喫茶店とコーヒーと密室の話 |
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1 喫茶『コージー』はいつもの様に閑散としていた。 店の通りに面した側はガラス張りになっているので、外からでもその様子がよく分かる。 アンティーク風の家具、木造りの内装、漂うコーヒーの香り。 そして何よりも『落ち着き』がその空間には存在している。 僕の考え得る限り、この喫茶店はゆったりと寛ぐには最適の場所だった。 今日は友人と花火大会に行く約束をしている。 まあ、少し早く家を出てしまってなんとなく時間を持て余していたので、行きつけのこの店に足を運んでいた。というだけなのだけれども。 扉を開けると、備え付けられたベルがチリンと鳴り、店の主に来客を知らせる。 店内の空調が外で火照った体の熱を奪っていった。 店へ入って正面にカウンターがあり、そこにはこの店のマスターがいる。 年齢は五、六十くらいだろう、髪に白い物が混じっている。バーテン服に、濃緑色のエプロンをしており、それがとても様になっている。 僕はマスターへアイスコーヒーを注文すると、一番奥の席へと向かった。 慣れない衣装で躓きそうになりながらも、なんとか席に到着。 この喫茶店の一番奥、席と席の衝立で外からは死角になっている部分。 その場所には既に先客がいた。 女性である。 彼女の容姿でまず目を引くのは、艶やかなロングの黒髪だった。大体腰の位置よりも少し長め。服装はロングのスリーブでゆったりとした白い服、下はジーンズだった。正確な年齢は知らないが、見た目二十三、四歳くらいだろうか。 「今日も来てたんですね、恋(れん)さん」 「私は君よりもこの店の常連だ。なんだ? 私がここに居たらいけないのか? ん?」 ギロリと睨みつけられる。 若干つり目っぽいので、人によっては素でも少しきつい印象を与えるかもしれない。 「常連って言っても、ほんの数日くらいしか変わらないじゃないですか」 「数日だろうが一日だろうが、とにかく君よりアドバンテージがあることに変わりはないだろう? ああ、あれだ、先に領有権主張した方が勝ちみたいな」 「全然違うと思いますけど……」 夏休みに入るほんの少し前に見つけた店。 初めて入店した日、僕がこの奥まった席に座っていた時、不意に話しかけてきたのが恋さんだった。 その時、彼女が言った言葉は「ここは昨日私が座っていた席だ。だから君はそこを退きたまえ」という、なんとも自分勝手な台詞であり、それ以来、お互いに同じ席に座ろうとするものだから、毎回今日の様に相席することになってしまう。 「とりあえずいつまでも突っ立ってないで座ると良い。まあ、君がその場でずっと立っていたいと言うのなら止めはしないが」 やれやれ、と半ば呆れながら僕は席に着く。 当然、恋さんの対面だ。 目線は正面よりも少し上、目算で十五センチ程だろうか。 僕が百五十センチだから、彼女の身長は百六十五くらいか、いや、座った状態では実際はよく分からない。どちらにしても、背が高いという印象。 テーブルの上には飲みかけのコーヒーとノートパソコンが一台。 彼女はおもむろにコーヒーへ口を付けたかと思うと―― 「さて、君、何か面白い話をしたまえ」 「え?」 無茶振りをした。 「聞こえなかったのか? 私は何か面白い話をしろと言ったのだ。そう、あれだ、相席代の代わりと言ってもいい。別に超常現象、怪奇現象の類で無くても良いし、君の身近で起った些細な話で充分構わない。それほどにな、私は退屈しているんだよ」 そりゃあ、毎日この喫茶店に来ている位なのだから、よっぽど暇なのだろう。 それに僕自身、誰かに聞いてもらいたいと思っていた話がある。 これは、良い機会なんじゃないだろうか? 「分かりました。恋さんがそう言うのであれば、まあ仕方ないですね。面白い話かどうかまでは分かりませんけど。でも、これから友人と花火大会に行く用事があるので、その時間になるまでならお付き合いします。それでいいのなら」 「ああ構わない」 「それでは、夏休みに入る前の話、僕のクラスで起こった事件の話をしましょう」 「ほう、事件? それは興味深いな。少しはくだらない人生の退屈しのぎにはなるだろうさ」 2 僕の高校では選択授業と言うのがあって、それぞれ、書道、美術、音楽から好きな科目を選んで履修することになっています。 三クラス合同の授業ですので、一応希望は聞かれるんですが、皆が皆、希望の科目になるわけではなく、定員が決まっているのであぶれたら成績順、となるわけです。 「わかった、わかった。そういう前置きはいいから、早く本題を話せ」 話には順序ってものがあるのに……まあ、結論から言うと、生徒の『美術作品』が『誰か』に壊された、という事件です。 「『壊された』と言うことは何か証拠があったわけだな?」 いや、あったにはあったのですけど状況証拠的なやつですね。 体育の前、作品は無事で、授業が終わり教室に戻ってきた時、その作品が教室中に散乱していた。破壊されていた。 ああ、体育の授業は移動教室ですよ、体育館で行います。 その体育の授業時間に抜け出した誰かが、作品を破壊したんだろう。――という。 けれども問題があるんです。 「問題?」 体育の時間、教室には鍵をかけているんです。 いわば盗難防止のためですね。 教室の鍵の管理は学級委員が行っています。 鍵を閉めた学級委員の証言では、体育の前には教室内に『異常はなかった』そうです。 つまり犯行は体育の授業中に行われたということになります。 「ん? 鍵を閉めているということは、体育の授業中『教室内は密室』だったということか?」 そうですね。 それで、話が長くなるので密室の話はとりあえず置いておいて、先に犯人、つまりは容疑者の話をしましょう。 体育の授業中、一時的に抜けだした人物が三人います。 抜け出した理由はいずれもトイレに行っていたというものです。 「まあ、普通だな」 仮に名前をA、B、C、と置きましょう。 ABCはそれぞれ時間的にはバラバラに抜けています。抜けていた間の時間は同じ位、大体五分程度です。 「それでは誰にも違いが無いではないか、犯行動機があるとか、事前に何か怪しい行動をしていた、とか無いのか?」 まあ、待ってください。まず、なぜ美術作品が狙われたか、破壊されたかについて説明したいと思います。 被害者は美術系に進学するという志望をしています。 そのために、この作品を授業だけでなく、美術のコンクールに出展するつもりでした。 このコンクールは美術系を目指す学生にとって登竜門的な存在らしく、これに参加出来ないのはかなりの痛手なのではないかと推察されます。 事件当日、美術の授業は無かったのですが、作品の完成を急ぐため放課後に美術室で作業するつもりで、学校に美術作品を持ってきていたのが災いしました。 実際、被害者は作品を創り直したものの、その作品の制作は時間がかかるらしく、結局コンクールには間に合わなかったという話です。 犯人が被害者に何かしら負の感情を抱いていたとすれば、これが犯行の動機、仕返し、報復などの手段となり得ます。 「なるほど」 次に、各々の犯行動機を見ていきましょう。 まず、Aから。 Aは学年二位の成績でした。 そして被害者は学年一位。ここまで言えば分かりますよね? 美術の作品は当然ながら成績の評価に繋がります。 作品を破壊してしまえば、評価に影響が出るだろうことは誰にでも想像出来る。 そういう意味でもAが犯人だった場合―― 「犯行の目的は達せられているわけだな?」 ええ。 では次はB。 Bは被害者の元カノでした。 「なるほど、今では新しい彼女が被害者にはいるわけだな?」 鋭いですね。 その通り、被害者に捨てられた恨みで犯行に及んだのではないか、というわけです。 よくある愛憎のもつれと言うやつですね。 目的としては単純に、嫌がらせと言う意味で犯行が行われたことになります。 「ふむ、しかしこんな回りくどいやり方で嫌がらせなどするだろうか? 少し疑問が残るな」 そして最後にCですね。 Cは被害者と特別仲が良かった。親友というやつです。 小学校からの付き合いだそうで、特に今まで仲たがいしたことは無いそうです。 「三人の中で一番犯人では無さそうだが……」 まあ、人間心の中では何を想っているか分かりませんからね。 長年、仲の良い振りをしつつも、実は恨んでいたなんてことも充分考えられます。 さて、事前の行動についてですが、目撃者の証言から、更衣室に向かう際に教室を出た順番が判明しています。 B、C、Aの順番です。 教室を出る際に、特に怪しい行動など無かったみたいです。 「ふん、手がかりは無しか……」 3 と、話の区切りがちょうど良い所でマスターがアイスコーヒーを運んできた。 後ろ手に髪を縛り、髪が邪魔にならないようにする。 差し出されたコーヒーを受け取り、まずは一口、口内を潤した。 今まで話し続けていたせいで、口の中が大分乾燥していた。 まずコーヒーの芳醇な香りが、ぶわり、と広がる。 豆の品種などまるで知らないが、苦みは少なく酸味が利いていることだけは分かった。 グラスを置き、テーブル端に備えられているガムシロップとミルク(コーヒーフレッシュ)をコーヒーに入れる。 ストローで軽くかき混ぜてやると、氷がグラス内部に当たり、カランカランと心地よい音を立てた。 「おい、君」 恋さんに鋭い視線で睨みつけられる。 「な、何ですか?」 何か悪い事でもしてしまっただろうか。 「今、何を入れた? 君が今、コーヒーに入れた物質は、健康被害を著しく損なう恐れのある物だぞ。ガムシロップに含まれている果糖コーンシロップは、砂糖よりも激しく血糖値を上昇させる天然甘味料だ。原材料は遺伝子組み換えで作られた安いとうもろこし。また、コーヒーフレッシュは植物性油脂と水に乳化剤を加えクリーム状にした後、着色料及び香料で色合い、香りをつけることで製造される、乳製品などでは断じてなくいわば油の塊だ。昨今話題になっているトランス脂肪酸もたっぷりと含まれていることだろう。なるほど、それはそれはさぞ健康にいいだろうな」 「なんてこと言うんですか!! 一気に飲む気が失せましたよ……」 口を付けようとしていたグラスを遠ざける。 「二百五十円、これからの健康を買ったと思えば安い物じゃないか?」 「まあ、そうかもしれませんが……それで、今まで話を聞いた感じ、どうですか?」 「今の段階じゃ殆ど何もわからないのと一緒だな。誰にでも犯行が可能であった様にみえる」 「確かにそうですね。でも、これから密室の話をしていく内に絞られてくるかもしれませんよ」 4 それでは続きを。 先ほど保留していた密室の話です。 「確か、防犯のため教室に鍵をかけていたんだったな? だから事件時『教室内は密室』だった」 はい、そうです。 正確には、『学級委員が鍵をかけてから、再び開けるまでは密室だった』ですね。 「初めに確認しておきたいんだが、その『密室』は本当に密室だったのか? 例えば、扉は閉まっていたが、窓は開いていて窓から出入りできるとか」 まず、窓についてですがこれは『すべて施錠されていました。廊下側も外側の窓もです』。 ただし、廊下側の窓の上部に小窓が設置されています。 これには鍵がそもそも付いておらず開閉は自由です。 しかし、その小窓は小窓と言うくらいですから、手が通る程の幅しかありません。 したがって『人間が通ることは不可能です』。 教室の位置についてですが、一階ごとに一学年が使用していて各学年ごとに七クラスあります。 一階は食堂及び職員室、校長室など、二階は一年生、三階は二年生、四階は三年生。特別教室は別館にあり、二階の連絡通路を通るか、一階からしか入れません。 事件があったのは二年生の教室、つまり三階ですね。 廊下は一直線で階段はそれを挟んだ形、廊下の端と端に階段があり、間に教室があるという感じです。僕のクラスは三組なので大体廊下の真ん中辺りです。 「大体の位置関係は分かった。館ものじゃあるまいし、秘密の通路なんてものが学校にあるとも思えない。やはり『完璧な密室』だったわけだ。ここで一つ疑問が生まれる」 どんな疑問ですか? 「体育の間、鍵の所在は何処だったのか? 仮に学級委員が共犯だったなら、A、B、Cの誰にでも密室ではなくなるのではないか? 犯行は可能になる」 『鍵は体育の授業中、ずっと職員室内に存在していました』 教員がそれを確認しています。 「その鍵は確かに本物だったのだろうか? それらしい鍵を用意しておけばすり替えが可能だ。それでなくとも合鍵があれば、より話が簡単になる」 鍵には、その鍵の場所、つまり保健室、校長室、二年五組、などが記されたプレートが金属の鎖で繋がれています。『鍵を複製したり、鎖から鍵を外すことは困難で不可能である』と言えます。 「実は事件が起こったのは別の教室、つまり隣の……」 授業中なのでさすがにそれは無いです。 「扉の隙間から針金か何かで」 美術作品は教室中に散乱して破壊されていました。針金じゃきついのではないかと。 「夏だから氷を使ったトリックで施錠して、後には証拠が残らないという」 フィクションの見すぎなのでは? 「なに? ではどうやって犯人は密室の教室に入り、作品を破壊したというのだ!!」 5 「あんまり根を詰めても良くないですし、少し休憩しませんか?」 文字通り頭を抱える恋さんへ僕は提言した。 タイミング良く、マスターがコーヒーを運んでくる。 恋さんが追加で注文した物だ。 夏場なのに、何故かホットのコーヒーである。 「いいんだよ、私はコーヒーはホットが好きなんだ。それに、別に外で飲むわけじゃあない。空調の利いた涼しい店内で飲むのだから問題ないじゃないか。 だろう?」 言いつつ、テーブルの端に備えられている、ガムシロップとコーヒーフレッシュを手に取る。 「ちょっ、さっきと言っていることが違うじゃないですか!!」 非難めいた視線を感じたのか、恋さんが言い訳をする。 「頭脳労働は結構カロリーを消費するんだよ。一日の基礎代謝の約二十パーセントは脳がカロリーを消費しているらしいぞ。糖分を補給するのは脳にとっては良いんだよ」 「糖分はそうかもしれませんが、そっち(コーヒーフレッシュ)は違うでしょう? 恋さんいわく油で出来ているらしいですからね」 「コーヒー一杯くらいなら、長い人生の中で言えばほんの僅かな量だし、健康的にも全く問題ないのではないか?」 「今この瞬間の濃度が高いのに、人生全体で測ったらダメでしょう?」 「ははは、確かにそうだ」 恋さんは笑いながら、一気にコーヒーを飲み干す。 「ふむ、なかなかいけるじゃないか。健康と味は別ものだということだな」 本当にこの人は自分勝手な…… 呆れを通り越して笑いさえ出てきてしまう。 ふと、メールの着信音が店内に鳴り響く――僕の携帯だった。 「あ、すみません恋さん。もう時間みたいです。この続きはまた今度と言うことで」 「うむ、仕方がないな。それまでに、密室の謎については考えておくよ」 僕はテーブルにある伝票を取り、会計へと向かうと喫茶店を後にした。 6 扉が閉まると、備え付けられたベルがチリンと鳴る。 「さて一息ついて落ち着いたところだし、さあ、解答編へと行こうかマスター?」 「密室について分かってたんですか!?」 驚いた様子でマスターが返答する。 「まあね。それよりも私はマスターが話を聞いていたことの方が驚きだよ」 この席とマスターの居るカウンターは、距離が近いのでもしかしたらと思ったら、本当に聞いていたとは。 「なぜ、本人の前で話さなかったんです?」 「それは、これから話そう。 まず前提条件として、この事件の犯人は、『被害者が美術作品を学校へと持ってきている』と知っていなくてはならない。かつ、『被害者が美術系に進学希望しており、コンクールに作品を出そうと考えている』ことを知っている必要がある。 普通、親しくもない人物に対して、自分の進路希望を話したりなどするものだろうか? そう、しないはずだ。 この時点で、被害者と近しい関係には無いAが犯人、という線は消える。 また、昔は親しかったかもしれないが、現在進行形で親しくないBも『被害者が美術作品を学校へと持ってきている』ことを知らないのではないか?」 「でも、美術作品なんて大きなもの周囲が気が付かないはずがないのでは?」 「いや、あの子は『美術作品』としか言っていない。その大きさ、形、色、どんな物か、まるで情報が無い。小さな物であることも充分考えられる。そして、事件当日、美術の授業は無かった。 つまり、犯人は現在進行形で被害者と近しい人物、ということになる」 「ということは、残ったCが犯人と言うことですね」 「ただ、そうなると動機が不明だ。これは推測だが、実はCはBの女子生徒とも友人であったのではないか? 元々被害者とも仲が良いのだから、その縁で親しかった可能性もある。Cの生徒はBを捨てた被害者を許せなかったんじゃなかろうか? 被害者の友人として、Bの友人として」 「なるほど。可能性はありますね。では、密室の方はどうやって潜り抜けたんです?」 「密室については、どうやって教室の中に入るのかではなく、どうやって壊した作品を教室の中に入れるのかを考える。おそらく事件当日の犯人の行動はこうだ。 学級委員によって教室が施錠される前に、美術作品を予め外部へ持ち出し、どこかへ隠しておく。施錠された後に、作品を破壊し、廊下側の小窓から教室内にばら撒く。授業が終わった後、何食わぬ顔で教室に戻れば、教室の鍵を開けた学級委員が事態を発見している」 マスターが感心して頷く。 「確かにそれなら密室はいけますね」 「だがもっと簡単な方法がある。それは、Cの生徒が学級委員であることだ。体育の授業前に作品を破壊し、扉を閉めるだけでいい。学級委員本人が作品を破壊し、教室に作品をばら撒いているのだから、体育の前に教室内に『異常はなかった』のは当たり前だろう。当然、体育の授業中、『完璧な密室』は維持される」 「どちらが正解なんです?」 しばし、思案する。 結局のところ、推測に推測を重ねているだけの、言いがかりなのではないだろうか。 伝聞しただけの話で、明確な答えなど出るはずもない。 「それは――分からない。しかし、美術の作品を被害者が学校に持っていくことを、あらかじめ誰かに教えていたとは考えにくい。その日、美術の授業は無かったから、犯人は、当日学校に来てから被害者が作品を学校へ持って来ていること知った、と考えるのが普通だ。つまり、犯行は突発的な行動、それを踏まえると正解は後者なのではないかと私は考える」 ふう、と溜息をつく。 「ここで、一つ疑問だ。なぜ『彼女』はこんな話を私にしたのか? マスターはどう思う? 私は『彼女』が少しは罪の意識を感じているからじゃないかと思う。そう、話に出てきた容疑者Cこそ語り部である『彼女』なのではないか? 誰かに話を聞いてもらい楽になりたかった。自分が犯人だと当てて欲しかった…………とかね。まあ、あくまで推測の域を出ないわけだが」 色とりどりの明滅が店内の壁色を替わる替わる染め上げる。 それに伴う連続した破裂音と腹に響くような独特の振動。 閉された店内まで、その音は響いてくる。 「案外近いのだな」 今頃、花火を見上げている彼女は何を想っているだろうか? 飲み残されたアイスコーヒーの氷が、独りでにカランと音を立てた。 |
音波 雲 2016年06月12日 21時30分46秒 公開 ■この作品の著作権は 音波 雲 さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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