少年たちが見出した卵に関する偉大なる世界真理、その一端 |
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ある春の昼下がり、少年Aは言った。 「……卵ってさ、エロくね?」 少年Bはその言葉に、まず、眉を寄せる。 「……は?」 「いや……、卵」 「卵って、あの卵? 玉子とも書く、あの?」 「そうそう、あの、コケコッコーのあれ」 「TKG?」 「TKG」 コクコクと、Aはうなづく。 「……エロイか?」 B、渾身のマジレスであった。 「……エロイさ」 A、メガネのレンズがキラリと輝く。 その、過剰なまでの自信に裏打ちされた揺るぎないAの声に、Bはゴクリと息をのんだ。 なんだ、こいつの確信は。こいつの自信は。 あんな卵みたいな日常的なTKGメインメンバーのどこに、そんな確定的エロチシズムを感じるというんだ。 Bの中に生まれる、「まさか」という疑問。 彼は意を決し、Aに問いかけた。 「仮に、卵がおまえの言う通り、エロイとしよう……」 「ああ」 「だが、俺にはいまいちそのエロさが伝わってこない。わからないんだ」 「……そうか」 「だから教えてくれ。卵の、何がエロいんだ?」 「じゃあ、これを見てくれ」 Aは冷蔵庫からひとつの卵を取り出した。 それは、どう見ても卵だった。 ゆでてよし、煮てよし、焼いてよし、TKGにしてよしという万能食材、卵だ。 「この形をよく見ろ」 Aに言われて、Bは卵を凝視する。睨みつける。その視線で、射殺すほどに。 「頭の中に思い浮かべるんだ」 「何を、だ……」 Bが再び尋ねると、Aは重く低い声で告げた。 「女の、尻の、丸みを」 「――――ッ!」 電撃のような鮮烈なひらめきが、Bの脳裏に瞬いた。 まさか! まさか、Aが言おうとしていることとは――ッ!? 「分かるだろう、卵の丸み。そのフォルム――、女の尻の、丸みっぽい!」 「あ……、ああ……ッ! あああああああああああああああああああああああああ!」 言われてみればその通りだった。 卵の表面が描き出す、緩やかな丸み、たおやかな曲線。 それはまさに、ホットパンツをはいた女の尻が描き出す生々しい肉感的なエロ丸み、そのものではないか! 「それだけじゃ、ないぜ……?」 「なん、だって……!」 Aは言う、卵のエロさとは、女の尻の丸みにおさまらないのだ、と。 Bにとって、それは衝撃的な言葉だった。 まだあるというのか、卵の深淵。自分が知らない、卵という存在の奥義たる概念が。 知りたい。とても知りたい。 知りたいと尻をかけているわけではないが、とにかく、知りたい。 その強烈なる知的欲求にBの心は渇いていった。 まるで千里を旅した末に砂漠のオアシスに見出した、そんな心地で彼はBに問うのだ。 「教えてくれ……、その、もう一つって……?」 するとAは言った。 彼はここに万感の想いを載せて、百年の難題を解き明かした数学者のごとき、賢者の顔つきで告げたのだ。 「――――卵子」 「…………それ、ッかぁ!」 Bの全身が震えた。 細胞の全てが泡立って、骨の髄までをも襲う歓喜の感覚。 痛々しいまでに響きわたる祝福の共感。絶叫したい気分だった。そして、世界を祝いたい気分だった。 「卵って、エロいよな!」 「ああ、卵って、エロいな!」 AとB、男二人、今、固く握手を交わして世界の真理を共有する。 ある春の、昼下がりのことだった。 |
6496 2017年04月30日 23時54分11秒 公開 ■この作品の著作権は 6496 さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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