真夏の俺のマイサマー夏

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 夏だ。
 そして砂浜だ。
 砂は白く、海は青い。
 寄せては返す波の音。
 照り付ける太陽は、空気をゆらゆら歪ませて、そこに響くはノリ優先のミュージック。
 水着。
 そして水着。
 老若男女がどいつもこいつもしょっぺぇ水着姿でしょっぺぇ海水に体浸していやがる季節。
 なんてこった。
 こりゃあ間違いなく夏だ。
 夏といえば、そう、恋だ。
 恋は激しく燃え上がるサマーバケーションラバーズインファイア。
 そうなれば恋をするしかない。何せ夏の海に来ているのだ。
 命短し恋せよ乙女とか昔のナイスガイも言っている。
 問題は俺がピッチピチ(死語)のガラスの十代(死語)なナウなヤング(死語)のボーイだってことだ。
 いいや構うものか。
 夏に大胆になるのは男の特権だ。
 女が大胆になるのはベッドの中だけでいいのだ。
 そこまでエスコートし、リードして、女に自分を惚れさせるまでが男のお仕事なのだ。
 そうと決まればナンパだ。
 俺と一緒に真夏の夜の夢を淫らにダイブトゥードリームしてくれる女をひっかけるのだ。
 なぁに任せておけよ、この俺のポテンシャルは全米がバビるレベルだ。
 俺が本気を出せばナデポにニコポは標準装備。
 オプションで目で殺す系の熱視線真夏インザビームラブってなもんなわけだ。
 ヤベェな、今まさにブーメラン水着をつけた俺の全身からむせかえるようなボーイズフェロモンが最大展開されてやがる。
 それはいうなれば愛の粒子。形を得た激情。恋する世界のハローワールド。
 こりゃあヤベェ、下手したら女だけじゃないかもしれねぇな、俺の瞳に恋する子猫ちゃん(死語)は。
 しかし俺はどノーマルなワケであるからして、男に惚れられてもうれしくもなんともねーわけであった。
 そういうのハッテン僕の町(トイレ)でお願いしたいもんだ。
 俺はアウトだが愛の形としちゃあアリだとは思ってるから、かろうじて生存を許可してやるよ。
 おっと、そんなことよりまずはナンパだ。
 これから始まる愛の伝承。恋の神話。このビーチに一子相伝で語り継がれる伝説のレジェンドを今から俺が作っちまうわけか。
 パネェな、俺も地元じゃ一匹ハイエナと言われた男。
 狙った獲物は少しは逃がさねぇ。
 こうなったら俺の肉食系の魂をキャストオフして最高にマブい(死語)スケ(死語)をゲットだぜ!


 ナンパに失敗した。


 無惨に失敗した。
 これ以上ないほど愛想を尽かされた失敗だった。
 初めて出会った女に愛想を尽かされるという超一級の人生経験をしてしまったことにより俺の人生レベルは今、カンストした。
 この経験に値する経験となればそれこそ異世界に転生して醤油を醸造するレベルの貴重な体験でなければ穴は埋められないだろう。
 なんということか、俺の夏はここに終わってしまったのだろうか。
 いやそんなことはない。きっと足りないものがあったのだ。
 女一人射止められないなんてことはこの俺に限っていえばありえないと、カンストした俺の人生レベルが告げている。
 それは本能が告げるよりさらに罪深い俺の根源的運命要素が告げているに等しい。
 つまり足りないものがあるのだ。
 そういうことなのだ。
 夏と、俺と、そしてもうひとつ。
 何が足りないのだろうか。
 それを満たせば俺は完璧なる俺、パーフェクトグレード俺になってしまうことは目に見えている。
 その足りないピースを探して、俺の夏の後半戦がここに始まりを告げた。
 そして足りないものを見つけてしまった。
 この間、実に0.1秒。
 芸術的過ぎる俺の御業に、ここに女がいればきっと濡れていたに違いない。
 だが女はいない。俺は一人だ。しかし足りないものを満たした俺は今度こそグランドオート俺になっている。
 さぁ、今こそ満ちろ俺。足りないピースはこの手の中に。
 何が足りていなかったか。
 そんなものは簡単だ。


 そう、バズーカだ。


 太くて長くて硬い超火力にして大打撃力。貫通よりも爆撃だ。
 火力こそが正義だと、俺の中の魔法少女が告げている。
 擬音にすればパパウパウである。
 見てほしい、このバズーカの威容を。
 このフォルム。太くて丸くて硬くて長い。しかも金属製だ。穴が大きくていっぱい出そうだ。
 しかもいっぱいでたら凄く爆発するに違いない。
 擬音にすればドドガンドガンだ、爆炎の真っ赤な炎が俺の背骨にズンと来るに違いない。
 いや俺だけじゃない。
 この魂に響くピュアソウルバイブレーションの前に誰もがきっとひざまずく。
 バズーカこそは王者の証。 
 10式戦車とてバズーカに赤子の手に捻られるようなものである。
 もういてもたってもいられない。肉団子100個相当のカロリーを、今この瞬間に消費する。
 俺は今燃えている。血も心もカロリーも燃えている。ダイエットにはバズーカだ。新発見に違いないので特許を申請するしかない。
 バズーカを担ぐと肩にずっしりと重みが乗ってくる。
 なんと心強く力強いことだろう。今こそ俺は心技体が満ち満ちた人生最盛期、ハイエンドグランド俺である。
 さぁ、バズーカを手にナンパに出かける時間が来た。
 出陣だ。死に装束は白のブーメラン。
 水杯はしっかりと終えて、出陣前に天皇陛下にお祈りだ。アーメン。
 今このときより我らは夏の修羅に入る。女に会ってはナンパをし、夏にあってはヒャッハーする。
 モヒカンの気構えこそが世紀末。必要なのはバズーカだ。危なくなったらバズーカだ。神も仏もバズーカだ。
 それさえ守っていればバナナもおやつに含まれる。安心してほしい。俺が保証する。
 さぁ、輝いてしまおうか。
 夏の暑さがホットリミット、気温はバッチリ37度。体温を超えて宇宙の法則が乱れるとき。
 酷暑という名のマストダイ。汗にまみれたその体、むせかえる体のスメルがもはやオンリーワンのサマー証明になることは論を持たない事実である。
 今の俺に惚れる女がいたならば、俺はその女を幸せにすることしか考えなくなるだろう。
 俺はその女に生涯をかけて愛を注ぐと誓うに違いない。
 そんな女と俺が過ごすこの真夏の夜。ちょっと想像してみるだに――


 おおう、おおおおおおおう、くは、はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~、ァァ、あ……。ァァん! ぁン……(ビクンビクン)


 迸るパトスなパッションの有様に俺の肉もがいきり立つ。
 ご覧よ俺のマイタワー、太陽の塔は大阪万博さ。ローリング70年代を俺は知らない。
 さぁ時間が来たぜベイビーガール。真夏に吹き荒ぶ愛のブリザードだ。
 どういうことかっていえばそいつぁつまりラブハリケーン。もはや語る必要性がどこにある。
 今から始まる創世神話がゼウスでハデスなポセイドンと来たもんだ。
 準備はOKか俺、武器の貯蔵は十分か俺、今こそ迸れよ俺の宇宙。宇宙と書いてカオスと読む。混沌と書いてコスモと読む。
 俺を構成する全アトム(原子)の原子核、電子がギュンギュン回ってやがる。
 これが噂に聞く粒子加速器なんだと俺は今こそ確信したね。
 加速した粒子から電磁ビームがロックオンだぜ。
 これもまたバズーカの思し召しと思えば、俺も遠くへ来たもんだ。
 じゃ、ちょっとデラベッピン(死語)なマブイ(死語)スケ(死語)でもちょべりばってカム着火すっかー?
 俺のソウルがブリンガーな調べを奏でる。その音色はブビュッ、ビュルル、ブビュビュー!
 美しい! 美音! 圧倒的美音!
 この世界において最低でもバズーカに次ぐ美音なのは間違いないね、なんてこった俺一人でワールドランキングワンツーフィニッシュだ、こりゃあもう言うより先に手を出したモン勝ちだな。
 圧倒的ではないか我がバズーカは。よっしゃナンパな真夏の烈火轟炎舞とシャレこもうぜベイベー?
 レッツゴーさん●き(死語)!


 ナンパに失敗した。


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 夏休みに一回も外に出なかった高校生が冬に書いたブログ。
6496

2016年06月12日 20時38分56秒 公開
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■作者からのメッセージ
◆キャッチコピー:脳みそがゆだるほどの灼熱をお届けします。
◆作者コメント:夏を感じていただけたら幸いです。

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