風鈴通路

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　ふわりと、風鈴がゆれていた。
　りぃんりぃんと風鈴が鳴る。その音が気になって、陽介は顔をあげていた。花をつけていない藤棚に風鈴が吊るされている。旧暦ではもう秋になるというのに、夏の風情はまだ抜けない。陽介の目の前にいる少女も、涼やかな浴衣姿をしていた。
「いつみても綺麗だなぁ。涼華公園の風鈴通路。お祭り期間中に来たかったよぉ」
　紺青の裾を翻し、少女は軽やかに回ってみせる。ときおり見えるうなじから、黒く日焼けした肌と、白い水着の跡が垣間見えた。
　すっと陽介の頬は高揚していた。そんな陽介にかまうことなく、幼馴染の結夏は舌をだして悪戯っぽく微笑みかけてくる。陽介の頬が熱を持つ。ほんのりと涼やかな風が顔を通り過ぎて、その熱を冷ましてくれた。
　秋だなっと、陽介は思った。
　風鈴の通路の向こう側には、たくさんの赤とんぼたちが舞っている。雄と雌がつがいを求めて、くるくると空を巡ることを繰り返している。それなのに、目の前には浴衣に身を包んだ幼馴染と、風鈴の通路がある。夏と秋が、綯交ぜになった奇妙な感覚が陽介の中に生じていた。
　８月の末。１週間後には新学期が始まる今日、陽介は結夏に誘われ涼華公園へとやって来たのだ。夏のあいだ、涼香公園の藤棚には風鈴が吊るされる。その涼ある景観を楽しもうと遠方からも見物客がやってくる。その見物客を相手に、屋台が集まり、夏の中頃には風鈴祭りも行われる。祭りで配られる風鈴に、人々は願いを書き、それを藤棚に吊るすのだ。
　だが、水泳部に所属している結夏に風鈴通路を愛でる暇などない。毎日、毎日、部活に追われては、灼熱の太陽に肌を焼かれ、今日になってやっと束の間の休息を得ることが出来たという。夏休みの課題が未だに終わっていない陽介にしてみれば、迷惑極まりない話だった。
　そう、結夏に無理やり公園に連れてこられ、陽介は迷惑を被っているはずだ。
｢陽介、陽介の風鈴って、どれ？」
　鮮やかな紺青が視界を掠め、陽介は唾を飲み込む。結夏の大きな眼が顔を覗き込んできて、思わず体を仰け反らせていた。結夏の眼がかすかに曇る。甘やかな香りが、鼻腔を滑った。
　また、頬が熱を持つ。心臓が激しく脈を打って、具合が悪くなりそうだった。
｢どうしたの？　顔、赤いよ……」
　熱でもあると思ったのか、結夏が額を押しつけてくる。ひんやりとした感触が体全体に広がって、陽介は心音を高鳴らせていた。頬を嬲る風は涼やかなのに、体は熱を帯びていく。
｢なんでも、ないよっ！」
　彼女の肩に手をかけ、体を引き剥がす。激しい心音が体中に響き渡っていた。
　あぁ、この音を結夏に聴かれていたりはしまいだろうか。心配になって、陽介は彼女を見つめていた。結夏は困ったように眼を綻ばせて、髪に手をあてている。風が、彼女の短い髪を弄んでいた。
　ゆらゆらと、風鈴のようにゆれる髪を見て、遠い日の記憶を思い出す。
　夜の涼華公園。ライトアップされた風鈴の藤棚を結夏と見上げていた幼い自分。結夏が、風鈴にお願いを書こうと笑顔を浮かべてきて――
「書きたかったなぁ。風鈴にお願い……」
　回想が、凛とした声に阻まれる。結夏が風鈴の通路を見つめながら、手を後ろ手に組んでいた。吊るされた風鈴は、結夏を嘲笑うようにひらひらとゆれている。
　陽介の心臓がひときわ大きく高鳴った。風鈴の通路の中には、陽介が願いを書いたものも混じっている。
　それを結夏が見つけた、らどんな風になるのだろうか。そんな、期待とも、不安ともとれる感情がぐっと湧き出てきたのだ。
　自分の風鈴を見つけて欲しくない。けれど、自分の願いを知った結夏を見てみたい。
　陽介の混乱をよそに、結夏は体を回しながら風鈴通路を歩いていく。顔をあげて、陽介の風鈴を見つけようと努めている。そのあとを、陽介はゆっくりとついていった。
　くるくる。くるくる。
　結夏が巡る。日焼けしたうなじが、柔らかくなった陽光に白く照らされる。
　りん。りん。
　頭上の風鈴が涼やかに音を奏でる。透き通った結夏の笑い声が、心地よく響いていく。
　やがて風鈴通路が終わって、蜻蛉が巡る草原にたどり着く。目の前には、町の展望が広がる。急な斜面に混み合うように瓦屋根の建物が敷き詰められ、それが彼方の海原まで続いているのだ。涼華公園まで至る道は、急な坂道で幾重も曲がり角を持っている。
　陽介と、結夏が育った海辺の町。
　じっと、町を見つめながら結夏が黙る。彼女は大きな眼を細める。入道雲が、彼女の顔にくっきりとした影をつくった。
｢私ね、町を出るんだ」
　眼下の町を見つめながら、結夏が言った。
｢高校は、県外に行こうと思う。水泳の強豪校、推薦で行けるかもしれないって顧問の先生が言ってくれてさ……。自分を試してみたくなったっていうか……」
　くるりと、浴衣の裾を翻し結夏が振り向いた。彼女の顔は、笑っている。困ったような、それでいて泣きそうな笑顔だった。
｢だから、陽介の風鈴どうしても見つけたかったんだ……。でも、わかんなかった。ごめんね、付き合わせちゃって。変なの、陽介にはいつだって会えるのにさ……」
　彼女の言葉が耳朶に突き刺さる。
　幼い頃の記憶が、脳裏を反芻する。
　スポットライトを浴びた風鈴。風鈴の紙に、願い事を書く結夏。でも、彼女はどんな願い事を書いたのか、自分には教えてくれなかった。悔しくて夏休みの間、こっそり風鈴通路に通いつめ、結夏の風鈴を見つけようとした。
　でも、風鈴は涼やかな音をたてるばかりで、結夏の思いがどこにあるのか教えてはくれなかった。結夏の風鈴を、陽介は見つけることができなかった。
　だから、陽介は自分の風鈴に願い事を書いたのだ。結夏が一緒に祭りに来られないことを知っていながら、わざと風鈴に願いを書いて吊るしておいた。
　結夏が、それを見つけたがると知っていたから。結夏が、自分の思いをたしかめることを陽介自身が望んでいたから。
｢風鈴、どこで見落としちゃったのかな？」
　結夏の声が震えている。その声を聴いて、陽介は心臓を高鳴らせていた。
　風鈴の音が、りんりんと耳朶に響く。煩いぐらいに、木霊している。
　結夏の眼がじっと、陽介に向けられている。陽炎のように、その眼は頼りなさげにゆらめいていた。
　りんと、風鈴が高く鳴った。陽介は駆け出していた。結夏が、驚いたように眼を見開いた。陽介は、彼女を抱きしめていた。
｢陽介……」
　結夏の震える声が聴こえる。心音が煩い。抱きしめた結夏の体から、高鳴る心臓の音がトクトクと伝わってくる。結夏の温もりが、体を包み込んでくれる。
｢結夏の心臓、煩いよ……」
　顔を覗き込んで、陽介は結夏に微笑んでいた。結夏は驚いたように眼を見開いて、顔を逸らしてしまう。　その頬が、紅葉のようにほんのりと赤い。彼女の頬を見て、陽介は笑みを深めていた。
　赤とんぼが2人のぐるりを巡る。伴侶を求めて、空を舞う。
　夏が終わる。秋が来て、新たな季節が巡っていく。
　迫りゆく季節の移ろいを、風鈴の涼やかな音が彩っていった。
ナマケモノ

2016年06月12日 01時01分52秒 公開
■この作品の著作権は ナマケモノ さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
◆キャッチコピー　

　りぃん。りぃん。風鈴が鳴る。少女と少年は想いを交わす……。

◆作者コメント

ミチルさん。ぷち夏祭り企画開催おめでとうございます。企画が成功しますようお祈り申し上げます。

2016年07月10日 15時51分54秒
 作者レス
  • 　
    　お返事が遅くなってしまい申し訳ございません。拙作風鈴通路を読んでくださり、ありがとうございました。この作品は去年『涼やかさ』を題材にした個人企画用に書いたものです。企画の時期が夏の末ということもあり、幼馴染が恋人同士になる瞬間を、夏から秋へと移り変わる季節の風景に重ね合わせて書いたものでした。
    　
    　
    　この作品を書くにあたって『好き』や『恋愛』という言葉を使わない。なるべく直接的な表現を使わずに登場人物たちの感情を表現する。日常の中のほんの小さないけれど、本人たちからしたらとても大きな事件を描くということを目標にして書いた作品でもありました。
    　
    　
    　ストーリーの説明を補足させていただくと、陽介は基本ツンデレです。だから結花を見るたびに心臓を激しく高鳴らすけれど、冷たい態度を彼女にとってしまいます。
    結花は基本素直で明るい子だけど、本音をなかなか言えない奥手な子。2人は恋をしています。お互いを好きということは何となく勘付いているんだけれど、なかなか一歩が踏み出せない状態。このもどかしさが風鈴の短冊エピソードに繋がるのです。　　


    　ちなみに結花が洋介を涼香公園のデートに誘った理由は、陽介の気持ちをたしかめたいという思いがあったからなのです。陽介は彼女の『私、遠くへ行っちゃうかも知れないよ』アピールと『私を見捨てないで』という誘惑の眼差しに勝てませんでした。このときの陽介の気持ちを簡単に説明すると

    『前からそうだとは思ってたけど、やっぱり結花も俺のこと好きだったんだ！　イエーイ！　結花―！　中二にして彼女ゲット！！』


    　結果、陽介は長年うちにこじらせていた思いをどかーんと爆発させて、結花に抱きつくというセクハラ行為を働きます。しかも結花の心音が早い理由を自分への好意が原因だと解釈して、笑顔を浮かべるサイコパス状態に陥ります。結花も紅葉見たく頬を赤らめて、陽介の思いがけない行動にドキドキする始末。ぶっちゃけ爆発しろ。


    　ちなみに『高揚』は、たぶん『紅潮』の書き間違えだと思います。『反芻』にいたっては、調べてみると回想やフラッシュバックで使われている例も少しあるので、何とも言えません。
    紅葉については、秋を感じさせる記号を使いたいと思い、無理やりねじ込んだ思い出があります。ここは普通に頬がかすかに赤いとかで良かったかなぁと思っております。
    　『凛』は風鈴の音である『りん』と掛けています。実際結花は小さな声でしか喋っていませんが、その言葉の内容が陽介にとってはあまりにもハッとするような内容だったので、洋介には風鈴の音のように『凛』と聴こえたって意味で使ってみました。


    　下記に、個別感想が続きます。


    　たかセンドさま
    　感想を１番に書いていただきありがとうございます。自分自身、本格的に直接的な表現を使わずに書いた作品ですので、上手く伝わっていない部分があるかもしれません。

    　ハイさま
    　メロウに引き続き感想ありがとうございます。本作は陽介が駆け出すところまで正直、溜めの状態が延々と続きます。その溜の部分をもう少し工夫すればよかったかもしれません。

    　蛍.comさま
    　感想ありがとうございます。
    　風鈴の短冊には何が書かれていたのでしょうか？　ケモノも知りたいです。それを書いてしまうと、お話全体が説明的になるのであえてしませんでした。
    　短冊の願いは2人の駆け引きを描くために使ったもので、そこに何が書かれているかは本作に答えが書かれているからです。洋介が結花に抱きついた理由。それが書かれている内容なのです。

    　音無　雲さま
    　メロウに引き続き感想ありがとうございます。
    　そうですね。普通は人に抱きついたりしません。でも、抱きつきたい理由が彼にはあったんです。眼の前で幼馴染の、しかも可愛い子が弱々しげにこちらを見つめている。それが、彼には縋るような視線に見えたのだと思います。簡単に言うと庇護欲を掻き立てられた上に、日頃から心に閉まっていた結花への思いがあそこで爆発したんだと思います。


    　雪海さま
    感想ありがとうございます。
    何と、他の方とは逆にもっと登場人物の心情を隠せという事ですね。難しいのです。そして、読者様はわがままなのです。今の私の実力だとこれ以上隠すのはちょっと無理かもしれません。

    　茉莉花さま
    メロウに引き続き感想ありがとうございます。
    2人は中学3年ではなく2年生のつもりで書きました。夏の終わり、先輩たちが進路について話す中、冗談交じりに水泳の担任が結花に推薦で強豪校に行ってはどうだと語りかけたのがこの物語の発端だったりします。ケモノの脳内にだけある裏設定なのです。だから結花は陽介にはいつでも会えるのになんてセリフを言っているのです。
    さすがにそれだけじゃ、2人の年齢わからないですよね……。

    　ｗさま
    　いつもお世話になっております。2人は中学2年のつもりで書いていのですが、もう少しその辺が分かるように書かなければならなかったと気づくことができました。自分の思いとは裏腹に遠くに行ってしまう幼馴染を想う気持ち。もう少しこの辺りを突っ込んで書けばよかったのかもしれません。


    　楽間快人さま
    　感想ありがとうございます。
    　楽間さんがトマトさんに殺されなくて本当に良かったです。反芻は自分でも使い方がイマイチよく分かりません。ただ、検索してみると本作のような使い方をしている文もしれなりにあったので、あえて使ってみました。ケモノもどっちなのかわからないのです。

    　たぬきさま
    　メロウに引き続き感想ありがとうございます。
    　風鈴に書いた願い事は自分的には読者さんに想像して欲しいのであえて書きませんでした。扇風機に負けずに日々を頑張ってください。


    　朱鷺ミチルさま
    　いつももう１人のミチルさんにはお世話になっております。ぷち企画にたくさん作品を投稿されていて、正直すごいと思いました。本作への感想、ありがとうございます。

    　まのふゆさま
    　本作を特別賞に選んでいただきありがとうございました。自分でもきちんと推敲をしたはずなのですが、おかしいと思う文章がちょくちょくある本作。もう少し綺麗な文章が書けるようになりたいです。

    　たてぱんさま
    　感想ありがとうございます。風鈴通路はこの時期になると日本全国で見られるようになりますよ。有名なのは川越の氷川神社みたいです。

    　へろりんさま
    　感想ありがとうございます。本作は直接的な描写を避け、情景描写で登場人物たちの心情を表すことを目的に書いた作品です。その点を評価していただき嬉しい限りです。

    　いりえミトさま
    　こちらにも感想ありがとうございます。全裸万象の漫画が色々と変なことになっていましたが、気のせいですよね。文章じゃなくて絵面にするとインパクトが凄い作品であることを改めて思い知らされました。


    　ヨースケさま
    　感想ありがとうございます・
    　風鈴に何が書いてあったかは書いちゃダメなんです。書くと負けなのがこの作品のスタンス。申し訳ございませんが、ご理解お願いします。自分の実力不足もありますが、そこは譲れないのです。

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2016年06月26日 22時13分45秒
 +10点
  • 読ませていただきました。
    二人の男女が別れるシーン。それを風鈴が彩るという、非常に分かりやすくて共感しやすいお話でした。
    緻密な描写でそれぞれの感情もしっかり伝わってきて、書き慣れた作者さんであると感じました。

    ただ…尻すぼみな終わり方が非常に残念。どうせなら二人が風鈴に何と書いたのかまで知りたかったです。
    おそらく作者さんはわざとこうした終わり方をチョイスされたのだと思います。「書かない美学」というか、想像する楽しさを読者に与えるというか。
    でも本作に限っては最後まで書いて欲しかった。

    願い事の内容が知りたいというよりも、互いの願い事を知った二人がどういった反応を示すのか、そういうのが見たかったというのが一読者としての率直な感想です。

    感想は以上です。
    執筆お疲れ様でした。

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2016年06月26日 22時08分51秒
 +20点
  • 　『風鈴通路』拝読しました。以下に感想を書かせていただきます。


    　とても雰囲気のいい作品でした。

    　たくさんの風鈴を吊るした通路を幼馴染と一緒にあるくというシチュエーションが、まさに青春のワンシーンですね。
    　文章がとても上手く、美しかったです。
    　特にラストの3文は、季節の移ろいを見事に表現しているとともに、物語の締めとしてもきれいでした。
    　情景描写や、陽介と結夏の心の動きも、とても丁寧に書かれていたと思います。

    　全体としてショートムービーを思わせるような作品で、映像化してもよさそうですね。
    　その一方で、ストーリーそのものには大きな動きがなく、そのあたりはもうワンパンチほしいと思いました。


    　短いですが以上です。
    　執筆おつかれさまでした。

    E-Mail pass
2016年06月25日 16時55分03秒
 +10点
  • 『風鈴通路』拝読しましたので感想を書かせていただきます。

    　藤棚に提げられたたくさんの風鈴。
    　そして風鈴の短冊に願いごと。
    　夏らしく、ロマンチックな行事ですね。
    　実際にある行事でしょうか？　それとも作者様の創作でしょうか？
    　創作だとしたら、どこかの村おこしの行事として採用すれば見物客が集まりそうですね。

    　風鈴に秘めた自分の想いを込めた主人公と、それを見落としてしまった幼馴染のヒロイン。
    　すれ違う二人の心を象徴しているようです。
    　情景描写も心情を投影していましたね。
    　巧いと思います。
    　勉強させていただきました。
    　ただ、どうにも自分の感性とはリズムが合わず、青春の甘酸っぱさが堪能出来なかったのが残念でした。
    　平ったく言うと作品世界が好みに合いませんでした。
    　できれば作者様の別の作品を読んでみたいと思います。

    　ではでは、簡単ではありますがこの辺で。
    　例によって素人のたわ言ですので、あまりお気になさいませんように。
    　作者様の身になるところがありましたら、そこだけ取捨選択をお願いします。
    　ぷち夏企画執筆お疲れ様でした。

    E-Mail pass
2016年06月23日 20時01分54秒
 +10点
  • ☆こんばんは、たてばんと申します。

    ＞すっと陽介の頬は高揚していた。
    ☆高揚は気分が高まることではないでしょうか。

    ☆全体的に静かで盛り上がりに欠けるという印象を受けました。
    　とはいえ、こんな幼馴染とお祭りに行ってみたいですね。
    　風鈴通路は実在するお祭りなのでしょうか？

    ☆読ませていただきありがとうございました！
    　では、失礼します。

    E-Mail pass
2016年06月21日 18時28分41秒
 +30点
  • 　まず、一個人の偏見による意見だということを念頭に受け取っていただければ、と思います。

    　精緻な描写が涼し気な風と夏の残り香を思わせます。それだけに妙な漢字や単語の疎らさが目につきます。語尾や語句などを精査するなら一層磨きがかかります。
    　陽介の風鈴を探す行で陽介はもう少し結夏を感じて欲しかったですね。額同士を付けたのに反応がらしくないと言いますか、あまりにもドライかと。最後の台詞も同様に冷たく感じました。

    　然し全体を通しては掌編小説としてよい文学だと思います。粗削りな原石といったところでしょうか。
    　

    E-Mail pass
2016年06月19日 22時36分57秒
 +20点
  • 　拝読いたしました。朱鷺ミチルと申します。
    　幻想的な風鈴通路でくりひろげられる二人の想いのやり取りは素敵でした。互いに相手の想いを見つけられない成り行きに恋愛の奥深さを感じさせられました。
    　過去をもっと知りたい、二人の将来を見つめていたい、そんな風に感じさせられる作品でした。
    　執筆お疲れ様でした。後夜祭も盛り上げてまいりましょう。

    E-Mail pass
2016年06月19日 19時11分43秒
 +20点
  • こんばんは。たぬきです。

    素直に綺麗な印象でした。
    どこか静かなのに熱い恋というのが感じられます。
    風鈴に書いた願いの内容が、締めの一言になるとかだともう一つ上手だなと思えたかもしれません。

    E-Mail pass
2016年06月19日 18時43分12秒
 +10点
  • こんばんは、楽間快人という者です。
    御作「風鈴通路」を拝読しました。

    まず、タイトルが素敵ですね。
    内容に即してますし、なにより雰囲気が出てる。

    文章面でところどころ、気になったところがありました。
    ＞頬は高揚していた
    　頬が高揚、っていうんですかね？　僕も定かじゃないので、教えて偉い人！
    ＞「書きたかったなぁ。風鈴にお願い……」
    　凜とした声、とはちょっと違うような……？
    ＞それを結夏が見つけた、らどんな風になるのだろうか。
    　読点の位置です。
    ＞脳裏を反芻する。
    　反芻って能動的なイメージがあるので若干違和感があります。

    一方、以下よかった文。
    ＞雄と雌がつがいを求めて、くるくると空を巡ることを繰り返している。それなのに、目の前には浴衣に身を包んだ幼馴染と、風鈴の通路がある。夏と秋が、綯交ぜになった奇妙な感覚が陽介の中に生じていた。
    ＞自分の風鈴を見つけて欲しくない。けれど、自分の願いを知った結夏を見てみたい。
    　アンビヴァレンスな表現がうまいですねー。
    ＞急な斜面に混み合うように瓦屋根の建物が敷き詰められ、
    　僕は風景描写が苦手なので、こういう表現は見習っていきたいです。

    夏やで！青春やで！な作品だったですね（そうか？）
    王道は、強いぜ。

    E-Mail pass
2016年06月18日 21時47分55秒
 +20点
  • こんにちは。
    『風鈴通路』読みましたので、感想です。

    描写はなかなか良かったと思います。
    描写重視の作品なので物語としての展開は最小限でしかありませんが、その中で、いきなり抱きしめたのも良かったです。「県外の高校になんか行くな」とも言えず、かといって「頑張れよ」と県外の高校に行くことを肯定することもできない主人公の弱さが、抱きしめるという意外性のある積極的な行動として表れるというもどかしさを上手く表現していたと思います。

    その一方でやや疑問に思った点もありまして。
    主人公は、自分の好きな幼馴染みが、県外の高校を受けるということを全く知らなかったのでしょうか。三年生になってから夏まで、そういった話題の会話が一つも無かったのだろうか、と。
    もしかしたら、なんらかの事情で、当初は地元の高校志望だった幼馴染みが、急に県外の高校に行こうと言い出したのかもしれません。だとしたら、主人公サイドからすると、今まで思っていたことを覆されたわけで、場合によっては裏切られたと思ってしまうくらいにもっと驚くはずですし、冷静ではいられないように思います。
    作中の主人公の反応だと、「うすうす感づいていた」というのが一番しっくりくるとは思うのですが、そうだったら、「……そうか。やっぱり県外に行くのか」的な反応をさせた方がしっくりくるように思いました。

    とはいえ、抱きしめた時の幼馴染みの反応が、主人公を拒絶するわけではなく、むしろ好意的という感じなので、バッドエンドでもなく、静けさの中に余韻を引いてのエンディングという感じで、締め方も良かったです。

    感想は以上です。
    企画参加おつかれさまでした。

    E-Mail pass
2016年06月18日 02時30分33秒
 +20点
  • 作者の方へ

    茉莉花です。
    作品、拝読しました。

    音や動きが伝わってくる、非常に臨場感のある作品でした。
    中学三年生の会話にしては少し大人びているかなと思いましたが、全体的に美しくこの物語の良さを損なうものではありませんでした。

    もどかしい思いをあらわすのがうまいんですよね。
    ＞自分の風鈴を見つけて欲しくない。けれど、自分の願いを知った結夏を見てみたい
    こういう部分とか、
    ＞結夏が、自分の思いをたしかめることを陽介自身が望んでいたから
    こういう部分。
    リア充爆発しろ！　でした。


    作品全体として若干引っかかる言い回しもあったものの、さほど気にならなかったかな……。
    ＞すっと陽介の頬は高揚していた
    あたりとか、
    ＞紅葉のようにほんのりと赤い
    とか……
    「頬が高揚」と「ほんのり」の使い方ですね。
    もしかしたら「紅葉していた」なのかなとか、「紅葉」ってほんのりではなくもっと鮮やかな赤じゃないかなとか、いちゃもんっぽく考えてしまいました。

    展開としてははっきりとした「敵役」や「葛藤」が見受けられなかったため、綺麗すぎる・スムーズすぎると判断される恐れもあるかもしれません。
    かといってこの枚数だと無理に入れられなさそうな感じですね。
    尺を長くすればまた変わるのだと思いますが……。


    あまりまとまっていない感想で失礼しました。
    高いレベルで安定して読める作品でした。
    読めてよかった。

    それでは執筆お疲れ様でした。

    E-Mail pass
2016年06月17日 20時18分10秒
 +20点
  • あざとい。結夏あざとい（褒め言葉）。可愛い。
    いや、個人的な意見です。
    読ませて頂きましたので感想を置いていきます。

    とても綺麗な雰囲気でした。
    流麗な文体でしめやかに二人の気持ちが綴られていて、楽しませてもらいました。


    微妙な距離感を楽しめる物語でしたが、もう少しお互いの想いを隠したほうが、歯がゆい気持ちを味わえて好みだったかもしれません。

    それと、ラストはもう少し動きがほしかったかなと。
    あっ、終わってしまった……みたいな気持ちになりました。

    いずれも指摘ではなく、個人的な好みをお伝えした、といったところです。
    作品としては綺麗にまとまっており、完成度の高いものだと思います。
    適当に聞き流して頂ければ幸いです。
    ありがとうございました。

    E-Mail pass
2016年06月16日 23時03分21秒
 +10点

  • 拝読しましたので感想を書きます。

    ・気になった点

    主人公と幼馴染の関係について、二人は付き合っているわけではないと思うのですが（記述はなかった）、いきなり抱きしめたのはどうなのかなと思いました。回想や心情描写が少し足りなかったのかなと言う感じです。

    ・良かった点

    夏から秋への移ろい、季節描写が良かったと思う。

    ではでは執筆お疲れ様でした。


    E-Mail pass
2016年06月15日 23時25分15秒
 +10点
  • こんばんは、蛍です。
    作品を読ませていただいたので感想を残します。

    たくさんの風鈴が飾られた藤棚の道。夏らしく、それでいて涼しげな風景ですね。
    モデルとなったお祭りなどが実在するのでしょうか。ぜひ一度通ってみたいと感じました。

    心音の高鳴りの描写が多く、読んでいるこちらまで思わずどきどきしてしまうようでした。結夏に対する陽介の溢れんばかりの想いが描けていたと思います。
    個人的な好みを申しますと、せっかくの三人称ですので結夏の気持ちがもう少しあったら良かった気がします。

    ところどころに独特の言い回しが使われていたため、たまに読むのが止まってしまうこともありましたが、作品全体を通して味わいを出すための工夫だったのかと考えました。
    もうひとつ気になる点は、陽介や幼き頃の結夏が書いた願いはいったいなんだったのか、明かされないままに終わってしまったことです。二人とも相手に見られたくなかったようですし、互いへの甘い想いを記していたのかもしれませんね。

    短いですが感想は以上です。
    執筆お疲れ様でした。

    E-Mail pass
2016年06月15日 08時28分48秒
 +10点
  • こんにちは。
    風鈴通路、読ませていただきました。



    描写綺麗！
    雰囲気よし！
    文章も良い感じ！
    最後の抱き締めるところ、すごく良し！


    ただ、全体として低調でもうひとつ物足りない感がありますね。
    作者さん的に、丁寧に丁寧に書かれたと思いますが、丁寧過ぎて大人しい話になったのかなと。
    もう少しメリハリがついていたら、もっと良かったと思いました。





    簡単ですが、私からはこんなところで。
    執筆お疲れさまでした！

    E-Mail pass
2016年06月13日 22時36分11秒
 +10点
  • こんばんは。
    「風鈴通路」を読ませていただきました。

    とても美しい文章で、情景が浮かんできました。
    陽介の結夏に対する思いが、細かく描写されせつない思いが溢れていました。

    季節の移り変わる様を見事に描写した作品かとは思うのですが、物語自体は平坦であまり起伏は感じることはできませんでした。
    結夏が県外の高校へ行くと言う告白を受けても、それに対して陽介の心の動きが感じることができませんでした。

    読みこんでいくと、繊細なタッチで描かれているとは思いますが、個人的にはもう少し際立ててあればなぁ。と思いました。

    甘く切ない良い話と思いました。

    読ませていただきありがとうございました。

    E-Mail pass
合計 15人 230点

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