんバト!』会場へと向かった。 そこは異様な熱気に包まれていた。 張り裂けんばかりの歓声。常軌を逸した人々の熱気が『ちんバト!』会場に立ちこめ、そこに立っているだけで額からは汗が流れ落ちてくる。俺は、額の汗を乱暴に袖で拭うと、同じように圧倒され、立ち尽くしている沙綾を見た。 「……私もいつか、あの場所に」 沙綾のおちんちんは、先ほどまでとは違い、雄々しくそそり立ち、まるで意志があるかのようにぶるぶると震えている。 闘技場ではすでに、決勝戦が始まっていた。 巨ちん女さんの相手は、鋭くとがらせた日本刀のようなおちんちんを持つ女性だった。 どちらのおちんちんも、堅く強く、鍛え上げられている。 ちん闘士が、最強だと疑わないおちんちん。この世で、もっとも愛する男のおちんちんだ。 闘技場の中心で、二人のちん闘士はにらみ合う。すでにお互い満身創痍だ。おそらく次の一撃が最後になるだろう。 巨ちん女さんのおちんちんが、地面を叩く。一瞬で、巨ちん女さんは空中へと飛び上がり、相手に向かっておちんちんを振り下ろした。 ――が。 巨ちん女さんの攻撃は、相手には当たらなかった。観客がざわめく。当たらなかった? いや、当てることが出来なかった? 「おちんちんが……無くなってる……?」 沙綾が、誰に言うでもなくぽつりとそう漏らした。 「おいっ! 沙綾!」 沙綾は弾かれたように、闘技場に中心へと走っていった。俺も沙綾を追っていくが、観客席を埋め尽くす人の多さで、沙綾の姿を見失ってしまった。 それでも、人の波をかき分け闘技場の中心がよく見える場所まで近づいていった。 錯覚ではなかった。巨ちん女さんが、おちんちんを地面に叩きつけた衝撃で、闘技場の中心には砂埃が舞っていた。しかし、巨ちん女さんのおちんちんは、そんな砂埃などものともしないくらいの存在感だ。俺の目には強烈な印象を残す巨ちん女さんのおちんちんは映っていなかったのだ。 それは、観客も同じようで、戦いの歓声とは違う感情の声があちこちから上がっていた。 ならば、相手の日本刀のように叩き上げられたおちんちんが、巨ちん女さんのおちんちんを切り落としたのか? そうではなかった。 相手も、先ほどの巨ちん女さんの攻撃で負けると思ったのだろう。 地面にしりもちをつき、訪れなかった敗北に疑問の表情をしていた。 ならば、なぜ? 巨ちん女さんは、自分の股間を見つめひどく動揺している。控室で会った時の強者の表情は消え失せ、そこにいたのは大事なものを無くし怯えている一人の女性だった。 「あぁっ! セバスチャン! どこ? セバスチャンのおちんちんが……!」 「まったく……決勝戦まで勝ち上がったちん闘士にしては、情けない姿を晒しますね」 あきれ果てた感情を乗せた声が、闘技場内に響いてきた。 声が聞こえてきた方向に、闘技場内の人々の視線が集まる。上だ。来賓用の閲覧スペースにはちん闘士たちを冷ややかな目で見下ろすワコールさんがいた。 ワコールさんが着ているドレスのスカートからはしなやかなおちんちんが姿を見せた。蛇のように蠢くおちんちんは地を這いながら、窓に張られたガラスを昇っていく。その異様な光景に、固唾を飲んでいると――ガラスが破られ、幾千もの破片となり闘技場内に降り注いだ。 ワコールさんは、割れたガラスの穴に体を滑り込ませると、空中に身を投げた。 会場内のどよめきが悲鳴に変わる。 阿鼻叫喚の声を一身に受け、ワコールさんは落下していく。地面へ激突する瞬間。ワコールさんの体は空中で一度バウンドした。よく目を凝らして見ると、ワコールさんの股間からはクモの糸のようなものが一本上空へと伸びていた。観客の驚愕の視線を一身に受け、何事もなかったかのように、ワコールさんは優雅に地面へと降り立った。 「まぁ、あなた……とってもひどい顔。せっかく私が、汚らわしいものから解き放ってあげたのに、なんて表情をしているのですか」 ワコールさんは、地面に突っ伏している巨ちん女さんに穏やかに話しかけるが、その瞳は冷たい輝きを放っていた。ふぅ、と呆れたようにため息をつくと、ワコールさんは手に持っていたものを巨ちん女さんの目の前に放った。 乾いた音を立て、小さなガラスの小瓶が巨ちん女さんの目の前で転がった。 「……これは……ちんたま解脱薬?」 憔悴しきった声で、巨ちん女さんはつぶやく。 ちんたま解脱薬は、おちんちんの魂を抽出し、他の人間に憑依させるための薬だ。それをなぜ、このタイミングでワコールさんが? 「ワコール……てめぇ。何企んでやがる!」 巨ちん女さんはワコールさんの行動に、何か脅威を感じたのか。徐々にちん闘士としての表情が戻り、ワコールさんを鋭く睨む。 「汚らわしいおちんちんに取りつかれたあなた達を開放するためです。『ちんバト!』の決勝戦となれば、ちん闘士、観客のすべての視線がこの闘技場に集中するはず。この時を待っていました」 ワコールさんはうっとりとした、満足そうな表情を浮かべると、大きく腕を伸ばした。 「さあ! 解放の時です。汚らわしい『ちんたま』の開放を! 浄化を!」 腕を上空に振り上げ、声を張り上げる。上空を見るワコールさんの視線の先には、真っ白な霧のようなものが浮遊していた。こうしている間にもその霧は、どんどん大きくなっていく。これが『ちんたま』なのか? 「還るべき場所を失った『ちんたま』はいずれ消え去る運命。汚らわしい魂は永遠に失われるのです」 「おい……ワコール。てめぇだって、立派なおちんちんを持ってるじゃないかよ。『ちんバト!』始まって以来の、異質で規格外のおちんちんを! 自分だけ特別だなんて勝手言ってんじゃねぇぞ!」 「いつから、これをおちんちんだと錯覚していたのですか?」 ワコールさんは腕を振り上げたまま、目線だけを巨ちん女さんに向ける。 「私の股間には、汚らわしい『ちんたま』など憑依してはいません。これは自前です」 巨ちん女さんは、何が何だか分からない、と言った表情をしている。 「もう私は、ちん闘士ではありませんしね。良いでしょう」 「ま……まさか、てめぇ!」 巨ちん女さんの表情が驚愕に変わっていく。ワコールさんの股間からは、蛇のような細く、しなやかなおちんちんが太ももを這い、さらには腕へと巻き付いていった。 「これは私のクリ(ぴー)スです」 「……(どーん)トリ(きゅあきゅあ)……だと……?」 「……さぁ、もういいでしょう。私の目的は、汚らわしい『ちんたま』を浄化し、この世界からちん闘士などというばかげた存在を消すこと。今回の『ちんバト!』をオープンの大会にしたのも、多くのちん闘士をおびき寄せるため」 ワコールさん……いや、ワコールは威圧するように、股間のクリ(ばーん)リスを床に突き立てた。 「……そんなの認めねぇ……! 私の……いや、ちん闘士の思いはそんなことには屈し――」 瞬間。巨ちん女さんは、糸の切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。後に残るは静寂。 「貴方に意見は求めていません。私の邪魔をするというのなら、そこで寝ていなさい」 ワコールのクリ(わんわん)リスが巨ちん女さんの顎にヒットしたのだ。 激しい戦いで消耗していたとはいえ『ちんバト!』決勝戦まで勝ち上がった巨ちん女さんを一撃で……。 ワコールはクリ(にゃーん)リスで地面をえぐりながら、ゆっくりと歩き出す。 「逆らうものがいるなら、名乗り出なさい。引導を渡してあげましょう。私のこの『マロン・スクレイル』で!」 栗と栗鼠……クリとリスだ! ワコールの強烈な圧力に、観客は恐れおののき悲鳴を上げながら、非常口へと殺到していった。五分も立たないうちに、観客は姿を消していく。残るのは、おちんちんを無くした数十人のちん闘士たちだけだった。 残ったちん闘士たちも、迫るワコールを睨みつけているだけで、動こうとはしない。動けないのだ。 「やらせない!」 ちん闘士たちの時が止まってしまったような空間の中、沙綾がワコールの前に走っていった。腕を横に大きく広げ、ワコールの進行を遮るように立ちふさがっている。 俺は、頭で考える前に走り出していた。沙綾の下半身は何もなかった。そう何もないのだ。ちんたま解脱薬のせいで、沙綾のおちんちんは消失していたのだ。それでも沙綾はワコールの前に立つ。 「ワコールさん! あなたはなぜそこまでちん闘士を恨むの? 私と同じくらいの年齢の時からあなたはちん闘士として戦っていたはず! その姿はとても綺麗だった。前回大会で優勝した時はあこがれさえ感じた! そんなあなたがなぜ!」 「沙綾! 逃げろっ!」 力の限り叫ぶが、沙綾には届いていない。 「私はちん闘士を恨んでなどいません。私はちん闘士を解放しようとしているのです。汚らわしいおちんちんから!」 「……汚らわしいなんて……ワコールさんは元ちん闘士のはず。なぜそんな……?」 ワコールは鼻で笑うと、哀れんだような視線を沙綾に向けた。 「確かに私には昔、愛する男がいました。この人と一生共にいよう。私のすべてをささげよう。そういう風に思える男がいました」 ワコールが諭すように沙綾に語り掛ける。 「しかし、それは幻想だったのです。私が愛する男は、私を愛してはくれていなかった。他の女と共に、夜を過ごしていました。口だけだったのです」 ワコールの言葉に怒気がこもる。 「所詮男など、おちんちんでしかものを考えることのできない汚らわしい存在。愛する者のおちんちんで戦う? 最強を示す? そんなもの……私ひとりの力でねじ伏せてやる!」 ワコールの『マロン・スクレイル』が荒ぶり、床を叩く。 ワコールが強く握っていたこぶしをほどくと、一つため息を漏らした。 「しゃべりすぎました。とにかく……私の邪魔は許しません。逃げていないところを見ると、あなたもちん闘士のようですね。私の前に立ちふさがったこと……勇気だけは認めましょう。しかし」 ワコールの『マロン・スクレイル』が意志を持ったかのように怪しくうねる。闘技場の石の床を砕きえぐる。しなやかに、そして硬い狂乱のムチが沙綾に迫ってきた。 俺はちん闘士たちをかき分け、走る! 闘技場に入ると、沙綾に向けて手を伸ばした。 沙綾を守る! 「沙綾ぁっ!」 がきんっ! まるで、硬い金属同士がぶつかり合う音だった。 「にぃに……?」 俺の背後から沙綾の声が聞こえてきた。 間に合ったのか? 硬く閉じていた目を、恐る恐る開けてみる。ぼやける視界の先には、ワコールが無表情で立ち尽くしていた。『マロン・スクレイル』で攻撃してこなかったのか? いや、ワコールの股間からは、確かに『マロン・スクレイル』が俺に向かって伸びている。 無表情のワコールは、なぜか眉をひそめ、うっとおしそうに俺を見つめていた。 「汚らわしいおちんちんめ」 その言葉が耳に入った時、突然俺の股間がじんじん、と痛み出した。 自分の股間に視線を下げる。そこには『マロン・スクレイル』を受け止める、俺のおちんちんがあった。ズボンをぶち破り、おちんちんが顔をのぞかせていたのだ。 「その娘のおちんちんの持ち主ですか……まったく忌々しい」 そうか。そういうことか。 ほとんどのちん闘士たちのおちんちんは、死に別れた愛する男性のおちんちんだ。沙綾のように、愛する者がまだ生きているちん闘士は珍しいのだ。還る場所がないわけではない。沙綾から放たれた『ちんたま』は本来の持ち主である俺のところに戻ってきたのだ。 沙綾が鍛えてくれたおちんちん。 沙綾が大好きだと言ってくれたおちんちん。 おちんちんが、ワコールを倒せと轟叫ぶ。 「にぃに……逃げて」 震える声で沙綾が俺に懇願する。 そんな沙綾の頭をやさしく撫でてやる。 「何言ってんだよ……俺が沙綾を見捨てて逃げるわけないだろう?」 正直なところ、足は震え、口の中はつばが飲み込めないほどに乾いている。心臓は鼓動を早め、息も上手くできない。 でも。 「俺は、沙綾が大好きなにぃにだからな!」 崩れ落ちてしまいそうな足に力を込める。 今この場で、戦えるおちんちんを持つ者は俺だけだ。 何も言葉を発さないワコールの視線は、俺のおちんちんに注がれていた。 第四章 おちんちんバトル! 俺とワコールは数分間、にらみ合っているだけだった。 突然現れた俺に、周りのちん闘士たちは驚きを隠せていないようだった。 「……ふっ」 ワコールが頭を小さく振り、失笑した。 「粗末ですね。そんなおちんちんで私と戦おうなんて、笑ってしまいます」 確かに、ワコールの言うとおりだ。 俺はちん闘士でもないし、このおちんちんは沙綾がこの一か月間、鍛えてくれたものだ。だが、引くわけにはいかない。 「にぃにのおちんちんは最強なんだからっ!」 「最強、最強とうるさいですね。現実を見てください」 ワコールの『マロン・スクレイル』が目に止まらぬ速さで空を切る。 もちろん、普通に考えて俺なんかがワコールに勝てるわけがないと思う。でもここで逃げ出したら、俺は一生何もできない男になってしまう。 俺が沙綾に与えたもの。沙綾が俺に与えてくれたもの。俺は今ここで、再び沙綾に頼れるにぃにであることを証明しなくてはならない。沙綾のにぃにのおちんちんは最強なのだと! 「……ぐっは!」 わき腹に強い痛みが走る。 ワコールの『マロン・スクレイル』がヒットしたのだ。 「女性のちん闘士の方は一撃で気絶させてあげましたが……私は男には恨みがあります」 穏やかな口調ではあったが、その表情は怨嗟に塗れていた。 「いたぶってあげましょう」 ワコールが俺に歩み寄ってくる。 「にぃに!」 「下がってろ! 沙綾!」 俺は、ズボンを脱いだ。パンツもだ。おちんちんが下腹に張り付かんばかりに、雄々しく屹立していた。 「こい! ワコール!」 自らを奮い立たせるように俺は叫んだ。 その叫びが合図だったかのように、ワコールの『マロン・スクレイル』は俺に向かって殺意を向けてきた。交わす。 が、避けた方向に『マロン・スクレイル』は俊敏に伸びてくる。腰を振り、おちんちんで受け止めた。 「ぐっ……くく」 痛い。とてつもなく。 おちんちんから伝わる痛みが脳をかき乱し、強固だと思っていた決意をぐらつかせる。おそらく、今までの俺だったらこの痛みで逃げ出してしまっただろう。でも今は、 「にぃに!」 沙綾が俺の背中を見ている。 「ううっ……うらぁっ!」 バチン! という衝突音が響き、『マロン・スクレイル』を跳ね返す。 まさかの反撃だったのだろう。ワコールの表情に、ほんの少しだけ驚きの色が見えた。 が、反撃はそこまでだった。 俺に襲い掛かる『マロン・スクレイル』の威力は、これまでと段違いになっていった。痛みは我慢できたが、蓄積されるダメージにより、俺の体は徐々に悲鳴を上げる。 どうする? どうする? このままでは確実にやられる。 おちんちんをもっと強固に! もっと大きく! 「ははっ」 突然、笑いが込み上げてきた。 おちんちんを強固にする? 大きくする? そんなの……俺がこの十八年間、毎日毎日してきたことじゃないか! 思い出せ。俺は如何にしておちんちんを大きくしてきた? 初めてエッチな動画を見たとき。目に飛び込んでくる男女の行為に俺の下腹部は熱を持ち、おちんちんに伝わった。あの感覚だ。思い出せ。あの時の興奮を。あの時の情熱を。ルーチンワークになっていた。自家発電が。毎日自家発電だ。日に八回もしたこともある。そのたび、エッチな動画に対して体性ができてきた。あの時の興奮はもう味わえない。刺激を探してきた。さらなる刺激を。 そうだ。 「沙綾」 「……え?」 突然、名前を呼ばれた沙綾が大きく目を見開く。俺はそんな沙綾をやさしく見つめ返した。 「沙綾……お前のパンツをくれ」 沙綾は目をしぱしぱとさせるばかりだ。 「そうだ。沙綾なんだ。妹で性的興奮をするという背徳感。ニートで時間があるが故に古今東西のエロ動画を視聴してきた俺が、次のステージ行くには新しい性癖が必要なんだ。それは背徳感。つまりは沙綾なんだ! 実の妹なんだ!」 「に、に、にぃに! 声に出てる!」 「あ、あなた……妹に欲情するなんて、とんだ変態ですね……! だから男というものは……こ、このっ! 変態!」 「ワコール! 今の俺にはそんな言葉もおちんちんを固くするためのご褒美だ!」 俺はビシリ! とワコールに指を突きつける。 「……にぃにがおちんちん硬くするためなら……私!」 「ああ! そうだ。お前のパンツの感触を! 背徳感を俺にくれ!」 ワコールは口端を引くつかせている。心底ドン引きしているみたいだ。 「で、でも……私のパンツは今控室にあるから……すぐ持ってくる! それまで耐えて!」 「ああ! わかった。お前のパンツを待ってるぜ!」 沙綾はすぐに走り出す。 ワコールは頭を抱え、ふらついていた。 「男の性欲……なめるなよ!」 俺は叫ぶ。 地を蹴り、ワコールに迫る。足だけの力ではない。おちんちんも同時に地面に叩きつけ、俺はすさまじい程の推進力をもって、ワコールに迫る。 「うっ……おおおおぉぉぉ!」 回転おちんちんだ! 体の芯を軸にし、回転しながら俺は飛びあがる。遠心力によりおちんちんは横に広がり、ワコールに迫る。一瞬、対応が遅れたワコールの顔面におちんちんがヒットした。 「……くっ!」 やった! ワコールは大きくのけぞり、顔をしかめる。初めて与えた確かなダメージ。どうだ! 「……うっ……ふふ……うふふふふふふふふふ」 ワコールは痛みに顔をゆがめながら、体を小刻みに震わせ笑い声を発する。その異様な光景に、俺の背筋には冷たいものが走った。 「わっ……私の顔に、おちんちんを……汚らわしい! こ、このようなことを……許さない!」 ワコールの体からは、しゅうしゅうと音を立て蒸気が立ち上っていく。怒りが目に見える形で立ち昇っていた。 あ、と思った瞬間。俺の体は空を舞っていた。地面に何度も体を打ち付け、止まることができない。壁にぶち当たり、ようやく俺の体は止まった。 「ああっ! は、ぐぅ!」 息ができない。必死に呼吸を整えていると、目の前にはワコールがその綺麗な顔を鬼のように歪めさせ佇んでいた。 『マロン・スクレイル』が鎌首を持ち上げ俺に向けられた。その先端は鋭くとがり、俺を刺そうと憤っている。 「死になさい」 俺は目を瞑ってしまった。多分俺は殺されるんだろうな。まぁ、クリ(ひひーん)リスに殺されるなら本望か。だって、俺変態だし。 ――沙綾。ごめん。 ……………………が、いつまで経っても『マロン・スクレイル』の攻撃は飛んでこなかった。 ゆっくりと目を開ける。そこには、激しく肩を上下させた巨ちん女さんの背中が見えた。 「おい! お前。何あきらめてるんだよ!」 巨ちん女さんは『マロン・スクレイル』を細い腕でしっかりとつかみ、俺を守っていた。しかし、衝撃はすさまじいらしく、踏ん張っている足元には亀裂が走っていた。 「ワコールと戦う前に言っただろ! 男の性欲なめるな! って。見てみろよ! これクリ(もー)リスだぞ! ご褒美だろ!」 『マロン・スクレイル』の先端がぴろぴろ、と小刻みに動く。 そうだ。あまりに恐ろしい武器のため、俺の変態センサーが働いていなかった。 「舐めてもいいですか?」 巨ちん女さんは、一瞬不思議な表情をしたが、鼻で笑うと、 「とんでもねー、変態だな」 と言い、掴んでいた『マロン・スクレイル』を乱暴に俺の顔の前にもっていく。 「ヒィっ!」 俺が、ピロピロと舌を動かすと、ワコールは顔を蒼白にしながら『マロン・スクレイル』を引っ込める。 「おっ! そうだ。私のパンツも使うか?」 そう言って巨ちん女さんが差し出したのは、真っ赤な色のおパンツ。 「私のパンツだ」 はああっぁぁぁぁぁぁっぁあん! パンツパンツパンツパンツだ。大人の女性の真っ赤なパンツ! 俺は巨ちん女さんのパンツを受け取ると、すりすりくんかくんかした。 「う……っわ……やっぱ、お前きもいかもな」 そんな言葉は俺には響かない。 「「「「「これも使って!」」」」」 周りから、叫びにも似た声がいくつも聞こえてきた。 ふと、上を見ると何枚ものパンツが空を舞っている。 赤、黒、白、ピンク……。様々な彩のパンツがひらりふわふわ、と俺のもとに落ちてくる。まるで、空中のお花畑のようだ。 「貴方たち、ちん闘士はやっぱりおかしい!」 ワコールは地を蹴り、空に舞うパンツへと一直線に向かっていった。『マロン・スクレイル』を駆使し、パンツを切り刻む。 「させるかよ!」 パンツに気を取られているワコールに俺のおちんちんがヒットした。 すさまじい勢いで、ワコールは地面に叩きつけられる。 そのすきに、俺はお花畑に舞う優雅な妖精のように――パンツたちを自分の反りあがったおちんちんに被せていく。サラサラ、ツルツル、しっとり。様々な感触がおちんちんに伝わる。大きくなる。固くなる。 「にぃに! 私のパンツも使って!」 沙綾が戻ってきた! いま俺が一番欲するパンツをその手に握り締めて! 沙綾がパンツを放る。 薄いピンク色の可愛らしい綿パンだ。まだ幼さの残る雰囲気を持つそのパンツを受け取ると、俺はおちんちんの先っぽに被せた。 ふわり、としたやさしい肌触りと暖かさ。申し分ない。素晴らしい。 俺のおちんちんが目に見えて変貌した。 巨ちん女さんのおちんちんのニ倍はありそうだ。二階の客席にまで届きそうなおちんちんは、自重で潰されることがない強固さを保っている。 「巨大なだけのおちんちんなど!」 地面に叩きつけられたはずのワコールは、痛みをものともせず俺に立ち向かってくる。 俺は授かったばかりの巨大なおちんちんをワコールに向けて横に薙いだ。ふいを突かれたワコールはその衝撃に耐えられず、吹き飛んでいく。 「ぐっ、は!」 客席にめり込んだワコールの口からはうめき声が漏れた。 これなら……いけるか! それでも、ワコールは動きを止めない。 「舐めないで……この、皮被りが!」 ワコールは『マロン・スクレイル』を駆使し、俺の頭の上を飛び回る。 戦闘経験の差はあまりにもかけ離れている。ワコールの脳内には今まで戦ったちん闘士との戦いがインプットされているのだろう。力では勝てなくても、経験がある。 空を飛び回るワコールは余りにも素早く、大きさだけの俺のおちんちんではとらえきることができなかった。ワコールは俺の巨大なおちんちんに細心の注意を払いながら、的確に攻撃を当ててくる。 さらに強固になったおちんちんにより、痛みは少なかったがダメージはどんどん蓄積していった。 「くっ! 落ちろよおおおぉぉ!」 むやみにおちんちんを振ってみても、素早く跳躍するワコールにはあたらない。 このままじゃ……。 おちんちんの高度を維持する妄想も、次第に薄れていく。 刺激×妄想=強度である。 どこかのエロい人の言葉だ。 様々なパンツにより、刺激は申し分ない。が、妄想はこれまでの俺の蓄積したイメージだけだ。 もっと! もっと妄想を! ワコールの執拗な攻撃を避けつつ、脳内にはあるイメージが沸き起こってくる。 俺は新しい刺激を求め、沙綾の風呂を覗いていた。しかし、沙綾は俺の覗きに気が付いていたのか、両腕で胸と股間を隠していた。滑らかな背中に流れる雫。成長期の肉付きの良い太もも。通常であれば、それだけでおちんちんの強度は保てたはずだ。だが、この今の状況では足りない。 「沙綾! もう一度頼みがある!」 固唾を飲み、俺の戦いを見守っていた沙綾の表情に力がこもった。 「お前の乳首の色は、何色だああぁぁぁぁぁぁっぁぁあぁ!」 その場が静まりかえった。空中を飛び回っていたワコールも俺から距離を取り、道端のゲロを見るような目で俺を見ていた。 沙綾は顔を真っ赤にして俺を凝視していたが、何かを決意したかのように胸の前で組んだ手に力を入れた。 「…………………………………………………………………ピンク」 今なんて言った? ピンクと聞こえた。 沙綾の乳首の色はピンク。 ピンクだ。ピンクだぞ! ピンク色の乳首など存在するはずがないと思っていた。清楚で合法ロリのエロ動画を何本も何本も見ても、ピンク色の乳首など見つけられなかった。あきらめかけていた。漫画やエロアニメではあるにはあるが、そんなの創作者のきもい妄想だと思っていた。 ……が、あったのだ。こんな近くに。 「うっ……おおおあおあおあおおあぉああぉぁぁぁぁ!」 叫ぶ。吠える。轟く。 俺のおちんちんは、叫びに呼応するかのように七色に光り輝いていく。地下のうす暗かった闘技場内部は、俺のおちんちんから発せられる光で、目を開けていられないほど光り輝いている。 その反面。俺のおちんちんは徐々に小さくなっていく。でも、悲観はしない。目に見えてわかる程におちんちんの強度が上がっていく。大きさは腕程になってしまったが、ごつっとしたおちんちんはまるで名刀のように鋭くとがっていた。 「ワコール」 ワコールは奥歯をぎりり、と鳴らす。 「イカせてやるよ」 俺は人差し指でワコールを煽る。呼応するように、おちんちんもワコールにその先端を突きつけた。 「この、変態童貞皮被りがあぁぁぁぁぁ!」 「はっ! 吠えているだけじゃ弱く見えるぞ! ワコール」 お互いが地を蹴り、闘技場の中心で激突する! 早さと硬さと強度を持った、おのれの信頼する武器。 おちんちんとクリ(ちゅんちゅん)リス。どちらが最強なのか。もうそんなものはどうでもいい。これは思いの強い方が勝つ。だから、俺は絶対に負けない。 乱打。 打ち込む。もう闘いの駆け引きなど存在はしなかった。ただ、そこにあるのは意地と意地のぶつかり合いだった。 しかし、その子供の喧嘩のような意地の張り合いも終わろうとしていた。 「……ぐぅっ!」 ワコールの全身全霊の一撃が俺の股間を捕えた。俺のおちんちんは活〆される前の魚のように、びちびちと苦しそうに悶えていた。 これで終わりなのか……。 刺激を求め禁断の妄想を得ても、ワコールの『マロン・スクレイル』には届かないのか。 ワコールはおちんちんを掴んで俺を持ち上げると、逆さに吊った。その美しくも狂気に満ちた顔を近づける。 「しょ、勝負……ありましたね。所詮皮被りのおちんちんでは私には敵うはずはないのです」 「皮被りはしょうがないだろ……。童貞なんだから」 俺はこんな状況でも虚勢を張る。 なぜなら、ワコールの表情にどこか悲しみのようなものを感じたからだ。 「あなたのおちんちんの変貌はすさまじいものがありました」 ワコールが静かに語り掛ける。 「俺一人じゃこうはならなかったさ。沙綾が俺のおちんちんを大きくしてくれたんだ」 「愛、ですか?」 「ああ、そうだな。俺は沙綾が好きだ。妹としてではなく、女性として!」 「先ほども言いましたが、愛など幻想です。まぁ、童貞には分からないでしょうが……」 そう言うと、ワコールは『マロン・スクレイル』の先端を俺の額に突きつけた。 「ここまで戦えたことには敬意を払いましょう。痛みが無いように、一瞬で殺してあげます」 もうだめか……。迫りくる死の気配に、俺は固く瞳を閉じた。 「私はにぃにを愛している!」 その言葉と共に、俺の頭に柔らかいものが覆いかぶさってきた。沙綾だ。 「私のこの思いは嘘じゃない!」 「あなたがそう思っていても、その男はいずれあなたを裏切るでしょう。男とはそういうものです」 もはや、ワコールには何を言っても聞き入れてはもらえないだろう。 「……沙綾」 沙綾が俺に抱き着きながら、顔だけを向ける。 「沙綾。俺の童貞を貰ってくれ」 沙綾の瞳が大きく見開く。 「えっ……? でもこんな状況じゃ……どうしたら」 俺だってこんな公衆の面前でおっぱじめるわけではない。童貞と言われ、惑わされるのは心が貧困だからだ。 「沙綾。俺のおちんちんにまたがってくれ」 俺の出した答えだった。 まだ俺のおちんちんは、これまでではないにしろ硬く反りあがっている。 俺の訴えに、沙綾は回答を求めない。ただ、ゆっくりと俺のおちんちんに腰を下ろした。 「これで良いの? にぃに」 沙綾はほうきに跨った魔女のように、俺のおちんちんをしっかりとつかんでいた。 「ああ……そうだ。最高だ」 沙綾のお尻の熱が、俺のおちんちんに伝わってくる。あまりに心地よいその感触に、昇天してしまいそうだった。 おちんちんが再び、熱を持ち硬くなっていく。異様なものを察したのか。ワコールが反射的に距離を取る。 「あ、あなた達……いったい何を!」 「沙綾……大きくなったおちんちんをしっかり抱きしめていてくれ」 ワコールの狼狽を無視し、俺は沙綾に語り掛ける。 「これで良いの? にぃに」 沙綾はしっかりと、痛いくらいに俺のおちんちんに抱き着く。 「ああ、沙綾の体温が伝わってくるよ」 ついに、俺と沙綾は一つになった。 これはもう童貞を捨てたと言っても過言ではない。 「沙綾ぁっ!」 「は、はいっ!」 「上下運動おおぉぉぉぉぉ!」 沙綾は俺の叫びに、半ば反射的に動き始めた。 しゅっしゅっしゅっしゅっしゅっしゅっ! 摩擦音だけが辺りに響き渡る。 「あ、あなた達! 何をする気なのですかっ!」 ワコールの表情に恐怖が浮かぶ。足はガクガクと震え、その場に立ち尽くしたままだ。 「これで良いのっ? にぃに?」 「ああ。そうだ。いいよーいいよー」 何かが上がってくる。せりあがってくる。 「ワコール!」 ワコールの体が大きくビクついた。 「これが俺たちの最後の攻撃だ!」 ワコールはその言葉に『マロン・スクレイル』を幾重にも張り巡らせた。編み上げる。自身を守る一枚の盾を展開させた。 おちんちんの光が、激しく明滅する。その光がおちんちんの先っぽに集中し、さらに大きく光り始めた。 俺のつぼみのようだったおちんちんの先っぽは、徐々に花開いていき銃口のようにワコールを狙っている。先端からは目も開けていられないほどの光が漏れ、一直線にワコールを照らした。 童貞では成せなかった。沙綾のおかげだ。 「いっけ……えぇぇぇえええぇぇ!」 おちんちんの先端からまるで、レーザービームのような白濁とした光がワコールに向けて発射された。 ワコールを守る盾を貫通する。光はそのままワコール自身を飲みこんでいく。 壁に当たった光は、爆散し闘技場内に散っていった。包まれる。俺の意識は途絶えていった ……どのくらいの時間が経ったのだろうか? 一瞬にも感じられるし、永遠にも感じられる時間だった。 「……にぃに」 沙綾の言葉が俺を覚醒させた。 ゆっくり目を開けると、残光が残る中、ワコールがうつ伏せで倒れている姿が飛び込んできた。 「ワコールさんが……」 「ああ」 ひどい脱力感を感じながら、俺は這うようにワコールへと近づいていった。ふと、自分のおちんちんを見ると、へたり、と小さくなっている。先ほどの攻撃ですべてを吐き出してしまったのだろう。 ワコールの体には、先ほどの攻撃による傷は何一つついていなかった。呼吸も確認でき、生きていることを確認すると、俺も沙綾もホッと胸をなでおろす。 「……終わりにして……ください」 虫のような声が、ワコールから発せられる。 ワコールは辛そうに体を起こすと、そのまま仰向けに倒れてしまった。うつろな表情で、天井を見上げている。 「貴方たちの思いの方が強かったようですね……」 「ワコール……」 「私も貴方たちのような、お互い信頼できる相手と出会いたかった……」 ワコールはそう言うと、そっと瞳を閉じた。一筋の涙が頬を伝う。 「これから出会えばいいじゃないですか!」 沙綾はワコールに歩んでいくと、手を取った。握った手に力が込められているのが分かる。 「昔の男なんて忘れちゃえばいいんです! ワコールさんは、物凄くきれいだしかっこいいし……きっといい出会いが待っています! ……あ、でも私は裏切られたことはないし、こんなこと言う資格なんて……ないかな?」 ワコールは、目を細めると口端に微笑みを浮かべた。 「ふふ。ありがとう。でも、私は罪を犯してしまった」 ワコールが観客席へと視線を向ける。そこには、数十人のおちんちんを無くしたちん闘士たちが、ワコールを見据えていた。 「私はあの方たちに恨まれても仕方ありません。『ちんたま』開放が成功しても、しなくても……この先を生きようとは思っていませんでした」 「そんな……ワコールさん」 「あの中にはお前を恨んでいる奴なんか、いねぇと思うけどな」 巨ちん女さんだ。 巨ちん女さんは地面を踏み鳴らし歩いてくると、ワコールの目の前で胡坐をかいた。 「私たちちん闘士は、みんなあんたみたいな仕打ちを受ける可能性があったかもしれないってことだ。表裏一体なんだよ。ちん闘士たちとあんたは」 巨ちん女さんは、がりがりと頭を掻く。 「あー! だから私たちはあんたを哀れみはするが、恨みなんてこれっぽっちも持っちゃいねぇ……『ちんたま』を返しさえしてくれればな」 上空を見ると、まだ『ちんたま』はゆらゆらと行き場を失い浮遊していた。 「……『ちんたま』は還るべき場所を探しています。このままではいずれ消え去る運命ですが、ちん闘士が強く願えば『ちんたま』は還るべき場所を認識します。強く願ってください。ここが還るべき場所だと」 その瞬間。頼りなく浮遊していた『ちんたま』は活発に動き始めた。しばらくすると、一つ一つが観客席にいるちん闘士の股間へと還っていく。 「ああっ! セバスチャン! 戻ってきてくれたのね! セバスチャン!」 巨ちん女さんの『ちんたま』も無事帰ってこられたようだった。 「私も……私にもそう思える相手が見つかりますでしょうか……?」 ちん闘士たちの喜びの声が聞こえる中、ワコールがぽつりとそう漏らした。 大きく息を吐く。 「……あっ……やば」 安心したからだろうか。全身から力が抜けていく。視界が狭まり、歓喜の声も遠ざかっていく……。 「……に……。大丈……! に」 俺は愛する妹の声を聞きながら、眠る様に瞳を閉じた。 エピローグ おちんちんフォーエバー! 性欲が無くなった! ワコールとの戦いから一週間。俺は激闘の疲れとケガのせいでしばらく入院することになってしまった。 まぁ、疲れとケガはすぐに治るとして……。由々しき事態が俺を襲っていたのだ。 綺麗なナースが俺の世話をしてくれていても! やさしく点滴を交換してくれても! なにも感じないのだ。 以前は入院したら「あらあら、男の子だもんね。入院してたらコッチの方が大変になっちゃうよね。お姉さんに任せてね。これも私たちの仕事だから」とかなんとか、エロエロなこともあるのかと期待していた。 ナースさんのお尻のパンツラインを見ても、服の上からおっきなおっぱいを見ても全く何も感じない。肩凝りそうだなくらいの感想しか出てこない! やばいなーと思う反面、別にいっかとか思っちゃう。だって性欲ないし。でも、冷静に考えてみると相当やばいんじゃないかと、肝を冷やしているわけだ。 ワコールさんとの戦いで、ほとばしる性欲を放出してしまったのだろうか。今考えてみれば、最後の攻撃はただの射せ――。 「にぃーに」 やけに明るい声が聞こえてきた。 病室の入り口には、花が満開に咲いたような笑顔を俺に向ける沙綾がいた。 Tシャツに膝上のスカート。ん? なんだかおっぱいが大きくなってきてるんじゃないか? そろそろスポーツブラじゃなくて、普通のブラを付けたほうが良いんじゃないか? しかし、こう思うのも、単純に沙綾の成長を気にしているのであって、エロい妄想は全く沸いてこない。 沙綾は妙にうきうきと病室に入ってきた。 「今日ワコールさんに会ってきたよ。お見舞いに来るの遅くなっちゃった」 沙綾はベッドに座ると、俺の顔を覗き込んだ。 「思ったよりも元気だったよ」 「そっか。それならよかった」 ワコールさんはあの後、警察に自首した。もちろん『ちんバト!』のことは隠して。単純に地下で行われているライブ中に、傷害事件を起こした。ということでだ。 バーのマスターや案内役の女性の活躍により『ちんバト!』の闘技場は存在を隠せたそうだ。超有能。 「ほとぼりが冷めたら、いろんな仕事をしてみるんだって。さすがに『ちんバト!』にはもうかかわることはできないだろうけど……いい人、見つかるといいよね!」 「ああ……そうだな」 本当にそう思う。あの人は純粋だったんだ。 窓からは西日が差し込み、そろそろ暗くなってくる時間帯だ。 「もうこんな時間か……そろそろ面会時間も終わるな。暗くなる前に帰れよ」 沙綾は頬を大きく膨らませた。 突然、立ち上がると病室内を物色し始めた。 「お、おい。沙綾……どうした?」 沙綾は俺の質問に答えない。 「うんっ! ここかな?」 沙綾がのぞき込んでいたのは、着替えが入っている小さな収納だ。中身のタオルや着替えをぽいぽい、と外に出すと、小さな体を滑り込ませた。 「うん。これなら見つからない!」 「ええっと……沙綾? 何してんの?」 沙綾は小さな舌をぺろり、と出した。 「今夜はにぃにと一緒にいようと思って。ここに隠れていれば見つからないかなーって」 「ええー……お前。そんなの無理だよ。見つかったら怒られちゃう」 「……なんだかにぃにらしくないなぁ」 沙綾がじとーっと俺の目を見つめてくる。 これまでの俺なら、うひゃっほーいとなっていたはず。この状況だったら、これからエロい事あるんじゃね? あるんじゃね? ひゃっほーい、となるところであったが、今の俺は性欲がないのだ。いやね。沙綾と一緒にいられるのは嬉しいけど、それは家でもできるわけで。 沙綾は口をへの字に曲げたまま、収納から出ると俺に歩んでくる。 ゆっくりとベッドに上がると、俺に跨る。ぎしり、と控えめにベッドが軋んだ。 「あ……あの? 沙綾? 何を」 「ねぇ、にぃに。私の名前って「さや」だよね」 「ああ……そうだけど?」 そう言うと、沙綾はおもむろにTシャツを脱ぎ始めた。小さなお胸には可愛いスポーツブラ。スカートの腰の留め具をパチリ、と外す。重力でスカートはストン、と落ちた。沙綾は恥ずかしそうに身をくねらす。 「にぃに、私の「さや」におちんちんを収めてみない?」 その言葉に、俺のおちんちんはふっくらとしてきたのだった。 |
たかセカンド 2018年04月29日 23時31分46秒 公開 ■この作品の著作権は たかセカンド さんにあります。無断転載は禁止です。 |
|
|
+50点 | |||
---|---|---|---|---|
|
作者レス | |||
---|---|---|---|---|
|
+20点 | |||
---|---|---|---|---|
Re: | 2018年05月13日 22時57分45秒 | |||
|
+20点 | |||
---|---|---|---|---|
Re: | 2018年05月13日 22時36分21秒 | |||
|
+30点 | |||
---|---|---|---|---|
Re: | 2018年05月13日 22時25分38秒 | |||
|
+10点 | |||
---|---|---|---|---|
Re: | 2018年05月13日 22時22分20秒 | |||
|
+10点 | |||
---|---|---|---|---|
Re: | 2018年05月13日 22時21分04秒 | |||
|
+10点 | |||
---|---|---|---|---|
Re: | 2018年05月13日 22時19分27秒 | |||
|
+10点 | |||
---|---|---|---|---|
Re: | 2018年05月13日 22時17分47秒 | |||
|
+10点 | |||
---|---|---|---|---|
Re: | 2018年05月13日 22時17分04秒 | |||
|
+10点 | |||
---|---|---|---|---|
Re: | 2018年05月13日 22時16分02秒 | |||
|
+10点 | |||
---|---|---|---|---|
Re: | 2018年05月13日 22時14分54秒 | |||
|
||||
Re: | 2018年05月13日 22時14分03秒 | |||
合計 | 12人 | 190点 |
作品の編集・削除 |