とある魔法薬学師見習いの日常 |
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昼下がりのからりとした風がカーテンを揺らしたとき、コリン・ポートナーはゆっくりと目を開けた。 膝の上には、分厚い『リッケルトの魔道書』が開かれていた。学友の間でつまらないと有名な魔道書で、絶対に防げない眠りの魔法がかけられているともっぱらな噂だ。 柱時計の針がいつの間にか一周しているところ見ると、あながち嘘でもないらしい。 「せめて、もう少し呪文の構成を統一してくれたらなぁ」 コリンは机の上のコーヒーカップを手に取ったが、空だと気づき、魔道書を畳んでゆっくりと立ち上がった。 今朝挽いたコーヒーの粗い粉をロートの中に仕込み、フラスコの水の加熱を始める。 その間に、コーヒーカップを二つ用意する。 念のためであるが、こういう勘は外したことがないと彼は自負していた。 間もなく玄関のドアが豪快に開かれる音が聞こえた。 「コリーン!」 ドタドタと音を立てて階段を昇ってきたのは、聖ブレイビア学園の制服を着こなした少女だ。スレンダーだが、無駄なく筋肉のついた体をしており、コリンよりも明らかに身体能力が高い。 顔が幼いくせに、セミロングの金髪には朱色のメッシュが入っている。彼女の言では、少しでもなめられないように、とのことだが、吊目できつめの顔をしているため、そんなことしなくても、みな怖がっている。だが、飾るのが好きで、ごてごての怪しげなアクセサリを髪や服にぶら下げており、珍妙な格好となっている。 「ガル、勝手に入ってくんなって言ってるだろ」 「そんなこと今はどうでもいいの!」 彼女、ガル・ローナンの中でそんなことと位置づけられたノックという常識を、どうやって教えればよいのだろうと、コリンは小さくため息をつく。 「たいへんなの!」 「まぁ、落ちつきなよ。コーヒー飲む?」 「砂糖一つとクリームちょいちょいね。あ、ちょっと、私くるまでコーヒー作るの待ってっていつも言ってんじゃん」 「まだ、湯を沸かしただけだよ。淹れるのは今から」 沸騰したお湯にロートを差し込み、フラスコの口を密封する。しばらくして、ロートを伝い、お湯が昇っていき、コーヒーの粉と混ざっていく。 ガルは、このコーヒーをつくる過程を見るのが好きで、いつもは騒がしい彼女も途端に静かになり、ぷくぷくと沸いてくるお湯をじっと眺めている。 「いつ見ても、この魔法すごいよね」 「いや、いつも言っているけれど魔法じゃないから」 もはやサイフォンコーヒーの原理を説明するのは諦めていたコリンは、一度コーヒーを撹拌した。 フラスコのお湯が昇りきったら、火を止める。するとロートの中のコーヒーがフィルタを通して落ちてきて、出来上がりだ。 「で、何がたいへんなの?」 カップにコーヒーを注ぎながら、コリンは尋ねた。 「そ、そうなの、たいへんなの!」 「だから何が」 ガルは差し出されたコーヒーを一口啜った。 「豆変えた?」 「お、わかる? でも豆じゃなくて配分を変えたんだよ。今までは香り重視だったんだけど、風味重視にしたんだ」 「へぇ、そうなの。って、そんなのどっちでもいい!」 君が言い出したんだけど、とコリンも一口コーヒーを飲む。 「試験がやばいの」 「試験て、勇者試験のこと?」 「それ以外に何があるのよ!」 聖ブレイビア学園の勇者学科に所属するガル・コーナンは、ちょうど卒業試験が近づいている。 名が表す通り、勇者学科を卒業した者は、勇者として世界の平和を守るべく日々努めることとなる。だが、誰でも勇者になれるわけではなく、高難度な試験をクリアする必要があり、彼女はその壁にぶつかっているというわけだ。 「そりゃ、たいへんでしょ。毎年数パーセントしか通らないんだから」 「そうなの!」 「がんばれ」 「がんばるわよ! でも、でも、今のままでは、絶対にむりなのぉ」 ガルは頭を抱えてうずくまった。 面倒だな、とコリンは思ったのだが、聞いてくれオーラが全開なので、仕方なく「何で?」と尋ねる。 「魔法が全滅なのよ!」 悲壮な顔のガルを見て、コリンは小首を傾げる。 「全滅させちゃうレベルの魔法が使えるんならいいんじゃないの?」 「違うの! 私が全滅しちゃうの」 「自爆系? まぁ、それはそれで需要があるんじゃ」 「ないわよ! じゃなくて、魔法がぜんぜん使えないって言っているの」 なるほど、とコリンは頷く。 「体術はそこそこ得意なんだけど、魔法がぜんぜん使えないの。炎系が少し使えるくらいで、他の属性の魔法はもうかなりやばい」 魔法には五つの属性があり、すべての魔法は火、水、木、金、土のいずれかに属している。人によって得意不得意はあるが、魔法を生業とする職業の人間はたいてい三つの属性は使い分けることができる。 一つしか使えないというのは、これから勇者になろうという彼女にとって致命的ではなかろうか。 「よくそれで勇者になろうと思ったね」 「ゆ、勇者は剣が触れればそれでいいじゃないの」 よくないから、試験に合格できないんじゃないかな。 「で、でも、魔法も全部が使える必要はないのよ。補助系と回復系と攻撃系が何か一つずつ使えることを示すことができれば、それで及第点はとれるの」 「へぇ、じゃ、唯一使える炎系の魔法を鍛えるしかないんじゃないの?」 だが、炎属性には回復系の魔法はなかった気がする。だとすると水属性の魔法も必要か。 「試験いつだっけ?」 「……明日」 「お、おう」 コリンはコーヒーを啜り、やっぱりもう少し苦味があった方が好みだな、と次の分配を考え始めた。 「ねぇ、今、諦めたよね?」 「え、いや。ほら、あと一年あるって考えれば」 「諦めてるじゃないの!」 だって、とコリンは目を逸らした。 ふん、と鼻を鳴らして、ガルは仕切り直した。 「だから、コリンに頼みに来たの」 この流れで自分の名前が出てくる理由がわからない。 「僕にできることはないと思うけれど?」 「ある。あるわ。調合師のコリンにしかできないことよ」 「魔法薬学科の学生だけどね」 ガルと同じ、コリンも聖ブレイビア学園の生徒だ。実のところ、魔法薬学科の試験も近々あり、コリンもあまりかまってもいられないのだ。 「ねぇ、ガル。もしかして、僕にしてほしいことって」 「魔法がうまく使えるような薬を作ってよ」 「ドーピングかよ」 飽きれざるをえなかった。 「あのね。ガル。僕が学生だからとか、そういう問題ではなくて、この世の中にそんな都合のいい薬はないんだよ」 「そこをなんとか」 拝み手をするガルに、コリンはため息をついた。 「昔、失敗して作っちゃったやつがあったじゃん」 「あぁ、あれね」 思い出したのは、子供の頃に爺さんの工房でイタズラしたときのことだ。今思えば危険極まりない場所だが、子供のコリンにはおもちゃ箱だった。 そのとき、適当に調合した薬をガルに飲ませたことを、彼女は言っている。 「あのときがいちばん魔法を使えていた気がするわ」 「それは、そうかもね」 遠い目をするコリンは、あまりそのときのことを覚えていない。なぜならば、彼が気づいたときには、周囲は焼け野原と化しており、工房は跡形もなく消し飛んでいた。 「お願い! 一回でいいの。試験の時にアレができれば、私は勇者になれるのよ」 いや、魔王になっちゃうんじゃないかなぁ、とコリンは頭をかいた。 「そう言われても、あのときの調合は適当だったしな。まぁ、魔力を底上げするくらいならばできるけれど、魔法の扱いがうまくなるわけではないよ」 「それでいいわよ! お願い。幼馴染のよしみで、なんとかして」 「もう、仕方ないな」 ドーピングして勇者になっていいものか、とコリンは少し戸惑ったが、真摯に頼む彼女の目を見ると、もう彼は断れなかった。 **************************************************************** コリンはコーヒーを飲み干し、工房へと足を向けた。 工房は地下室にある。ランプの灯りを一つ一つ付けていき、柔らかい色で壁を照らしだす。 「相変わらず不気味なところね」 「なるべく整理整頓を心がけているんだけどもね」 いくら掃除し、材料を棚に並べても、生き物の乾物や漬物が多く、どうしても禍々しい。いたるところに描かれた魔法陣が余計に異様さを演出していた。 「本当は一週間はかかるんだよ」 「えぇ! それじゃ困るんだけど」 「だから、今から作るのは簡易版。少し副作用があるけど、大丈夫?」 「少しくらいなら我慢する」 副作用の中身も聞かずに合意するあたり、ガルの必死さが伝わってくる。 コリンは本をパラパラとめくり、目的のページを広げて、浮遊の魔法をかけた。本がぷかりと浮き、コリンの左上をキープする。 「そういう魔法が使えると便利だよね」 部屋の隅の椅子に座り、ガルは羨ましそうに浮遊する本を見上げていた。 「そうでもないぜ」 コリンは鍋に火をかけながら応えた。中身が沸騰するまでに、他の材料を用意すべく、辺りの戸棚をひょいひょいと開けていく。 「浮遊魔法は汎用性に欠けるんだよな。この魔法だって、呪紋が描いてあるこの部屋じゃないと使えないんだよ。誰でも、どこでも使えるようになるともっと流行ると思うんだけど」 屋内で少し便利な程度では、特に重宝されることもない。 机の上で、用意した材料を処理していく。あるものは切り刻み、あるものには、呪紋を刻む。サラマンダーの鱗をユニコーンの角で小突くという処理に何の意味があるのかと思わなくもないが、こういう無意味そうな手順を踏まないと出来上がらないのが魔法薬の難しいところだ。 「ねぇ、すごい臭いなんだけど、何入れてるの?」 「見ない方がいいっていつも言っているのに」 ひょいと机の向かい側に立つガルを気にせず、コリンは手元の小瓶に赤い液体を一滴垂らす。 「今、垂らしたのがユニコーンの鼻血」 「鼻血?」 怪訝そうな顔を見せるガルに、コリンは平然と言い放つ。 「そう。で、こっちの青いのが、グリフォンの鼻血」 「ちょ、ちょっと待って」 手をぐいと握られ、コリンは手を止めた。 「コリン? それ、私が飲むのよね」 「そうだけど」 「私に何か恨みでもあるの? 嫌いなの?」 質問の意味がわからずに、コリンは小首を傾げる。 恨みがないかと言われれば、少なからずあるが、それは勝手におやつを食べられたとか、貸していたノートを無くされたとか、そういうものだ。 嫌いなら、そもそも協力などしていないし、今、ガルのためにわざわざ鍋まで用意しているのに何故責められているのか。 「アメみたいにもできるけど」 「食感の話ではないわ」 「イチゴ味にしようか?」 「それはぜひそうしてちょうだい。でも、そうではなくて」 ガルは一度瞬きをした。 「私に、よくわからない生物の鼻血を飲ませるつもり?」 「ユニコーンは一応聖獣だよ?」 「そういう問題じゃないわよ!」 恐ろしい形相で迫るガルに、コリンは気圧された。 「鼻血なんて飲めないわよ!」 「いや、清めてあるから衛生上は問題ないよ」 「清めてあろうと鼻から垂れてた血でしょ。乙女として、そんなもの飲めたもんじゃないわ。たとえ主のありがたい鼻血であっても、ありがた迷惑ですと跳ね返すわよ」 そういうものなのか、とコリンは瞬きを一つした。 そもそも主が鼻血を流すようになった経緯の方が気になったが、そこを掘り下げると長くなりそうだったので呑み込んだ。 「じゃ、どうする? 魔力増強の薬をつくりには、どうしても必要なんだけど?」 「くっ! ど、どうしても必要なの? 他のものでは代用できないの?」 「うーん、できるのかもしれないけれど、僕にはわからないな。だって、それって魔術体型そのものを変えるってことだからさ」 コリンの言葉を聞くと、ガルは「ぬぉ〜」と悲痛な声をあげて頭を抱えた。 それからしばらくして、意を決したようにコリンに視線を向け、 「入れればいいじゃない! 鼻血でも髪の毛でも爪の垢でも! コリンの変態!」 どうして言われた通りに作っている僕が怒られているんだろう、とコリンは釈然としない気持ちになりながらも、調合を続けた。 「他には何を入れるのよ」 「聞かない方がいいんじゃない?」 「一応知っておきたいの」 はぁ、とコリンはため息をつきつつ、鍋の前に立った。あとは、用意した材料を調合するだけだ。 ガルの要望に従い、コリンは鍋に入れる材料を声にする。 「ユニコーンの鼻血、グリフォンの鼻血、サラマンダーの鱗のすりつぶし、ゴブリン貴族の鼻血、偽セフィロトの葉、これは呪印を刻んであるね。それからチャールズの鼻血と……」 「鼻血多くない!?」 悲壮な顔を浮かべてガルが声をあげた。 「何回鼻血って言った? ねぇ、何回言った? 鼻血だよ? 他のところから出た血じゃだめなわけ? そもそも最初にこの魔法薬考えた奴、どうして鼻血を使おうと思ったわけ? まずそいつをぶっとばしてやりたいわ!」 「いろいろ試した結果なんじゃないの? ちなみに魔力増強薬の原型を作ったのは、リッケルト・シュバルツだよ。君もさすがに聞いたことあるでしょ。教科書に写真載っているし」 「あの禿げ爺か!」 たいてい写真は年老いたときの写真で、リッケルトは禿げた爺の姿で載っていた。もっと若いときの写真にしてあげればいいものを、とコリンは同情する。 「既に他界しているけどね」 「墓標にナマモノをお供えしてやるわ」 「やめなさい。鴉が荒らすでしょ」 墓地の清掃に何度か駆り出されたことがあるコリンは、即座に止めた。どうでもいいが、教会の連中は、主の名を盾にタダ働きを強要してくるから嫌いなのだ。 「あとチャールズって誰よ。いったいどこのチャールズの鼻血を私に飲ませようとしてんの」 「うちの犬だよ」 「あのチャールズかよ!」 髪をかき乱すガルをコリンは心配そうにみつめた。 「大丈夫? 疲れているんじゃない?」 「疲れてないよ! 怒ってんのよ!」 「え? 何で僕、怒られてるの?」 「そういうところに怒っているの!」 「もういいわよ」とガルは肩を落とした。 やっぱり疲れているようだ。あとで、何か元気が出そうなものを作ってあげよう。 鍋の中に必要なものを注ぎ、ぐつぐつと煮えているのを確認した後、さて、最後の仕上げだなと、コリンは本にかるく目を通した。確認すると、「よし」とガルの方を見た。 「ガル、それじゃ、服を脱ごうか」 **************************************************************** 「うん、わかった、て言うと思ったの? バカなの?」 ガルはとても冷たい目をコリンに向けていた。 「何? 薬を作ってくれる代わりに、私にえっちなことをしようと思っているわけ? コリン、サイテー。そんな奴だと思わなかった」 自分の肩を抱くガルを見て、コリンは呆れたように応える。 「違うよ。君の私紋を取るんだ。威力を高めるためによくやるんだよ。私紋のことくらいガルも知っているだろ?」 人の体には、魔力の流れる経路が定まっていて、それは人それぞれで決まっている。魔法は、その経路に合わせて少しずつ、構成を変えなければならないと言われており、そのベースとなる構成を私紋と呼ぶ。 魔法増強薬に、ガルの私紋の結晶を加えることで格段に性能が上がるのだ。 「し、知っているけど、それは難しいって言っていたわよ」 「僕はできるの」 ちょっと自慢なのだが、ガルはそんなことに気づかず、別のことを気にしていた。 「そんなこと言って、私の裸が見たいだけじゃないの?」 「別に裸は見たくないけど」 「見たくないとは何よ!」 何を怒っているんだ? 「嫌ならいいけど。やらないと効果がでないよ?」 「ど、どうしてもやらないとだめ、なの?」 「明日の試験に合格したいならね」 「く、くぅ〜! わ、わかったわよ。その代わり、目を瞑っていてよね!」 「目を瞑っていたら、呪紋を描けないじゃないか」 「わ、私が描くから!」 「私紋を取る呪紋を描けるの?」 「描け、ない、けど! ね、ねぇ、つまりさ。コリンは、私を脱がせるだけでは飽き足らず、私の体に呪紋を描き込んで辱めようとしているの?」 「辱めようとはしていないけど」 コリンは、筆と赤い液体の入った瓶を用意していた。筆は東の国で使われている羊毛のものだ。よく指で呪紋を描くが、細かい部分を失敗してしまいやすい。その点、この羊毛の筆はよい。 「で、どうするの?」 瓶の中に妖精の羽の鱗粉を注ぎ、筆でかき混ぜるコリンの横で、ガルは、あぁと頭を抱えて唸っていた。 「い、いいわよ。やっぱり勇者になりたいもの。そのためなら一肌脱ぐわ」 いくらかニュアンスが違う気もするが、「じゃ、はやく脱いで」とコリンが催促すると、ガルは「えっち!」と叫んだ。 「あっち向いててよ」 「どうせ見るけど?」 「そういう問題じゃないの!」 じゃ、どういう問題なんだろう、とコリンは疑問に思ったけれども、言われた通りに後ろを向いた。 衣擦れの音がしばらく聞こえ、ガルの小さなため息が聞こえてきてから、 「も、もういいわよ」 とガルから呼ばれた。 振り返ると、全裸のガルがそこにいた。白い肌の上を灯りが揺れていた。控えめな胸を片手で隠し、下半身をくいと横に捻り、小股のところをもう一方の手で隠している。 「そんなにじろじろ見ないでよ。えっち」 恥ずかしそうに視線を逸らすガルに対して、コリンは小首を傾げた。 「何で裸なの?」 「は?」 ガルは口をあんぐりと開け、それからスッと真顔になり、ツカツカとコリンの方に歩み寄ってきて、ぐいとコリンの胸ぐらを掴みあげた。 「あんたが脱げって言ったんでしょうが!」 「全部脱げとは言ってないよぉ」 「あ!?」とガルはまるで野党のように恐ろしい顔をコリンに向けた。 「上だけでいいよ。背中に描くんだから」 「な! そ、そういうことは早くいいなさいよ!」 「そのくらい知っていると思ったんだよ」 「知らないわよ!」 「知っているって言ったじゃん!」 「ちょっと知ったかぶったのよ! ごめんなさいね!」 ガルに揺さぶられながら、コリンは理不尽だと思った。 「私、私、背中を出せばいいだけなのに、全部脱いじゃって、変態みたいじゃない」 「うん、背中を出せばいいのに、全部脱いじゃっているから、変態だと思った」 「うるさいわよ!」 やっぱり理不尽だ。 「はやく服を着なよ」 コリンはさっと目を逸らして、 「目のやり場に困るんだけど」 言われて、ガルは気づいたようで、露わになっている自らの白々しい柔肌を見て、それから、さっとコリンから離れた。 「見ないでよ! えっち!」 まるで錯乱したようにガルは、コリンを突き飛ばし、急いで服をとりに走った。 「もう何よぉ。見せ損じゃないの」 「見せ得って場合あるの?」 「それは、えっとぉ、その、バカ!」 ガルは服を着ながら、一度息をつき、真っ赤になった顔をスッと横に逸らして、 「見たんだから、その、責任とりなさいよね」 「え? あぁ、うん。ちゃんと薬は作るよ」 「そういうことじゃないんだけど」 とガルはため息をついた。 やっとガルはコリンの意図を理解したようで、工房の隅の魔法陣の中心に彼女は座り、それから、服を脱ぎ背中を露わにし、コリンの方に向けた。 コリンは、筆に赤い液体を浸けて、一度ガルの背中の全体を眺め、頭の中で練習してから「よし」と筆の先を彼女の肩に乗せた。 「ひゃっ!」 「何!?」 突然、ガルが体を震わせるので、コリンは驚いて筆を引いた。 何を懸念したかというと、液体に入れた妖精の羽の鱗粉には副作用があり、彼女には副作用が出ているのではないかと思ったのだ。 本来は、一度テストをしてから行うのだが、副作用のひどく出る人間はそういないので省略した。決して面倒だったからではない。 「大丈夫? 吐き気とかしない? 酸っぱいものがほしかったりする?」 「え? いや、そういうのはないけど」 「でも、すごい声あげたじゃん」 「いや、くすぐったかったから」 コリンは無言で続きを描き始めた。 「ちょ、ちょっと、くすぐったい、あははは」 「我慢してねぇ」 心配して損した、とコリンは釈然としない気持ちだった。そもそもガルのような無神経な女がそんな敏感な体であるわけがないのだ。 「ねぇ、なんか筆が荒々しいんだけど」 「気のせいだけど」 こういうところだけ、敏感だ。 「ねぇ、さっきの吐き気とか、酸っぱいものって何?」 「あぁ、副作用だよ。今塗っているやつ、あと魔法陣もそうだけど、それに妖精の羽の鱗粉を混ぜているんだ。ときどきいるんだよ、副作用が出る子が」 「え? 私は大丈夫なの?」 「うん。やばい人は少し触れただけでだめだから」 「どんな副作用があるの?」 コリンは脇の下に筆を走らせつつ応えた。 「妊娠するんだよね」 「……はぁ!?」 突然、ガルが振り返ったので、コリンは急いで筆を引いた。 「あんた、私に何塗ってんのよ!」 「あ、ごめん、ちがうくて」 「そ、それは私を妊娠させたいってこと? それって、いや、でも、いきなり子供だなんて。できれば、二人の時間もしばらくあっても」 「ガル、聞いて。妊娠したと思いこんじゃうだけだから。いわゆる想像妊娠」 「……よね? 想像だもんね、知ってた。うん。知っていた」 ガルはおとなしく座り直した。 ホッとしてコリンは、作業を続けた。 「魔法的な用途は多いんだけど、一方で媚薬によく使われるんだ。相手を妊娠させたと思わせて、既成事実をつくってさ。えっちもしてないのに妊娠なんてするわけないのに、けっこう効果があるんだって。笑えるよね」 「何か、そう言われたらレモンが食べたくなってきた」 「お腹が空いただけでしょ」 むっとガルの背中はイラッと強張った。 「この赤いのは何?」 「血だけど」 うっとガルの背中が震えた。 「やっぱり、これも血なわけ。魔法薬って血とか臓物とかえぐいのばっかり」 「まぁ、聖獣の血とかはそれだけで魔法的な効果があるからね。どうしても必要になるのはわかるんだけど、僕は少し慣れたけど、いい気はしないよ」 「で、これは何の血なの?」 「人魚……」 「えぇ? 人魚? かわいそう。でも、美容とかに効果ありそうね?」 「の鼻血」 「……はぁ。ちょっと待ちなさい」 ガルは再び立ち上がった。 「何? もう少しで完成なんだけど」 「妖精の羽の鱗粉とかは、いいわ。かわいいから。でも、あなた、ねぇ、コリン? 私の背中に、鼻血を塗りたくっているの?」 「でも人魚だよ?」 「でも鼻血じゃない!」 「塗るくらいいいじゃん。今から飲むんだし」 コリンは無言で頭突きをされた。 人魚といえば、きっとガルは喜ぶだろうと思ったのだが、反対に怒られるとはいかに、とコリンはじりじりとする頭をさすった。 「人魚の血は体にいいんだよ。昔は、不老長寿の秘薬として使われていたんだから。実際、今でも研究はされてて」 「でも鼻血じゃないの!」 ガルはぎろっと目の端をあげた。 「鼻から出た血でしょ、そんな汚いものを私に塗りたくっていたなんて」 「清めているから大丈夫」 「清めてていても嫌!」 「でも、もうほとんど塗っちゃったし」 うぅ〜とガルは顔を覆った。 「もう、そういうことは先に言ってよぉ」 先に言ってもどうしようもないんだけど、と思ったが、たぶんどうせ怒られるから、コリンは言葉を呑み込んだ。 それよりも言っておいた方がいいことがあるとコリンは口を開いた。 「ねぇ、ガル、こっちを向かないでくれるかな。その、胸が」 「え?」 ガルは自分の上半身の状況を確認し、それから、サッと胸を隠し、もう一方の手で思いっきりコリンの頬を引っ叩いた。 「何で?」 「文句言わない。さっき見た分も合わせてよ」 納得いかない、とコリンは頬をさすった。 もう一度ガルを座らせて、コリンはやっと背中の呪紋を描き上げた。 「じゃ、ちょっと動かないでね。息も止めて」 ガルが息を吸い、止めたのを確認すると、魔法陣の端の鷲の足の絵の上に、コリンはゆっくりと左の掌を乗せた。 すると赤色で描かれた魔法陣が、蒼く輝き出した。コリンの手からにじむように魔法陣の色を反転させていき、しばらくしてガルの体に描かれた呪紋が淡く蒼く輝いた。 コリンは、ガルの体に蒼色がまわるのを確認した後、短く詠唱した。 『帯び、束ね』 コリンの言霊に従い、ガルを取り巻いていた呪紋の蒼い光が、コリンの左手に向けて集まり始めた。 まるで巻き付いていた蛇が一斉に引いていくように、ガルの体から失せていき、しばらくして光は呪紋ごと彼女の体から消えた。 代わりに、すべての光は、水が取り巻くようにコリンの左手に集まり、ぷかぷかと浮いていた。 「よし、うまくいった」 コリンは安堵して、小瓶を取り出し、その中に左手の蒼い光を小瓶の中に注ぎ込んだ。 「これで、私紋の採取は完了」 「はぁ、なんだかすごく疲れたわ」 「ガルは何もしていないじゃん」 あ、口走った、とコリンは気づいたが、もう遅く、ガルはぎろりと睨んでいた。 「えぇ、されただけよ。ひどく辱められたわ。もうお嫁に行けないくらい」 「お嫁に行けないんなら、お婿をもらえばいいんじゃない?」 「そんなトンチはいらないのよ。それに私だって女の子なの。できれば男の方から好きになって、さらって貰いたいの」 ぷふっ、とついコリンは笑ってしまった。すると、ガルも自分で気づいたようで、頬を朱く染めて、「何よ」と突っぱねた。 「いや、ガルがそんなロマンチストだったなんて、びっくりした」 「うるさいわね。とにかく私が結婚できなかったら、コリンのせいだからね」 「ははは、そのときは僕が貰ってあげるよ」 「え?」 「まぁ、冗談はさておき」 何か言いたそうな顔をしていたガルは放っておいて、コリンは小瓶を鍋に流し込み、 「そろそろできるよ」 コリンは、材料を入れ終えて、撹拌の作業に入った。実はこの作業が非常に難しい。呪紋を描きながら、呪文の詠唱を行い、沸騰しないように火力を調整する。 液面に浮いてくる黒い油脂を丁寧に取り除き、液体の色が青く透き通ってきたら完成だ。 布でしっかりと濾し取り、ガラスの瓶に注ぎこむと、真夏の海を掬いあげたような澄んだ青い液体がひとりでにカツンと高い音を立てた。 「よし、いい音。完成」 ここで低い音が鳴ると質のわるい出来となる。 「ガル、出来たよ」 ふうと額の汗を拭い、ガルの方を向くと、彼女は椅子に逆向きに座り、ふてくされたように頬杖をついている。 「どうしたの?」 「別に」 「いらないの?」 「……いるわよ!」 まだぷりぷりとガルは怒っていたが、どちらかというと何か諦めたような顔をしていた。 コリンから瓶を受け取り、ガルはごくりと唾を呑んだ。 「この鮮やかな青色が不気味ね」 「食欲が湧く色ではないよね」 「あ、ちょっと待ってね」 とコリンはもう二回同じように濾す過程を繰り返した。すると二つ、別の色の液体、赤と緑の薬ができあがり、同様に瓶に詰め、ガルに渡した。 「それぞれ用途が違うからね。青は水属性の回復系、緑は木属性の補助系、赤は火属性の攻撃系ね。間違えたらだめだよ」 「わかった。うぅ、水と木か。ちょっと不安だけど」 ふう、と一つ息を吐き、ガルは頬を緩めた。 「ありがと。むり言ってごめんね。私、どうしても勇者になりたくって」 「君が昔から勇者になりたがっていたのは知っているよ。でも、次から独力でなんとかしてくれよ」 「えぇ、もちろん。世界一の勇者になってやるんだから」 ガルは、そういうと踵を返した。 「あ、効き目は一時間くらいしないと出ないからね」 とコリンの言葉に手を振って、ガルは階段を昇っていった。 取り残されたコリンは頭をかき、音だけがこぼれ落ちてくる階段の方を見やってため息をついた。 「まだ、副作用の話をしてないんだけどな」 「まぁ、いいか」とコリンは工房の片付けを始めた。 **************************************************************** 山稜が少しずつ明るみ始めた頃に、コリンは目を覚ました。 いつもは寝坊の常習犯であり、愛犬のチャールズが散歩に連れて行けと吠え始めてやっと起きるコリンなのだが、この日は何か胸騒ぎがしたのだ。 ボサボサの髪を適当に撫でながら、リビングに歩いて行く。頭はまだ半分寝ているが、体の方は朝の日課をこなそうとして、コーヒーの豆を用意する。 粗挽きになるように豆を挽いた後、いつものようにサイフォン式抽出の準備をして、フラスコに火をかける。 それからコーヒーカップを二つ用意して、コリンはふと首を傾げる。 「何で二つなんだ?」 そこで胸騒ぎの原因に気づく。 裏付けるように、一階のドアが強引に開けられる音が聞こえ、 「コリーン!」 と怒号が響いた。 「ガル。まだ朝だよ。近所迷惑でしょ」 「それどころじゃないわよ!」 コットンパンツに、白いシャツというラフな格好したガルは、ひどく怒った顔をコリンに向けていた。 「どうしたの?」 「あの薬よ!」 あの薬というのは、魔力増強剤のことだろう。ガルがこんなに怒っているということは、もしかして効かなかっただろうか。 コリンが恐る恐る尋ねると、 「効いたわよ!」 とガルはやはり怒って応えた。聞くところによると、魔力はいつもの倍以上に跳ね上がり、試験官を驚かせたらしい。 「じゃ、なんで怒っているの?」 「副作用よ!」 「あぁ」 コリンは目を背けた。 「あんな副作用があるのに何で言わなかったの!」 「いや、聞く前に帰っちゃったから」 「追いなさいよ。私のためを思うなら、どこまででも追ってきなさいよ!」 「まぁ、いいかなと思って。そんなにひどい副作用じゃないし」 コリンの言葉を聞いて、ガルは「バカ!」と顔を覆った。 「どれが、そんなにひどかったの?」 「どれもよ!」 ガルの言葉に、コリンは首を傾げた。 「まず、青いやつ」 「水属性の回復系の魔法増強薬ね。あれはきれいにできたから、すごく効いたでしょ」 「効いたわよ。びっくりしたわ」 試験内容は、走り疲れた馬の体力を回復させるというものらしい。そのために疲れさせられる馬がかわいそうだとコリンは密かに思った。 「疲れてもう倒れこんでいる馬に回復の魔法をかけたら、すごい元気になって、もう手に負えないくらいだったわ」 ガルの話を聞いて、それで、どうして不満があるんだ、とコリンは不思議に思った。 「元気になり過ぎなのよ!」 ガルは机を叩いた。 「もうたいへんだったんだから。角は生えてくるし、牙は生えてくるし、筋肉はもりもりになるし、しかも、発情してるし! あれ何!?」 「使う魔法に意図できない作用が出ちゃうっていう副作用なんだよね」 「それって致命的じゃない!」 「どうせ下手なんだから大して変わらなくない?」 頭突きをされた。 「馬がオスだったみたいで、会場にいた女の子を追いかけまわしたんだから。試験官の人なんて押し倒されて、『あぁ、初めてなの! 許して! 馬並みでもイヤァ!』って意味分かんないこと叫んで、失神しちゃったんだから。警備の人がいなかったら、あの試験官の純潔が危なかったわ」 「ははは、どんまい」 「あほー!」 ん? とコリンは気になり尋ねた。 「ガルは大丈夫だったの? いちばん近くにいたと思うけど」 「私は、何もされなかった」 「あ、ごめん」 「謝んな!」 ガルは髪をくしゃくしゃにして、 「次! 緑のやつ」 「木属性の補助系の魔法増強薬ね。あれは大丈夫だったでしょ?」 「あれもひどかった。効くには効いたわ。速さの補助魔法を使ったんだけど、初めてかけっこで一番をとった」 「いいじゃないか」 「ただし、語尾に全部、『この愚民が』ってつくんだけど? え? そんな副作用ってある? ねぇ?」 あぁ、とコリンは目を逸らす。 「リッケルトの魔法の副作用って、変な語尾がつくって多いんだよね。効果が大きいからあまり気にしないけど」 「気にするわよ! 私、試験官に呼ばれて返事をする度に 『ガル・ローナン!』 『はい! この愚民が』 て言っちゃうし、友達に声掛けられても、 『がんばろうね』 『えぇ、そうね、この愚民が』 て言っちゃったし、いちばんになってからも、 『すごいね、ガル!』 『ありがとう、この愚民が!』 って、どんだけ嫌な奴なのよ! 昨日で友達全員失くしたわよ!」 「子供のユニコーンの鼻血だと『このハゲが!』って語尾になったんだけどそっちの方がよかった?」 「どっちもどっちよ!」 コリンの頬をぐいとつねり、ガルは目を怒らせた。 「最後のやつがいちばんひどかったわ」 「火属性の攻撃系の魔法増強薬ね。あれがいちばんかるい副作用だったと思うだけど」 「笑いが止まらなくなるとか、最悪じゃないのよ!」 魔力が増強されている間、笑いが止まらなくなるという副作用だ。結果的に笑っているだけだから、結果に影響しないとコリンは思ったのだが。 「もう魔力が増え初めてから、ずっと笑いが止まらなくて。でも試験は受けなくちゃいけないから、もうたいへんだったんだから」 「でも、見方によっては自信があるように見えたんじゃ」 「高笑いしながら、超火力の炎魔法をぶっ放してんのよ? 自信があるように見える? 狂気しか感じさせないわよ!」 髪を振り乱し、高笑いをするガルの姿を想像して、コリンは身震いした。 「悪魔降臨だね」 「誰のせいよ!」 「すごいね。生物を魔物に変えて、同期を愚民と罵って、笑いながら大火力の魔法をぶっ放しているなんて、ほぼ魔王じゃん」 「だから、だ、れ、の、せ、い、よ!」 ガルは頭を、コリンの頭にぐりぐりと押し付けた。 それから一度ため息をついて、ガルは頭を抱えて座り込んだ。 「もう次にあったら絶対、魔王様って言われるわよ。勇者にとって、これほどの屈辱はないわ」 「気の持ちようでしょ」 悶えるガルの前に、コーヒーカップを差し出した。 「まぁ、ずるしようとしたんだし、少しくらいのデメリットは覚悟してたろ。それに、他の誰かになんと思われようと君は君なんだし。少なくとも僕は、ガルが優しい勇者見習いだって知っているよ」 不満そうにしながらもおとなしく、コーヒーを受け取り、ガルは少し落ち着いたようだった。 「で、結果はどうだったの?」 たしか勇者試験は即日結果が出たはずだ。 先程まで怒っていたガルは、急におとなしくなり、何かそわそわと椅子を揺らしたかと思うと、一度口を開き思い直して閉じる。それからしばらくして、コリンの問いに、ガルはスッと申し訳なさそうに目を逸し、 「受かった」 と答え、そしてコーヒーを一口すすった。 「そう」 と一言だけ添えて、コリンもコーヒーを一口すすった。 香りがつんと立ち、舌の上を突くような酸味の後に、ほんのりと渋みがやってくる。 コーヒーを飲んでほっこりと頬を染めるガルを見て、次は少し酸味を抑えようかと、そうコリンは思った。 |
まつげぱちお 2016年08月28日 22時52分46秒 公開 ■この作品の著作権は まつげぱちお さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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