沼の底 |
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【注意】この作品には暴力的な表現、性的な表現が含まれています。 一. 「私達、暫くの間距離を置いた方がいいと思うの」 スマートフォンから聞こえた杏子の言葉が何を意味するのか、いくら恋愛下手の僕でも、それぐらいは分かった。 「ちょ、ちょっと待って」 混乱する頭でやっとのことそれだけ言って引き止める。その間に次に言うべき言葉を考える。 「ちゃんと……ちゃんと逢って話し合おうよ!」 「話し合うって、何を?」 そっけない杏子の物言いに一瞬怯む。そこには甘い言葉を囁き合った彼女の姿は無く、恋人の面影さえも見つけることが出来なかった。 しかし、怯んでなどいられない。 ここで下手を打てば、二人の時は永遠に止まってしまう。いや、全てが無かったことになってしまう。 そんな焦りが僕を必死にさせた。 「僕の何が悪かったの? 何を怒っているの?」 「怒ってるとか、そういうことじゃないの」 余計に混乱する。では、なぜなんだ! 「僕のことが嫌いになったの?」 「そういうんじゃなくて――」 杏子の言葉に苛立ちの色が淡く浮かんだように思えた。それが僕を走らせる。 「愛しているんだよ」 ベッドの中の睦言でしか言ったことのない言葉を口にする。 僕にとってこれ以上の切り札はない。 しかし、ひと呼吸おいてから杏子の口から出た台詞は、僕が期待したものではない「ありがとう」のひと言だった。 「杏子さん……」 しばらくの沈黙の後、スマートフォンの向こうで杏子が言った。 「聡は、私のこと、ずっと『さん』付けね」 それは僕にとって至極当たり前のことだった。 僕と杏子が付き合うようになってから半年になるが、初めて知り合ってからそうであるように、僕は杏子のことを『さん』付けで呼んでいた。 杏子の美しさに憧れ、優しさに魅かれ、心酔した僕は、ステディな関係になっても『杏子さん』という呼び方以外を思いつかなかった。望外だった。 だから、杏子がそんな至極当たり前のことをなぜこの段になって言うのかが理解できなかった。 「しばらく連絡しないから。明日も早いから切るわね」 語るべき台詞を探して無限ループに陥った僕に、杏子は一方的に話しを切り上げて通話を切った。 そっけない「おやすみなさい」のひと言を残して。 僕はスマートフォンを耳に当てたまま暫くの間呆けた。 杏子と過ごした楽しかった日々を、甘い時間を頭の中でリフレインする。 何気ない仕草、曇りの無い笑顔、切ない吐息を反芻し、そして最後に暫く距離を置くと言った言葉が、僕の中の杏子のページに刻まれたことを認識する。 きっとそれは、他のどの思い出よりも深く刻まれた。 こんなときには泣くもんだ。 いつかドラマで見たように、僕は泣きたかった。 涙を流して泣きたかった。 しかし、目元に薄っすらと溜まっただけの涙は、滴り落ちるまでに至らない。 僕は瞬きを止め、涙腺に意識を集中した。 その甲斐あって、ようやくひと滴の涙が零れ落ちた。 それで僕は悲しい自分に酔って、ひとり布団の中で泣き濡れた。 二. 「泣こうが笑おうが日はまた昇り、朝はやってくる」とは、誰が言った言葉だったろうか? いや、誰が言った言葉でも構わない。なんなら僕が言ったことにしてもいい。 ようは夜が明けて朝が来た。それだけのことだ。 夕べ杏子に電話で振られ、布団を被ってひとしきり泣いた後、僕は杏子との熱いひとときを思い出しながら、三度自慰行為を繰り返した。 射精する度に虚しさと淋しさが込み上げ、杏子が僕の元から去ったことを実感した。 そんな思いにふけってふと気づくと、いつも出かける時間を十分も過ぎていた。 時間というのは全く容赦がない。 僕は慌てて身支度を整えて、アパートを飛び出した。 朝とは言え刺すような熱い日差しの中、駅まで十分の道のりをひたすら走る、走る、走る。 身体がだるい。思うように走れない。 それが、夕べ杏子に振られて眠れなかったせいなのか、三度繰り返した自慰行為のせいなのか、それとも朝食を取らないことを習慣化したせいなのかは分からない。 少なくとも加齢による体力の低下が原因とは思いたくない。 僕は息せき切って、発車間際の満員電車に飛び込んだ。 ドアが閉まり、のろのろと動き出す。 この時間帯の車内は、いつもすし詰め状態だ。冷房が効いてはいるものの、涼しさを感じるのは首から上まで。三十六度に保った肉塊が触れ合うほどに接近していれば、身体の方はその体温でムッとしていた。 僕は、いつものようにむかつく胃を右手で押さえつつ、荒れた呼吸を整えた。 暑い。 蒸し暑さが身体に纏わりつく。 あれだけ走れば昔は汗だくになったものなのに、今は額にうっすらと粘り気のある汗が浮いただけだった。ひょっとしたら、新陳代謝が落ちているのかも知れない。 久しく運動らしい運動もしてないものなと思って今の自分の体勢に気づく。 すし詰めの中、目の前に制服姿の女子高生がいた。 僕と女子高生は向かい合わせで、丁度その子が僕に抱きつく格好になっていた。 今どき珍しく着色もウェーブもかけていない、まっすぐで黒い髪を長く伸ばした女子高生。頭ひとつ分低いその子の髪の香りが僕の鼻腔をくすぐる。 甘いシャンプーの香り。 いや、シャンプーだけではない。 シャンプーだけでこんな香りになるはずがない。 きっとこれは女子高生の香り。 シャンプーと、汗と、体臭とがないまぜになった香り。 満員電車の熱気の中、僕は杏子の香水の甘さとはまた違ったその香りに、しばし心を奪われた。 この頃の女子ってみんなこんなにいい香りなんだっけ? とうに過ぎ去った自分の高校時代を思い出してみる。 いや、そんなのを覚えているはずがない。 高校時代、僕は部活動に明け暮れて女の子と付き合ったことなどなかった。 共学だったから、クラスの半分は女子だったが、こんなに接近したことなど勿論ない。女の子の香りなど覚えているはずがないのだ。 ものの数秒でそんなことを考えていると、ガタンと電車が揺れた。 拍子に胃を押さえていた右手の甲に柔らかなものが当たった。 あっと無言の声を上げる。 バランスを崩した女子高生が僕にぴったりと抱きついていた。その胸が僕の右手の甲に押し付けられていた。 夏用の薄い制服越しに、柔らかな隆起の感触が伝わる。 焦った。 焦って手を引っ込めようとした。 しかし――僕はそうはしなかった。 女子高生の柔らかさに、抗えない自分がいた。 手のひらがじっとりと汗ばむのを感じる。 体温を調節するためにかくのとは別物の汗が。 どういうわけか彼女も僕の手に胸を押し付けたまま、その体勢を維持していた。 女子高生の吐息が僕の首筋にかかる。 そのどこかくすぐったい感じと、押し付けられた柔らかな感触とで、僕の男としての本能が頭をもたげた。 それを理性で押し留めるものの現状維持が精一杯。 次の駅までの数分間が、永遠に近いように思えた。 その間、僕は杏子のことも、会社に遅れそうなことも全て忘れていた。 駅に着くと、人の流れのまま僕も彼女も電車から外へと出た。 チラリと女子高生の顔を見る。 まつ毛の長い化粧っけのない普通の女子高生だった。 彼女はそのまま駅の出口へと向かった。 女子高生の長い黒髪が揺れる背中を見送ってから、僕は再び電車へと乗り込んだ。 三. 電車が終点のターミナル駅に着くと、僕はまた走った。 駅から会社までは徒歩で約十分。やばい、あと五分しかない。 大きな交差点の信号が赤から青に変わるのももどかしく、僕は体力の続く限り走った。 閉まり掛けたエレベーターの扉に鞄を突っ込んで無理矢理開いて飛び乗る。 肩で息をしながら、僕のデスクのある七階のボタンが押されていることを確認する。 ようやく七階に着いたエレベーターを飛び出して自分のデスクの上に鞄を置いた瞬間、始業を知らせるチャイムが鳴った。 大きく息をしながら、デスクのパソコンの電源を入れる。 額に滲んだ、脂八分の汗を左の手の甲で拭う。 ふと、電車の中で触れた女子高生の胸の感触を思い出す。 いや、あれは不可抗力だった。自分の意思とは関係のないところで起きた事故だったのだと、自分自身に言い訳をする。そのときだった。 時代劇の剣客よろしく、僕は背後に気配を感じて振り向いた。 果たして、そこには薄くなった頭を掻きながら、眉間に皺を寄せた渋い顔の課長が立っていた。 「丸尾君、もう少し早く来れないものかね」 いつも呼び捨ての課長が『君』付けで呼ぶときは、決まって怒りを押さえているときだ。 「あの、電車が遅れて――」 「丸尾君が乗る電車はしょっちゅう遅れるんだから、それを見越して早く来るのが大人じゃないかな?」 お決まりの言い訳に、正論で返されるとぐうの音も出ない。 「あの、今度から気をつけます」 「今度っていうのはいつからかな? 丸尾君」 さっき手の甲で拭ったばかりの額にまた脂が浮く。 「君の今度からって台詞は、聞き飽きたんだよ」 「あの、明日から」 「明日から、始業十分前には席について、チャイムが鳴ったらすぐに仕事が始められるようにしておくこと」 苦し紛れに言った僕の台詞を掴んでぎゅっと丸めて締め付ける。 「いいか、丸尾。十分前行動だからな」 「はい」 それでようやく僕は解放された。 ほっとひと息ついて、表示されたばかりのパソコン画面にIDとパスワードを入れてログインする。 デスクトップ画面が表示される間、僕はエレベーターホール脇に設置された自動販売機まで、いつもの缶コーヒーを買いに行く。缶コーヒーを買って戻る頃にはデスクトップ画面が表示されて作業が始められるという寸法だ。 いつものように、自分のデスクで買ってきた缶コーヒーをニ、三度振ると、僕はプルトップを開けてふた口甘ったるい液体を飲み込んだ。 そしていつものようにマウスを操作してメールをチェックする。 やばい、プロジェクトのメーリングリストの未読メールが二十件を超えている。 そう言えば昨日は、明日の打ち合わせ用の資料を手直ししていて、メールをチェックしていなかった。 僕は未読メールの件名をざっと見回して、気になる件名を見つけた。 「【連絡】会議時間変更のお知らせ」 慌てて開いて読むと、明日の午後の予定だった会議が、今日の十時に早まっていた。 泡を食って課長の席まで飛んでいく。 「課長、明日の午後の会議なんですけど」 「ああ、都合で今日の午前中に変更になった。メール出しておいたろ」 「いや、あの、自分今メール見て」 「昨日俺がチェックした資料、指摘したところ直してないのか?」 課長の目が不穏だ。僕はごくりと唾を飲み込んだ。 「それは直してあります」 「なら問題ないだろ。十部印刷して用意しろ。時間がないぞ」 「はい」 本当は指摘されたところを直しただけではなく、いろいろと追加したことを言えなかった。 僕は正月のコマみたいに課長の言葉にはじかれて、くるくると自分のデスクに戻って資料を印刷した。 その日の会議は地獄だった。 針のムシロの上に座るとは、将にこのことだ。 僕が作った資料を課長が読み上げてお偉いさんに説明する。 課長が誤字や資料の不備を詫びる度に、僕はその場にいたたまれなくなった。仕舞いには課長は資料を無視して、自分の言葉でまとめる始末だった。 結局、会議は不調に終わり、再度、資料を見直ししての仕切りなおしとなった。 会議の後、僕は昼休みの半分を費やして課長にこってり搾られた。 お昼をコンビニのサンドイッチで済ませ、その日の午後は、課長が付きっ切りで資料の直しを行った。 ようやく課長のオーケーが出て解放されたときには、夜の八時を過ぎていた。 四. 残業を終え、ふらふらになりながら会社を出ると、僕は空腹を抱えてネオン瞬く街をうろうろと歩いた。 どこをどう歩いたのか覚えていない。気がつくと僕は細い路地にいた。 目の前に『メモリィ』なんてありきたりな名前のスナックの看板があった。 普段ひとりで飲みになんて行ったことのない僕が、その日に限ってはなぜか店のドアをくぐっていた。 本当にいつの間にか、だ。 そして、いつの間にか、僕は薄暗い照明のカウンターで、ハイボールを舐めていた。 グラスの中の炭酸の粒がひとつまたひとつと表面に浮かんでは消え、浮かんでは消えする様を見つめていると、腹の虫がぐーと鳴った。 絶妙のタイミングで目の前に焼きそばが出される。 グラスから顔をあげると、カウンターの向こうで着物姿の女性の背が見えた。 おそらく、この店のママなのだろう。 オーナーママか雇われか、どちらにしても着物なんて古風だなと思いつつ、棚に並んだボトルを整理しているママの背中を僕は眺めた。 後ろ姿になんとなく見覚えがある気がした。 もう一度お腹がぐーと鳴った。 僕が焼きそばに向かって手を合わせ、軽く目を閉じて 「いただきます」 と言うと 「どうぞ」 と聞こえた。 目を開けて声がした方に眼を向けると、まだボトルを並べているママの背が見えた。 僕は、添えられた割り箸をパキリと割って、まだ湯気の立っている焼きそばを口に運んだ。 ソースと紅しょうがとくたくたのキャベツの味が口の中に広がる。なんてことはない普通の焼きそばだ。ただ、その味は妙になつかしい味だった。 僕はもくもくと焼きそばを口に運んだ。 味わいながら咀嚼して飲みこむ。 紅しょうがとキャベツと申し訳程度の肉が麺と一緒くたになって食道を通り、胃の中へと落ちていく。 それを皿の上が空になるまで夢中で繰り返した。 紅しょうがひと切れ残さずキレイに平らげると、腹はすっかり満たされていた。 僕は割り箸を皿の上に揃えて置き、ハイボールをひと口飲んでから手を合わせて、また軽く目をつぶった。 「ご馳走様」 と言うと 「お粗末様でした」 と聞こえた。 目を開けると、焼きそばの皿も揃えた割り箸もそこにはなく、カウンターの向こうにやっぱりママの背中があった。 見覚えのあるママの背中をぼーっと見ていると、カウンターの奥の席から「よう」と声をかけられた。 僕と同じくらいの年恰好の男が、右手でグラスをひょいと上げ、こっちを見て笑っていた。 向こうから「久しぶり」と言われて、ああ本当に久しぶりだとなつかしくなる。 僕もハイボールの入ったグラスを掲げて返すと、グラスの中の氷がカランと鳴った。 高校の同級生、中学だったか、いやもっと前、小学生の頃の連れかも知れない。 いつの間にか僕は男とカウンターに並んで座って飲んでいた。 たった一杯のハイボールに酔ったせいなのか、どうにも相手の名前が思い出せない。 「ええと、『佐藤』だっけ?」 昔の友人の中で当たり障りのないありふれた名前を出す。 「佐藤って剣道部の?」 明察だった。 中学のときに『佐藤』という剣道部員の友達がいた。 「よせやい。『切り餅』と一緒にするなよ」 男はにやりと笑った。 彼の言う『切り餅』というのは、佐藤のあだ名だ。それを知っているということは、中学のときの知り合いか。 いや、佐藤は高校のときも同じだった。高校時代の友人という可能性もある。 男の名前が全く思い出せない僕は、ただ苦笑いを返す他なかった。 「最近どうなのさ」 男が聞いた。 「どうってことないさ。いたって普通だよ」 「普通ねぇ。こんなところでひとりで飲んでるってことは、ろくなことないんだろう。仕事で失敗したか、彼女にでも振られたか、そんなとこか」 図星だった。 まるで昨日からの僕をどこかで見ていたかのように男は言い当てた。 それがきっかけだった。 酔いも手伝って僕は夕べ突然彼女に別れを告げられたこと、仕事で失敗して課長にこってり絞られたこと、あまっさえ満員電車の中で女子高生にいけないことをしたことまで話していた。 男は聞き上手だった。 程よいタイミングで相槌を打ち、要所要所で感想を述べ、或いは同調し、或いは否定した。 普段誰にも言ったことのない愚痴や妄言がとめどもなく口の端からこぼれ出たのは、それが心地よかったせいかも知れない。いや、自分が思っていたよりもフラストレーションが溜まっていたせいか。 飲み干すと知らないうちにグラスに満たされるハイボールも杯を重ね、五、六杯は飲んでいた。 男がその話を始めた頃は、いい加減酔いも回って意識が朦朧としていた。 「近所にさ、沼があったろ」 「沼?」 「沼って言うかさ、蛇行した川を河川工事で真っ直ぐにしたあとのさ、取り残された曲がった部分があったろ」 「ああ」 朦朧とした意識の中で、そんなのがあったのを思い出しながら相槌を打つ。 「そう言えば、そこで釣りしたことあったっけ。沼の主のでっかい雷魚がいるとかいう噂だったけど、なんにも釣れなかったな」 「そうそう、その沼だよ」 沼に釣りに行ったのは確か小学生の頃だ。してみると、男は小学生の頃からの知り合いなのかも知れない。などと、酔った頭でぼんやりと考える。 「小学生の頃の話だ。冬の寒い日だった。雪が降っていた」 男はグラスを見つめたまま話を続けた。 「ニュースか何かそんな番組だったと思う。前の日にテレビで凍った湖でスケートしたり、穴を開けて魚を釣ったりしてるのを見たんだ」 「ああ、確かにそんなのあるよな」 グラスを揺らしながら相槌を打つ。 「それでさ、こんなに寒いんだから、流れのないあの沼だったら凍ってるんじゃないかって思ったんだ」 「馬鹿な」 僕は呆れて首を横に振った。 「湖が凍るのって、東北とか北海道とかもっと北の話だろ? うちらの地方じゃそこまで寒くならないじゃないか」 「ああ。そこは子供が考えたことだから」 男はグラスの中の琥珀色の液体を舐めて口を湿らした。 「でもさ、そう思っちゃったんだよ。あの沼も凍ってるんじゃないかって。凍った沼の上を歩けるんじゃないかって。子供だったからね」 男はもったいぶるようにまたグラスを口に運んで、ふうと息を吐いた。 「それでどうしたのさ」 「ああ」 まだ半分ぐらい中身の残ったグラスを見つめたまま男は続けた。 「それで行ったんだよ。沼に」 「うん」 「案の定、沼は雪が積もって真っ白だった。前の日から結構降ってたからね。表面に落ちた雪が水に融けずに積もってたのさ」 雪降る冬の寒い日に見た、在りし日の彼の沼を思い出す。 確かにそんなことがあった。 「子供の思い込みっていうのは恐ろしいね。純真と言うか、無知と言うか。兎に角、テレビで見た凍った湖と同じだって思い込んじまった」 「それで?」 「ああ」 男は、もう一度グラスを口に運んで湿らせた。 「乗ってみた」 「乗ったって、その沼に積もった雪の上にか」 「そう、それだ」 「乗れたのか?」 「いや、当然乗れない。水面に雪が積もっただけだからな。凍ってるわけじゃない。子供とはいえ、人間ひとりの体重を支えられるわけがない」 グラスを見つめたまま淡々と答える。 「当然の結果、冷たい沼の中にはまった。いや、落ちたと言った方が正確か」 随分と他人事のように話すもんだと思いながら僕は黙って聞いていた。 「腰まで水に浸かってさ。必死で岸辺の枯れ草に掴まったよ。足がついたかどうかなんて覚えちゃいない。溺れるときは十センチの深さでも溺れるって言うしな。兎に角必死だった」 男がグラスから視線を外して僕の方を見る。僕は無言で頷いて先を促した。 「必死で枯れ草に掴まって、岸に這い上がった。腰まで水に浸かって、パンツまでびしょびしょになってた。家に帰って濡れたズボンとパンツを洗濯機に放り込んで知らん顔した。もし沼に入ったのが親に知れたら怒られると思ったからね」 僕はまた無言で頷く。 「今思うとぞっとする。ひょっとするとそのときに死んでたかも知れない。でもさ」 そう言った男の口元が緩む。 「子供ってのは馬鹿なもんだよな。自分が死に掛けたことよりも、親に叱られることの方が心配なんだから」 僕も釣られて笑う。 「それで怒られたのか?」 「いや、怒られなかった」 「そうか」 僕らは笑った。 ふたりしてくくくっと噛み締めるように笑った。 「でもさ」 急に男が真顔に戻る。 「でも、最近思うんだよ」 「何を?」 「そのとき、本当に助かったのかって」 僕は呆けて男を見た。 何を言っているんだかわからない。 「本当は、そのとき沼に沈んだんじゃないかって」 「馬鹿な」 「そう、馬鹿な話さ。でも考え出すと止まらないんだ。実は今のこの現実は、沼の底で見ている一瞬の夢なんじゃないかって。それを明確に否定する材料がないんだよ」 カランとグラスの中の氷が鳴った。 「妄想だよ。疲れてるんじゃないか?」 「そうかも知れない。そうじゃないかも知れない」 「いや、妄想だ。そうに決まっている」 男は虚ろな焦点の合わない目で僕を見た。 「本当にそう思うか? そうだと言い切れるか?」 僕は無言で何度も頷いた。 「死に掛けたことはないか? よく思い出してみろよ。助かったと思ったのは夢で、現実はもう死んでると、それを否定できるか?」 詰め寄る男の顔を見て、僕は男が誰だかを思い出した。いや、認識した。そして、全てを思い出した。 何もかも―― 僕は、震える手でグラスの中のハイボールを一気に飲み干した。 五. 目覚まし時計の電子音で、僕は目を覚ました。 吐く息が酒臭い。 げっぷをすると、胃の底からウィスキーの匂いが上がってきて口の中に充満する。 頭が痛いわけじゃないが、明らかに夕べの酒が残っていた。 さっき止めた目覚まし時計を見る。いい加減出かける用意をしないと遅刻する。でも、何もする気がしない。それは、宿酔いのせいじゃない。 もう一度布団を頭から被ると、二度寝を決め込む。 今日は無断欠勤をすると心に決めた。 次に目が覚めたのはお昼前だった。 まだ息がウィスキー臭い。 ベッドから起き上がって冷蔵庫のミネラルウォーターをペットボトルからそのまま飲む。冷たい水が食道を通って消化器官に流れ込むのが心地いい。血液中のアルコールが目に見えて薄まるような感じがする。 洗面所に行って歯磨きをする。 チューブから練り歯磨きを搾り出して歯ブラシに乗せ、それを口の中へと放り込むと、、のどの奥から酸っぱいものが逆流した。それをごくりと飲み下し、口内の歯ブラシを動かす。 鏡を覗くと目が赤い。充血している。疲れるとすぐに目が充血する。目薬でも点しておくかと思いつつ、ゴシゴシと歯を磨く。 口の中にたまった唾液と練り歯磨きのカクテルを吐き出すと赤い血が混じっていた。 そう言えば、前に歯医者に行ったのはいつだったか。水を口に含んでうがいをすると、わずかにしみた。 じゃぶじゃぶと顔を洗ってサッパリする。 洗面所から戻ってスマフォを見ると、会社からの着信履歴が三件あった。 なに、かまいやしない。今日は無断欠勤すると心に決めたんだ。 ふと自分が空腹であることに気づく。 そう言えば昨日はあの店で焼きそばを食べたっきりだ。腹も減るはずだ。 僕はジーンズにTシャツというラフな格好に着替えて、休日にしか行かないお気に入りのラーメン屋へと向かった。 魚から出汁をとったあっさり系醤油ラーメンで空腹を満たして人心地着き、それから食後の散歩と洒落込む。 僕は国道から一本脇道に入り、緑の多い公園へと向かった。 夏の強い日差しを避け、街路樹が作る木陰を選んで歩いて行く。 空が青い。 白い入道雲とのコントラストが、いつか見た絵画のようだ。 いつか、どこかで見た絵画の――いや、そうじゃない。絵画なんかじゃない。僕は毎日この空を見ていたんだ。 真っ黒になって遊んだ子供の頃。 部活でグラウンドを駆け回った、学生の頃。 あの頃、ふと見上げるといつもこの空があった。 それを忘れていただけだ。 この夏空を忘れるほど、オフィスでパソコンにかじりついて過ごしていただなんて、なんて馬鹿なことをしていたんだろう。馬鹿馬鹿しいにも程がある。 そんなことを考えつつぶらぶらと歩いていると、やがて公園に着く。 丁度お昼時のせいか、公園には一組の母子がいるだけだった。 僕といくつも違わない、まだ二十代半ばの若い母親と二歳ぐらいの幼子だった。 薄っすらと化粧をしたショートボブの母親は可愛らしいひとだった。 それにどこか杏子に似ていた。いや、全く似ていなかったか。 髪形も顔立ちも全く違う。 雰囲気が似てたとか、そんなのは後付けの言い訳だ。都合のいい捏造だ。 ただ単に、可愛いひとだと思った。それだけのことだ。 その可愛らしい母親と子供は、追いかけっこの真似事をしていた。 母親が子供を追いかける真似をすると、子供はきゃあきゃあと、奇声を上げて逃げ回った。 とんと母親の手が背中を叩いたのを合図に攻守交替し、今度は逃げる真似をする母親をきゃあきゃあ言いながら追いかける。 そんな遊びを飽くることなく繰り返すのを、僕は木陰のベンチに腰掛けてぼんやりと眺めた。 それが何度目のときだったか覚えちゃいない。追いかける母親を見ながら夢中で逃げていた子供が、ベンチから投げ出した僕の足に体当たりした。 子供は僕の足に掴まって、僕を見上げた。 一瞬不安そうな顔をする。 泣くのかと思ったら、逆に僕の顔を見てにっこりと笑った。無垢な笑顔だった。 釣られて僕も笑顔になる。 「祐ちゃん、駄目よ」 母親が後ろから子供を抱き上げる。 しっかりとその胸に子供を抱っこすると、彼女は僕に会釈をした。 ショートボブが会釈に合わせて彼女の頬を撫でた。 僕も微笑みを崩さす軽く会釈を返す。 幼子を抱いた彼女の幸せそうな笑みがたまらなく魅力的だ。 魅力的だ。 たまらなく魅力的だ。 幸せそうな笑みが、たまらなく。 ゴクリとツバを飲みこむ。 僕は、僕の男が疼くのを感じた。 また暫くの間、母子は追いかけっこの真似事を繰り返した。 その様子をぼんやりと眺める風を装って観察する。 パンと張ったジーンズの尻に女を感じる。その下にどんな下着をつけているのだろうと妄想し、視姦する。 ベビーカーがないということは、幼子でも歩いて来れるぐらい近いところに家があるのだろう。そうあたりをつける。 ようやくと満足したのか、それとも子供が疲れたのか、母子はたわいの無い遊びをおしまいにした。 公園から出るとき、母親が僕の方を見てまた軽く会釈したので、僕も会釈を返した。 母子が立ち去るのを見送ってから、僕はベンチから立ち上がって後を追った。 案の定、二人は公園から伸びた道をすぐに左に曲がった二区画先の家へと入って行った。壁の白い、まだ新しい小さな家だった。 若夫婦に子供ができるということで、爺さん婆さんが金を出して買ったんだろうか? などと世間でありそうなことを考える。 僕は母子が玄関に入るのを見計らって走った。 そして、扉が完全に閉じる前にドアのノブに取り付くと、力任せに引っ張った。 今、まさに閉めようとしていた扉に逆方向の力が働き、己が手からドアのノブがするりと抜けたのを呆然と見つめる母親。 それも一瞬で、可愛い顔が恐怖に引きつる。 どんと奥へ突き飛ばすと、僕は素早く玄関に入り後ろ手に扉を閉めて鍵をかけた。 尻もちをついて僕を見上げる顔が、恐怖で歪んだ。 悲鳴を上げようとしたので、右のつま先で思いっきり母親の鳩尾辺りを蹴る。 一瞬息が止まり、その後体をくの字に曲げてげほげほと咳き込む。 そのとき、母親の異変を察知してか、子供がてとてとと奥から玄関に現れた。 公園で見たのと同じ無垢な目で僕を見る。 僕は玄関から助走をつけて土足のまま家の中に上がり込み、幼子を蹴り飛ばした。 まるでサッカーボールのように幼子は宙を飛び壁に激突した。 激突した瞬間、ヒィと言ったのは、子供だったか、母親だったか。 子供は壁に跳ね返り床に転がった。 目と耳と鼻と、そして口から血が流れた。 活け造りの鯛みたいに、子供の指がひくひくする。 鼻血ってやつはたいしたことはない。誰もが経験するものだ。 だが、他はマズイ。 口からの出血は内臓がやられた可能性があるし、目とか耳とかからの場合は脳が損傷したのかも知れない。 そんなことを考えていると、後ろからどんと突き飛ばされる。 半狂乱って言葉は知っている。だが、それは唯の知識として知っているだけで、実際に見たことなどなかった。なるほど、こういうのを半狂乱と言うのかと、子供にすがる母親を見て思う。してみると、ドラマや映画で役者が演じる半狂乱のなんと嘘臭いことか。 いや、今はそんなことに感心している場合じゃあない。騒がれたら面倒なことになる。 僕は後ろから母親の首を両手で絞めた。 力任せに。 思いっきり。 首を絞める僕の手に爪を立てて掻きむしられたがかまいやしない。 ぐきりと音がしたというか、なんかそんな感じがして、僕を掻きむしっていた手から力が抜けた。 両手がだらんと下がる。 気を失ったんだか、死んだかしたのだろう。どちらでも僕には関係ない。 大人しくなった母親を仰向けにして、シャツのボタンを外した。 ベージュ色のブラジャーが露になる。 それで僕はちょっとがっかりした。 やっぱり、下着は白がいい。さもなくば、ピンクかブルーだろう。 そう言えば、杏子も普段はベージュの下着をつけていると言ってたか。服から透けなくていいんだとかなんとか。 ひょっとして下もだろうかと、今度はジーンズのボタンを外す。 ファスナーを降ろすと、ピンク色をした下着が覗いた。 そうそう、こういうのでなくちゃ。そうでなけりゃ旦那も可哀想だ。 僕はピッタリとしたジーンズを脱がし、それから野暮ったいベージュ色のブラジャーを外した。 パンパンに張った胸を鷲掴みにすると、乳首から母乳が滴った。僕はそれを舐めた。 あるはずのない赤ん坊の頃の記憶のせいか、どこか懐かしいような気がした。 六. 「それから下の方のピンクの下着を脱がせて、脚をこう大きく広げて性器を舐めました。充分に濡らしてから、自分のモノを突っ込みました。夢中で腰を振りましたよ。杏子さんの名前を呼びながらね。気持ちよかったなあ。杏子さんとするときは、いつもコンドームしてましたから。ちゃんと避妊してたんです。出来ちゃった婚なんて、かっこ悪いですからね。でも本当はそっちの方がよかったのかな」 机を挟んで向かい側に座った白髪混じりの体格のいい初老の男は、右手に持った鉛筆を止めて、じっとこっちを見ていた。 「一回終わってから、今度は前の日に満員電車で悪戯した女子高生のことを考えてしました。今どきの女子高生ってのは何考えてるんですかね。身体ばっかり大人で。僕らにはサッパリ分からないですよ」 鉛筆を持つ男のがっちりとした手が、ぶるぶると震えていた。 「三回目はね、後ろでやってみました。いや、そういう趣味があるわけじゃないんです。ほんの興味本位で。でも、そういうのって自分の彼女にはなかなか頼めないもんじゃないですか。勿論、杏子さんとはそんなことしたことないんです。いたってノーマルで。だからちょっとやってみようかなって。でも、やるもんじゃないですね。肛門が裂けて血だらけになっちゃって。ほら、男って女と違って血に慣れてないじゃないですか。引いちゃいましたよ。まあ、最後はちゃんといったんですけどね」 男の手がボキリと鉛筆をへし折った。 「いい加減にしろよ」 怒りに震えた声で男がすごむ。 「いやだなあ。刑事さんが話せって言ったんでしょ? 調書をとるために。僕は捜査に協力してるんですよ。全面的に。だからちゃんと話してるんじゃないですか。微に入り細に入り」 「お前ふざけてるのか? ふたり殺してるんだぞ。二歳の子供とその母親を!」 僕は机の向かい側の初老の男を無言で見つめた。怒りのためか鋭い眼光の目が血走っている。 「前の日にスナックでしこたま飲んだって話しましたよね、刑事さん」 「ああ、それがどうした」 「あの店で一緒に飲んだヤツの話、ちゃんとしてなかったなあって」 「それが事件に関係あるのか」 「大ありですよ。何しろあの日あの店に行かなかったら、僕は今でも普通に会社に通って普通に生活していたんですから」 そこまで言うと、目の前の初老の刑事は、少し興味を持ったらしい。 「どういうことだ?」 「あの日、あの店『メモリィ』で会ったヤツね。妙に馴れ馴れしいし、妙に親近感があるなって思ってたんです。どこかで見たことあるはずなのに、でもどうにも思い出せなかった。最後の最後、酔いつぶれる段になって、ようやく思い出したんです」 僕は笑った。 「あれね」 刑事の鋭い目が、僕を見つめる。 「あれ、僕なんです」 「何を言ってるんだ?」 僕が引きつった顔でぎこちなく笑うと、刑事の視線に鋭さが増した。 だが、そんなことは構いやしない。 「間違いないです。毎日鏡で見ている顔なんですから」 「ふざけてるのか?」 「ふざけてなんかいないです。寧ろそっちの方が良かったかも知れない」 怒りに震えるのを無視して僕は続けた。 「思い出したんです。あの冬の日のことを。僕は沼に入って、そしてそのまま上がって来なかった」 「……止めろ」 刑事が止めたが関係ない。 「僕はね、そのとき死んだんです。そのまま沼の底に沈んだんですよ」 「止めろと言っている」 刑事の目に怒りが浮かぶが、それも関係ない。 「今、ここにいる僕はね、夢なんですよ。沼の底に沈んだ僕が死ぬ間際に見ている夢なんです」 「止めろ!」 怒りの色がいや増す。だがそれも―― 「僕だけじゃない。刑事さんも、あの母子も、課長も、会社の同僚も、杏子さんも、女子高生もみんなみんな夢なんだ」 「狂ったふりは止めろ!」 バンと机を叩いて刑事が立ち上がった。大きく肩で息をしている。 僕はそれ以上何も言う気になれず、それっきり口をつぐんだ。 七. 「山さん、今日も丸尾の取調べですか」 署の屋上の傍らに設置された喫煙場で、山さんと呼ばれた白髪混じりの初老の刑事は、短くなったタバコを灰皿に押し付けつつ「ああ」と応えた。 警察でも喫煙者は今や少数派だ。 署内は原則禁煙で、愛煙家が隅に追いやられるのは世の流れだった。 「昨日も被疑者相手にすごんだそうじゃないですか。まずいですよ、取調べで被疑者脅しちゃ」 「わかってるさ。だがな」 自分よりひと回りも若い同僚の刑事に応え、初老の刑事はもう一本咥えたタバコに火を点けた。 ふうと白い煙を吐き出す。 「わかっちゃいるが、ふたりも殺しといて、精神鑑定で責任能力なしと出てみろ。殺された母子も残された遺族も浮かばれねぇよ」 「しかし、アイツ本当におかしいんですかね? ふりじゃなくて」 「わからんよ。俺は精神科の医者じゃないからな。お医者に任せる他あるめぇ」 初老の刑事はもう一度タバコの煙を吐き出した。 「被疑者の供述の裏は取れたんですか?」 「それが事件の前日、会社を出るまでの足取りは供述通りなんだが、その『メモリィ』ってスナックが見つからないんだ」 「どこにでもあるような名前ですけどね」 「『メモリー』って店ならスナックが二軒、喫茶店が三軒あるんだが、『メモリィ』ってなるととんと見つからねぇ」 「被疑者の記憶違いじゃないんですか」 「わからんよ」 スパスパと根元までタバコを吸いきって灰皿に押し付けると、初老の刑事は白髪混じりの頭を掻いた。 「さてと、今日もあの野郎の調書をとるか」 「今日はすごまないで下さいよ。冷静に」 「わかってるって」 初老の刑事が腰を上げたときだった。 制服姿の若い警察官が血相を変えて初老の刑事の元へとやってきた。 「山岡警部、大変です!」 「何だよこんな朝っぱらから」 「被疑者が、丸尾聡が死亡しました」 「何? 野郎、留置場で自殺しやがったのか? 責任問題だぞ!」 「それが、自殺とは言えなくて」 「なんだ、病死か? ヤツは持病でもあったのか?」 「いえ、そうではなくて――」 「じゃあなんだ。はっきり言ってみろ!」 初老の刑事に詰め寄られ、仕方なしに報告する。 「信じられないことなんですが、そのう――」 「なんだ?」 鋭い視線で先を促され、若い警官はようやくその先を口にした。 「どう見ても丸尾は、溺死したとしか思えないんです」 「なんだって!?」 留置場の中で被疑者丸尾聡は、死体となって発見された。 丸尾の死体は水を吸って倍に膨れ、腐臭を放っていた。 まるで長い間『沼の底』にでも沈んでいたように。 了 |
へろりん 2016年08月28日 18時35分07秒 公開 ■この作品の著作権は へろりん さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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