謎の卵ピーちゃん |
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恐竜の卵が発見された。 化石ではない。 まるでついさっき産み落とされたばかりのような、小さな命を宿した恐竜の卵だ。 この世紀の大発見に世間は「なにそれ!? なにそれ!? すっごーい!」と、どったんばったん大騒ぎになった。 恐竜饅頭が作られ、アニメ化され、ゲームにもなった。 そして何の恐竜の卵かも分からないまま名前が募集された結果、「ピーちゃん」と名付けられた。 本当は「ピーすけ」という名前での応募だったが、さすがにそれは拙い。審議を重ねた末の「ピーちゃん」である。 しかし、そもそも首長竜の卵なのだろうか? 否、実はそれがまったく分からないのであった。 卵が発見された時、もちろんどんな恐竜が生まれてくるのかと検査が行われた。 が、どのような検査を行っても中の様子がまるで分からない。 とても硬い殻はX線なども通さなかった。 それでいて生暖かく、確かな生の鼓動をも感じるのであった。 そのような結果を受けて研究者の中には「やめるのだ。中からバケモノが出てくるかもしれないのだ」と卵を殺処分する声もあった。 しかし、大半の研究者たちは「孵化してみるのです。大丈夫です、わたしたちは賢いので」と謎の自信を覗かせて、卵を孵化させてみることになった。 かくして孵化プロジェクトが開始された。 特製の孵卵器に入れて、一時間に一回転卵。 果たしてどんなピーちゃんが出てくるのかと研究者たちはワクワクしながら、その日を待った。 孵化を試みてから三日目のこと。 研究者たちは異変に気付いた。 転卵、すなわち卵の内の胚が卵殻にひっつくのを防ぐため定期的に卵を転がすのだが、ただ転がせばいいというものではない。 およそ90度転がすのが理想とされている。 その為、研究者たちはピーちゃんの卵に印をつけておいた。 これで正確に90度転がすことが出来るという寸法だ。 それが微妙にズレている。 しかも一回や二回ではなく、発見してから何回も。 気になって観察してみたら、なんと卵が自ら少しずつ動いていた。 どうやら卵の中のピーちゃんはもう身体が出来上がっており、今にも殻を破って出てくるようである。 研究者たちは興奮した。 現代に恐竜が生まれるという奇跡の瞬間に立ち会おうと、四六時中卵の前に張り付く者もいた。 が、どれだけ待っても殻にヒビが入ることはなかった。 その代わり卵の動きは日増しに大きくなり、ついには孵卵器の中をごろごろと動き始めるようになった。 そしてこの頃になると、卵が徐々に大きくなって来ていることに気付いた。 妊婦のお腹じゃあるまいし、産み落とされた卵が大きくなるなんて有り得ない。 ここにきて研究者たちはピーちゃんを得体の知れない不気味なものとして認識するようになった。 「やっぱりなのだ。ここは新居さんに任せるのだ」 そして発見当初から孵化に反対していた研究者・新居さんはピーちゃんの卵を持ちだすと、どこかへ出かけていった。 どこへ行くのだろう? この謎の卵を解明できるような施設があるのだろうか? しかし、一時間後に戻ってきた新居さんはただひとこと「山の中に捨ててきたのだ」と自信満々に答えたのだった。 「あー、新居さん、やってしまったねぇ」 研究者たちは呆れた。 が、それもすぐに驚愕に変わった。 なんと新居さんが捨ててきた翌日、研究者のひとりがふと孵卵器を見ると、なんとピーちゃんの卵がそこにあったのだ。 新居さんが反省して取りに戻ったのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。 かと言って他の研究者たちも「自分たちも何もしてない」と口を揃える。 「だったらもう一度捨ててきたらいいのだ!」 新居さんがいきり立ってピーちゃんを抱える。 生きた恐竜の卵という貴重な研究資料を捨てるなんてとんでもないことだが、その不気味さもあって誰も止めなかった。 「モシカシタラ卵ハ自分ノ力で戻ッテ来タノカモシレナイネ?」 と、その時、外国人である研究者たちのボスが、片言の日本語で不安を口にした。 なんせ孵卵器の中であれほど動き回っていたのだ。もし卵そのものに意識があり、帰巣本能で戻ってきているとしたら……。 皆はありえないと思いつつも、誰一人として否定出来なかった。 そして不安は的中した。 卵は何度も何度も新居さんが捨てに行ったが、その度に戻ってきた。 しかも戻ってくる時間が次第に短くなってくる。 詳しく調べてみたら卵の自転速度は変わらないものの、少しずつ大きくなることで一度の回転で進める距離が伸びていることが分かった。 ここに至り、ピーちゃんは研究者たちからその可愛らしい名前を排除され、「謎の卵P」と呼ばれるようになった。 さて、ある日、新居さんが謎の卵Pを研究所から十キロ離れたいつもの場所に捨てた。 その場所から同時にスタートする新井さんと謎の卵P。 初めて新居さんが捨てた時、卵Pの直径は十センチで、戻るのに十時間かかったのが研究によって分かっているが、この日はなんと同じ一時間で帰宅する事となった。 では、謎の卵Pが一日に1%膨張すると考えた場合、果たしてこの日は最初に捨てた時から何日後のことか? またその直径は何センチになっているかを答えよ。 なお、謎の卵Pがかなり大きくなっていても、新居さんはジャパリバスの前部を抱えてジャンプしたサーバルちゃん並の力持ちという設定なので問題なく廃棄場所まで運べることにする(配点 -30~50点) テスト中で本来なら静まり返る校舎に「アニメオタクの数学教師が作った問題、超ウゼェ!!!!!」と生徒たちの声が響き渡った。 おわり。 |
タカテン 1nxaNUk4a2 2017年04月28日 04時52分05秒 公開 ■この作品の著作権は タカテン 1nxaNUk4a2 さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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合計 | 19人 | 170点 |
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